ゆっくり読んで頂けると嬉しいです。
それでは第十三夜お楽しみくださいませ
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声が聞こえる……
「何をしている?ここには立ち入れないのは知っているだろう?」
だからなんだ?
「何を考えている?!今立ち入れば里が滅ぶのだぞ!」
なら滅べばいいだろう?
「馬鹿を言うな!お前には何も関係がないだろう?大人しくしていろ。」
「おい、何をしている。早く連れ出せ」
「待てっ!そいつを生かして戻すな!あの半鬼だ!」
うるさい
どけ、俺はアイツをーー ー ー
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「……う……うん?……夢かよ………………」
煎餅のようになりつつある布団から上半身を起こし、ここが自分の居室である事を確認する。久しぶりにあんな夢を見た。この何日か酒が酷く苦いのはこれを予期していたんだろうか。自分を見ると酷く汗をかいていた。それに喉も渇いている。どうやらうなされていたようだ。流石にこのままで店の支度をするのは気持ちが悪い。かなりベタついている。仕方ない。取り敢えず、風呂にでも入ろう。今日はそれからだ。
一応時間を見ておくとまだ時計の針は6時前を指している。早起きはなんとやらどころか朝から風呂を沸かすのは多少面倒だが仕方ない。というかさっきから頭がどんどん回らなくなってきた。同じ事ばっかり頭にチラついてくる。……考えても仕方ない。取り敢えず、風呂だ。
今日は誰か来るだろうか?
*-*side in *-*
「さて、と……文様?今日は何用ですか?折角の非番、それも二日間も取れたのにその始めの一日目に呼び出すなんてよっぽどの事があったんですよね?」
「少し、黙ってついて来てください。埋め合わせくらいなんとでもしてあげますから」
初めて文様からこんな事を言われたかも知れない。埋め合わせをするというのは時々言われるがこれだけ大真面目に言われたのは初めてで、余りにも真剣だった文様をからかう事もせず私はついていった。休みに職場に呼ばれたのは少し嫌だが、真剣な文様は気になる。私はそんな好奇心で文様についていったのを今日の夜、後悔するなんて思ってもいなかった。
*-*side out *-*
「いらっしゃい〜」
「こんばんは、マスター。といっても最近あった所だけど」
「そうだな。というか何か珍しいな……割と久しぶりじゃないか?普通に店に来てくれたのは。」
「そうね…前は魔理沙と一緒に来た時位から夜には来てないわ。」
「昼時々会うからお互い感覚が可笑しいのかも知れないな……。何にする?」
「カクテルをお願いするわ……前あなたが自慢してたじゃない。」
「そうだっけ?まぁ少し待っててくれ」
ゆるーく現れたのは七色の魔法使い、アリス・マーガロイド。よく甘味処で会う奴らの一人だ。人里では人形芝居の魔法使いさんとか言われて今では人里の信用も厚い。魔法使いとしても頼られているようで時折人里の近くで起きた面倒事を慧音と共に解決した、というのも聞いた事もある。本当に真面目?……いやなんて言うべきなんだ?あれ…………
「…………どうしたの?マスター。」
「……あ、あぁいや少しどんな感じにしようか悩んでただけだ、」
「時間がかかると少し期待させられるわね。あ、一ついい?」
「ん?」
「そんなに強い物は使わないでくれない?今日はゆっくりしたいから。」
……強くない酒か…………、正直ウチには余りバリエーションがあるとは言えない。酒の量としては散々かかって元あった分以上にまでまた集めたのだが、リキュールが少ないのだ。いや〜強いのはいくらでもあるんだがな…俺は強烈に強い酒でカクテルを作る癖があるから元からそこまで強くないのがないな……さてと、まぁ何か工夫してみるとしますかね。
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「これは……スクリュードライバー?」
「シンプルに今ウチで一番緩く出来るのがこれだったんだ。有名所だからな、」
「だからこそ腕の見せ所なんじゃないの?」
「自信がないなんて言ってないだろ?」
アリスがスクリュードライバーを楽しみ始めた頃、ウチのドアが開いた。珍しいな、……いやまだ時間は遅くない。誰が来ても可笑しい訳でもない。やっぱりどうも調子が悪いな……
「いらっしゃい〜……文、椛、なんかすっごい顔怖いんですけど?」
「……そうね…………どうかしたの?」
「マスターさんとりあえず、守矢の風ありますか?」
「うん。まだあるよ。とりあえず座ったら?」
「あ、アリスじゃないですか。私はアリスと同じ物で強目にしてもらえますか?」
二人からそれぞれオーダーを受け、準備していく。ただ、その時に受け続けたなんとも言えない目線は何だったのだろうか……
「……お待ちどうさま、」
文は置いたグラスをそのまま乱暴に掴んで一息に飲み干した。……これ強くしたよ?知らないぞ?
一方の椛はゆっくり楽しんでいるようだ。真面目で何よりである。
「……マスターさん。」
「ん?次はどうすんだ?」
「一つお尋ねします。っ……ー」「少し、早いわよ烏天狗。そんなに早死したいの?」
「私今日此処に来たのは間違いだったかしら……?八雲紫まで出てくるなんて私聞いて無いわ……」
「ほんとだよ……アリスどうにかしてくれ。」
文が何か言いかけた時に紫が割り込んで来た。その横では椛は何も言わずただ猪口を傾けている。ただその目はどこを見ているか分からない。そんな目線だった。
「八雲紫…!どうしてここにき……!」
「少し早いって言ってるじゃない。次は無いわ。」
「おいおい、喧嘩なら外でしろ。」
文の首には紫の扇が突きつけられている。それだけで黙らせるなんて流石は大妖怪といった所なんだろう。
「……マスター。お会計お願い出来る?」
「ん?もういいのか?ゆっくりしていけばいいのに」
「そうしたいけど、少しやりかけの事を思い出したの。まだそんなに飲んでないし、帰って終わらせるわ。」
「……まぁ、次はゆっくりしていってくれよ?」
「約束する。スクリュードライバー、美味しかったわ。」
「またよろしく〜」
アリスが店から出ていき、少しの間静寂が生まれる。
紫が座ったのは一番左側の席だ。絶対にこの席は誰にも譲らない。常連もこの席だけはどれだけ混んでいようと座ろうとしないのだ。
「……で?紫、何でこんなタイミングに出てきた?今日は話があるから早仕舞いしてくれって頼んで来たのはお前だろ?」
「そうなのよ。そのつもりだった。」
「文、何を言いかけた?紫もなんで止めた?」
「少し、私が調べた事で聞きたい事があり、今日は来ました。まだ9時です。少し話を聞いて貰えませ」
「やだ」
「えぇ!?酷くないですか!?というかシリアスになりかけたこの状況を返して下さいよ!」
「 ……泊にそんな事言っても一緒よ、一つも聞かないから。」
何の話だろうか?少し気にはなるが、聞いても仕方が無い様な気がする。紫が止める位だ。ロクな話じゃない。
「マスターさん、なら私の話を聞いてくださいよ。」
「椛、珍しいな。いつも文を引き立ててるのに……」
「それは今はいいです。話といっても御山に伝わる古い話なんですが、これが少し不思議な話なんですよ。」
「……紫、何飲む?」
「冷やでいいわ。その話私も聞かせて貰えるかしら?」
「ただの不思議な、昔話ですが……」
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まだ、御山に鬼達がいた頃の話です。
ある年、不可解な形で山に死人が出ました。その他にも重症を負った者も少なく無かったそうです。
私もその事件は文献伝いにしか知らないのですが、改めて古い資料を見ているとその死人は事故などではなく、殺害された、と書いてあったんです。
これは資料が作られる時に良くある事で、後世に伝えるべきでは無い事は大筋だけ合わせて表現がねじ曲げられる事があるそうです。ですがこの場合、恐らくは史実がねじ曲げられた、というのが一番しっくり来るように思います。
事実が変えられる時は必ず何か裏がある。文様を手伝っている内にいつのまにか私はそう思うようになりました。疑うべきではない同輩を疑っているのは分かっています。それでも自分の守る山の事は真実が知りたかったんです。
……すいません、逸れてしまいました
その事件の裏で、二人の妖怪が山から消えています。一人は数日後に遺体で発見されて埋葬されたそうです。
もう一人はまだ見つかっておらず、今も分からないそうで、実質もうこの事件は解決したというのも扱いになっています。事実、私達哨戒の白狼天狗には一切知らされていないような事件でしたから。
その二人については大した事は書かれていませんでした。ですが、この事件が隠された理由かも知れない事が載っていました。その二人の片方は人と何かの妖怪の混じった存在、半妖の存在だったと、そしてもう一人は烏天狗であったと。
半妖の妖怪は正直、数えるほどしかいません。ですがこの事件は随分前、半妖の身ならもう死んでいるはずの年が経っています。
解決される事なく終わってしまったこの事件、不自然な所が多くのあります。
なぜ、山の者が死んだのか、
なぜ、烏天狗と半妖の二人は消えたのか、
なぜ、歴史がねじ曲げられたのか、
なぜ、解決されることが無かったのか、
どれをとっても不思議な御話、今日の酒の肴にどうでしたか?
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時刻は22時、一時間位かかって話してくれた。いい酒の肴になった。
「不思議な事もあるものね……天狗達はその頃サボっていたのかしら?」
「私には分かりませんが、その時代の山は力が物言うような世界でした。鬼達が山を仕切っていた時代ですから」
「いい肴だったよ。ほんと……そんな話……なぁ……紫〜懐かしい話だなぁ……」
「マスター……さん?泣いて……」
「…………っ、ぐすっ……ひぐっ…うぅぅ……」
「あやややや……」
「懐かしい……懐かしいなぁ……紫……なぁ……うぅぅ……」
その時だ。ドアが開いた。今日三度目のドアが開く音がする。
「こんばんは〜泊さん〜まだやってます?ちょっと泊さんの料理が食べたくなって来ちゃいまし……た……ってこれは一体……?」
「……あぁ……いらっしゃい……こあ。何にする?」
「?……そうですね〜何か甘い物が食べたいです。泊さんの作る甘味が食べたいです。」
こあの姿と文の姿が目に溢れた涙で歪み、混じって見える。気のせいか……?今……一瞬だけ……
『泊さんの作る甘味が食べたいです。次会ったら作って食べさせて下さいね?約束ですよ?約束しましたから……ね……♪』
「泊さん?」
「小悪魔さん、少し黙っててあげて。今の彼には辛いから。」
「紫さん、……分かりました。」
そう言っているのが聞こえる、泣いてる暇なんて無い。俺はこの店の店主だ。客を和ませてやれないでどうするんだ?
顔を無理やりあげて、こあを見る。見るとこあは何も言わないで、ただ微笑んでくれていた。
プチン、と何かが切れるような音がした。いや、何も切れていない。俺の心の何かが切れただけだ。俺は次の瞬間にはカウンターに顔を埋めてただ泣いていた。
「……っ……うぅぅ……ぐすっ…うぁぁああ……!」
誰も何も言わずに居てくれた。
それが、全てを吐き出させてくれたのかも知れない。
「うぁぁぁ……っ……ごめん、…………ごめん、悪かった……俺が、俺が…………」
『泊さん、貴方と会え……て楽しかったよ。だから、貴方は前を向いて歩いて。私なんかにとら……われ…………ないで、貴方は……、貴方はっ!……人を「和ませて」あげれる優しい人なんだから……』
「…!今のは一体……?貴方、何かしましたか?」
「そんな野暮な事しないわ。ここは幻想郷よ。幻想郷は全てを受け入れる。それは美しく残酷な事。そんな世界が二人の大馬鹿者を引き合わせてくれたのかも知れないわ。」
この日、俺は一晩中泣き続けていた。
覚えている事は少ないが、紫やこあに迷惑をかけていたのを覚えている。
飲んで、話して、泣いて、
今日は店主が泣きました
呑み屋「和み」今日も明日も営業中……
いかがでしたか?
精進あるのみだと改めて思いました……
それでは次回お会いできれば幸いです。