呑み屋『和み』   作:朝日月

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更新が遅れてしまい申し訳ないです……
時間がかかったのですが乱文で読みにくいかも知れません。

それでは第十四夜お楽しみくださいませ


第十四夜〜意地の張り方。〜

午後6時5分

この時間を時計が指したのを俺はとてもよく覚えている。

この時間で客が来ない時、それは殆どの確率で今日は客が入らない事を指す。そうした時、俺は一人でのんびりしている事が多い。ただのんびりと言っても新しい肴の開発や、買ってきた新たな酒を飲んでみている。趣味の店だと言われても店は店。俺だってそれなりにプライドがあるのだ。

そんな事を思いつつ、俺は新しい酒をバックヤードから出してきていた。これを飲むのは普段から使っているグラスではなく、それよりも随分小さなグラス、つまりショットグラスと言われるものだ。

客を選んで出さなくてはいけないほどに強い酒だが、この酒独特の雰囲気を楽しんでもらいたい。その為にも一度は飲んでおくべきだろう。一度と言わず、暫くこの酒しか飲んでなかった時期があったのは秘密である。

その時、店のドアが開いた。どうやら今日は客が来てくれたようだ。

 

「いらっしゃい」

「久しいな、マスター。」

「珍しいな、ひとり呑みか?というか最近会っただろ。」

「それもそうだが、ひとり呑みではないだろう。目の前に共に飲んでくれる者がいるのに。」

「おっと、そういう事かよ。」

 

軽くあしらわれてしまった。流石は藍だ。藍は紫を迎えに来る分よく会っているし、先の菓子会では率先して指揮していた。と言うより発起人である。そんな彼女が1人でここに来たのはもう随分前である。やはり忙しいのだろう。俺なら紫の式などまっぴらごめんだ。あいつの下で働きたくはない。

 

「何にする?」

「そうだな……マスターが今飲もうとしている物を貰えるか?」

「ん?あぁこれか。別にいいけどキツいぞこれ」

「いいさ、キツいのが飲みたい日もあるだろう。」

「ならいいけどさ。」

 

藍に言われ、グラスの支度をしていると今日2度目となるドアの開く音が店内に響いた。

 

「邪魔するよ〜マスター」

「おーう小町か、で後ろのお連れさんは?」

「久しぶりだね。マスター、もう丸一年来てなかったか」

「霖之助…だよな?あのパチュリーと争うくらい出てこない森近霖之助が出て来てないか?」

「……流石に酷くないかい?まぁ出てこないのは認めるよ」

「まぁ、座れ。二人とも何にする?」

 

二人がカウンターに座り、オーダーを受ける。久し振りに忙しくなってきた。さぁ、気合入れて行きますかね。

 

**********

 

「そういえば、二人はなんで揃ってここに来たんだ?小町はともかく、霖之助は何でまたウチに?」

「あぁ、そこかい?最近私達、よくつるんでるんだよ、職場が近いおかげでさ。」

「正しく言えば、僕が無縁塚に行くとだいたい彼女がいて、顔を知っているから声をかけられたのがこの関係の始まりさ。」

「なるほどね、さしずめ映姫にバレないように無縁塚でさぼっている時に霖之助が偶然散歩してて捕まったって感じだな。」

 

そう言うと、小町はバツが悪そうに目線を泳がせていた。それもそうだ。その影響をモロに受けるのは俺なのだから。最近小町がいないんですとか言って殴り込んでくる事が多くなって困っている。そのまま愚痴って行くわけでもなし、本当に最近の胃の痛みの原因だ。流石に閻魔様を目の前に飄々と出来る精神は持っていない。そろそろ自重して欲しいものである。

 

「さぁて、おふた方、何にする?」

「そうだねぇ…」

「なら、僕は藍と同じ物を貰えるかい?」

「これは強いらしいぞ?あまり霖之助には向かないんじゃないか?」

「強い酒はゆっくり飲むものさ、僕は君達みたいに強い訳ではないし、ゆっくりするには丁度いい」

「小町はどうすんだ?」

「私も同じのを貰うよ」

「あいよ、ゆっくり飲んでくれよ?」

そう付け加えて小町と霖之助の前にグラスを出す。無論、そのグラスはショットグラスである。

俺は一時期、この酒が持つ魔力に取り憑かれこればかり飲んでいた。(魔力と言ってもそう言う類ではない)

かなりキツイ酒であるが故に飲めば飲むほど前後不覚になってしまう事、また言うなればその為にしばしば用いられる事がある。だが俺はそんな事に使う為に飲んではいなかった。よく言われるが酒を飲んで忘れろとかそう言う類だ。だから俺はあまり人を止める事が出来ないのだろう。幾ら自分の調子が悪かろうが何だろうができるだけウチに来て愚痴って行ってくれようとする皆には答えたつもりだ。……あれ、俺何考えてるんだっけ……?

 

「…スター、マスター?どうしたんだい?あんたらしくないじゃないか。」

「あぁ、悪い。在庫考えてたんだよ」

「真面目だな…今度マスターから紫様に言ってみてくれないか?」

「何言わせる気だ、絶対に嫌だからな。というか二人共、ゆっくり飲めよって言っただろう……」

「それなら心配ないよ、あたいはどっかの狐と違って弱くはないからね、」

「フン、どうだかな?サボってずっと遊び呆けているから判断能力も落ちたようだな。彼岸の渡しが聞いて呆れる。」

 

不味い、この二人は何かと張り合う癖があるんだった。仕えるという意味で同じ二人は変な所でお互いを意識している所がある。それはもちろん、かたや閻魔の部下であり、かたや妖怪の賢者の式であるから常に関わりがあるのは間違いないがそれにしても意識し過ぎないじゃないだろうか。困った事にこの類の奴達は全部ウチの店を舞台に意地の張り合いをしてくれるのだ。参ったものである。

 

「霖之助、どうにかしてくれ。」

「そうだね…嵐がすぎるのを待つのも悪くないんじゃないのかい?」

「「マスター、おかわり、」」

「はぁ、……」

 

**********

 

「うっぷ……あたいのはまぁ、まだかい?」

「小町、今日は引き分けだ。これ以上は流石に出せん。これ以上飲んだら幾ら丈夫な体でも耐えきれねぇぞ?」

「まだまだだった…うっ、マスター、み、水を……」

「ったく……これ飲んで二人共帰りな、明日の仕事がつかえるぞ?」

 

二人に渡したのは某竹林の薬屋から幾らか置き薬として置いて貰っている酔い覚ましだ。体の力を高めてその力でアルコールの分解を早めるとかどうとか言ってたが、詳しくは聞かなかった。ひと樽一気させられた文がすぐにピンピンしていたのを見て何も聞かない方がいいと悟ったのだ。ひと樽飲むのとひと樽一気はなかなか意味が違う。しかもこの薬は即効性、今日は帰してしまう方が安全かもしれない。

 

「うぅ…これ飲んでもまだ頭が……いつもはよく効くのにねぇ」

「まぁ家に帰って大人しくしてるんだな。藍も、あまりやり過ぎると体がもたねぇぞ?」

「あぁ………暫く飲み過ぎるのは控えるとするよ…」

 

そう言うと二人は頭を押さえつつ帰っていった。

ドアの向こうで二人共転んでいたが気にしないでおこう。これ以上下手に手を出せば、二人の上司がまとめて押し掛けて来かねない。

 

「で、そいつ飲むフリしながら実は水しか飲んで無かった霖之助くん。改めて聞くが何にする?」

「熱燗付けてくれないかい?どうも僕はこれが少し苦手なようだ。」

「はいよ。……でもそれだけないんだろ?」

 

そう言いつつも手は動かし続ける。そんな俺とは逆に霖之助は飲みかけた水の入ったグラスを持ったまま、固まっていた。やはり何かある。普通は鎌かけたって眉一つ動かさない奴があからさまに固まるなんてよほどの事があるのかもしれないな。

霖之助に猪口を渡し、そのまま酒を注いでおく。熱が入り、程よく湯気が揺らぐ猪口ははっきり言ってそそられるものがある。とにかく美味そうなのだ。もう春が見えて来ているとはいえ人里から離れたこの辺りではまだ夜になればまだそれなりに冷え込む。今まで水しか飲んでいないという状態は熱燗を飲むには最高の環境だろうなぁ……。

 

「マスター、最近はウチによく煙草を買いに来てるが、大丈夫かい?」

「大丈夫だよ。大して害になる訳でもなし」

「君が煙草を吸う理由を言ってるんだ。少なくとも君は煙草を嗜好品としている訳ではない。それに、いつもの理由なら最近は吸いすぎなんじゃないか?」

「最近は色々試してるんだけどさ……苦いんだよ、ずっと」

「そんな冗談を言いに来たんじゃない」

「……どういう事だ?」

「もう少しでいいから自分の体を労わってやった方がいい。といえば分かるかい?」

 

そう言われても俺は何も考えず前掛けの裏のポケットから煙草を取り出す。そのまま紙で巻かれている煙草を加えてから霖之助に断りを取った。

 

「…………悪い、一服」

「あぁ、構わないよ」

 

戸棚から以前に霖之助に作ってもらったマジックアイテムを出す。言ってしまえばライターになるか。香霖堂名物のマジックアイテムは本当に便利である。いちいち火をつけるのは少し面倒だったのだ。

紫煙を吸い込み、肺を満たしていくのを味わう。味なんてものは余り気にしたことがない。それよりも煙を吸い込んて味わえる満足感が好きなんだろう。

 

「ふぅー……、霖之助」

「どうしたんだい?」

「言いたい事は言ってくれ。今なら大サービスで答えてやるよ。」

「気前がいいね、ウチにツケを貯めてるのにも聞かせてあげたいくらいだよ。」

「早くしろよ、俺はそこまで待たないぞ」

 

霖之助は少しだけため息をはくと、覚悟を決めたように前を見据えて話を始めた。

 

「いつから君だ?それによってはもうそろそろ身体が不味い頃に入るんじゃ無いのかい?」

「誰に聞いた」

「それにもう一つ、いつまで引きずるつもりだい?君が感じている事はいつなら感じない?」

「一つ、身体はなんともない。割と健康体だ。二つ、俺は何も感じてなんかいない。」

「なら……いいんだ。」

 

「悪い、嘘だ。俺はずっと、一生引きずるつもりだ。誰になんと言われてもあの事は俺の落ち度だよ。一生俺が背負わないと、背負っていかないといけない事だ。それと身体は割とガタガタだよ。お察しの通りだ。」

「あの事はどうしようも無かった事じゃ無いのかい?」「どうとでも出来た。俺があの時あんなヘマしてなけきゃ、あいつは助かった。」

「だから君は自分にあんな術をかけたのか?」

 

俺は霖之助がそう言っているのを聞きながら戸棚を開けた。もちろん、霖之助にある物も渡す為である。

 

「霖之助、受け取ってくれ」

 

俺が片手で投げ上げると霖之助は上手くキャッチした。やはり色々と器用である。

 

「……開けていいのかい?」

「中に指輪が入ってる。それを紫に見せれば後は話してくれるはずだ。」

「これはウチであの時買っていった……!」

 

霖之助が驚いているのが見ていなくても分かる。中には血に染まった銀の指輪が入っているんだからその反応は当然といえば当然だろう。

 

「悪かったね。色々思いださせて」

「顔色悪いぞ、無理するな。」

「君こそだ。もう意地張るのも辛いんだろう?」

「意地張ってナンボだろ?こんな商売。皆からの愚痴聞く前に、自分が折れてちゃ何も話せないだろうしな。それに酒は意地張って飲む位が旨い。というかもういいのか?まだまだ聞きたい事はあるんじゃないのか?」

「あぁ、それなら後は紫にでも聞いておくよ。僕はここに来た最初の理由を果たしたい。」

「ほう、まだあるのか?」

 

その後の言葉に俺は完全に固まってしまった。

一番、聞きたくない言葉がその中にあったからだ。

 

「君が、昔叩き潰したと言っていた連中がまた集まりだしたそうだ。もう既に、少しずつだが被害が出つつあるらしい。」

 

「は……?どう、いうことだよ?」

「詳しい事は天狗にでも聞くといい。僕も詳しくは知らないんだ。それじゃあ、僕はこれで失礼するよ」

「ぁ……あぁ、またよろしく。」

 

---

 

霖之助が帰ったあとも、俺の頭の中にはずっと霖之助が言った言葉が残っていた。言葉では理解している。でも、意味が飲み込めない。どうしてだ。

どうして、あんな奴らが。

考えても仕方が無い。恐らく近いうちに俺の周りで何かは起きるだろう。それまでは、意地張って酒を出し続けるぐらいしか俺には出来ないだろうし

 

 

飲んで、話して、意地張ってみて

「和んで」いってくれればいい

呑み屋「和み」今日も明日も営業中……

 




本当に、頑張って定期的には更新出来るようにしていきたいと思います。

ご意見などお待ちしております(でも私豆腐メンタルなんですよねもっとメンタル鍛えないと)

では次回お会い出来ると幸いです
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