本当、頑張ります。
それでは第十五夜お楽しみくださいね
昼下がり、
俺は人里での買い出しを終え、店に戻るためいつもの道をただ歩いていた。最近は新しく芽を出す草木が増え、春から初夏に季節が移っていくのがよくわかる。そういえば、結局花見してないな……。ゆっくり飲むのが好きだが皆で集まって騒ぐのも嫌いじゃない。結局の所酒が好きなだけだな。また今度誰か誘ってみるか、誰か付き合ってくれるだろう。
歩きながら、ふと辺りを見ると少し道から逸れた所に大木が見えた。大きな木陰が広がる程の大木。丁度いい。買い出しの荷物の中から包みを取り出しつつ、木の下に向かう。店に帰ってから食べようかと思ったが、たまにはいいだろう。木の下で荷物を置き、その隣に座る。周りより少しだけ高くなっているようで景色もなかなかいい。包みから饅頭を一つ取り出す。良かった、潰れてないようだ。潰れようが何があろうとこの饅頭は食べると決めているんだ。一回取られてかなり怒った事がある。あの時は大人げなかったな。でもそれくらい美味しいのだ。食べ物の恨みは怖いんだから仕方ないだろう。取る方が悪い。
饅頭を食べつつ木の下でくつろいでいると不意に、ギギギという音が聞こえた。いや、もっとそんな軽い音じゃ無かった。ゴゴゴゴ……というか、とりあえずもっと重い物が倒れて来るような、そんな音が聞こえる。辺りを見渡しても何も起きてない。変わったのは木陰が揺れているぐらいか。
「まさか……な」
後ろを向き、顔を上げると今こっちに向かって倒れて来る木が見える。その木は、とても悲しげに見えて、でも晴れやかに倒れて行った。随分と遠くだ。材木に使うのに取りに来たんだろう。もう日も真上から逸れつつある。早く戻って支度をしないとな。
さて今日は誰が来るだろうか……
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仕事がない時間というのは暇なもので、手持ち無沙汰になってしまう。店の備品の手入れも終わってるし、いつもの小煩い常連のグラスはもう光を跳ね返す程に綺麗になっている。暇は暇でも最近こあに教わっている紅茶の作り方を復習する程の時間はない。
余談だが、こあ曰く「泊さんは淹れるというより作るって感じて覚えた方がいいと思います。カクテルみたいに」と言われた。つまりは概念を変えて覚える方がいいらしい。どうやら俺のやり方は仕事での癖が強く、変な基本をするより必要とする知識を覚えるべきだそうだ。ちなみにこの意見は彼女の主人、パチュリーからである。的確なお言葉だ。気長に教わる事にしよう。
カラン
とついさっき付け替えた入り口の鈴が音を出す。この前までの物では入って来ても分からなかったから付け替えた正解だった。いい音だし。
「いらっしゃい。」
「こんばんは、いつも小町が迷惑をかけて申し訳ありません…私が迎えに来れればいいのですが」
「やめて、送っていくから。いや是非送らせてください。」
「ですがっ」
「いいって。今日は一人なんだろ?ならゆっくりしてくれ。それにここはいつもの堅苦しい言い方なんて要らないぞ?」
「……ありがとう、」
「どういたしまして、でご注文は?」
「いつも小町が飲んでる物をお願いします。私と居ない時に飲んでる物を」
「さしずめ、いつも潰れる報告が入るから飲んでるのを調査してみるって感じか。」
そう言いつつ、手に取ったのはウチのジョッキの中で二番目の大きさを誇るサイズの物。よく言われる男前ジョッキよりは小さいがこれでもかなり大きい。だいたい800ぐらい入るはずだ。
そしてビールを注ぐがこの時に泡を殆ど立てずに入れていく。最後に少しノックして泡を作るぐらいだ。9:1、ビールを飲みたいからと言って聞かない小町の為の分量である。
「ちなみに、真似しても当方では責任取れません。あしからず。」
「一体どうしたんですか?熱でも出ましたか?」
「いや、えーきも普段なら絶対言わない事言ったよ?今。」
「そうですか…」
目の前で項垂れる少女を見つつ、その彼女の普段を思い返す。
よく、悪い事をすれば閻魔様に……と言われるがこの幻想郷では彼女に怒られる。つまりは彼女は閻魔なのだ。名前を四季映姫。ヤマザナドゥは肩書きだそうで、
俺はそのあたりの事を一度は聞いているのだが結局あまり記憶に留めて置くことができてない。それは俺が肩書きや身分を重んじる事が嫌いである事がこの類の事に対しての関心が低い要因だろう。
地獄は言うなれば超ブラック。今に始まった事ではないと少女はいうが、その言葉がどこから来ているのかは定かではない。それ故に、小町を叱りつける事も考えてしまうそうだ。
「貴方も、飲みませんか?」
「ん?珍しいな、映姫が誘ってくれるなんて」
「私は、こうやってお酒の力を借りないと愚痴も言えません。だから貴方も巻き添えです。」
「おいおい、早いな。もう支離滅裂だぞ」
「そんな事は一々いいんです。とりあえず、貴方も何か飲んで下さい。」
「……そういうことね。わかったよ。」
適当にグラスを出し、こっそり自分用に開けているボトルを出す。こういう事が出来るのも火入れ酒の特徴か、まぁ置いてて良かった。
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「酔っぱらいってのは便利なもんだよな」
「何故ですか?私としては酔った貴方の面倒を見るのは構いませんが、それ以上に周りに迷惑がかかるのが問題だと思います。そう、貴方は」
「そういうのいいんで、長いからねそれいつも。」
「また貴方はそう言って…」
「まぁ、たまには聞いてくれ。酔っぱらいってのは思った通りの事しか言わなくなるし、自分の言った事すら忘れちまう。それに人から聞いた事すら忘れてる。これ以上に便利なやつはいないんだよ。」
「それを言われても私はどう反応しろと……?」
「君ってさ、俺にだけ激しく口調変わるよね。本当、いつもは真面目で少し話が長いだけなのにな。」
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小町の話をしてくれ。
と、言われてとりあえずあらかた覚えている事を話していく。最近は謎の飲み会を設立した事。どうやら最近の休憩場所は無縁塚であろう事。サシ飲みでベロベロになったときの顛末。
それを聞く彼女の表情はとても激しく移り変わった。話しながら見ているこちらがいつもとの違いに驚く程に、
「だいたいそれくらいか、あ、後は最近はそこまでサボってないって言ってたな。」
「私が聞く限り、どう考えてもサボっていますよね。」
「そこはご愛嬌って事で」
「貴方は甘いですね、もう少しぐらい厳しく接してあげてください。それがあの子の為になりますから。」
「善処する。」
そう言っておき、映姫が置いたからのグラスを下げる。飲んでいるのはもう既にビールから清酒に変わっている。それでもどちらかと甘い物を好んでいる所が可愛い所なんだろうか。
「どうする?」
「…これくらいにしておきます。明日に差し支える訳には行きません。」
「ん、じゃこれ持って帰りな。小町が喜ぶぞ。」
「いつもどうも、次は小町と来たいですね。」
「待ってるよ。いつでもどうぞ。」
「ご馳走様でした。それでは、」
「またどーぞー」
彼女はこうして帰っていた。帰る前の顔は来た時よりも晴れやかで明るいものだった。もしかすれば、疲れを置いて行ってくれたのかも知れない。和んで帰ってくれたのならそれ以上に嬉しいことはない。
飲んで、話して、愚痴って、
「和んで」いってくれたならそれでいい。
呑み屋「和み」今日も明日も営業中……
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追記
この後、最近の話だが普通の死神さんたちが時折店に来るようになった。理由は特に無く、シンプルに来店してくれただけである。曰く、四季様が行ってる店なら大丈夫だろうから、らしい。何が大丈夫なのかはさておき、死神が来ることに少し不安があったが、そんな事なんて気にせず今日も常連達はやってくる。むしろ死神達の方が萎縮しているほどだ。まぁ、楽しく飲んでいるようだし気にする事でもないだろう。
いかがでしょうか、
いや〜本当忙しい日々でした。
少し手が開きだしたので出来るだけ更新できるように頑張ります。
それでは、次回お会い出来ると幸いです。