それでは第十七夜お楽しみください
「泊さん!熱燗つけてくれってオーダーが入ってるんですが」
「泊、ツマミが減ってきたわ。どれから持っていくの?」
「泊よ、酒も少なくなって来ている所があるが何処から持っていく?」
久々に感じるこの忙しさ、楽しさが増してくる。これだけ仕事があれば普段から暇はしないだろうが。地味に愚痴を零しても仕方がない。今は目の前のことに集中しないとな。
「ツマミはここに置いてるの全部持っていっていいぞ!ジャンジャン運んでくれ!酒はヤードから引っ張り出してくれ!宴会用って紙が貼ってある奴だ。熱燗は……って誰が言い出したんだ?」
「紫さんです。なんか、私に言う時物凄くニタニタしながら言ってましたよ。それと、猪口は二つねって言われました」
「あいつ…後で持っていくって言っといてくれ、支度しとくよ」
三人とも、良く気が回るし普段からやってる分手際がいい。本当に助かる。今日の宴会は人数が多かった事もあって応援を駄目で当然で頼んでみたら三人とも二つ返事で返してくれた。いい友人を持てたもんだ。ただし、二人の主人方の片一方の方と一悶着あったのは秘密である。
ただ、想像してた以上に仕事が多い。普段の宴会の比じゃない気もする。流石に悪いな...何かもう少し礼は考えておこう。
宴もたけなわ、店としては嬉しい限りで注文がひっきりなしに入る。少しばかりペースが上がり過ぎている気もするが。まぁ、気合いれて作るとしよう。
次は、胡瓜の酢の物、か
熱燗と一緒に俺が持っていくとしよう。
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ウチの宴会は不定期に行っていて、その際にはかなり多くの人数がやってくる。店の外でも酒盛りが始まる程に客が多いのだ。ただし、本当に不定期な上に唐突に始まるので来れない人も多かったりする。あまり気にした事がないが、人数がいつもなんだかんだで同じくらいになっているのは気のせいではない気もする。恐らく紫が動いているのだろうが、聞くのもヤボだろう。
今日、この宴会に来ているのは八雲と紅魔館の連中に加えて、竹林からも来ているはずだ。後、慧音や萃香も来ていたはず。それに今回は彼岸から多くの死神達が来ている。非番だったらしい。いいんだろうか?まぁ、閻魔も来ているし、問題は無いのだろう。あとは妖怪の山からは守矢の面々に加えて文と椛が来ていたと思う。正直、仕事のペースが早くて確認している暇がないのが事実だが。
「泊さん、生ありますか?死神の皆さんがおかわりお願いって」
「あるよ、いれるから持ってってくれ」
「はーい」
「それと、咲夜と決めて適当に休んでくれよ。まだまだこれからだからな」
「分かってますって。泊さんこそ休んでくださいよ?こうしててもずっとお仕事してるじゃないですか」
「大丈夫だ。これが俺の仕事だがらな」
そう、こうして忙しく仕事を裏でこなし皆が和んで飲める場所と時間を作る。それが今の俺にできる仕事だ。
こあが下げてきてくれたジョッキの状態を確かめる。
もう替えた方がいいな。冷凍室から同じ数のジョッキを出しつつ、冷え具合を確かめておく。よし、十分だろう。定期的に冷やしたジョッキと替えておかなければいいビールは出せない。最初はよく分からなかったが今では慣れてしまい、色々考えるようになってきた。ウチでしか取り扱って無いこともあり季節問わず注文がはいりやすい。最も、ウチ以外の店は扱う気すらないというのが本当だろう。俺としても物の善し悪し以前に売上と直結する分あまり馴染みが無いものは敬遠してしまうからな。といいつつ、自分なりのいれ方でしかないから不安は多いんだが
「こあ、頼めるか?」
「はいっ!任せてくださいよー」
頼もしい限りである。いつの間にかこあはなかなか難しいジョッキ運びを完全にこなしていた。才能とは恐ろしいものだ。
ちなみにだが、冷凍の設備などは紫提供である。宴会を開く前にはかなりの準備があるため普段の数倍の整備が必要となるので借りるようにしている。原理などは聞く気にもなれなかった。どうせ相当な技で動かしているかそれこそ外から引っ張って来たかのどちらかだ。気にしてはいられないのだ。
こあが藍と共に戻ってきてまたオーダーを捌く、来るのが咲夜と変わったり、誰か一人が来る時もあったがそんな時間が過ぎていき、少し時間が出来た頃、すぐ出せるようにツマミを支度しておきつつ一度休憩していた藍に厨房を預け熱燗を持っていくことにした。この時期にも関わらず、熱燗をつけろと言い続けるウチの常連の元へ
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「よぅ、飲んでるか?」
「あら、ありがと。暑かったんじゃない?いつも悪いわね」
「…………何食ったんだ?それとも他人の空似って奴か?」
「合ってるわよ、このバカ。この時期に熱燗頼むのは私しかいないじゃないの」
「だよな、ほれ」
お盆を置きつつ紫の前の椅子に腰掛ける。店の中の玄関から一番近くに置いてある四人掛けのテーブルに一人で座っていたのだ。それも誰かを待っていたように、だ
徳利から猪口へ適度に熱くなった酒が注がれていく。この時期にはぬる燗にしてある。流石につけておくのが辛いのと暑すぎてただでさえ敬遠しがちな熱燗を飲むためである。ちなみに、紫以外には季節に入らない限り熱燗は出たことがない。
紫の方に猪口を置き、とりあえず自分のに入れようとすると紫に徳利を取られてしまった。返杯よ、と言われ仕方がなかったので大人しく入れられておくことにする。
「乾杯」
「乾杯、っおとと」
猪口をぶつけてもすぐゆっくり飲みつつ猪口の半分程の所まで飲んでおいておく。こうすれば、厨房から呼ばれた時にすぐ飲み干して向かう口実になる。仮にも仕事中ではある。普段から趣味だと言われるがそれでも仕事なのだから。
一方の紫も同じように飲むと猪口をおいて酢の物を食べ始めた。何故か好きらしい。理由は今まで何度となく聞いたが教えてもらえた試しはない。気になることでもないからいいんだが、あしらわれ続けるのも面白くない。やっぱりいつかは聞き出してやる。
「んで、どうしてそんな浮かない顔してるんだよ。藍に愛想でもつかされたか?」
「そんなんじゃないわよ」
そう言って一度胡瓜を口にいれ、そのまま猪口の中味を飲み干す。猪口をおきつつ、ほぅ…と一息。
その動作をする彼女を俺はただ、見つめていただけだった。
その後、先に話を始めたのは紫だった。
「泊、後でいいから私と飲みなさいよ」
「後っていつだよ。直ぐならいいがそうじゃないならちょっとかかるぞ」
「終わってすぐでいいわ。久々に貴方の作るカクテルが飲みたいのよ。悪い?それとその前にもお願いね」
いつになく、真剣で、真面目な声だ。適当なフリをして誘っているように見えるようにしている。どうやら大真面目な話らしい。ちゃんとした話なら俺もきっちりと受けなければいけない。
「その席には何人来るんだ?」
「数人、としか言えないわ。正直誰が来るか分からないから。私以外ね」
「分かった。その後にお前だけ残って飲む、そういうことだな」
「話が早いわね。そういうことよ。後、始めのだけど」
そこでわざと間をおき、調子を狂わせる。相変わらずだ。トントンとまとまる事はまず無いな。いや、まとまってはいる。ただ、少し伝え方が問題なだけで。
「だけど、何なんだ?」
「取材をしたいそうよ、あの子。」
「なっ……、もう調べたのか」
「さぁ?知らないわ。私にアポを取ってくれとか言い出す所を見ると、何かしら答えは持ってきたんでしょうね」
「いいさ別に、な。
それより紫よ、余興の支度だって言ってあんだけ酒持って来たけど何する気だ?」
「まぁ、見てなさい。今暇でしょう?アレ全部こっち持ってきてよ。早くね〜」
反論をさせる間もなく席を立ち、今日の参加者に声をかけていく紫。仕方ない。運んでくるとしよう。
厨房を介してヤードに行く際、一気飲み大会だとかいう危ない言葉が聞こえたが気にしない方が良さそうだ。
今晩は長くなりそうだし、早い内に手伝ってもらって片してしまおう。怪我人と急患が出ない事を祈るばかりだ。
次回へと続きます