時間を作って書いていきます本当
では第十八夜お楽しみくださいね
宴会が終ってから一時間程しか経ってはいないが、もう数時間が経ったように思えていた。
宴会客達は終わり次第帰っていった。とても満足してくれたようで楽しそうに帰っていったのを覚えている。
そして今、店に居るのは俺と紫、そして文と椛にこあに藍である。咲夜はというと、自分の所のお嬢様を背負って帰っていった。そのお嬢様は早々に潰されていた。紫や萃香によって飲まされ十分と持たなかったのだ。
俺が聞くことが見たのはそれくらいで、今日は殆ど宴会に顔を出す事が出来なかった。それこそ、紫の所に持っていった時ぐらいしか休んでいない。忙しい事はありがたいことだ。オーダーが入らないより暇な事は無い。
「うぅ…泊、み、水をくれ……頭が」
「藍大丈夫か?片付けも終わったしゆっくりしてろよ」
「藍、先に帰っていいわよ。橙の相手でもしてなさい。最も、今じゃどっちが面倒見られるか分かったもんじゃないわね」
「うぅ……それでは先に戻ります……」
「布団だけひいといてねー」
弱々しく垂れる尻尾を引きずりつつ、藍は帰っていった。頭を押さえつつ、歩く姿はどこか哀愁が漂っていた。可哀想な事に早々に潰れていたどこかのお嬢様とは違い、耐え抜いていたそうだ。それ故に相応の量を飲まされていたらしい。
運んでくる度に一回一気飲み、止まったらもう一杯。
反省も後悔もしてないわ!面白かったからいいのよ!
主人からの言葉である。更にちなみにだが、途中助けを求めて閻魔の元へいったがそこでも飲まされたらしい。ご愁傷さまと言うべきか、なんとも可哀想な話である。
咲夜も藍よりは少ない量だが巻き添えを喰らったそうだ。こあは無事である。こあは元からあまり飲めない為に標的にはならなかったようだ。そこをわきまえるのも大切だが、もう少し従者を気遣ってやるべきだろうな。
「なんか……この面子前にもあったな」
「そうね、あなたが泣いた時だったかしら?」
「あれは反則だったからな。で、みんな何飲むんだ?」
紫が目線を自らの右側に向け注文を促す。私は決まっているから早く決めろと言うようだ。
「じゃ遠慮なく。マスターさん、いつものお願いします」
「よしきた、二人は?」
「マスターさん、果実酒で最近入った物お願いします」
「はいよ、で、どうすんだ文?いつものにするか?」
「そうですね……紫さんはどうされるんです?」
どこか、文らしくもない台詞だ。いつもの、なんというか元気さのような何かが欠けているきがする。声も少しばかり枯れているような気もする。
ただ、山の上の方に付き合わされた時の後の酒焼けした声に聞こえなくもない。疲れてるんだろう。
「私?私はこれよ、泊。ツーフィンガーでいいわ」
ドン、とカウンターに置いたのは琥珀色を輝かせる酒。一本でも笑えない金額がする事もある酒だ。つまるところ、
「ウィスキー…、かよ。いい値段したんじゃないか?」
「そうでもないわ」
エヘン、とでも付きそうなくらいに胸を張る紫。どうやらそれなりには頑張ったようだ。まぁ、つつかずに置いておこう。
というか、さっきまでの宴会でもうかなり飲んでいるはずだ。今からこんなに飲んで大丈夫だろうか……。
「ねぇ、決まらないのならこれにすれば?二人共待ってるしね」
「そうですよー、文様。早く決めて下さーい」
「これは失礼。それじゃ、私にもお願いしますね」
「はいよ、待ってな」
気のせいだといいんだが、今ボソッと椛覚えてなさいよと聞こえた。後が大変そうだ。
「泊、まさか飲まないなんて言わないでしょうね」
「まさか、まぁ乾杯程度には付き合うさ」
「珍しいじゃないの。あなたが最初から飲むなんてねぇ」
「打ち上げみたいなもんだよ。乾杯しないと格好もつかないだろ?あ、言っとくが、今日の礼はまたさせてもらうからな、その時は来てくれよ」
「長いのはいいわ、それじゃー、乾杯」
「「「乾杯」」」
**********
皆の飲むペースが普段よりも早い。仕事の後はというが、俺もそう思う。やっぱり旨い。普段よりも旨く感じる。
というか、もう既に回ってきている気もする。疲れているのだろう。
「そういえば紫よぉ…取材があるとか言ってたがなんだ?」
「え?あぁ、私は場所のセッティングだけよ。あとはこちらにお任せ。ゆっくり聞きたいことがあるらしいわ」
「そうなんです。色々聞いていきたいと思いますので、宜しくお願いしますね!」
「ん、わかった」
取材、と言われても最近何かした訳でもない。ネタになるようなことでもしただろうか。ここのところ、幽香やアリスあたりによく菓子は頼まれているがもう広まったことだし、それではないだろう。
「それではですね、マスターさん。最初なんですが、最近伊吹様を倒した、というのは本当なのでしょうか?」
「紫、イブキって誰だ?」
「萃香の事よ、貴方は知らなかったかしら?」
「え?あ、そうか。伊吹……そういやそうだったな。あぁ、不意打ち決めて伸ばしただけだ。喧嘩なんてしちゃいない」
「そうなんですか?霊夢さんによるとボロボロだったそうなんですが……」
「後で飲みすぎて落っこちて怪我でもしたんだろうよ、俺じゃない」
「なるほど、それでは次なんですが……」
一問一答の形式で答えつつ、ともに酒が進んでいくのがよくわかる。周りも同じくらい早い。唯一ペースを崩さないのが椛だろうか。
そうして数十分程経った頃、文の手帳のページが終わったのを合図に全員の注目が文に集まった。終わりなのかどうかまっているのだろう。
「マスターさん、ありがとうございます。とりあえずこれで特集分はどうにかなりそうです」
「お、頼むぞ。楽しみにしてたんだよ。そうだ、何か出そうか。グラスも空いてるし」
「そうですねぇ……」
グラスを受け取り、流しに置いて新たなグラスを出し、次の酒を選び始める。ウチの店ではかなりの回数来てくれている人には別にグラスを用意している。そろそろ頃合だろう。蛇足だが、椛はもう随分前に専用のグラスをおろしていたりする。
黒いグラスを棚から取り出した後、グラスで指さすように文の方向に手を向ける。紫達はグラスが変わっている事に気付いているが、気にしないでおこう。
「『天姫』、まだありますか?」
「…………っ、あいよ」
**********
「よく調べたじゃない。そこまで辿り着いたのはそう居ないわ」
「私には調べる責任があると思いました。だから調べただけです」
「……おまちどう、『天姫』だ」
「いただきます」
「紫、お前は?」
「要らないわ」
ゆっくりと口に含む文。水と見間違える程綺麗な酒だ。味は飲んでのお楽しみ
「……本当にこれが天姫なんですね。いいお酒、なんでしょうか?水かと思ったんですが」
「天姫、これは酒とは言いにくいわ。殆ど水だもの。というかよくこんなのまだ置いてたわね。もう殆どないでしょうに」
「あぁ、後これ抜いて三本しか残ってない。もう作られる事も無いし、咲夜にでも時間止めてもらうか考えてるんだ。」
「私から言ってみましょうか?マスターさんの頼みなら咲夜さんも断らないと思いますよ」
こあがそう言ったが、俺は返せる答えを持っていなかった。この酒はもう無くなるべきなのかも知れない。答えにはたどり着けそうもない。酒のお陰で働かない頭を動かすのは骨が折れる。
「おーい、マスターさんってば!おかわりお願いします」
「うん?あぁ悪い悪い、いつものでいいか?」
「お願いしますねー」
椛から急かされ、と言っても聞いてなかった俺が悪いのだが、グラスを受け取り酒を注いでいく。守矢の風、あの二神に捧げる為に醸された酒。天姫は、そんな大層なものではないが、俺にとっては手元にどうしても置いておきたい一本だ。
「椛、おまちどうさま」
「ありがとうございます!」
「やけにゴキゲンだな…。そうだ、文お前はどこまで調べたんだ?」
「全てです。マスターさん、貴方が山を嫌う理由まで全て調べてきましたよ」
「そんなことして……後は知らねぇぞ?大天狗が黙ってないだろう」
「覚悟の上ですよ。それに、あの小箱の秘密もです。もう少し口が固い人に頼む方が良かったんじゃないですか?」
「さぁな?文が調べた事が真実かどうかはわからないぞ?」
「いいえ、真実です。御山に伝わるただの昔話、なんて嘘だったんですよ」
「消えた妖の話、アレをまだ残してたなんて妖怪の山は文献を多く残してるのね。もう随分前の話じゃないの」
紫が随分前、と言ったが妖怪の尺度である。人などではついて行くことすら叶わないほど途方も無い時間だ。
それだけの時間語り継がれれば風化し消えていきそうな気がするがそうもいかなかったようだ。妖怪の山、天狗の中にはえらく歴史好きなのがいるらしい。
少し会話が止まり、店の中が静かになる。
そうすると規則正しい寝息が聞こえてきた。椛は相変わらずペースを崩さず飲み続けている。この寝息の正体はこあらしい。カウンターに伏せて寝てしまっている。紫達もそれに気づいたようだ。
「……今日はここらで終わっとくか」
「もう朝に近いじゃないの。お開きにしましょうか」
「マスターさん、もう少しぐらい、いいですよね!?」
「文様帰りましょうよそろそろ、勿体ぶった文様が悪いんですよ」
「くぅ……くぅ……もぅいっぱいぃ……」
「こあちゃんは、泊が送ってあげなさいよ。貴方にも原因はあるんだし」
「言われなくても送ってくよ」
結局、紫はさっさと隙間を開いて帰り、文は椛に引きずられて帰っていった。俺もこあを送るとしよう。
こうして宴会は幕を閉じた。なんとも言えない終わり方だったがこれがこの店らしいから気にしないでおこう。
飲んで、騒いで、呑んで
呑み屋「和み」
宴会依頼受付中……
---
追記
結局送っていくと朝日が昇る時間になっていて、美鈴から少し誤解を受けたが、説明をすると分かってもらえた。がこのあとも暫くの間この時の事で弄られ続けることになったこあがいたのは、別のお話ということで