本編とは殆ど関係ありませんのでゆる〜くお楽しみくださいませ
宴会から数日が経ったある日、俺は人里で買い物に励んでいた。
宴会が終わり、片付けは半日足らずで終わるものの困るのがその後の買出しである。一回でかなり多くの酒が出る為その後が少し面倒なのだ。
酒屋には少し前に言っておけば事足りるが面倒なのはその持ち手である。荷車を借りていかなければならない程に積み上がった酒や肴などを持ち帰るのが一苦労だ。
人里にきている藍を見つけられれば苦労する事も無いが、昨日あたりに来ていた橙曰く、紫の面倒事に付き合わされているようで望みは薄い。幽香やアリスに手伝ってもらうことも出来るが、やはり気が引ける。
酒屋の前で腕組みをしたまま考えるのも邪魔になる。
とりあえず、酒屋から借りた荷車に乗せておき、それを引きつついつもの甘味屋へ向かうのだった。
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「親父、いつもの頼むよ」
「おう、兄ちゃん。今日は大荷物だなぁ」
「まぁな」
いつもの団子をつまみつつお茶を飲む。このなんとも言えない甘みの中にある深み、今まで多くの団子を食べてはいるがここの団子以上に旨いのはないだろう。
ヒョイと食べ進め次の串を取った時だ。普段より一本少ない。親父は俺が何本食べるかしっているから入れ忘れるなんて事はしない。となると、気付かないうちに落としたか、食べていたか、
答えは違ったようで霧の中に団子が浮いている。そして荷車に積んである一升瓶を掴むように動いたかと思えば瓶が浮き出した。否、持ち上げられたと言うべきだろう。
「萃香、酒は自分のを飲めよ。団子ぐらいならいいが酒はやめろ」
「ケチだねぇ、そんなのだからいつまでも貧乏してんじゃないのかい?」
「うるせぇ窃盗犯が、引っ捕まえて霊夢に引き渡してもいいんだがな」
「フン、出来るならね」
伊吹萃香、山の四天王に名を連ねる幻想郷でも指折りの強者だ。今や御伽噺として語られる事も多いが、萃香の強さは健在だ。
萃香は荷車から抜き出した瓶を開け飲みながら消えていった。能力で霧になれる萃香らしく霧になりつつ。流石に逃がす訳にも行かないので俺はその霧のようになる姿を無理矢理掴んだのだ。多少力が入ったので萃香がつんのめって転んでしまったが仕方ない。詫び代わりに酒はくれてやるとしよう。
「……未だ健在、ってところかな」
「あたぼうよ、お前を何年知ってると思うんだ」
「ハッハッハッ!流石だね、ならこのまま昔みたいに遊ばない?久々に全力を出したいんだよ!」
「この酒店まで運んだら考えてやるよ」
「なら運ぼうか、さぁさぁ善は急げだよ!」
「誰がやってやるって言ったんだ?考えてやるよとは言ったんだけどな……」
一人愚痴りながら荷車の後ろからついて行く。荷車は萃香が引いている。あの小さな少女があれだけの力を持っているとは、とでも言うようにすれ違う人々が見るがその姿を見て納得したように去っていく。
鬼であればこの程度の量の荷物ぐらいは余裕だろうからという認識であるのだろう。事実平気だろう。俺でも一人で引ける。
唯一の利点だろうか、馬鹿げた力を扱えるというのは意外と便利ではある。不便な事も充分多い。少し冷静さを欠くと力が入りすぎる。今までいくつのグラスを割っただろう。
割れたグラスの数を数えながらいつもの帰り道を行く。
数が三十を越えた頃には店に着いていた。
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店に着いて荷物の運びこみも(萃香に手伝わせて)終わり、外に出してある椅子でお茶を啜る。隣で萃香は瓢箪に口をつけていた。なお、最初の酒は早々に空いている。相変わらずの早さだ。
「お前、何考えてる?」
「……この呑んだくれをどうやって神社まで帰らせるか」
「ハハッ、諦めなよ。でも、お前が考えてるのはそんなことじゃない。誰かにしょうもないことでも言われたんだろ?」
呑んだくれている印象が強い萃香、だが彼女も四天王と呼ばれた一人。威厳を持って話す事は容易らしい。口調も普段見せないのが顔をのぞせている。
「誰かに、なんてよそうか?何処かの天狗に言われたんだろう?」
「さぁな……酔っ払いの話を聞くのはマスターの仕事だ。いちいち記憶に止めちゃいねぇよ」
その時だった。
空気が切れるような轟音、その後に続いて来たのは衝撃。痛みなんてやさしいものじゃない。そのまま吹き飛ばされ店のすぐ近くにある大木の前に転がる。頭が揺さぶられ、殴られた頬が痛む。首が飛ばなかったのが救いだろう。
「痛いなぁ……ったく、なんだってんだ?」
「ほっんと面白くない。そんなだったらあの天狗でも仕留めた方が話す気になるかい?」
「おいおい物騒だな、俺はなんにも考えてないぞ?」
「腑抜けたね、お前」
「昔からこうだ」
「萃香、お前こそ何が言いたいんだ?遊び相手は霊夢に頼め」
「まだ言わせる気か」
「……さっさと帰るんだな、飲み過ぎだぞ」
萃香を横目にしつつ店の中に向かう。だがドアの前には萃香が立ちはだかっている。やはり通して貰えないようだ。店の支度もあるし早くしてもらいたいもんだ。
「どいてくれ、仕事だ」
「どかない。これ以上何も言わない気なら容赦はしない。不味い酒を飲む気はないよ」
「どかないか?」
「あぁ、のかないよいつまでも居てやるさ」
立ち塞がる萃香はいつもの飄々とした雰囲気を捨てて、真剣そのもの。殺気も纏っているだろう。空気が張り詰めている。
「……十分だ、十分だけ相手してやる」
「ふぅん、その時間は逃げ切るってかい?」
「十分あれば遊んだってはったおせるって言ってんだ。御託はいい、来い」
「いいね、やってやろうじゃない。来い!泊!」
萃香の声と共に互いの拳がぶつかり合う。空気が割れるような轟音、力と力のぶつかり合い。それが一度ではなく何度も、何十も続いていく。幻想郷に鳴り響く轟音、それを聞きつけた祭り好きの奴らが来るにはそう時間はかからなかった。
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「で?言い訳は?私の作ったルールは守れない訳なの?」
「「すいませんでした」」
萃香と二人、顔に青筋を浮かべた紫の前で土下座をしつつ謝り続ける。幻想郷では面倒事は弾幕ごっこでカタをつけるのが習わし。大喧嘩をした俺達二人は絶賛説教を受けている。
他にも霊夢が来たり早苗が来たりして大騒ぎだったが見計らったように紫が出てきて私が説教する、と言って帰らせていった。ある意味助かったのかも知れない。
「反省の色が一つも見られないわ、一度痛い目見ないとわからないのかしら?」
前言撤回、霊夢にシバかれるだけの方がマシかも知れない。
萃香を同じような考えだろう。とりあえず頭を擦り付けて耐え忍んでいる。土石流のような説教とお小言を受け続ける間、俺達は正座、もとい土下座から直る事を許されなかった。
喧嘩は程々に、今日の教訓である