では第四夜お楽しみください。
休日という物はどんな仕事をしていても与えられる物である。
ウチの店は定休日、もとより休業日を作っていない。客が羽根を広げ休んで貰うために店を開いているのに店主の俺が休んでしまっては意味が無いという考えがあるからだ。幻想郷でこの店に来る常連客は正直な話、不定休の所に勤務している事が多い。例を挙げるとキリがないが、彼岸はサボるとその時間に応じた上乗せを貰うそうだ。自業自得に過ぎないが、余りにも就労時間が超過しているはずだ。労働争議とかしたら意外と勝てるかも知れない。閻魔対死神軍団。少し見てみたい気がするが恐らくここが法廷になるだろう。それだけは阻止すべき、いや阻止しなければならない。ここでされてしまっては多くの影響が出てしまうだろう。特に俺の生活に大きな影響が出る事が考えられるし、他の客にも迷惑がかかってしまうだろうしな。
さて……今日は誰か来るだろうか?
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店内に掛かっている時計を見ると二つの針は6時を差していた。いつも読んでいる新聞はもう早々に読み終わり、何もする事が無くただ時間が過ぎていく。何かする訳でもなく休憩用の椅子から立ち上がり背伸びをする。割とこれだけでも気分が変わるものだ。仕込みの再確認でもしておこう。厨房に入り、確認を始めようとした所だった。
「マスター、ビール貰える?」
音もさせずに注文が入ったのは
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「いらっしゃい、咲夜。今日はお連れはいないのか?」
「それは、お嬢様の事かしら?」
「いーやあの我侭お嬢が来るとすればもっと後だろうし、第一、従者が主人より早く店に入るなんて有り得ないだろう?」
「あら、全てお見通しなのね。そうよ、今日は...」
「はぁ...はぁ...咲夜さん、……ちょっと位待ってくれ……てもいいんじゃな……い...ですか……?速過ぎ……ます……」
「こあもかよ……最近は音を立てずにドアを開けるのが流行ってんのか?はい、お水。あとビールお待ちどうさま。」
「あ……ありがとうございます。」
「あ、こあのもお願いね 。」
「あいよ。」
目の前にいる息を切らせて駆け込んで来た少女の分のビールを注ぎ、カウンター越しに手渡す。この距離をここまで息を切らせるほど急がせるとは、最近良く聞くが、やはりこの幻想郷では常識にとらわれては行けないようだな。急がせた理由の本人は素知らぬ顔である。そんな本人、十六夜咲夜は湖の湖畔に構える吸血鬼の館、紅魔館のメイド長である。完全で瀟洒と言われる彼女は普段のメイド服とは変わり私服を着ている。それでも、その動き一つ一つに気品があるのはそれほどまでに、仕事を極めた者の境地だろう。その横に座るのはウチの店の常連の一人である小悪魔だ。俺も言っているが皆からこあと呼ばれている。こあは良くウチの店に来てくれている。来ている頻度で言えば一二を争う位の常連だ。休みの日には開店から居るほどである。美鈴のように賑やかに飲む訳では無くゆっくり静かに一人で飲んでいる事が多いが、それと同じ位紅魔館の誰かと来ている。中でも咲夜と美鈴と来る事が一番多い。そういえば、今日は美鈴はどうしたのだろうか?
「咲夜、美鈴はどうしたんだ?シフトか?」
「違うわ、あの子今日は寝込んでるの。」
「ほぉ……風邪ひいたのか…また何であいつが?」
「違うんですよマスターさん。美鈴さん、パチュリー様の実験に巻き込まれてしまって...」
「それで、ぶっ倒れたのか。あいつも災難だな……」
「しかもその影響で私達は今、職場に入れないんですよ。新しい本の整理をしやいといけないのに……」
「しやいと、ってなんだよ。こあ」
「あれ、言えてませんでしたか?私。」
「えぇ、言えてなかったわよ。いつ以来かしら?そんなあなたを見たのは」
咲夜が出す、空いたジョッキを受け取り、次の注文を取る。少し遅れて飲み始めたこあも既にジョッキを空け、咲夜の頼む次の酒を楽しみにしていた。ウチの店の品揃えは割といい方だと自負している。幻想郷の名酒と呼ばれる酒は出来るだけ揃えているし、種類も多く用意している。外の世界の酒は、ビールのように幻想郷にまだ広まっていない物から洋酒といわれる部類に入る物まで揃えた。もちろん、これだけの量を揃えるのは少し手間がかかったが、出来るだけ多くの種類の酒を味わってもらいたいからな。この程度の苦労なんて安いものだ。
「マスター、少し…いや、キツめの物はある?出来れば、なるべく強いのがいいんだけど。」
「んー……なら、コイツだな。こあも飲むか?」
「わ、私は遠慮しときます。果実酒で何かおすすめをお願いします。」
「了解」
戸棚からグラスを出し、二つの酒を注いでいく。これを出したら美鈴用に何か作って置いてやろう。そうでもしておかないと次来た時に何時間かかるか分からないからな。
二つのグラスをカウンター越しに手渡してから厨房に向う。さてと、冷えていても美味しいようなものにしてやらないと。大事な常連を逃がす訳には行かないしな。
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厨房から戻ると赤い顔をした咲夜は寝息を立ててカウンターにもたれかかっていた。一方でこあは、咲夜の飲んでいた酒を飲みつつ、持って来ていた本を読んでいた。
「まぁ、こうなるよな。いつもの事だけどさ。」
「そうですよね。泊さん。大体いっつもこんな感じですもんね。」
咲夜とこあの二人で来ている時は、大体いつも咲夜が強い酒飲んで寝てしまい、咲夜をこあが連れて帰る事が多い。多いというよりも、基本的にこのパターンしか見た覚えが無い気がする。
咲夜はウチの店に来る度、強い酒を飲んでいる。どうやらワインの類は紅魔館で飲み飽きたらしく、ウチでは周りがワインを飲んでいても、我関せずとも言うように強い酒を入れる。一人の時は潰れるまで飲んだりしないのだが、誰かと来ている時は飲み過ぎてこうなっている。そろそろ学んで欲しい物だ。学んで欲しいとは思うが、強い酒を好む理由としてストレスが上げられたりする。恐らくだがストレスの捌け口として強い酒を飲んでいるんだろう。それか主人の開く宴会の為のトレーニングか、どちらにせよ気苦労が絶えないのは咲夜の運命なのだろうか?
「あの、一ついいですか? 」
「ん?どうした?」
「どうして、私なんかに名前を教えてくれたんですか?私なんて、ただの使い魔に過ぎないのに。」
「あぁ、その事か。こあが知ってるんじゃないのか?って思ったからだ。だから教えただけだよ。」
「もし、私の記憶が正しいとするならば泊さんは、いえ、私の知った事が正しいとするのなら」
「正しいんだ。だから教えたまでだよ。そんな調子じゃパチュリーに怒られるぞ。」
「…………」
「また気が向いたら昔話位してやるよ。それまで我慢してくれ。」
「前にもそう言ってたじゃないですか……」
こあの愚痴を聞きつつ厨房に入り、美鈴用に作っておいた肴を出して来ると、咲夜が起きて水を飲んでいた。この時間で起きるのは凄いな……あれかなり強い酒だったんだけどな。
「あ、マスターもうちょっとお水貰える?あの酒かなりキツイわね。」
「まあな、ウチにある中でもコイツより強いのはもう数本しか無いからな。それ飲んでこの時間で起きるのはなかなか凄い事なんだが、周りがおかしいレベルしかいないからな。」
「そうなのよね、霊夢も魔理沙も酒に関してはお嬢様に匹敵する位強いから本当に尊敬するわ。そこだけだけど。」
「酒に無理に慣れる必要は無いさ。楽しめる位で飲むのが一番だ。」
ふと、時計を見ると時刻はもうすぐ明日を迎える頃だった。咲夜はだいたいこの時間で帰ることが多い。明日の仕事に影響が出ない程度で切り上げるからだ。本当、ぶっ潰れるまで飲む美鈴は見習った方がいいと思うんだな。
「こあ、私は帰るけどどうする?」
「あ、私も帰ります。マスターさんごちそうさまでした。」
「あぁ、ありがとな。またよろしく。」
「次は近い内に来ると思うわ。お嬢様が来たいっておっしゃってたから。その時は宜しくね?泊さん。」
「おっと、起きてたのかよ。」
別に名前なんて知られても大して何か困る訳でないし、別に良いだろう。
今日は二人に和んで行って貰えただろうか?
飲んで、食べて、話して、〝和んで〟
明日からの仕事を頑張ってくれればいい。
呑み屋「和み」今日も明日も営業中……
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追記
次の日、こあがまた来て愚痴をこぼして行った。こあ曰く、まだ実験が続いていてパチュリーがあまりにも危ないから、図書館より離れているように言われたらしい。どうやら、パチュリーもあまり乗り気ではないようだ。近々、何か起きそうな気がする。その矛先がこちらに向かない事を祈るばかりだ。
いかがでしたか?
出来るだけ定期的に更新して行きたいと思います。
また、あのキャラを来店させて等のご意見もお待ちしております。出来るだけお答えできるように頑張りますのでよろしくおねがいします。