呑み屋『和み』   作:朝日月

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書いているとかなり長くなっていました。
しかも一話に収まりきらず、今回は前編のような形になります。更に言えばいつもより、少しだけですが文字数も多いです。いやほんと、上手くなりたいです。

それでは、第六夜お楽しみくださいませ。



第六夜〜危なげな差し入れ、差出人は吸血鬼〜

「…………飲まないとダメか?」

「……お願いします。私の命もかかってるんです。」

 

唐突だが、恐らく俺は命の危機に直面している。

何故、こんな事態に陥ったか俺にも分からない。ただ、言える事は今俺の前で青い顔をしながら俺……いや、俺が手に持つ液体の入ったビンを見つめている紅魔館の司書、小悪魔が死ぬか、俺が死ぬかの違いだろう。

どうしてこうなった。ただ、始めは、差し入れが届いただけだったのに……

 

====

 

「こんばんわー、泊さん」

「いらっしゃいこあ、実験とやらはまだ終わらないのか?」

「えー……っと終わった事には終わったんですよね。今日来たのもそれと絡んでまして……」

 

珍しく、こあの歯切れが悪い。いつもなら端的に言って終わらせるのに。余程の事でもあったんだろうか。今日もその事と絡んでるらしいし……。

 

「あの……泊さん。これ、パチュリー様とレミリア様からなんですけど……」

「ん?あぁ、どれどれ…」

 

こあが入ってきた時から持っていた紙袋をカウンター越しに受け取り、中に入っていた物を取り出す。

茶色い薬品を入れるような小瓶。その中には何か液体が入っているようだ。むしろこのサイズはどこからどう見ても栄養ドリンクにしか見えない。ただ、なんでなんだ?。俺の直感がこれを絶対に飲んではいけないと言ってくる。なんなんだろうか?本当に寒気がしてきた。

 

「こあ、これは一体?」

「差し入れだそうです。レミリア様が、ウチの門番が迷惑をかけた。と言っておいてくれと言われました。」

「それでパチュリーがコイツが作らされたという訳か……。今回の実験はそれが原因なのか?」

「どうもそうらしいです。」

「内容物の詳細は?」

「栄養ドリンクのような物。と聞いています。」

「嫌な予感しかしねぇ…………。こあ、これ飲まなきゃ」

「お願いします。飲んで下さい。」

「おいおい……どういう事だよ……。」

「私にも分かりません。ただ……」

「ただ?」

「それを飲んで貰えないと、貰えないと…………!」

「…………はぁ……。」

 

====

 

「本当に嫌な予感しかしないぞ、これ。」

「泊さん。そこをなんとかお願いします。」

 

こあを見ると、時折体を震えさせている。どうやら相当追い込まれたようだ。正直、酒なら誰と飲もうと負けない自身はある。相手が何人いようとしてもだ。それとは違いこういう類のものはどうにもならないから本当に怖い。これが最後の会話とかにならないだろうか…。

 

「本当にお願いします。パチュリー様もそこまでの効力は持たせて無いと仰ってましたし。」

「具体的な事は聞いてないのか?気休め程度に聞いておきたいんだけど。」

 

うーん……。と首を捻るこあを見つつ、徐々に不安定になる自分を落ち着かせるためにも水を出す。勿論、こあの分も忘れずに。すると、こあが首を戻し声を上げた。

 

「そういえば、レミィが一瞬で寝込むぐらいには抑えた。と自慢げに仰ってましたね。」

「おいおいおいおい、それ俺確実に死ぬよ、ほんとに。」

「そこをなんとかお願いします。本当に怒られるんです。」

 

体を震わせながら、涙目で訴え続けるこあ。

その姿を見て、俺の中の天秤は自分の命よりこあの命を選んだようだ。

 

「………………あーもう。分かったよ。ちょっと待ってろ。流石に対策無しにはそんなもん飲めないからな。少し時間をくれ。」

 

後ろでこあが嬉しげに声を上げるのを聞きつつ、俺は戸棚を開けた。その中にあるのは高度な結界が施された小箱。もう覚悟を決めよう。これ以上、泣きそうなこあの顔を見続けるのは嫌だしな。この箱さえあればなんとかなる。永遠亭に放り込まれようが、彼岸に行きかけようが、なんとかなる。言ってしまえばこれは最終手段に近い。使う事は無いと決め込んでいたが、どうも俺はそういう訳にはいかないようだ。

 

「こあ、この箱の事は〝俺の事を全て知っている〟って言ってきた奴以外には教えるな。持っている事もだ。いいな?」

「え?そんなに大切なものなんですか?」

「あぁ、頼んだぞ。このサイズならポケットにでも入れれるだろう。」

 

こあが、小箱をポケットにしまうのを見てから小瓶の蓋を開け、目一杯のスピードで瓶の中味を飲み込む。味は特に無く、飲みやすい。が、こんな小さな瓶の半分を飲んだぐらいで全身の力が抜けていった。それと同時に、一瞬で視界が暗くなっていく。これは想像以上だった。

こあが何か言っているように聞こえる。ただ、俺には聞き取る事は出来なかった。

 

*-* side in *-*

 

「泊さん!?しっかりして下さい!泊さん!」

 

あの小瓶に入っている液体はただの栄養剤のはず。

私とパチュリー様で、私が紅魔館を出る前にレミリア様が分からないように入れ替えたはずだったのに。

崩れるように倒れた泊さんに近付くと、明らかに体温が落ちていた。

もしかしたら……。泊さんの手にある小瓶を手に取ると微かに、でもしっかりとあの人の力が感じられる。この力は間違えなく、レミリア様の力だ。

今は、そんな事をしている場合じゃないか。

 

「よいしょ、っとと……。」

 

泊さんを背負うようにして起こす。完全に意識を失ってしまっている。それに、呼吸も少なくなっている。どうすればいい、この状態なら長くは持たないかもしれない。

紅魔館に向うか?ダメだ、時間がかかってしまう。

永遠亭なら、……いや、こちらも一緒だろう。

 

「あぁっ!どうすればいいの!」

 

今まで出した事の無いような大きさの声が出る。

どうすれば、どうすれば泊さんを助ける事が出来るんでしょう。

自問自答しながらカウンターを思わず叩いてしまう。叩きつけた右手が痺れるように痛い。どうして私は気付く事が出来なかったんだろう。気付いてさえいれば、泊さんをこんな目に合わせる事は無かったのに。

考えるべきでは無い最悪な結果が頭にちらつく。

うずくまるようにしていた体を起こして、目の前を見るといつの間にかある人が立っていた。もう、この人に賭けるしか無い。

 

「お願いします…泊さんを……泊さんを助けて下さい!」

「何があったのかは、今は聞かないでおく。が、後で主人の前で話して貰うぞ。」

 

私が頷くと、彼女は私と泊さんを背負い、飛び立った。

私の意識は彼女に背負われた頃既に、闇へと沈んでいっていた。

 

*―* side out *-*

 

目を開けると俺は寝かされていた。というか、ここどこだよ。知らない天井だ……。いや、見た事はあるが思い出せない。

体を起こして、外されていない前掛けの右側のポケットにある時計を取り出す。まだ、あれから三時間しか立っていたいないか。まぁ、あれ使ったし当然の時間だ。ベットから立ち上がり、体を伸ばす。大した時間は寝ていないようだ。

そうしている内に部屋のドアが開き、誰がが入ってくる。二人いるな。やっぱり感覚が鋭くなっている。誰かがあれを無事使ってくれたようだ。

 

「やっぱり、ぴったり二時間半で起きたわね、貴方は。」

「あ〜、やっぱりここ永琳のとこかよ。」

「そうよ、今回は流石にあれ使ったし、回復は早かったわ。うちに来てから二時間半。今はまだ九時よ。回復力なら誰にも負けないわね。」

 

そう言いつつ、笑う彼女の名は八意永琳。迷いの竹林の中にある永遠亭の実質的主人だ。この永遠亭の役割はまぁ大雑把に言うと病院である。こういった形でばかり世話になるのは少し気が引けるな。

 

「貴方をずっと待ってた子がいるんだけど、入れていい?」

「あぁ、気付いてる。入っていいぞ、こあ。」

「泊さん!よかったぁ……、よかったです……」

「あらあら、泣かしたわね。じゃごゆっくり……と言いたいけどもう二人いるのよ。こちらも入れるわよ。」

「あぁ、よろしく。」

 

永琳と入れ違うように入って来たのは八雲紫と八雲藍。何故二人がここにいるのかは分からないが、恐らくこの二人のお陰で俺は助かったようだ。ただ、二人共が俺がこあを泣かせたように思っているようだ。酷い思い違いだ。なんとしても誤解を解かないと。

 

「違うんだ、紫。俺は悪くない。悪いのはレミリアだ。多分」

「まぁ、その辺りも含めて事情は聞くわ。藍、二人を……あ、今の泊なら必要無いわね。」

「というか、何年ぶりに俺の事を名前で呼んだんだよ……。」

「呼ばなかった理由は簡単よ。あなたであってあなたじゃ無かったから呼ばなかっただけ。何か言い返せるの?泊。」

「はいはい、申し訳ございません」

「じゃ、店の前で待ってるわ。後で会いましょ。後、小悪魔さんも話は聞かせて貰うからそのつもりで。」

 

そう言って、紫達はスキマの中に入っていった。本当に羨ましい能力だな……。あんな能力あったらどれだけ酒仕入れても運搬に困る事は無いし。さぁ、俺もこあ連れて行きますかね。

 

「さて……と。永琳〜退院してもいいか〜?」

「いいわよ。但し、一つだけ忠告しておくわ。今回、貴方は自分でも気付いているでしょう?」

「どうにかするさ。そうしてきたのが俺だ。」

「ならいいわ。そうそう、今やってる事が終わったら貴方の店に行くわ。また姫様が連れて行けって言い出したのよ。」

「あぁ、いつでもどうぞ。ただし、次店壊したら流石に怒るからな。」

「それは姫様に言って頂戴。」

「そうするよ。じゃあな。こあ行くぞ、俺の手握ってろよ。」

「ぁ……はい。ありがとうございました。」

「お大事に。」

 

こあが手を握った事を確認してから久し振りに力を集中させる。さて……帰りますか。俺の店に。

 

「こあ、目閉じてろ。店に帰るぞ。営業再開だ。」

「はい。でも、無理はしないで下さいね。」

 

こあの気遣いに感謝しつつ、俺は術式を展開する。久し振りだったのに上手くいったようだ。こあの負担にならないよう安全に、なおかつ最速で、さてと急いで帰ろう。営業再開だ。

 

**********

 

「こあ、目開けていいぞ。」

「え、もう着いたんですか?何でこんなに早く?」

「まぁ、その説明は今からしようか。俺も聞きたい事あるし、しかも、紫達はもっと聞きたいみたいだしな。」

 

こあと店の外まで戻り、ドアを開けると、いつもと変わりない店内が広がっていた。

営業再開と行こう。

今宵の夜はまだまだ長い。ゆっくり楽しむとしようか。

 

呑み屋「和み」今から営業再開します。

飲んで、食べて、和んでいって貰える時間を提供させて頂きます。

 




いかがでしたか?
次回は後編(なはず)です。

次回も読んで頂けると幸いです。
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