コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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9話

ナイトオブセブン歓迎会。

つまりは僕の歓迎会は、歓迎される立場である、僕に深いトラウマを残して終わる事となった。

本当に歓迎されているのか悩んでしまった。

にしても、まさか最後に姉さんからあんな事をされてしまうとは…。

 

いや!忘れるんだ!アクア!

これ以上トラウマを生み出す原因となる記憶を抹消するんだ!

畜生道なんかには行きたくないんだ!僕は!

それにこんな心境で戦場に出ては死んでしまう。

心を入れ替えろ!アクア!

 

悩みを振り払うように、僕は歩き出す。

周囲には出撃の準備を急ぐ兵士達。

辺りは活気に満ちている。

慣れている活気だが、僕としてはあまり嬉しくない活気だ。

 

 

ここは、ナリタ連山の近くの臨時基地。

もう直ぐ、僕達ブリタニア軍が敵陣を急襲するために、現在最終準備中なのである。

そして敵は日本最大の反政府勢力。日本解放戦線が本拠地を置く場所である。

つまりは、日本最大のテロ組織の本拠地である。

物凄く行きたくない場所だ。

 

 

何故僕が、そんな行きたくない場所に居るかと言うと、エリア11の総督である、コーネリア殿下直々に、テロ組織の壊滅に乗り出しているのだ。

コーネリア殿下は他国からはブリタニアの魔女とまで恐れられる、傑物。

エリア11の総督として着任した、コーネリア殿下は次々とテロ組織を潰して回ったのだ。

 

そして今回のコーネリア殿下の獲物が、日本最大のテロ組織、日本解放戦線と言う訳だ。

 

僕としてはそんな討伐などに参加せず、家に引き篭もっていたい所存であるが、流石に殿下直々に参加を要請された時には、参加するしかないのである。

 

しかしコーネリア殿下は、日本解放戦線を確実に潰すために、過剰とも言える戦力を連れて来ている。

僕が今まで体験した戦場に比べれば、今回の戦場は大分楽になりそうだ。

 

何てったって、今まで僕が派遣された場所は、最前線ばっかの戦場で、しかも殆どジノやアーニャと三人突っ込んでカミカゼアタックの毎日だったんだから!

どんだけ特攻隊の気分を味わったことか。

愛国心が皆無の僕には厳しい毎日だよ。

 

やべえ。

改めて考えて見たら涙が出そうになってきた。

 

 

いつもなら僕は、ジノやアーニャとカミカゼアタック。

もしくは単機の超カミカゼアタックによる、特攻部隊の役割を負っているのだが、今回の僕の役割は少し違う。

 

コーネリア殿下から、僕に部隊を率いて欲しいと頼まれたのだ。

つまりは指揮官としても戦場に出ろと言う事だ。

 

この命令には困ってしまった。

何てったって、僕はナイトオブラウンズなんて偉そうな肩書きが付いてはいるが、つまりは唯のナイトメアのパイロットに過ぎない。

今までの戦場では殆ど、カミカゼアタックばっかりだったので、指揮を執るなんて今までした事が無かったのである。

 

予備戦力の中から、僕の好きな部隊を率いても良いと言われたが、どうすればいいのだろうか?

悩む…本当にどうすればいいんだ?

できれば女の子がいる部隊がいい。

それが萌え系の女の子なら言うこと無しだ。

何処かの部隊にいないだろうか。

 

「アクア!いや、アッシュフォード卿!」

 

「ん?」

 

悩みながら歩いていた僕を呼び止める声。

その声に振り返ると、其処には二人の軍人が居た。

二人とも僕と同世代の男性である。

 

一人は、短い金髪の髪を逆立て、活発そうな顔つきをしている。

体格の方も、その顔つきに見合った体つきというか、ガッシリとしている。

この男がガチホモなら間違いなく攻めだろう。

 

一方、もう一人の男は、黒い髪を肩まで伸ばした、男にしては長髪を持つ男であり、どこか理知的な顔つきをした男だ。

少し細めの体をしているが、其処に貧弱さは見当たらない。

この男もガチホモなら間違いなく受けだろう。

 

 

はてな?…どこかで見たことがあるような…?

 

僕の訝しげな視線に気付いたのか、金髪の軍人が敬礼しながら言葉を発してきた。

 

「お久しぶりであります。

アッシュフォード卿!

仕官学校時代同期であった、スヌア・ボラギノールであります!」

 

「同じく、イオーヤ・オロナインであります」

 

「スヌアにイオーヤ!?」

 

二人の特徴的過ぎる名前は僕を驚愕させる事を成功する。

僕の驚愕の言葉に二人は頷いてきた。

 

 

スヌア・ボラギノールとイオーヤ・オロナイン。

 

二人とも僕が卒業した第八ブリタニア士官学校の卒業生であり、僕の同期でもある。

 

ジノのヴァインベルグ家程ではないが、二人は名家と呼ぶには十分に相応しい、ボラギノール伯爵とオロナイン辺境迫の子息であり、二人は幼馴染だそうだ。

 

幼馴染の阿吽の呼吸のフォーメーションに、血気盛んなスヌアに冷静沈着なイオーヤのコンビは、仕官学校時代から名コンビと、学生達の中でその名が轟いていた。

別の意味でも轟いていたけど。

 

ちなみに名前に関しては突っ込んではいけない。

これは仕官学校時代からの暗黙のルールだ。

皆の突っ込みたい気持ちは分かる。

物凄く分かる。

十二分にも分かる。

でも堪えて欲しい。

僕も堪えるから。

 

 

「スヌアにイオーヤが、コーネリア殿下の部隊に居るとは…驚いたよ」

 

「はっ!自分もアッシュフォード卿が、このエリア11に来られると、聞かされたときにはたいそう驚きました!

アッシュフォード卿と共に戦場を翔れる事を光栄に思います!」

 

「スヌア…そんな堅苦しくしないでくれ。

昔のように、アクアでいいよ。

というか、さっき僕を呼び止めるとき、アクアって呼んだろ?」

 

僕の言葉に、ニヤリといたずら小僧のような、笑みを浮かべながらスヌアは言葉を発してきた。

 

「あ?やっぱりバレタ?

いやー、俺はアクアで良いと思ったんだけど。

イオーヤの奴が、礼儀をちゃんとしろってうるさくってな」

 

「当たり前だ。

アッシュフォード卿は、ナイトオブラウンズなのだぞ?

仕官学校時代とは違うのだ」

 

この二人は相変わらずのようだ。

仕官学校時代と何ら変わらない、二人のやり取りに、思わず笑みが浮かぶ。

 

「イオーヤ。

君も僕の事はアクアでいいよ。

久しぶりだね。二人とも」

 

「それならば遠慮なく…。

ああ、久しぶりだな。アクア」

 

 

思わぬ旧知との再会に、会話に花が咲く。

僕とスヌアとイオーヤは少しの間話し合うのであった。

 

 

「二人は今コーネリア殿下の軍の中で、何処にいるんだい?」

 

「ああ、俺達は今アレックス将軍の直属部隊に配属されているよ」

 

僕の言葉に、スヌアは、何処か誇らしげに答える。

 

その返答に驚いた。

まだ僕達が軍人になってからまだそんなに時間は経っていない。

そのスヌア達が既に、将軍の直属部隊に選ばれているというのは、大した出世速度だ。

 

「将軍直属か!

出世したじゃないか。二人とも」

 

「お前やジノ程ではないがな」

 

苦笑いを持って、僕の言葉に答えるイオーヤ。

そりゃそうだ。

僕とジノは信じられないスピード出世で、ナイトオブラウンズになっちゃたのだから。

なっちゃいたくなど無かったが。

 

その後から他愛無い話をしていた僕達であったが、話は中断される事になる。

近くから言い争うなような声と共に、喧騒が聞こえてきたのだ。

喧嘩か?

 

「なんだなんだ?喧嘩か?

イオーヤ、アクア、近くに行ってみようぜ」

 

僕と同じ感想を言った、スヌアは興味深そうに、喧騒の方へと視線を向けながら、一つの提案を出してくる。

その発現に、イオーヤが眉を顰めながら、己の相棒を戒める。

 

「スヌア。

野次馬根性が過ぎるぞ」

 

「いいじゃねえか、イオーヤ。

アクアだって、近くで見て見たいだろ?」

 

スヌアの問いに、僕は頷きを持って、返答をする。

野次馬根性ぶりでは僕は、スヌアにだって負けてはいない。

自分には被害が来ずに、他人のいざこざ見て楽しむ。

野次馬最高だ。

そしてこの考えに至る僕も最高だ。

 

「民主国家的に見に行く事に決定!

んじゃ行こうぜ!イオーヤ、アクア」

 

いや、民主国家はE.U.なんすけど。

僕達ブリタニアは民主国家じゃないっすよ。

この事が愛国心溢れる軍人さんの耳に入ったらやばいっすよ。

まあ、いっか。

周りには聞き耳を立てている人間もいないし、僕は愛国心ゼロの男だ。

イオーヤにしては、相棒を自ら売るような真似はしないであろう。

 

溜息を吐きながらも、イオーヤは渋々と言った感じで了承し、スヌアの後を付いて来る。

僕もその後を遅れじと付いて行くのであった。

 

 

 

 

 

「もう一度言って見ろ!キューエル!」

 

「ああ!何回でも言ってやるよ!

俺達純血派が予備戦力に回されたのは、お前がいるせいだ!ジェレミア!」

 

「キューエル!貴様ァ!」

 

「お前が言えと言ったんだろうが!

このオレンジが!」

 

「オレンジって言うなァァァ!」

 

 

僕達三人が喧騒の中心地に赴くと、野次馬の軍人の人垣の中で、二人の軍人が今にも掴みかからんと、言わんばかりの様子で向き合っていた。

二人ともかなりエキサイトしているみたいで、回りの野次馬から注目されている事にも気付かないほどに、興奮しているようだ。

 

「あれは…純血派のジェレミアとキューエルじゃねえか」

 

僕の隣にいたスヌアがポツリと呟く。

その呟きに、イオーヤが頷いていた。

 

「ああ、そのようだな。

純血派同士のイザコザか」

 

純血派。

 

僕は詳しいわけではないが、聞いたことはある。

確か、ブリタニア軍はブリタニア人で構成されるべきという考えを持った者が構成している派閥だ。

様は、ナンバーズの不要を声高に宣言している様なものだ。

ブリタニア皇族の畏敬の念が人一倍強いとも聞いている。

 

今揉めている二人はどうやらその純血派のようだ。

つまりは内輪揉めか。

 

周囲の注目の的である、純血派の二人は、周囲の視線など物ともせず、未だに言い争っている。

そのうち拳がでそうな勢いだ。

というか今出た。

金髪の方が、「このオレンジがァァァ!」って言いながら、緑髪の方を思いっきり殴った。

緑髪涙ぐんでる。

かなり痛そうだ。

そして周りの軍人は二人を止めるどころか、たきつける様に、野次を飛ばす。

皆見事なまでの野次馬根性だ。

そして勿論僕も野次馬を続行中だ。

 

 

二人の言い争う声を聞いて解ったのだがどうやら、彼らは自分たちが予備戦力に回されたことが原因で、言い争っているようだ。

予備戦力は基本的には、何かあるまで後方で待機し、特別な事態の時のみ行動をする部隊だ。

僕にとっては非常に羨ましい部隊だ。

僕が予備戦力に回りたいくらいだ。

回してくれないかなぁ…。

 

ん?今思えば、彼ら予備戦力なら僕が率いる部隊にできるんじゃない?

そうすれば、彼らは予備戦力から、僕が率いる部隊として前線に出れるはずだ。

僕としては決して前線なんかに出たくは無いんだけど。

 

少しの間、僕はこの提案の採決を思考の海の中で考える。

 

その間、揉め事を起こしている緑髪の軍人は、金髪の軍人からヤクザキックを食らっていた。

鼻血が出ている。

物凄く痛そうだ。

 

うん。決めた!

 

自らの志向の海で決めた採決の結果は…。

 

NOだ!彼らには申し訳ないかもしれないが、NO!

これで決まりだ!

 

こんな内輪もめするような部隊を指揮するなんて、冷静に考えればとんでもない!

しかも僕は指揮官初体験なのだよ?

そんな僕がこんな部隊を率いるなんて絶対無理だ。

僕は己の分を知っているつもりだ。

確かに、僕は他の人よりもナイトメアの操縦は、上手いと自分でも思っている。

でも、他の部分では至って普通だと自分で解っている。

そんな僕が、指揮官初体験で、こんな内輪揉めしている部隊を率いるなんて自殺行為の様な物だ。

しかもナンバーズは不要と公言しているような、人種差別上等の部隊とはあまり近づきたくないというのが、僕の本音でもある。

彼らの中に萌えっ子が居るというなら考えてもいいが、男が多い軍で其れを望むのは酷と言うものであろう。

というわけで、彼らは予備戦力のままで居てもらおう。

うん。決定。

 

でも僕が率いる部隊…マジでどの部隊にしよう…。

 

緑髪の軍人が、金髪の軍人から四の地固めを極められて「ギブ!ギブ!ギブ!」と叫んでいる中、僕はまたもや一人、自分の思考の海の中に潜る。

緑髪の「ギブ!ギブ!ギブ!」が僕の思考力を刺激したのかは解らないが、名案を思いついた。

 

そうだよ。

よく考えて見れば、スヌアとイオーヤに、予備戦力の中で、どの部隊が優秀か聞けばいいじゃん。

スヌアとイオーヤは、最近コーネリア軍に合流した僕と違って、大分前からコーネリア軍に参加しているのだ。

僕よりもコーネリア軍の内情には詳しいであろう。

その二人に僕が率いる部隊として、もっとも相応しい部隊を教えてもらうのだ。

 

うーん。

僕が考えたにしては、良い判断だ。

さっそく二人に聞くとしよう!

 

隣で騒乱を眺めている二人に相談しようと、僕が口を開こうとした時、其れは来た。

 

「ジェレミア卿!キューエル卿!

このような所でお止めください!」

 

二人の争い。

というよりも金髪による、緑髪への一方的な攻撃行為を、止めようとしたのは女性であった。

 

しかし、唯の女性と侮る事無かれ。

 

その女性は、綺麗な銀髪のロングの髪に、褐色の肌を持ち、何処かエキゾティックな魅力を持ち、出る所は出ていて、引っ込む所は引っ込んでいるグンバツのスタイル。

そして何よりも少女にはとても出せない、妖しい大人の魅力を持った女性であった。

 

つまりは萌えを持った女性だ。

しかも特一級の萌えを持った女性だ。

 

勿論僕は萌えました。

ああ、当然萌えましたよ。

萌えるしかないっしょ。こりゃ。

 

え!?何!?あれ純血派!?

本当に純血派!?

マジで純血派なの!?

 

ぐっはー!

あの女性が純血派なら僕は全力で、今回の作戦純血派を僕の指揮下に置くよ!

んでもって、彼女も個人的に指揮下に置きてェェwww

 

は!?

落ち着け!アクア!落ち着くんだ!アクアァァァ!

まだ彼女が純血派と決まった訳では無いではないか!

偶々あの二人の軍人の知り合いと言うだけで、喧嘩の仲裁に入っているだけなのかもしれない!

 

今はあの三人の会話に聞き耳を立てるんだ!

アクア!一句一音!どんな言葉も聞き逃す事無かれ!

全ての感覚を聴覚へと委ねるのだ!

 

僕は瞼を閉じて自然体を取る。

 

視覚が消えた気がする。

触覚が消えた気がする。

嗅覚が消えた気がする。

味覚が消えた気がする。

 

だがそれでいい。

五感の内、四感が消えた代わりに、残った一感―――聴覚が冴え渡るのを感じる。

 

 

達人でもなんでもない僕が、このような芸当が出来るとは…やはり萌えは偉大だ。

萌えに不可能は無い。

僕は今改めてその言葉の意味を思い知らされた気がする。

 

全神経を耳へと集中させ、騒ぎの中心となっている三人の会話を全力で盗み聞く。

 

そして拾った。

この黄金の言葉を。

 

 

「お二人ともお止めください!

我ら純血派の中核であるお二人が、このような事をしていては、我らは更に結束を失います!

ですからお止めなさい!」

 

『我ら純血派』

 

 

『我ら純血派我ら純血派我ら純血派』

 

リピートして見ても同じ意味。

 

つまりは彼女は純血派という事だ。

 

つまりは彼女はあの騒ぎを起こしている輩達とは同じ部隊。

 

 

…………純血派サイコー。

マジでサイコー。物凄くサイコー。

うん。よくよく考えて見れば、確かにブリタニア帝国の剣であり、盾である我ら軍人は愛国心溢れる、ブリタニア人で在るべきだよね。

そう!僕は彼らの愛国心溢れる、その心意気に感動したのだ!

彼らこそ僕の指揮下に入る、部隊として相応しい!

 

勘違いしないでくれよ?

これは彼らの高潔な意思と僕の思いが重なった結果だ。

決してあの美女とにゃんにゃんしたいが為に、するのではない。

勘違いしないでくれよ?

大事な事なので二回言いました。

 

素晴らしき結論を導き出した僕は、野次馬をしている人を掻き分け、中心地へと向う。

人々は、僕がラウンズだと気付いているので、何も言わずに道を空けてくれた。

自分でも忘れそうだけど、僕はこれでも軍の中ではかなり偉いんだよ。

 

「君達、もうやめたまえ」

 

「こ、これはアッシュフォード卿!

このようなお見苦しい醜態をお見せして申し訳ありません!」

 

当事者達の目の前に辿り着いた僕は、純血派の三人に向って声をかける。

三人は最初ポカンと言った感じで僕を眺めていたが、僕がラウンズだと気付いたのであろう。

慌てて、敬礼をしながら口を開いてきた。

その前に、緑髪君。

鼻血拭こうよ。

物凄い勢いで出てるよ。

 

「いや、別にいいさ。

それよりも君たちは自分たちが予備戦力に回された事が納得できないようだね」

 

「いえ!決してそのような訳では!」

 

緑髪の軍人を痛み付けていた金髪の方が、僕の言葉を否定する。

軍の上層部が決めた部隊配置に不満を持っていることを、上層部の一人である僕に知られては不味いと思ったのであろう。

 

「まあいいさ。

それよりも君たちの部隊の代表はこの中に居るのかな?」

 

「はっ!私でございます!」

 

僕の言葉に緑髪君が声を上げる。

君だったんだ。

純血派で君が一番偉いのに、金髪からフルボッコされてたのかい。

てっきり金髪の方が代表かと思ったよ。

そして鼻血拭こうよ。

もう、君の軍服半分くらい赤く染まってるよ?

 

「私は今回の作戦において、予備戦力の中から一部隊を率いろと、コーネリア殿下から言われている。

そしてその部隊の選択権は私に委ねられている。

君たちさえ良ければ私は君たちの部隊を選ぼうと思うのだが、どうだろう?」

 

「ほ、本当でありますか!?」

 

緑髪の信じられないと云った感じの言葉に頷く。

 

 

「そ、その様な事が!?」

 

「何を考えているんだ!?」

 

「よりにもよってあの純血派を…!?」

 

僕の言葉は、当事者の三人のみならず、野次馬と化していた、周りの人間も驚愕させる事を成功した。

辺りはざわめきに満ちている。

それにしてもそんなに驚く事であろうか?唯予備戦力の彼らを僕の指揮下の部隊にしようとしているだけなのに。

純血派って何か大きな失態でもしたのか?

 

「お待ちください!アッシュフォード卿!」

 

その声に後ろに振り向く。

何時の間にか僕の直ぐ後ろに来ていたスヌアとイオーヤが居た。

イオーヤが一歩前に進み、僕に言葉を発してきた。

 

「アッシュフォード卿。

どうか冷静にお考え下さい。

この純血派は栄光あるナイトオブセブンである、卿が率いる部隊としては相応しくないかと、小官は思います。

ましてこのジェレミアはあのオレンジです。

どうか、お考え直しを…」

 

は?オレンジ?

オレンジってあの果物のオレンジ?

何でここでオレンジが??

そういえば、金髪もオレンジって言ってたな。

 

緑髪―――ジェレミアを見ると、オレンジと言われ、悔しそうに顔を顰めていた。

 

オレンジ。

オレンジとは果物の名前だ。

世界的なポピュラーな果物で、お子様や大人の皆様にも大人気な果物である。

何故そのオレンジが彼と関係があるのだ…?

 

僕は一人考えた。

 

そして僕は悟った。

 

オレンジとは…………彼の実家の事だ!

彼の実家はオレンジ農家なのであろう。

そしてブリタニア軍はその事を馬鹿にしているのだ。

オレンジ農家の息子の癖に軍に入ってんじゃねえよ!手前オレンジくせえんだよwバーローwww

見たいな感じで!

 

そしてその苛めにより屈折した彼は、ブリタニア人以外要らないという、純血派の道へと進んでしまったのだ!

なんて悲しいサクセスストーリー。

無理やり軍へと入隊された、僕の身の上話と並ぶくらい辛いサクセスストーリーだ。

 

しかし、いかんな。

実にいかん事実だ。

オレンジは、世界的にも有名であり、一部の地域では太陽の果実とすら謳われている果物なのだぞ!

オレンジを馬鹿にしてはいけない。

あれ?太陽の果実ってマンゴーだっけ?

…まあ、どっちでもいいか。

 

とにかくこんな世界のオレンジ農業の方々に喧嘩を売っているという、ブリタニア軍の内情はやばいな。

一応僕も、軍の上層部の一人だ。

ここは、いっちょ示しをやってみますか!

 

 

「皆よ!聞いてくれ!

私達ブリタニア軍人にとって必要な事は、生まれや出自、ましては過去の経歴でもない!

そんな事よりも大切な事は、ブリタニア帝国への愛国心と皇族に対する忠義!

そしてなによりも、今自分が何ができるかという事だ!

この者も過去に過ちがあったのであろう!だが彼のブリタニア帝国や皇族に対する心は、真摯な物だと私は思う!

そして自分が出来る事をしようという心も感じる!

故に私は、彼の部隊を私の指揮下に置くのだ!

皆もこの事を決して忘れないで欲しい!大切なものを決して見失わないで欲しい!」

 

 

調子に乗って演説めいた事を言ってしまった。

今日の僕は役者だ。

やっぱり大根だけど。

 

ブリタニアに対する愛国心も皇族に対する忠義の欠片も無い、僕がこのような事を言うのも可笑しいのかもしれないが、所詮この世は嘘だらけだ。

だから僕もちょっとだけ嘘を付いても、神様には怒られないであろう。

それにいつも、神様僕を見放すし、これでお返しだ。

 

僕の演説めいた言葉を聞いた皆は一様に黙ってしまった。

何?この静寂。

沈黙が痛い。

 

……あれ!?もしかして僕外しちゃった!?

自分でも言ってて、くっせェェェ!っては思ったけど、そんなに外しちゃったすか!

ちょっと誰か反応してくださいよ!

そりゃくさすぎっすよ!とかでも良いから何か反応してください!

本当にお願いしますから!

 

 

「ア、アッシュフォード卿…」

 

僕の願いが通じたのかわからないが、目の前のジェレミアが俯いた顔のまま声を出してきた。

 

よし!この沈黙には耐えられないから、何でも良いから反応してくれ!

 

「何だい?」

 

僕の促しの言葉に、ジェレミアは俯いた顔を上げて…って何か泣いてるし!

号泣って言って良い位のレベルで泣いてるし!

どうしちゃったの君!?

 

「あ、ありがとうございます!アッシュフォード卿!

このジェレミア・ゴッドバルド!アッシュフォード卿のご期待に全力でお応えします!」

 

「あ、ああ。

宜しく…」

 

涙を滂沱の如く流しながら、ジェレミアは僕に宣言していた。

鼻血と涙による鼻水によって、すごいコラボになっている。

そのあまりの姿と勢いに僕は引き気味だ。

 

まあ、それはともかく、実家がオレンジ農家だからって、腐っちゃだめだよ。

オレンジ農業だって、僕達人間を支えている立派な職業の一つなんだから!

そして其処の銀髪のお姉さん!名前教えてくれないかな?出来ればスリーサイズも…。

 

 

そんなこんなで、僕はナリタ連山の戦いにおいて純血派の部隊を率いる事になった。

ちなみに美女の名前はヴィレッタ・ヌゥと言う名前だという事がわかった。

 

頑張れ!アクア!この美女を堕とすんだ!アクアァァ!

 

僕の心はナリタ連山の戦いよりも、違う戦いに心を滾らせるのであった。


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