コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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13話

わっはははは!軽い軽い!しくしく。

どうした!?お前の実力は、こんなものか!?えぐえぐ。

そんな攻撃では僕に傷一つ付ける事も出来んわァァ!ひんひん。

この場は見逃してやるから、顔を洗って出直してこいやァァァ!!マジでお願いしますから。

 

 

赤い機体―――紅蓮二式の猛攻を避けながら、僕は一人コクピットの中で、騒いでいた。

 

僕は今、心の底から笑っている。

そして同時に心の底から泣いている。

そしてこのような状態になったのには理由があるのだ。

 

紅蓮二式との戦闘をこなしながら、敵と自分の戦力差について考えた。

 

敵を知り、己を知れば百選危うからず。

 

孫子なんて一見女のような名前だが実は男なんだよ。

の、昔の偉い人の言葉に従い今更だが、お互いの戦力を確かめたのだ。

 

先ずは敵の方!

 

KMFの性能―――マジで凄い。なんちゅーかランスロットって感じの勢いだ。今までラウンズとして1年以上激戦地を駆け抜けてきたが、あれ程の運動性能を持ったナイトメアとはお目にかかったことは無い。ラウンズ専用機としても十分に通用する性能だ。

 

武器―――右腕のごっつい鉤爪が付いた、ズームパンチなゴッドフィンガー。これに捕まったらマジでヤバイ。あの右手に捕まった時、僕は爆散したスラッシュハーケンと同じ道を行く事になる。しかも伸縮する事によって、間合いが摑み難いったらありゃない。紅蓮二式の武装の中で最も注意すべき武器だ。後は、ナイフ。地味にこのナイフがヤバイ。切れ味抜群って感じでまともに食らったらカナリやばい。スパって勢いで三枚に下ろされそうだ。最後にスラッシュハーケンって所だ。

 

パイロット―――あれだけ高性能の紅蓮二式をホイホイと乗りこなしているのだ。歴戦のテロリストに違いない。きっと髭もじゃで、むっきむっきのテロリストだ。街中でお目にかかりたくないタイプの人間だな。きっと。

 

 

むむむ…敵もやるじゃないか!

次!僕の方!

 

KMFの性能―――グロースターはKMFの中では、かなりの高性能を誇る。でも今の僕のグロースターは土砂崩れに巻き込まれて、反応が鈍くなっている。自分よりも高性能の敵、つまりは格上の相手をするには致命傷といってもいい。そして僕が敵対している紅蓮二式は明らかに格上だ。めっちゃやばい。

 

武器―――無し!

 

パイロット―――ニート志望のニブ厨。

 

 

むむむ…駄目じゃないか!僕!

 

 

結論。

勝てる要素が一個も見当たらねェェェェ!!

普通こういった、圧倒的に不利な側でも、一つ位勝つ要素があってもいいんじゃね!?

これ展開的にどうなのよ!?僕DEAD・ENDほぼ確定じゃねえかよ!

 

今の僕が置かれている状況のあまりの絶望っぷりに、涙が込み上げてきた。

涙早々。もらい泣き。オーイエー!YO!チェケラ!僕SHINU!

 

そんな圧倒的な戦力差で未だに戦えている…否、僕がやられていないのは、僕が全力で回避行動に専念しているからだ。

攻撃なんて端から考えずに、全力で回避行動。全神経を使って回避行動。全生命を賭けて回避行動しているのである。

 

確かにあの紅蓮二式の驚異的な運動性能から、繰り出される攻撃は凄い。

 

だが、如何に攻撃能力が高いといっても、防御に専念する相手を倒すというのは実に難しいものである。

 

命が掛かったこの戦場で、集中力を極限まで研ぎ澄ませ、全力で回避行動に謹む僕を仕留めるのは困難なものなのだ。

 

だが、結局僕がやばい事には変わらない。

今は何とか凌いでいるが、いつ僕の集中力が途切れるかも解らん!

此処は何か手を考えなくちゃいけない!

何か…手は無いか!?何か!?

 

 

紅蓮の攻撃を避け続けながらも、僕は灰色の脳細胞はフル作動させ、考える。

そして閃いた。

電球が見える位に閃いたよ。

 

もうこうなったら、いっその事、とっとと脱出装置を使ってこの戦闘から脱出しようか!?

幾ら何でも、脱出装置を使ってトンズらかませば、追っては来ないだろう。

確かに脱出をすれば、ナイトメアを失って後々大変になるが、生きてこの場から離れられるのだ。

この場で、紅蓮二式に命を狙われるよりは遥かにマシだ。

おお!考えて見れば、何て素晴らしい提案なんだ!僕、今日は冴えてるぜ!

では早速脱出をォォォ!

 

さらばだ!紅蓮二式とやら!今日の所は勝ちを譲ってやろうではないか!

だが次に合間見えた時こそ、貴様の最後だァァ!

わっはははははは!さらばだァ!…って、はあぁ!?

 

やられ役の悪役フラグを全開で展開しながら、両手脇にある脱出装置に手を掛け、今正に脱出せんとした時、僕はある一つの考えを思いついてしまった。

 

今僕が、この戦場から抜け出すという事は、あの紅蓮二式が自由になると言う事になる。

僕と言う標的を見失った紅蓮二式は仲間の援護に向かうであろう。

そして今コーネリア殿下は、両手を無くしながらも、勇猛な戦いを見せつけ、グラスゴーのコピー数機相手に、ほぼ互角の戦いを演じている。

そんな時に仲間の援護に駆けつけた、紅蓮二式が乱入したらどうなるだろうか??

コーネリア殿下の敗北決定である!

 

 

 

僕が逃げたせいで~コーネリアが殿下やられちゃいました☆テヘ♪

 

 

 

言えねェェ!こんな報告絶対言えねェェェェ!

 

こんな事皇帝の耳に入ったら、僕自身がブリタニアの進化の証明として、暗殺されてしまう!

あのやばすぎる眼光で抹殺されてしまうゥゥ!

 

武器も無くて、相手を倒す事も出来ないのに、逃げる事も出来ないなんて、ドンだけな状況なんだよ!

 

もうこのまま、避け続けるしか道は無いのか!?無いんですか!?無いんだな!?こんちくしょォォ!!

 

凄まじすぎる絶望っぷりに、自分でも知らずに、笑いが込みあがってきた。

人間本当に追い込まれると、不意に笑いが込み上げてくるものだ。

人、それを開き直りという。

 

わっははははは!いいだろう!紅蓮二式とやらのパイロットォ!

お前に皇帝直属の騎士団であり、帝国最強と謳われるナイトオブラウンズの戦場を垣間見せてくれよう!

もう避け続けるしか後が無いと判ったら、覚悟が決まった!

アドレナリンとかエンドルフィンとかが僕の脳内を駆け回ってるぜェェ!最高にハイって奴だ!

このアクア・アッシュフォードには夢がある!

ニートの中のニート!

ニート・スターとなる前に、こんな所で死んでたまるかァァ!

ナイトオブセブンの誇りと意地にかけて、避けて避けて避けて、お前が攻めるのが馬鹿らしくなる位避けまくって見せるわァァ!

ナイトオブセブンの避けっぷりィィ!しかとその眼に焼き付けろよォォォ!う…えぐ…ぐす…。

 

でもやっぱり涙が出てきちゃった。

だって男の子だもん。

 

 

 

 

 

 

 

■紅月 カレン■

 

 

 

今目の前に相対しているのは、グロースター。

ナイトオブセブンであるアクア・アッシュフォードと一騎打ちを繰り広げている、私の心は焦燥に満ちていた。

戦いは私の紅蓮二式が終始攻めを続け、アクアのグロースターが避け続けるといった攻防が繰り広げられていた。

 

一見、私の紅蓮二式が攻め続け、グロースターは唯ひたすらに避け続けているだけの戦闘。

それは事実だ。

このままいけば、私の勝利は間違いないだろう。

 

だが、それでも私の心は焦燥に満ち溢れていた。

 

戦いは私が攻め続けて、アクアが避け続けるだけの、私の圧倒的有利な戦い。

この戦いを始めて、大分時間が経った。

もし一般兵が乗る、サザーランドやグロースターならば、10機は破壊しているだろう攻撃を繰り返してきた。

それなのに私は一度もアクアに攻撃を当てる事が出来ていなかった。

 

工夫を凝らし、フェイントなどを混ぜた、変則的な攻撃も避けられる。

紅蓮の蹴りなどといった攻撃はガードなどで捌くが、致命傷となるナイフや右手の一撃は確実に避けている。

 

アクアに攻撃が当たるイメージがどうしても思い浮かばない。

このまま攻撃を続けても、無駄だとさえ感じさえする。

これが今の私とアクアの力の差ということなのか…!

 

だがアクアは何を考えているのだろうか?

 

いくら武器が無いからといって、何の攻撃もせず、このまま避け続けるだけならば、自ずと私に勝利が転びこむ確立は高くなる。

援軍を期待している?

いや、それはありえない。

私達黒の騎士団と、日本解放戦線の一部の部隊で、コーネリアへの援軍は完璧に途絶している。

仮にこの網を抜け出せたとしても、数機程度ならこの紅蓮二式の敵では無い。

 

あの冷静なアクアがこのような考えは起こさないだろう。

 

それじゃあ…何を狙っているの…?

 

グロースターが間合いを離そうと、後方へと移動する。

それを逃がさないと、追撃しようとした時、ふと目に入った紅蓮の状態を示すモニターを見て、アクアの狙いに気付いた。

 

 

アクアは紅蓮二式のエナジーフィラー切れを狙っている!?

その答えが判った時は既に時遅し。

紅蓮二式のエナジーフィラーはかなりの量が減っていた。

 

エナジーフィラーは全てのナイトメアの生命線。

如何に、巨大な力を持つナイトメアでも、エナジーフィラーが切れた時、そのナイトメアは巨大なただの人形と化す。

 

私の紅蓮二式は、アクアに攻撃を当てようと、多彩なフェイントを入れたり、様々な行動をした。

それに対して、アクアはできるかぎり最小限の動きで私の攻撃を避け続けた。

まして、私の紅蓮二式はハイスペック機。

運動性能が高い分、エナジー消費が激しいのだ。

これではどちらが先にエナジーフィラーが尽きるのかは目に見えている。

 

アクアは、最初っからこれを狙っていたのか。

純粋な戦闘では勝ち目が無いと見て、己が最も勝利を拾える作戦を繰り広げてきたという事ね。

 

ラウンズの戦場に敗北は無い。

 

それがラウンズを象徴する言葉の一つ。

 

私はアクアの思惑通りに踊らされたと言うことなのね…。

 

 

上等!

 

沸々と血が煮え滾るのと同時に、心の中に戦意が溢れて来るのを感じる。

やはりアクアは凄い!

幼い頃に私が憧れた―――否、今も憧れている存在だ。

 

残りのエナジーで必ず貴方を仕留めてみせる!

ラウンズの戦場に敗北をプレゼントして見せるわ!

 

 

 

 

 

 

■アクア・アッシュフォード■

 

 

 

ぎゃーーーー!

死ぬ!僕は今日此処で死ぬ!絶対死ぬ!

追い詰められた鼠は猫を噛む!なんて勢いで敵の攻撃を避け続けたが、僕の集中力もグロースターもとっくに限界突破だーーー!!

しかも唯でさえ、紅蓮の攻撃が物凄いのに、途中からさらに勢いを増してきやがった!

土砂崩れに飲み込まれて、調子の悪いグロースターを無理に動かしたせいで、更に反応が鈍くなってきたし!

何よりも僕の集中力が限界に達してきた!ぶっちゃけ、これ以上避けられる自信が無い!

 

どうする!?僕はこの状況でどうすればいいんだ!?

もういっその事、皇帝に殺される覚悟で、コーネリア殿下を見捨てて、脱出装置でおさらばするか!?

でもやっぱり皇帝も怖いし!?あのコーネリア殿下のおっぱいも捨てがたい!

ああ!混乱してきた!誰か僕を冷静にさせてくれェ!

ってまたキタ!

 

紅蓮が再び接近してきたので、間合いを離そうとランドスピナーを稼働させ、後退する。

 

とりあえず、出来る限り避けまくるしかない!

上手く行けば援軍とか来てくれるだろう!多分!

頼むから持ってくれよ!僕の集中力とグロー『バキ!』スター…って、バキ??

 

その音が発せられた途端、僕のグロースターは大スピンを起こしていた。

 

なんじゃーーー!?

いきなりグロースターが大スピンしてるぜ!?

もしかしてランドスピナーがぶっ壊れたーーー!?

 

僕の予想は的中していた。

グロースターの右足に装着されていたランドスピナーが破損し、使用不可能になったのだ。

そして左足のランドスピナーだけが動いている状態なので、その場でスピンすると言う現象になってしまったのだ。

 

恐らくあの土砂崩れによって、ランドスピナーに激しいダメージが加わったのであろう。

そこに、紅蓮二式の攻撃を避ける為にあれだけ無茶な回避行動を取ったのだ。

ランドスピナーが限界に達し、自壊したのであろう。

 

…って、冷静に言ってる場合じゃねェェ!

こんな大チャンスを見逃してくれるほど敵は甘くない。

接近した紅蓮二式がその右腕を突き出してきていた。

 

だ、駄目だ!こんなスピン状態じゃ、防ぐので精一杯だ!

 

グロースターの胴体部へと伸ばされた一撃を、何とか左腕を使い防ぐ。

しかし左腕をがっちりと掴まれてしまった。

そして始まるゴッドフィンガー。

まるで内側から沸騰するように、ボコボコと左腕が膨らんで行く。

その膨らみを胴体部へと浸入させない為に、左腕をパージする。

 

成る程。

コーネリア殿下のグロースターの両手が無い理由が解かった気がする。

 

さて、理解できた所で、この状況をどうしようか?

左腕を失った上に、ランドスピナーは片輪が破損して、もはや高速移動ができない状況である。

つまりは、防御も右腕一本でしなくちゃいけなくなった上に、もう敵の攻撃を避ける事すら難しくなった…否、出来なくなったと言う事である。

しかも他の部分も実にヤバイ。もはやグロースターは活動限界と言ってもいいくらいだ。

この満身創痍の中、どのようにしたらこの場を切り抜けられるだろうか。

脳細胞をフル活用する。

灰色の脳細胞から、ピンク色の脳細胞になる位にまで活用する。

 

結論。

 

無理です。

どう考えても無理です。

 

 

ああ!もう無理じゃ!無理なんだよ!ちくしょォォ!

こんな状況を切り抜けられるなんて、ナイトオブワンのビスマルクのとっつぁんでも無理だって!

今日が僕の命日となってしまうのかァァ!

ファーストチューも体験せずに僕は死ぬのか!?

ああ!死ぬ前にアーニャタンとかナナリーとかとチューしたかったァァァ!できたらその続きもしたかったァァァ!というかハーレムがしたかったァァァ!

 

この世に未練たっぷりの僕に、紅蓮がじりじりと近づいてくる。

一歩一歩死が近づいてくるこの感触。

最悪だ。

神様のお告げ通りに進んだ結果がこれだ。

神は僕を見放したのだ。

死ねよ、神様。

でも、できれば地獄より天国に連れて行ってください。神様。

 

そして紅蓮は遂に、神に祈りをかましている、僕を仕留めようと飛び掛かろうとした時、救世主は爆音と共にやってきた。

辺りにに土煙が舞い踊る。

周囲を吹き飛ばす勢いで何かが来たのだ。

 

 

その何かは…。

 

「ランスロット!?」

 

土煙が晴れて、視界に入ってきたのはナイトメアだった。

世界唯一の第七世代KMF、ランスロット。

圧倒的な運動性能と、強力な武装を数々と持ち、ラウンズ専用機となってもおかしくない程の、屈強なナイトメアである。

 

そのランスロットが今僕の目の前に、居るのだ。

ぶっちゃけ天使に見える。

そしてその天使に乗っているのは…。

 

 

『総督!アッシュフォード卿!

ご無事ですか!?救援に参りました!』

 

 

この声はやっぱりスザク!

ああ!スザク!今の君になら僕は封印されし、この尻を捧げてもいいかもしれない!

それ位に今の君はカッコいいよ!ギランギランに輝いているよ!もはや百万ボルトだよ!君の瞳に乾杯だよ!

 

『ランスロット!

私の事は気にするな!

アッシュフォード卿の援護に回るのだ!』

 

オープンチャンネルで、殿下のありがた過ぎる通信が耳に入った。

ごっつ愛してます!殿下!

 

その命令にスザクは従い、紅蓮へと襲い掛かる。

そして新たな敵の登場に、対応に負われる紅蓮二式。

僕の命が助かった。

 

ランスロットは高くジャンプをして、回転を始める。

そしてたっぷりと遠心力を付けた、回し蹴りを紅蓮へと叩きつける。

しかしその回し蹴りは、紅蓮の右手によって防がれていた。

回し蹴りを叩き込んだ、左足を右手で掴んでいたのだ。

そして始まるゴッドフィンガー。

しかしそれは失敗に終わる。

 

ランスロットにっとって幸運だったの、サンドボードを付けていた事だ。

砂上走行用としてナイトメアの脚部に取り付けられるサンドボードは、例えパージをしても、それほど戦闘には支障は無い。

 

紅蓮はサンドボードの部分を掴んだために、ランスロットは唯、サンドボードをパージするだけで、その魔の手から逃れられたのだ。

紅蓮の右手に、切り離されたサンドボードが爆破する。

 

「気を付けろ!ランスロット!

この機体の運動性能は半端じゃない!

それと右腕に捕まると、捕まった箇所が爆破するぞ!」

 

『はい!』

 

スザクに通信でアドバイスを飛ばす。

アドバイスといっても、ろくな情報じゃないが、無いよりはマシだ。

 

そして始まる大決戦。

二つの高性能の機体は、互角の戦いを演じ始めた。

運動性能は、両機ともほぼ同じ。

武器は、ヴァリスやメーザーバイブレーションソードと言った、多彩な武器を持ち、近距離、中距離、遠距離に対応できると言っていい万能型のランスロット。

攻撃、防御、または移動にすら仕える脅威の右手を持ち、スラッシュハーケンを除けば、完全な近距離専用機となっている紅蓮二式。

お互いの持ち味を使った、激しい戦闘が繰り広げられる。

その激しさと苛烈ぶりは、ラウンズ同士の戦いと比較しても遜色は無い。

 

 

そんな手に汗を握る戦闘の中、僕もまた一つの戦いを演じていた。

その戦いとは…。

 

フレ!フレ!ス・ザ・ク!フレ!フレ!ス・ザ・ク!

ガンバレ!ガンバレ!ス・ザ・ク!ガンバレ!ガンバレ!ス・ザ・ク!

おおーーーー!イエーーー!!

 

 

勿論スザクの応援である!

 

物理的に応援しようにも、このボロボロのグロースターで、あの二機の戦闘に加わるのは自殺行為である。

何よりも僕自身が戦闘に加わりたくないし。

だから、ここは僕の熱いハートによるエールで、スザクを援護しているのだ!

 

さあ!君たちも一緒に、スザクを応援しようではないか!

今から僕達はスザク応援団員だ!

てゆうか、僕はいったい誰に向かって語りかけているのだろうか!?

変な電波でも受信したのか!?

まあ、いいや!さあ、レッツザ応援!スタート!

 

甲子園の出場チームを応援する、応援団のように青春の汗を流しながら、必死にスザクを応援する。

この輝く汗と、流れる涙。

正しくこれぞ青春!

戦場の青春だァァァ!

 

いい感じで熱狂しながら応援していたが、此処で重要な事に気付いた。

 

今なら僕脱出してもいいんじゃね!?

 

スザクが来て、殆どいらない子状態となった今の僕なら、この戦場から居なくなっても、支障は無いだろう。

本来なら、紅蓮の相手をランスロットが務めている間に、殿下の援護に回るのが筋なのであろうが、今のこのグロースターでは逆に、殿下の足手まといになってしまう可能性がある。

何よりも僕がこの場から離れたい。

即刻離れたい。光りの如く離れたい。

と言う訳で、脱出決定!

 

いしょっしゃーー!今こそ、この禁断の脱出装置を使う時がキターーー!

 

ふわっははははは!さらばだ!紅蓮二式よ!

この私と戦いたければ、私の手下であるランスロットを倒してから来るのだな!

貴様が私の元へ辿り着けるか楽しみにしているぞ!辿り着けたらの話しだがな!

ぐわっはははははははは!

 

 

悪役フラグ全開で、いざ、脱出せん!と両脇にあるレバーを同時に引こうとした時、ランスロットと崖際で戦っていた紅蓮が落っこちた。

 

はれ!?紅蓮落っこちた!?

 

その視覚情報のあまりのインパクトっぷりに、レバーを引くのを忘れていると、気が付くとランスロットが近くに来ていた。

 

おお!

お疲れ様!スザク!

良くぞあの機体を倒してくれた!

僕は脱出するから、後は宜しくね!

 

そう伝えようと、通信を開いた僕であったが、先に通信を寄越してきたのは、スザクの方であった。

 

『あの機体は片付いた!

直ぐに、殿下の援護に向かいましょう!』

 

とりあえず解った事は、脱出の機会を逃してしまったようだ。

かなり凹む現実だ。

とっとと逃げてればよかった。

 

 

その後の展開は、僕とスザクの二人で殿下の援護に回った時、黒の騎士団は撤退を決意した。

ボロボロと化した、僕と殿下のグロースターではこれ以上の追撃は不可能と判断し、殿下はスザクに単機での、追撃を命じた。

コーネリア殿下の我らの負けだという、自らの敗北を認める言葉にて、このナリタ連山の戦いは幕を閉じるのであった。

 

 

 

ああ、生きてるって素晴らしいなぁ。

 


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