コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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番外編 2上

「では只今より!

ナイトオブセブン歓迎会INアッシュフォード学園!を開催しまーす!

イエーーーー!よっろしくぅぅ!」

 

 

マイクによって拡張された姉さんのノリノリな声が辺りに響きまわると同時に、万雷の拍手と歓声が辺りを覆いつくした。

今僕が居る場所はアッシュフォード学園の中庭に建てられた、ナイトオブセブン歓迎会特注会場である。

この歓迎会の為だけに作られた会場である。

ぶっちゃけ無駄にも程ってものがある。

姉さん。あんたはっちゃけ過ぎです。マジで。

 

会場には全校生徒といって言い生徒達の姿が見える。

皆、盛り上がっているようで、実に楽しそうだ。

この会場爆破すればいいのに。

 

 

そんな楽しそうな様子を会場の中心から、死んだ魚の目で見つめる一人の男。

ぶっちゃけ僕です。

 

「皆さん!今回の私の弟である、ナイトオブセブンのアクア・アッシュフォード歓迎会の出席ありがとうございます!

私は司会者兼出場者のパートナーを務める、生徒会長であり、アクアの姉であるミレイ・アッシュフォードです!

宜しくね!」

 

ウインクをばっちり決めて、司会者の姉さんはものすごくノリノリだ。

そのノリに引かれて、盛り上がるその他学生達。

それに比例して盛り下がる僕のテンション。

気分は最悪だ。

最悪なんだよ。畜生。

 

だがそれも仕方がないというものだ。

僕のテンションががた落ちなのは理由がある。

物凄い理由があるのだよ。

 

「では!今回の歓迎会の内容を説明しまーす!

この会場の壇上に居る10名の男子は、生徒会のメンバーと、参加者を募集して集まってくれた学生達です!

彼らには今からなーーんと!」

 

ここで姉さんは一度溜めを作ってから、この歓迎会の趣旨を言った。

僕にとっては迷惑千本なこの歓迎会の趣旨を。

 

「女の子になってもらうのです!

もっとてっとりばやく言えば女装です!イエーーー!」

 

ドンドンぱふぱふ!という効果音と共に、姉さんはノリノリ全開で告げていた。

そしてそれに呼応して、盛り上がる生徒達。

皆、食中毒になって寝込めばいいのに。

 

 

 

イエーーーー!じゃねえよ!姉さん!

 

これが僕のテンションがた落ちの理由だ。

 

ナイトオブセブン歓迎会。

つまりは僕の歓迎会なのに、何故か僕が女装するハメになっているのである。

しかもその姿を、全校生徒にお披露目するという拷問付なのだ。

何?その羞恥プレイは?

僕はまだ女装して喜ぶほど、落ちぶれてねえよ!

だー!女装姿なんて、軍の関係者に見られたら、もう自殺ものだよ!

腹キーリで介シャークものだよ!

ラウンズが女装するなんて、ブリタニア帝国の歴史上初めてじゃないのか!?

こんな史上初なんて嫌だァァァァ!

どうせ史上初になるなら、ラウンズ史上初のニートになりたかったァァァ!

 

「ではここで皆さんに、ルールを説明しまーす!」

 

葛藤する僕を余所に、姉さんの説明は進んでいた。

 

「参加する生徒達にはそれぞれ、自分のパートナーとなる女子生徒がいます!

そのパートナーの女性に、衣装やメイクをしてもらうのです!

制限時間は、開始を宣言されてから二時間の間です!

その間にパートナーは男子生徒を、華も恥らう女子生徒とせねばならないのです!

つまりは、この大会に優勝するには、男子生徒の器量だけで無く、女子生徒の協力が不可欠と言う事です!

パートナーの女子生徒の皆さん!貴女の腕に、パートナーの優勝が掛かっていると言っても過言じゃ無いわよぉ!是非とも頑張ってパートナーを綺麗な女の子にしてね!

そして観客の皆さんの投票でこの大会の優勝者を決めるのです!

貴方の一票がこのアッシュフォードの歴史を変える!

皆さんの投票をジャンジャンお待ちしてます!」

 

姉さんが本当に楽しそうにルールを告げる。

そんな姉さんを、僕はやはり腐った魚の目で、虚ろ加減な視線で見つめた。

 

これがこの女装大会の大まかなルールだ。

 

衣装選びや、メイクの制限時間は二時間。

出場生徒、一人に付き一人の女子のパートナーが付き、衣装やメイクをしてもらうのだ。

僕達生徒会の男子には、目が見えないナナリーを抜かした、生徒会女子一同に付いてもらう事になっている。

 

 

公平に、くじ引きでパートナーを決めた結果。

 

僕がシャーリー。

ルルーシュがカレン。

スザクが姉さん。

リヴァルがニーナ。

 

このような組み合わせとなった。

スザクが、くじ引きでミレイと名前の書いてある紙きれを引いた時、スザクには申し訳ないと思いつつも、僕は心の中でガッツポーズを取ったものだ。

 

「………パートナーが姉さんじゃなかったのは不幸中の幸いだな」

 

「………全くだ」

 

心の安堵の要因を思わず呟くと、隣で僕と同じく、腐った死体の目をした男―――ルルーシュが同意の声を上げていた。

 

なんてったって、あのお祭り大好きな姉さんである。

場を盛り上げる為にはどんな事であろうと惜しまず、妥協をしない姉さんを、女装のパートナーにしたら、どんな姿にされるか。

僕は、スザクが美川憲一のような衣装で現れても驚かないと心に決めている。

ちなみにこの大会は、当初の予定では外部からもお客さんを入れる予定であったが、僕とルルーシュが全力で阻止した結果、なんとか学校内の内輪だけでやることになった。

 

スザクに対して僕のパートナーである、シャーリーは常識の分別がある、心優しい少女だ。

僕がこの大会にやる気が皆無なのは周知の事実である。

女装でも、まだそんなに恥ずかしくないレベルにしてくれと頼み込めば、シャーリーならば了承してくれるだろう。

それはルルーシュのパートナーである、カレンもそうだ。

そしてリヴァルのパートナーであるニーナもだ。

というか、姉さん以外なら皆了承してくれるだろう。

スカートなんてもう履くのは死んでもご免だ!

ここは、まだダメージが軽いパンツの方で攻めるべきだな。

 

にしてもまさか…。

 

「また女装するハメになるとは…」

 

「な!?」

 

僕の呟きを聞いた、ルルーシュが信じられないような物を見るような視線で僕を貫いてきた。

文句あるんかい?このシスコンが。

 

「ア、アクア…!お、お前、女装をした事があるのか…!?」

 

地味に僕から距離を取ろうとしているルルーシュがむかつく。

手前だって女装してるくせに。

 

 

僕から逃げようとしているルルーシュの肩をガシリと掴み、僕は腐った魚の目から、全てを悟った賢者の瞳に変え、ルルーシュに向ける。

今の僕は仏陀だ。

全てを悟り切った偉人と同格の存在なのだよ。

気分的にはね。

 

「ルルーシュ…。

僕の姉が誰なのか…忘れたのかい?」

 

「………そうだったな。

すまない、アクア」

 

「気にすることはないさ…ルルーシュ」

 

僕と同じく、全てを悟った賢者の瞳へと、変化させたルルーシュに頷きを持って、許しの言葉を紡ぐ。

この言葉だけで意味が通じ合う僕らは、本当に幼馴染なんだと実感してしまった。

 

そう―――僕の姉は、天下のお祭り大好き女、ミレイ・アッシュフォードなのである。

僕がまだ幼い頃、そりゃもう、毎日の如く、弄くられまくったものだ。

ぶっちゃけ、あの頃の僕は実写版リカちゃん人形改め、アクアちゃん人形と化していた毎日であった。

ああ、そうさ。フリフリドレスだって着たさ。

ゴスロリ上等の毎日を送ったさ。

文句あるかい?あるだろうなぁ。

恥ずかしすぎる過去だ。

女装している僕の姿を、姉さんと一緒に悪乗りした爺が動画として保存しており、その動画をニブニブ動画に投稿しようとしたのを全力で阻止したものだ。

………爺に対して改めて殺意が沸いてきた。

爺は必ず殺す。

必殺と言っていい位に抹殺する。

誰か、青狸と知り合いの方がいらっしゃいましたら、当時の僕を姉さんと爺の魔の手から助けてやってください。

真面目に助けてやってください。

本当にお願いしますから。

 

ちなみに、今回の大会のトトカルチョで、断トツの優勝候補は、隣で虚ろな視線で虚空を見つめている男―――ルルーシュだ。

去年と今年の実績で、断然のトップだ。

女装の実績とは何とも嫌な実績だが。

 

ちなみに次の優勝候補は何故か僕。

その次にスザクが候補に上がっている。

 

 

しかしスザクも姉さんという、爆弾女がパートナーとは可哀想な者だ。

僕とルルーシュは、常識人と言えるシャーリーとカレンなので、ちょっとした恥だけで済むが、スザクはそうはいかないだろう。

僕はスザクが小林幸子のように巨大化して現れても、驚かないと心に決めている。

 

スザク!骨は拾ってあげるからね!安心して玉砕してくるんだ!

 

「さーて!

ルールを説明した所で、今まで伏せられていた、この大会の優勝者に対する賞品をお知らせします!」

 

被害者に同情の視線を送っていると、加害者がチョーノリノリで説明を続けていた。

 

 

姉さんは、この大会の優勝者に対する賞品の情報を少しも公表していなかったのだ。

僕達生徒会のメンバーにも一切秘密と言う徹底振りで、姉さん以外は誰もこの大会の賞品を知らないと言った状況なのだ。

まあ、賞品とは言っても、女装大会なんてふざけた大会だが、仮にも学校行事という名目だ。

賞品といっても大したものではないであろう。

優勝トロフィーに何か付いてくる位で…。

 

「優勝者には、今私が持っているトロフィーと共に!

なーんと!私の熱いキッスをプレゼントしまーす!」

 

「ぶふぉ!?」

 

姉さんのサプライズ過ぎる、優勝賞品に参加者や観客から様々な反応が、割れんばかりに轟き始める。

いいぞー!とはやし立てる生徒。

やめてくれー!と悲観に暮れる生徒。

生徒の反応は様々だ。

 

ちなみに僕は噴いた。

素で噴いてしまったよ。

そして沸々とある感情が湧き上がってきた。

人、これを嫉妬と言う。

 

おいおい!姉さん!

一応嫁入り前の身なのに、何をはっちゃけっちゃってるんすか!

リヴァルなんか、やるぜー!ってちょーやる気になってるじゃないですか!

ねねねねねね、姉さんのくくくくく、唇がどこぞの馬の骨に奪われるなんて…!

駄目!絶対に駄目!

そんな事、この皇帝直属の騎士団の一員であり、ナイトオブセブンの称号を託された、アクア・アッシュフォードが全生命を賭して許しませーーーーーん!

それならばいっその事、姉さんの唇はこの僕がァァァァ!………って、え゛え゛!?!?

 

 

僕って奴は何て事考えてるんだァァァァァァァ!

よりにもよって、実の姉の唇の行方に嫉妬するなんてェェェェ!

しかもその実の姉の唇を奪おうと考えるなんてェェェェ!

インモラルだ!インモラルにも程があるってものがあるんだぜェェェ!

もはや、淫盛らるって勢いだァァァァァ!

 

おいーー!しっかりしてくれ!僕!

僕はこんなキャラじゃないだろう!?

僕はもっとクールでナイスな男のはずだろう!?

こんなシスコン関係はルルーシュの分野のはずだ!

 

違う!僕はルルーシュとは違うんだ!

僕は決してシスコンじゃないんだァァァァ!

 

嗚呼!でもやっぱり、嫉妬しちゃう心がある事が自分でも、わかっちゃうんです!

僕はどうすりゃいいんじゃァァァァァァ!

誰か悩める子羊な僕に答えを教えてくれェェェェ!

 

神はなんたる試練を僕に与えるのだ。

姉さんの唇がかかったこの状況で僕は悩む事しかできなかった。

そんなインモラルに苦悩する中、僕の目に入ったのは、達観したような目をした、あたかも全てを受け入れた賢者の瞳をしたルルーシュであった。

その時、ある考えが僕の脳裏を過ぎった。

 

そうだよ。

今思えば、この大会はルルーシュが優勝するのが決まっているような出来レースみたいなものじゃないか。

姉さんはそれが解っているからこそ、このような賞品にしたのではないのだろうか?

そしてルルーシュは、姉さんの元婚約者。

つまりはこの出場者の中で、最も姉さんのくくくくく、くちびーるを受け取るに相応しい人物ではないのか?

ルルーシュは、シスコンで執念深い人物だが、自分の身内と定めた人物は、自らの持てる力を使い、守ろうとする強い意志を持っている男だ。シスコンだけど。

そのルルーシュになら、姉さんのくくくくく、唇の端位なら許してやってもいいかもしれない。重度のシスコンだけど。

 

ね、姉さんだって、多分ルルーシュが勝つと分かっているから、このように自らのくくくくくく、嘴を賭けるような真似をしたのであろう。

それが姉さんの願いと言うならば、僕はその願いを叶えるだけだ!ああそうさ!決して畜生!ルルーシュの事を殴り殺したい!なんて思ってないさ!ああ!多分!

故にトトカルチョで、ルルーシュの次に優勝候補となっている僕は、当初の予定通りに地味目な女装で、優勝を取らないように気を付けるだけだ!

 

ルルーシュ!手前ェェェェェェェェ!絶対に勝てよォォォォォォォォ!死んでも勝つんだぞォォォォォォ!

もし負けたら、罰としてお前の愛するナナリーと僕がチューしちゃうからな!チュッ☆チュッ☆しちゃうからなァァァ!

…って、ナナリーとチュッ☆チュッ☆?

……………僕がナナリーとチュッ♪チュッ♪

 

その考えに至った僕は、脳裏にナナリーとチュッ☆チュッ♪する姿を思い浮かべた。

恥ずかしがりながらも、嬉しそうに僕とチュッ♪☆チュッ☆♪するナナリーの姿を思い浮かべたのだ。

そ…想像しただけで…鼻血が出そうだ。

思わず鼻を押さえてしまったよ。

流石は萌えの使者ナナリー。

想像だけでも破壊力は抜群だ!

恐ろしいまでに抜群だ!

 

………や、やっぱぁ。負けてもいいかもしれないね。ルルーシュ。うん。

 

いや、いや!何を考えてるんだ!あのシスコンのルルーシュがそんな事許してくれるはずがない!

 

と、とにかく!僕がすべき事は、僕が勝たない事だ!

出場者を見て、僕から見てもルルーシュが優勝候補だと思う。

ルルーシュの次の優勝候補である僕が勝たなければ、おのずと優勝はルルーシュの頭上に輝く事になる。

大変に遺憾な事だが、姉さんのくくくくくくくくく、嘴の端っこはルルーシュに委ねるよ!

と言う訳で。

やっぱり勝てよぉぉぉぉぉ!ルルーシュゥゥゥゥゥゥ!

もし負けたら、グロースターで引きずり回しの刑に処するからなァァァ!

僕は本気だぜ!?その命が惜しければ、死ぬ気で勝つんだァァァァ!

勝って勝って勝ちまくるんだァァァァ!

オール・ハイル・ルルーーーシュ!!

 

 

ついついルルーシュに対して、殺気紛いの眼光を放ってしまった。

気分はブリタニア皇帝だ。

その視線をルルーシュは戸惑い気味に、受けていた。

 

「それでは!只今よりナイトオブセブン歓迎会を開催宣言を致します!

皆さん!二時間後を楽しみにしていてください!

それではよーい………にゃーーーーー!!」

 

 

姉さんの気の抜ける開催宣言と共に、辺りからは割れんばかりの歓声と怒号が埋め尽くされる。

 

僕達出場者はパートナーの下へと駆けるのであった。

 

 

 

 

 

 

■シャーリー・フェネット■

 

 

会長の口から告げられた、この大会の賞品の内容に私は少しの間呆然としてしまった。

 

でもそれも、仕方がないと自分でも思うの。

 

だって、優勝者は会長とキスしなくちゃいけないのよ!?

 

そしてこの大会の優勝候補筆頭は、ルル。

つまりは、ルルが一番会長とのキスに近いって言う事なんだから!

そんなの駄目!会長が何と言おうと駄目なんだから!

 

「それでは!只今よりナイトオブセブン歓迎会を開催宣言を致します!

皆さん!二時間後を楽しみにしていてください!

それではよーい………にゃーーーーー!!」

 

 

会長の変な開催宣言が発しられたと同時に、私は会長の下へと走るのであった。

 

「ちょっと会長!」

 

「あら?シャーリー。

どうしたの?」

 

 

「どうしたじゃありませんよ!

なんですか!?あの優勝賞品は!?」

 

「何って言葉通りの賞品よぉ。

優勝者には私の熱いキッスをプレゼント!ってやつよ」

 

私の言葉を聞いた会長は、人が悪そうな顔をしながら、何処ぞへと投げキッスをしてきた。

 

「別にいいじゃない。

どうせ優勝はルルーシュかアクアでしょ?

ルルーシュの女装っぷりは去年と今年の男女逆転祭りで証明されてるし。

アクアは元から女顔だし。

それに小さい頃から女装させてたから、あの子の女装は保証出来るわよー!

アクアは弟だし、ルルーシュは長い付き合いなんだから、キス位別にいいんじゃない?」

 

キス位なんて…!?

 

「よくないですよ!会長!」

 

ルルとキスだなんて、何て羨ましい!…じゃなくて!

 

「まあまあ聞きなさい、シャーリー。

いい?さっきも行った通り、この大会は優勝争いはルルーシュとアクアの一騎打ちとなると思うわ」

 

会長は、私の肩に両手を置きながら、諭すように話しかける。

その話しの内容に私も頷きを持って同意する。

そして同意できる内容だからこそ、会長の賞品には反対なのだ。

ルルとアクア君が最たる優勝候補!

単純に確立で言えば二分の一の確立でルルと会長がキス!

そんなの駄目!絶対に駄目!

 

「素材となる二人は同レベル。

じゃあ、この大会の優勝者となるには何が勝利の秘訣となると思う?」

 

「何が勝利の秘訣って…どれだけ上手く、女装したかじゃないですか?」

 

会長は真面目な顔つきをして私に問いかけてくる。

その問いに私は答える。

しかし何故だろう?

会長は至って真面目な顔つきなのに、何処か子悪魔な表情に見えて仕方がない。

 

「わかってるじゃない!

つまりは、二人の勝負の行方を決めるのはパートナーの腕しだいって事よ!

そしてアクアのパートナーは誰だったかなぁ?」

 

「そりゃぁ…私……って、あぁ!?」

 

会長の言わんとしている事に気付いた私は、思わず声を上げてしまった。

 

「そう!

貴女がアクアを思いっきり綺麗な女の子にしちゃって、優勝させちゃえばいいのよ!

そうすればキスはルルーシュの元へは行かない!」

 

会長はニヤリと子悪党がするような笑みを浮かべながら、言葉を紡いできた。

 

「で、でも…ルルの唇を守るためにアクア君を優勝させるだなんて…。

アクア君に失礼というか…そ、それにアクア君と会長は姉弟なのにキスだなんて…」

 

思わず迷いが口から出てしまった。

 

「なーに言ってんのよ!

どっかの昔の偉い人が言ってたじゃない!

恋と戦争はどんな行為すら許される!みたいな事!

それに私とアクアは姉弟だから別にいいのよ!

キスだなんて、姉弟の間ではスキンシップみたいなもんなんだから!

毎日キスしたっておかしくないのよ?」

 

キスがスキンシップだなんて!?

一人っ子の私にはわからなかったけど、そうだったんだぁ。

という事は、ルルもナナちゃんとキスしてるって事!?

ちょ、ちょっとショック。

今度ナナちゃんにこっそり、聞いてみよう。

 

でも、会長の言う通りかも。

ルルを会長の魔の手から逃れさせるには、アクア君を優勝させるしかない。

そして私はアクア君のパートナー。

まるで運命がルルを助けるために、私をアクア君のパートナーに導いたような気がしてくる。

それにアクア君と会長はスキンシップで毎日キスをしているのだ。

今更キスの一回や二回、増えた所で問題は無いのだろう。

 

その考えに至った私は、毅然と顔を会長に向けて、宣言をする。

 

「わかりました!会長!

私の全精力をもってして、必ずアクア君を優勝させて見せます!」

 

「その調子よ!シャーリー!

じゃあ私は、カレンがちょっと呼んでるみたいだから、ちょっと行ってくるわね。

頑張るのよ!シャーリー!」

 

「はい!」

 

 

恋はパワー!

大丈夫よ!ルル!私が会長の魔の手から貴方を守って見せるわ!

ルルの唇は…私が守ってみせる!

それが私の恋の使命!

 

 

決意を固めた私は、近くに来ていたアクア君の元へと駆け寄るのであった。

 

 

 

 

 

■アクア・アッシュフォード■

 

 

シャーリー…シャーリーは何処かなぁ…って居た!

 

シャーリーを探して、辺りを見渡していると、姉さんと話しているシャーリーを見つけた。

傍に近寄ろうとすると、丁度二人の会話が終わったようだ。

姉さんがシャーリーから離れて行った。

 

「シャーリー。

今回の件でだが…?」

 

シャーリーに近づき声を掛ける。

二人がどんな話しをしていたか、少し気になったが、それよりも先にこの大会の事が重要だ。

ルルーシュに勝ちを譲るために、僕はパッとしない女装で攻める!

この作戦を先に、シャーリーに伝えなくてはならないのだ。

しかし、言葉を続けようとした時、シャーリーの様子がいつもと違う事に気付いた。

何て言うか、こう覚悟が決まっているというか、凄みを感じると言うか…。

BOBOの珍妙な冒険で言う所の、ドドドドドドドドドドド!!って空気を振動する音が聞こえるような気がする。

 

何なんだ!?この緊迫感は!?

 

一体シャーリーに何があったと言うのだ!?

 

なんだか、敵のスタンド使いの気迫に押されている気分である。

脂汗が浮いているのが自分でもわかる。

何だか今、この空間なら、憧れのスターブラチナを出せるような気がする。

憧れのブラブラ!ラッシュが出来るような気がする。

そんな錯覚を覚えるほどのBOBO空間だ。

 

 

「……アクア君」

 

「な、何だい?」

 

生唾を飲み込んでからシャーリーの言葉に応える。

そんな僕をシャーリーは意思の篭もった瞳で見つめる。

一つの選択を貫く事を決めた、覚悟の瞳。

その瞳が僕を貫く。

 

「この勝負…勝つわよ!絶対に!」

 

反論すら許さないと言わんばかりの、気迫でその言葉を紡いできた。

とりあえず僕に拒否権は無さそうだ。

拒否をした途端に、ひき肉になってもおかしくない。

そん凄みすら出させるシャーリーに僕が出来る事と言えば…。

 

まったく…やれやれだぜ。

本当に…やれやれだぜ。

なんでこうなっちまうんだよ…やれやれだぜ。

誰か僕を助けてくださいよ…やれやれだぜ。

このままじゃ畜生街道まっしくだらだよ…やれやれだぜ。

シスコンはルルーシュだけで十分なんだよぉ…やれやれだぜ。

 

憧れの承太郎ちっくに締める事しか僕にはできなかった。

 

 

やれやれだぜ。

 


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