コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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14話

エリア11に存在する総督府。

それは日本がブリタニアの植民地になった時から、このエリア11の中心の地となったと言っても過言ではない場所である。

 

そんなエリア11の中心地で、僕は今死ぬほど重い足取りで廊下を歩きながら、ある一室を目指していた。

 

僕が目指している場所。

それは総督室―――ブリタニア帝国第二皇女でもあり、エリア11総督であるコーネリア・リ・ブリタニア皇女と会見する為に向かっているのである。

 

今の僕の上司、コーネリア殿下に呼び出しを食らった為に総督室へと向かうハメになったのだ。

本来であるなら、あのコーネリア殿下のおっぱいを間近で見れる機会と、喜んでいたかもしれない。

しかし今の僕にはそんな余裕は無かったのだ。

 

僕の足取りを重くする理由。

それは先のナリタ連山の戦いの為であった。

 

ナリタ攻防戦。

 

それは日本最大のテロ組織である、日本解放戦線を壊滅するためにコーネリア軍が挑んだ戦いであった。

序盤は、コーネリア軍が圧倒的多数の軍事力によって、ナリタ連山を包囲する形で順調に押していたが、予期せぬ地震により発生した山崩れに巻き込まれてしまい、コーネリア軍は八割近くの兵力を失ってしまったのである。

しかもその隙を突くように、黒の騎士団と名乗る新たなテロ組織が戦場に乱入する形となり、コーネリア軍は少ない戦力で日本解放戦線の残党と、黒の騎士団の両方の戦力と戦わなければいけない状況へと追い込まれてしまったのである。

黒の騎士団と日本解放戦線の即席タッグによる猛撃は、一時、コーネリア殿下も危うい所まで追い込まれたが、スザクが駆る第七世代型KMFランスロットに寄る活躍によって、事なき事を得た。

日本解放戦線はその殆どの戦力を失ったが、僕達ブリタニア軍の被害はそれ以上であり、結果的に見て今回のナリタ攻防戦は黒の騎士団の一人勝ちと言ってもおかしくない結果となったのである。

 

そんなコーネリア軍にとっては散々な結果となったナリタ攻防戦であったが、その中で僕がした事と言えば、予備戦力であった純血派の皆さんを率いた事であった。

純血派はジェレミア・ゴットバルド卿を中心として、小隊としては破竹の勢いで戦果を上げていったのだ。

壊滅しちゃったけど。

 

その事実が僕の足取りを重くする要因の一つであった。

 

そう、純血派はコーネリア軍に壊滅的な打撃を与えた山崩れに巻き込まれて壊滅してしまったのである!

奇跡的に助かったのは、純血派のNO2のキューエル卿。

そして大人の魅力満載のエロエロエキゾチックなヴィレッタ卿の二人だけである。

 

ちなみに純血派の頭であったジェレミア卿は、最初は山崩れに寄る被害から逃れられたのだが、土砂によって流された僕を救うべく、自ら土砂崩れの中に飛び込み、行方不明となってしまったのだ。

 

ジャレミア卿!なんと忠義に熱い男だ!

でも助けられる立場の僕が生還して、助けようとしたジェレミア卿が行方不明。

ミイラ取りがミイラになっちゃて、ミイラが何を間違ったのか生き返って、生還したようなものだ。

 

このジェレミア卿行方不明の事実によって、僕の中で進行していた、目指せ!ジェレミア卿ナイトオブセブン計画☆は即座に頓挫の道へと一直線となってしまったのである。

かなり凹む。

 

純血派の壊滅。

これだけで僕の頭は痛いのに、頭痛の悩みはこれだけではないのである。

 

それは僕自身の戦果であった。

 

僕は今回、黒の騎士団の新型KMFと一騎打ちを繰り広げ、攻められまくりながらも、何とかスザクの支援によって引き分けとまで持ち堪えた。

だが引き分けといっても、それは物凄く負けに近い引き分けだ。

 

ナイトオブラウンズには暗黙の鉄則がある。

 

それは、ナイトオブラウンズの戦場に敗北は無いという事。

 

僕達ナイトオブラウンズは、皇帝直属の騎士団であり、その実力は軍事超大国ブリタニア帝国の中に置いても最強と言われる集団である。

その実力はブリタニアだけでなく、他国まで知れ渡っている。

 

そんな僕達は最強でなくてはいけないのだ。

 

もしラウンズが負ける事態になってしまったら、味方は一気に士気を失い、恐慌状態へと陥ってしまう。

逆に敵は一気に勢いを増して戦意を高める。

 

僕達ラウンズの敗北は個人の敗北ではなく、その戦場での敗北へと繋がるのだ。

 

 

故に、僕達ラウンズは敗北は許されない。

否、存在してはいけないのだ。

 

だと言うのに、僕は今回の戦いはもう、ダメダメな結果であった。

 

 

率いた純血派は壊滅状態。

 

敵KMFと一騎打ちをした結果、負けに近い引き分け。

 

僕専用グロースターはスクラップ一直線。

 

 

 

もう散々な結果である。

下手したらハラキーリ物じゃね!?

いや下手しなくてもカイシャーク物じゃね!?

 

しかもコーネリア殿下は、皇女でありながら軍人として厳しい事で有名な人である。

一体、どんな事を言われるのか…!

想像するだけで恐ろしい。欝になってくる。

このまま回れ右して帰りたいぐらいだ。

どうしよう!?帰っちゃおうか!?んで部屋に引きこもって久しぶりにニブニブ動画を楽しんじゃおうか!?

そしてニブニブ動画流星群を歌い手達と、歌っちゃうか!?

うん。そうしよう。

僕の歌い手としての名前は何にしようか。

神聖かつ、皆さんに親しまれるような名前は…。

 

「ようこそいらっしゃいました。

アッシュフォード卿。

只今、コーネリア総督に入出の許可を取りますので、少々お待ちください」

 

真面目に、帰って現実逃避しようかと考えていたら、何時の間にか総督室の目の前まで足を運んでいた。

そして総督室の前に立っていた、従卒が入出の許可を取り始めていた。

その許可の申請に、即応じる入室許可の声。

どうしよう。逃げられなくなっちゃた。

 

「お待たせしました。アッシュフォード卿。

許可が下りましたので、ご入室ください」

 

入室を促す従卒の声が死刑を告げる裁判長の言葉のように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「失礼致します。

アクア・アッシュフォード只今参りました」

 

「ああ。

突然呼び出してすまなかったな、アッシュフォード卿」

 

「いえ、お気になさらず」

 

中に入室してコーネリア殿下と挨拶を交わす。

総督室の中には、ガチムチ将軍、ダールトン将軍と、萌えの騎士、ギルフォード卿が居た。

所謂、いつもの直参組みだ。

 

「さて、今回アッシュフォード卿を呼んだ理由だが…

先日のナリタ連山の戦いについての件で呼んだのだ」

 

 

いきなり直球がキターーー!

殿下ったら!僕にお得意の現実逃避をする暇も与えてくれないよ!

疾風迅雷の一撃じゃ!

嗚呼。この目の前におわす、コーネリア殿下の一言で、僕の人生が終わるかもしれないのか…。

せめて…せめて死ぬ前に彼女が欲しかった…。

ウキウキ学園ライフをもっとトロピカルに過ごしたかった。

僕の性春の日々は始まったばかりだというのに。

 

机の中にある、ラブレターから始まる二人の恋。

それはファーストキッスから紡がれるような甘い甘い二人の恋の話。

そして初デートで何故かいけないホテルへと行っちゃう僕達。

だ、駄目だ!僕達はまだ未成年なのに、エッチな事はいけない事だと思います~♪

まて!靴下は脱いじゃだめだ!靴下は残していてくれ!

 

あれ?僕今現実逃避してる?

 

「此度の働き、真に見事であった。

アッシュフォード卿」

 

 

よいではないか♪よいではないか~♪

 

 

……今、殿下何て言ったの?

 

 

脳内彼女とお代官様ごっこを繰り広げいた僕は、殿下の言葉を聞き逃していた。

 

 

そんな僕に気付かずに殿下は、僕を褒め称える言葉を紡いできた。

あれ?僕何か褒められてる??

何で褒められてるの??

 

「いえ、自分は何も賞賛される事はしておりません」

 

「何を言うか。あのグロースターの状態でよくもまあ、あそこまで戦えたものだ。

技術者達が回収した卿のグロースターを見て、驚愕していたぞ。

流石はナイトオブセブンと言った所か」

 

本気で褒められている理由が解らず、功績を否定する僕に。

卿は謙虚な男だな。

と呟きながら殿下は僕に対するお褒めの言葉を言ってきた。

 

あれれ??

何か僕の予想と違うんですけど?

今日はアクア断罪の日じゃなかったの?

僕はナイトオブラウンズの鉄則を壊しかけて、しかも純血派を潰しちゃったのに。

 

訝しげな僕の雰囲気に気付いたのだろう。

コーネリア殿下は純血派の事か。と呟きながら僕に話しかけてきた。

 

「卿の心に残っているのは、純血派の事か。

確かに、純血派の壊滅は真に残念であったが、土砂崩れに巻き込まれての壊滅では、致しかたが無い。

卿は最善の行動を取り、このコーネリアの命を救ったのだ。

改めて礼を言おう。

アッシュフォード卿」

 

「私達からも礼を言わせていただきます。

よくぞ、姫様をお守りしていただきました。

感謝申し上げます。アッシュフォード卿」

 

コーネリア殿下の言葉に続いて、ガチムチ将軍が感謝の言葉と共に、頭を下げてきた。

それに続き、ギルフォード卿も頭を下げる。

 

正直、褒めれられるのは気分がいいが、断罪を覚悟でこの場に着たのに、逆に褒められるという今の状況は、嬉しさよりも戸惑いの方が大きいっす。

 

「二人とも頭を上げてください。

自分は兵士として当然の事をしたまでです」

 

でもやっぱり気分がいいので、調子こいていい人ぶってみたりします。

その場のノリで生きる僕は何と素晴らしい人間なのだ。

嫉妬するなよ?

 

「兵士として当然の事か…。

あれだけの戦闘を繰り広げていながらそんな台詞が出てくるとはな。

…いや、卿にとっては、今回の戦いは日常の一コマといった所なのかもな」

 

あんなデッドオアデッドな戦いが、日常の一コマ何てありえないというか、あったら物凄く泣くような状況だ。

しかしこれ以上否定しても、また謙虚してるとか思われそうなので黙っている事にする。

 

「さて、アッシュフォード卿。

今回呼んだのは、他でもない。

今後の我らの行動を知らせておこうと思ってな」

 

 

殿下の言葉に空気が引き締まるのを感じる。

ちなみに僕は殿下の凛々しい顔に、凛々萌えしてしまいそうな勢いだ。

何と萌えは奥が深い。

 

「今回の戦によって、日本解放戦線はほぼ壊滅状態となった。

あとは散り散りとなった残党狩りと、日本解放戦線の首領。

片瀬という者を討ち取れば、自然と日本解放戦線は消滅するであろう。

それよりも問題は…」

 

「黒の騎士団ですな」

 

ガチムチ将軍が殿下の言葉を引き継ぐように言葉を発する。

その答えに、頷きながら殿下は話を続ける。

何か雰囲気がピリピリとやばいっす。

 

「そうだ、ダールトン。

今回の戦いにおいては屈辱的な事だが、黒の騎士団の一人勝ちといった結果だ。

この勝利の結果によって、黒の騎士団はさらに規模を拡大させる事であろう」

 

此処まで話すと、殿下は顔中に悔しさを滲み出しながら話を続けてきた。

 

「それに対して我が軍は壊滅的なダメージを受けている。

今の状況では、レジスタント達の頭領という、NAC所か黒の騎士団にも手を出せん状況だ」

 

その言葉に僕はかなり驚いた。

 

NAC―――旧日本における名門と財閥の集合体であり、内務省の管理下にある団体であり、このエリア11に住むイレブンと言われる人種の自治を任せられている代表者達である。

当然、選ばれる者たちは、親ブリタニアでなくてはならない。

 

そんな親ブリタニアの筈の彼らが、実はレジスタンスの黒幕という立場に、僕は驚きを隠せなかった。

 

イレブンの反乱勢力が他国の植民地と比べて活発な理由が少し解った気がする。

 

「今は我が軍も建て直しが必要な時期だ。

しかし、日本解放戦線の残党狩りは続けなければいけない。

近く、日本解放戦線の首領の片瀬を討ち取る。

アッシュフォード卿。

貴殿の力を借りる事は無いかもしれんが、貴殿にも付き合ってもらうことになる」

 

うわーん。

また戦場行きが決まっちゃたよ。

本当はこんな出撃要請拒否したいのだが、如何せん、相手は皇族。

ましては戦場を良しとする、豪傑なコーネリア殿下の裁可に反対するほうが、戦場に出る事よりも危険というものだ。

だから僕は心の叫びを仕舞い込んでこの言葉を発してしまった。

 

 

 

 

 

「イエス・ユア・ハイネス」

 

 

 

 

ネットの海に溺れる日々に戻りたい年頃だ。

 

 

 

 

 

 

 

あれから四人で軽く会話をしてから、僕は総督府を後にした。

コーネリア殿下からは、ナリタ連山の戦いの褒美として、何か頼みごとがあれば、融通を利かせてくれるような事を言っていた。

だったら、戦場に出たくないと言いたい所だったが、鉄の意志でその言葉を抑えた僕を褒め称えて欲しい。

 

そして今僕が居る場所は病院だ。

 

何故僕が病院にいるかというと、先のナリタ連山で負傷した友人達の見舞いに来たのである。

その友人達とは…。

 

「いやー。

態々、来てもらってすまねえなぁ、アクア。

あ、其処に置いてる果物、イオーヤのだけど好きに取って食ってもらって構わないから」

 

「おい。

お前という奴は、何人の物勝手にやろうとしてるのだ」

 

「あ?折角アクアが着てくれたんだ。

丁重にもてなそうという、殊勝な心はお前には無いのか?」

 

「アクアにやる事は別にいい。

だが、スヌアが勝手に俺の物をやると言う事が嫌なのだ。

ああ、アクア。其処に置いている東京バナナ食べてもいいぞ。

スヌアの物だから、遠慮なく全部食べてくれ」

 

「ちょ!俺の東京バナナを!?しかも全部とかって、お前は鬼か!?

このヤオイ野郎!」

 

「うるさい!元はと言えば、お前が勝手に俺の物を上げようとしているからじゃないか!

この尻男が!」

 

この目の前で、面白くないコントを繰り広げながら、さり気なく相手のコンプレックスを刺激しあっている二人である。

 

 

スヌア・ボラギノールとイオーヤ・オロナイン。

 

二人とも僕の仕官学校時代の同期であり、此度の戦いでは、アレックス将軍の直属部隊として働いていた二人である。

アレックス将軍の指揮下であった部隊は、土砂崩れに巻き込まれ壊滅状態となったが、この二人は数少ない生き残り組みだったという訳だ。

奇跡的に生き残った彼等であったが、二人の体は直ぐに現場復帰できるような状態ではなく、即病院に搬送され、そのまま入院コースとなってしまったと言う訳だ。

ちなみに二人の名前は、彼らの父親がお互いの子供の誕生を祝って飲み会をした際、酔っ払った勢いで自分達の子供の名前を決めて、役所に名前を登録したそうだ。

ちなみのちなみに父親達はその後、自分達の妻達に半殺しにされたそうだ。

南無。

 

「でも君達二人が無事でよかったよ」

 

アレックス将軍が率いた部隊は、ほぼ全滅している。

 

そんなアレックス将軍が率いた中でも直属部隊に当たる二人が生き残ったのは奇跡と言える事であろう。

 

「そんなお前もあの土砂崩れに巻き込まれて生き残ったんだろう?

まあ、俺達はお前と似て悪運が強かったって事さ。

ジノや俺達と言い、第八ブリタニア士官学校の奴らは悪運が強いのかねぇ」

 

「お前と一まとめされるのは尺に触るが…その通りかもな」

 

二人と軽口を交わしながらも話を続ける。

 

「でも、君達はこれからどうなるんだろう?

アレックス将軍の部隊は壊滅してしまったから、君達には戻る部隊が無くなってしまったからね」

 

僕の言葉に、二人は難しそうな顔つきをしてから言葉を発してきた。

 

「そこなんだよなぁ…。

まあ、俺達のこの状態では暫くは現場復帰できないだろうけど。

コーネリア軍の何処かの部隊に配属になるか…でも恐らく休養も兼ねて本国に配属になる可能性が高いんだよなぁ…。

俺としては、このままエリア11に残って、黒の騎士団の奴らにキッチリとノシ付けてやりたいんだがな」

 

「黒の騎士団と決着を付けたいのは俺も良くわかる。

だが、俺達の配属先を考えるのは、俺達では無く上層部のお偉方だ。

俺達はその決定に従うしかないのだがな」

 

フンガー!と鼻息荒く話すスヌアに同意しながらも、冷静に自分達の立場を解っているイオーヤがぼやく様に話す。

 

コーネリア軍が壊滅状態となった原因である土砂崩れ。

あれは人為的な現象である確立が高い事であるという事を、僕は先の殿下との会見で聞かされたのだ。

そしてそれを起こした勢力が黒の騎士団とである可能性が非常に高いと言う事を。

その事を僕はスヌアとイオーヤに教えたのだ。

自らの部隊を飲み込んだ土砂崩れを誰が起こしたのかを。

 

それに対して二人は怒りを露にしていた。

二人が配属され、共に苦楽を共にし、生死を分かち合った部隊の者たち。

自分たちは兵士。

相手の命を奪い、自分の命も狙われる。

それも戦場では仕方が無い事だ。

だが彼らをそを飲み込んだ土砂崩れ。

騎士としてとても許されない死に方。

その彼らの死を引き起こした黒の騎士団を二人は許せないようだ。

 

 

 

「そうだよなぁ…上層部のお偉方の決定がどんなモンなのか…

…んん?上層部??」

 

「ああそうだ。

我々は上層部の方々の決定に従うしか………上層部?」

 

「そうだねぇ。

上層部の決定には歯向かえないからねぇ……ん?」

 

 

何だか二人から熱い視線を感じる。

一体何だろうか?

 

この熱い視線………は!?

もしかして僕を性的な意味で狙ってる!?

二人を見ると、まるで砂漠のど真ん中で、オアシスを見つけた旅人のような眼つきで僕を嬲っている!

何てこったーーー!

まさかこの二人までガチホモ系だったなんて!

名は体を表すとは本当だったのかーーー!

何でこう、第八ブリタニア士官学校の奴らは悪運だけでなく、性癖も悪すぎるんだーーーー!

は!?もしやこの二人はおホモ達!?

そしてこの二人の入院先で同室なのは、性的な意味でも同室が好ましかったからか!?

二人は毎晩、入れて入れられてな天上天下な日々なのか!?

そしてそんな天上天下唯我性尊な日々に僕を加えようってか!?

どっちが攻めでどっちが受けとかって考えたくねェェェ!

いやーーーー!とってもいやーーーーーーーー!

 

 

断るしかねェェェ!絶対に断るしかねェェェェ!

 

幸いにして二人は怪我人だ。

この仕官学校時代から、対ホモ戦闘術を磨いてきた僕ならば撃退は容易いはずだ。

来るなら掛かって来いやぁぁあぁ!

この、たった今開発した一子相伝の歩藻神拳の初代伝承者としての実力を見せたるわァァァ!

ほわたたたたたたたたたた!ホモチャァァ!

 

「「お前が上層部じゃないか(よ)!!」」

 

 

……お前は既にホモっている。

ヒデヴゥ!?

 

……って、はい?

 

「え?」

 

「え?じゃねえよ!

今思ったらお前めっちゃくっちゃ上層部じゃねえかよ!

お前より偉い奴なんか、皇族かナイトオブワンぐらいじゃねえかよ!」

 

「今改めて考えて見たら、俺達の目の前にはとんでもないコネがいたんだな…」

 

「ええ?」

 

「なあ、アクア。

お前なら、俺達を黒の騎士団と戦える部隊に配属できるんじゃないか?」

 

「えええ?」

 

「ああ。

ナイトオブセブンである、アクアならこの様な事容易いはずだ」

 

「ええええ?」

 

「頼む!アクア!俺達はあんな潰し方で部隊を壊滅させた黒の騎士団を許せないんだ!」

 

「ええええええ?」

 

「俺もスヌアと同じ意見だ。

どうか頼む!アクア、俺達の願いを聞いてくれ!」

 

「えええええええええ?」

 

 

何?この唐突な展開は??

僕がホモの二人を一子相伝の暗殺拳で撃退しようと思っていたら、気付いたら二人が何やら懇願してきやがった。

しかし、何ですと?

戦線復帰を希望しているですと??

戦線から外れまくりたい僕に向かって、そんな台詞を吐いてくるとは。

 

「まあ…コーネリア殿下に言って見るけど…そんなに期待しないでくれよ?

どうなるかはコーネリア殿下が決めることだから」

 

「ああ!言ってくれるだけで充分だ!

頼むぜ!アクア!」

 

「すまないが宜しく頼む」

 

二人の言葉に頷きをもって返答を返す。

 

まあ、二人とも戦線から外れることでなく、逆に戦線に復帰したいと申し出ているのだ。

よっぽどの事が無ければ、二人の申し出は通るだろう。

しかし戦場に戻りたいだなんて…。

戦場から全力でばっくれたい僕からしてみれば、理解できない思考だ。

 

 

「そういえばアクア。

お前達ブリタニアの三連星は親衛隊を作らないのか?」

 

その後三人で、適当に世間話をしていたのだが、唐突にイオーヤはこの話を振ってきた。

 

親衛隊。

それは自分専属である、直属部隊の事を言う。

ブリタニア軍では、主に将軍クラスや皇族達が親衛隊を持っている。

そして僕達ラウンズも親衛隊を持てる裁可は持っている。

だが僕やジノやアーニャは親衛隊を持っていないのだ。

 

「まあ…ジノは思う存分戦いを楽しみたいタイプだからね。

今は僕やアーニャとトリオを組むほうが楽しいみたいだから、親衛隊を持とうとは思わないみたいだよ。

アーニャに至っては、隊を持つと面倒だから持たないみたいだね」

 

「はぁ。…なるほどねぇ。

んじゃアクア。

お前は?」

 

スヌアは中々に痛い所を突っついてくる。

 

僕が親衛隊を作らない理由。

それはこれ以上軍に縛られたくないからだ。

 

唯でさえ僕はナイトオブラウンズ何て言う、ちょっとやそっとの事では辞められない立場にいるのだ。

そんな僕が親衛隊何てもんを作ったら余計に縛られて、軍を辞められなくなる!

僕はスムーズに軍を辞めたいのだ。

僕が軍を辞める時に足枷となる要素を自分で作ってたまるか!

 

でも、流石にこんな理由を話すのは恥ずかしすぎるので、スヌアの言葉に曖昧に笑って誤魔化す。

クールな大人の対応だぜ。

 

その後、軽く三人で世間話をしてから僕はスヌアとイオーヤの病室を出て、違う病室へと向かった。

 

次に僕が向かう場所…それは純血派のキューエル卿が入院している病室である。

 

キューエル卿はナリタ連山の戦いで、壊滅した純血派の生き残りだ。

僕としては男のキューエル卿よりも、女性でエキゾチック萌えなヴィレッタ卿の所に行きたいところだったのだが如何せん。

ヴィレッタ卿は特に大きな怪我も無く、現在は私用で何処かに出かけているらしい。

ヴィレッタ卿に怪我が無かったのは良い事だが、彼女に会えない事は実に残念だ。

 

キュエール卿は見た目から神経質っぽいし、初見のジェレミア卿とのイザコザ。

僕は確信している。

絶対キューエル卿は友人が居ないと!

入院していながらも、誰も見舞いに来てくれていないであろう、キューエル卿の為に僕は見舞いに来ているのだ。

なんと、僕はいい男なのだ。

惚れるなよ?

惚れても僕の尻は永久に僕の物だ。

でも萌えっ子になら僕の尻を渡しても良いと思ってきた年頃だ。

 

そんな馬鹿な事を考えて歩いていたら、キューエル卿の病室に近づいていた。

ふ…キューエル卿の驚く顔が目に浮かぶぜ。

まさか友達が居ない自分にお見舞いが来るなんてな!

かなり失礼な事を考えながらキューエル卿の病室の前で扉を一度ノックをしようと、手を上げ…。

 

 

 

 

 

「はい、キューエル。

あーんして」

 

 

 

 

 

その手が止まった。

 

……え?

何?今の声は??

 

今まさに扉を叩かんと、僕の上げた腕を止めたのは、目の前の扉の向こうから聞こえてくる甘いスイーートな声だった。

そう、まるで萌え少女の声のように聞こえた。

そして目の前の部屋はキューエル卿の部屋。

断じて萌え萌え少女の部屋ではない。

それなのに何故、男で友達が居なさそうなキューエル卿の部屋から、甘美なキューティクルボイスが聞こえてきたのだろうか??

僕は暫し考えた。

真剣に考えた。

マジに考えた。

そして結論が出た。

 

これは…幻聴だ!!

彼女どころか友達が居そうにもない、キューエル卿の部屋から女性の声が出るなんてありえない!

しかも聞こえてきた内容はあーんして、だ!

あーんだと!??!

あーんというのはあのあーんか!?

あーんというのはあのあのあーんであっていいのか!?!?

キューエル卿にそんな事羨ましいシュチュエーションがあるなんて考えられない。

というか認めたくない。認められない。僕の全人生にかけても。

きっとあれだ。

度重なる戦場の日々に僕の心は想像以上に疲れ果てているのだろう。

その疲れが僕にこんな幻聴を聞かせてしまったのだろう。

こいつはまずい。

この荒れきった心を直ぐにでも癒さなくていけない。

早くラウンズを辞めて、戦場という悲しすぎる舞台から逃げ出さなくてはならない!!

改めて軍を辞める決意が沸き立ってきたぜ。

しかし、とりあえずは僕の心の砂漠を癒さなくてはならないな。

僕の心を癒す為に、萌えの天使。

アーニャタンに電話をしよう。

そしてアーニャタンのストロベリーな声で僕の心を癒してもらおう。

嗚呼…目を潰れば思い浮かぶぜ。

僕とアーニャタンの未来会話が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はいもしもし☆

アーニャです♪』

 

『やあ、アーニャ。

僕だよ、アクアだよ』

 

『アクア!?

アクアなの!?』

 

『ああ、そうだよ。

元気だったかい?』

 

『もー!アクアッたら!

エリア11に行ってから全然連絡くれないんだからぁ★

さびしかったんだよ!すっごくさびかったんだよ!

もう!ぷんぷん☆だよぉ!!』

 

『ごめんよ!アーニャ…』

 

『でもぉ…久しぶりにアクアの声が聞けて…アーニャ嬉しい♪』

 

『アーニャ…僕も君の声を聞けて嬉しいよ…』

 

『アクア…好き♪』

 

『二人はそして伝説へ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何て会話に違いない!!!

ああああああああああああ……聞こえる!聞こえてくるよ!

脳内翻訳機能がかかったアーニャタンとの会話が!!!

ほんのちょっと、僕の脳内願望が混じっている気もするがノープロブレム!

とってもノープロブレム!!!

 

まじ二人はそして伝説へだ。

ここから勇者ブトの物語は始まる。

壮大な伝説の幕開けだ。

素晴らしいィィィィ!素晴らしすぎるゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

結婚式の準備をしろ!ブーケはまだか!?

新婚旅行は僕は秋葉原が良いと思います!!

あ、しまった。

アキバは廃墟のまんまだった!!

でもどっちみち素晴らしいィィィィィィ!!!

ビバ!ヴァージンロード!祝!我らの素晴らしき人生よ!!

人間賛歌は此処から始まる!

 

 

 

 

 

 

「おいおい。

食事位自分で食べさてくれよ

恥ずかしいからさ」

 

 

 

 

 

 

その声で僕の現実逃避は終わってしまった。

 

……ふう。

どうやら神はこの僕に安息な逃避を行う事を許してはくれないようだ。

すまない。

アーニャタン。

君との甘美な脳内妄想会話はまた後でさせて貰うよ。

少し待っていてくれ。

直ぐに君の元へ駆けつけるから。

 

 

 

『うん☆私待ってるからね♪

でも早く来てくれないとアーニャおこっちゃうよ★』

 

ああ、わかってるよアーニャタン。

 

心の中のアーニャタンに誓いの言葉を紡いでから、目をつぶる。

此処で一つ、気持ちを落ち着かせる為に深呼吸。よし。

これで僕は冷静になれる。

 

OK。OK。

KOOLに考えようぜ。

アクアKOOLに行こうぜ?

そうKOOLにな?

 

今聞こえてきた声はキューエル卿のものだ。

しかしその内容が問題だ。

 

 

食事位自分で食べさてくれよ

 

これ重要。

凄く重要。

物凄く重要。

テストに出る位に重要。

 

食事位自分で食べさせてくれよ。

つまりこれは自分以外に食事を食べさせてくれる相手が、今部屋に居るという事だ。

ましてこの口ぶり。

相手は看護婦さんなどとは違い、相当親しい間柄ではないかと思われる。

いや、看護婦さんでも凄く羨ましいけど。

血涙が出るくらいに羨ましいけど。

 

恥ずかしいからさ。

 

そしてこの言葉も重要だ。

恥ずかしい。

つまりは食べさせてもらっている所を第三者に見られたら、恥ずかしいと言っているのだ。

キューエル卿が自ら食事を取る事も出来ないような、状況であるならば其処まで恥ずかしいものではないだろう。

つまりキューエル卿は自分で食事をできる程度の負傷であると考えられる。

 

さて此処で問題だ。

ではこれらの事を考えて、キューエル卿は今誰と話しているかを答えなさい。

この難しい問題に皆は悩むだろう。

しかし僕には答えが解っている。

そう。考えるまでもなくね。

 

答えは………キューエル卿の妄想です!

もうファイナルアンサーな勢いで妄想です!

あまりにも友達が居ないキューエル卿は、一人っきりの入院生活に耐え切れず、ついつい妄想の世界に逃げてしまったのであろう。

そしてその妄想の内容がついつい口から出てしまったのだ。

何て哀れなキューエル卿だ。

でもその気持ちはもの凄く解ります。

よく僕も妄想の世界に逃げているから。

 

さて、部屋の中ではキューエル卿が妄想の中に旅立っているのだ。

そんな中僕が部屋に入っては、キューエル卿の妄想の邪魔をしてしまう。

僕はこれでも空気が読める男なのだ。

決してKYではないのだ。

しかし凄いなキューエル卿は。

あんなストロベリーな声を裏声とはいえ出せるのだから。

もう、女の子の声にしか聞こえなかったよ。

さて、答えが出た所で、さきほどから待たせているアーニャタンの所へ行かねば!

もう一度…アーニャタンとの未来会話を思い浮かべちゃうぜ!

アーニャタンとのストロベリーなトークで乾ききったこの心を癒しつくすぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はいもしもし☆

アーニャです♪』

 

『ふ…。

アーニャよ。

私だ、アクアだ』

 

『アクア!?

アクアなの!?』

 

『ふ…そのとおりだ。。

息災であったか?』

 

『もー!アクアッたら!

エリア11に行ってから全然連絡くれないんだからぁ★

さびしかったんだよ!すっごくさびかったんだよ!

もう!ぷんぷん☆だよぉ!!』

 

『ふ…許すが良い、許すが良い』

 

『でもぉ…久しぶりにアクアの声が聞けて…アーニャ嬉しい♪』

 

『ふ…アーニャ…私もだ…私もお前の声を聞けて嬉しく思うぞ』

 

『アクア…好き♪』

 

『ふ…二人はそして伝説へ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何て会話に違いない!……って、あれ?何か僕のキャラに無理があるような…。

何だか僕のキャラが大分変わっている気がするのだろうが、気のせいだろうか?何かふ…が付きすぎている気がする。

そして一人称も変わっている気がする。

うーむ…キューエル卿の妄想のお陰で、僕の素敵な未来妄想に支障がでてきたようだ。

こいつは中々に深刻な事態だぜ。

 

 

さて、素敵な未来妄想で大分時間を潰せた。

そろそろキューエル卿の妄想タイムも終わって、下手すれば賢者タイムに突入している頃だろう。

頃合だ。

僕はそう判断し、今度こそノックをしようと、腕を振り上げて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何恥ずかしがってるのよ。

キューエルは怪我人何だから、黙って口をあけなさい!

はい、あーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

扉の向こうから聞こえてきた言葉に、

再びその腕を止めた。

 

 

 

 

………何て事だ。

 

未だにキューエル卿の妄想ダイブが続いていたとは。

妄想内容はあれかな?

怪我をして動けない自分に可愛い彼女が甲斐甲斐しく世話をしてくれるという妄想かな?

まったく可哀想なキューエル卿だ。

未だにこの妄想というラビリンスから抜け出せていないと言うのか。

ああ、いいとも。

僕は前に言ってるが、空気を読める男なのだ。

キュエール卿が妄想の世界に旅立つというのならば、僕もそれを待とうではないか。

そうだ。

キューエル卿は妄想しているのだ。

決して女の子ときゃっきゃうふふしているのではないのだ。

もう一度脳内のアーニャタンを呼び起こす。

 

 

 

 

 

 

 

『はいもしもし☆

アーニャです♪』

 

『HI!アーニャ!

ミーです!アクアでーす!』

 

『アクア!?

アクアなの!?』

 

『そうでーす!

GENKIでしたかぁ!?』

 

『もー!アクアッたら!

エリア11に行ってから全然連絡くれないんだからぁ★

さびしかったんだよ!すっごくさびかったんだよ!

もう!ぷんぷん☆だよぉ!!』

 

『ソーリー!ソーリー!セニョリータ!』

 

『でもぉ…久しぶりにアクアの声が聞けて…アーニャ嬉しい♪』

 

『OH!アーニャ…ミーの愛しいマイエンジャル…』

 

『アクア…好き♪』

 

『OH…二人はそしてレジェンドへ……』

 

 

 

 

 

 

そうそう!こんな会話あるある…ってねえよ!

何だ!?僕のキャラが半端なく崩壊しているよ!?

何がHI!だよ!?何がOH!だよ!?そんな台詞間違っても言わんわ!

何で僕が日本人から見た、典型的なブリタニア人になってるんだよ!?

もう、教科書に出ても可笑しくない典型的なブリタニア人だよ!

 

 

だーーーー!駄目だ!キューエル卿のあまりの妄想に僕の心が惑わされている。

こりゃ駄目だ。こりゃいかん。こりゃあかん。

思わず関西弁になっちゃうほど…あかん!

おのれェェェェェ!キューエル卿!

この皇帝直属の騎士団の一員であり、ナイトオブセブンの称号を掲げるこの僕を!

このアクア・アッシュフォードを此処まで追い詰めるとは!

やるな!キューエル!

 

心の中で僕をここまで追い詰める、キューエル卿の妄想に賛辞を送る。

 

だが…貴様の妄想もこれまでだ!

 

そう!僕は僕自身の心を守る為に、目の前のこの扉を開ける!

この扉を開けて僕の姿を見せれば、如何に妄想マスターたる、キューエル卿とて妄想を辞めて現実へと帰ってくるだろう。

さあ、現実へと帰る時が来たのだよ!キューエルよ!!

 

此処で僕は一つ深呼吸。

そして自らの腕を掲げる。

今から僕が奏でるノックはさながら、世界の終焉。ラグナロクの訪れを告げるギャラルホルンの角笛。

僕が…キューエル卿の世界を終わらせる。

 

 

 

 

「ううん…わかったよ、じゃあお前に任せるよ」

 

 

 

 

「素直でよろしい!

はい、キューエル。

あーんして」

 

 

 

 

 

扉の向こうから聞こえてくる声。

妄想妄想!

こんなの妄想じゃ!

妄想ったら、妄想じゃ!

 

 

 

 

「あ、あーん。

…………は…恥ずかしいものだな、これは」

 

 

「はいはい、恥ずかしがってる場合じゃないよぉ。

次はサラダねー」

 

 

やっぱり扉の向こうから聞こえてくる声。

妄想妄想!

こんなの妄想じゃ!

妄想ったら、妄想じゃ!!

妄想って言ったら、妄想なんだよォォ!!

頼むから妄想なんだよォォォォ!!

妄想じゃなかったら、マジ泣くぞォォォ!!

つうか殺すぞ!!

キューエル卿をマジで殺すぞォォォ!!

このナイトオブセブンの全てをかけて抹殺するぞォォォォォ!!

 

愛と怒りと悲しみと嫉妬と嫉妬と嫉妬と嫉妬と嫉妬と嫉妬と。

とにかく色んな感情を込めた僕のギャラルホルンの角笛。

そんなギャラルホルンな右腕は遂に…扉を叩く。

 

ゴンゴン!!と高らかにラグナロクを告げるのであった。

ちょっと、色んな感情が篭もって強くノックしちゃったぜ。

 

 

 

「あ、はーい!

どうぞ!」

 

 

そしてそれに答える声はストロベリーな妄想な声。

妄想の声が聞こえたと同時に僕は、部屋のドアの開閉ボタンを押す。

ドアがスライドして、部屋の中の状況が僕の眼下に広がる。

 

そして僕の目に入ったのは、ベッドで上半身を起こしているキューエル卿。

これはいい。

これは問題ない。

凄く問題ない。

 

だがその他の情報がいかん。

いけない。

いけな過ぎる。

 

キューエル卿のベッドの隣に備え付けられている椅子に座る人物が居る。

その人物は僕の姿を見て、目を丸くして驚いている。

 

その人物がいかん。

いけない。

いけないにも程がある程にいけな過ぎる。

 

その人物。

其処には、美少女がいたのだ…!

僕と同い年位の、オレンジの髪をセミロングとした美少女がいたのだ…!

何が言いたいかと言うと、と・に・か・く!美少女がいたのだ…!!言いたくないけど大事な事なので三回言いました……!!

つまりはさっきまで聞こえていた会話は、キューエル卿の一人寂しい空想会話なのでは無く、この美少女としていたと言う事だ。

その考えに至った時、ある一つのビジョンが脳裏に浮かんだ。

そう、これはさながら信じていた相手に裏切られた、あの人物の心境ではないだろうか?

 

 

「アッシュフォード卿!?

わざわざ私の為にご足労を…」

 

キューエル卿が何やら慌てながら、話しかけてくる。

しかし僕にはその声に応える余裕などなかった。

 

そう…今の僕はあの少年の心と同じなのだから…!

 

 

 

 

その少年は幼き頃に母を亡くし、父から見捨てられ親族の下で育てられた。

しかしある時、父から一通の手紙が来る。

その手紙の内容はただ一言。

来い。それだけであった。

 

父の手紙に従い、赴いた先では信じられない事が何度も起きた。

 

人類の敵、使徒。

使徒を倒す最終決戦兵器、エヴァンブリオン。

そしてそのパイロット足る自分。

 

様々な出会いと別れ。

そして…仲間たちの傷ついた姿。

戦いは多感な少年の心を傷つけ、少年は一人心の中へと逃げてしまう。

そんな少年を救ってくれたのは、新たな仲間となった一人の少年…かれの友人だった。

 

その少年と友になり、心安らぐ少年。

しかし、その友人は実は人類の敵―――使徒だったのである。

友人の真の姿に、困惑し、嘆き、信じられず…そして憤怒する少年。

そして少年は敵を殺す。

少年の友人を殺すのだ…。

 

 

 

そう、僕は今その少年と同じ心だ。

 

具体的に言うと、こんな感じだァァァ!

 

 

 

嘘だ嘘だ嘘だァァ!!

 

彼が…キューエル卿がリア厨だったなんて…そんなの嘘だァァ!

 

『事実だよ☆認めなさい♪

そしてアクアだーい好き★』

 

今日大活躍のアーニャタンが僕の言葉を否定する。

そしてやっぱりアーニャタン萌え。

 

 

裏切ったな…!僕の気持ちを裏切ったな!

 

爺さんと同じで裏切ったんだ……!

 

 

 

 

 

 

正しく今の僕はこんな心境だ!!

今の僕はイブリシンジの気持ちが理解できる!理解できるぞォォォォ!痛いほど理解しちゃうぞォォォォ!

B・Tフィールドだって張れちゃう勢いだァァァ!

信じていたのに…。

キューエル卿は彼女が居ないって信じていたのにィィィ…!!

信じた結果がこれだ!ごらんの有様だよ!ごらんの有様なんだよォォォォ!

 

手前ェェェェ!キューエルゥゥゥゥゥ!

どう見てもこの子僕と同い年位か、下手したら僕より下じゃね!?

つまりはどう考えても未成年です、本当にありがとうございましたァァァ!じゃない!

 

 

 

手前!成人が未成年に手を出していいと思っているのかァァァァ!?

違法だぞ!?めっちゃ違法なんだぞ!?未成年に手を出したら捕まっちゃうんだぞ!?

それなのに貴様は…貴様はァァァ…!

このいたいけな美少女に、あんな事やこんな事やあんな事やそんな事までやったと言うのかァァ!?

クワァァァ!あんな事を詳しく説明したら、この話しが18禁になっちゃう勢いだぜェェ!?

僕は別に羨ましくて怒っている訳じゃない!

このキューエルが法を犯し、哀れな少女の為に怒っているのだ!

ああ、決して、畜生!!羨ましいィィィ!羨ましいにも程があるってもんだァァ!頼むから僕と代わってくれェェ!

何て思ってないからな!畜生!畜生!思ってる訳ないだろう!?この馬鹿野朗ォォォ!

 

 

 

心の中で血涙を流しながら、目の前の少女とキューエル卿を見る。

二人とも驚いた顔で僕を見ている。

しかし、僕の表情こそ無表情だが、僕の方が驚いている。

というか混沌に満ち溢れている。カオスで一杯だ。

今の僕なら黒魔術を使える位に心が嫉妬…じゃなくて、義憤に満ち溢れている。

義憤って言ったら、義憤だァァァァ!決して嫉妬じゃないぞ!畜生ォォォォォォォ!

 

 

 

キューエル!手前、覚悟しておけよ!?

病院を出たら、直ぐに憲兵達に通報してやるからな!?

いや、むしろ今すぐにでも通報してやるからな!?

僕を舐めるなよ!?このナイトオブセブンの立場を利用して、今すぐにでも逮捕してやるわァ!

このロリぺド野朗がァァ!貴様には人誅を食らわしてやるわァァ!

オンドゥルルラギッタンディスカーァァ!!オンドゥルルラギッタンディスカーァァァ!!

 

僕の決意は固まった。

キューエル卿!もう君に逢うことはないだろう。

暗い監獄の中で己が犯した罪に後悔するがいい!

 

「あ、あの!」

 

懐に閉まっている携帯に手を伸ばし、通報しようとした僕を止めたのは、キューエル卿に弄ばれた哀れな美少女からだった。

その声に思わず手を止めてしまう。

止めないでくれ!これは君を救う為なんだ!決してキューエル卿への嫉妬でするんじゃないんだよ!?

このロリペドキューエルは決して許してはいけない存在なんだよぉぉぉ!

何回も言ってるが嫉妬じゃないんだからなァァ!?こん畜生ゥゥゥゥゥゥゥゥ!

 

義憤に満ち溢れている僕に向かって美少女は更に一言。

 

「は、初めまして!

私はエリア11ブリタニア士官学校所属で、コーネリア総督の従卒を勤めております、マリーカ・ソレシィと申します!

あ、兄のキューエルがお世話になっております!アッシュフォード卿!」

 

 

 

 

 

…………OK、キューエル卿。

 

 

 

お義兄さんと呼ばせてください。

 


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