コードギアス 反逆のお家再興記   作:みなみZ

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7話

「アクア…もっとよく顔を見せて…」

 

ミレイ姉さんは僕の顔を両手で包むと、自らの顔と近づけるように僕の顔を寄せる。

まるでキスをするような瞬間。

実の姉に萌えたくないけど萌えてしまう僕という存在が憎い。

 

あれからまだ姉さんと抱き合ってます。

ちなみに僕の股間の本能寺は当の昔に炎上しております。

ああ認めよう。

僕は畜生にも劣る存在だと。

涙が止まらない。

止まってくれない。

お願いだから止まってくれ。涙。

 

よかった…。

前が隠れやすいマントを着ていて本当によかった…。

今この時だけ、こんなコスプレ全開の軍服とマントがラウンズの軍服で本当によかったと思う。

これで、普通の服で学園に来ていたら、僕は変態のレッテルを貼られていたことであろう。

 

 

「アクア…この馬鹿!」

 

「ぷげらっ!?」

 

バチンと辺りに響き渡る良い音。

両手で僕の顔を挟みこんで、暫し僕の顔を見つめていた姉さんは、いきなり僕にビンタをかましてきた。

手首のスナップが効いたとてもいいビンタです。

 

と、父さんにも殴られた事無いのに!…士官学校の教官にはめっちゃ殴られたけど。

ところで何で僕ビンタされてるの?

久しぶりに再会した姉にいきなりビンタされる憶えは無いんですけど!

 

「アクア…いきなりごめん」

 

僕の非難の視線を受け、姉さんは落ち着くように一つ大きく深呼吸をしてから、言葉を発してきた。

 

「でもねぇ!

あんた人に何も言わずに、何勝手に軍に入ってるのよ!」

 

…は??

いや、僕はクソ爺に、拉致よろしくで軍に入らされたんですけど?

 

姉さんが激昂しながら発した言葉はかなり意味不明だ。

本気で困惑する僕に気付かず、姉さんは僕の胸元に自分の顔を押し付けて更に言葉を発してきた。

そ、それ以上は近づかないでください!色々とやばいです!

マジでやばいんだってばYO!

 

「お爺様から聞いたわ。

あんたが私達アッシュフォードの為に…自ら軍に入ったって」

 

え゛!?

 

姉さんが発した言葉は僕を真に驚愕させる事を成功する。

 

「確かにあんたのおかげで、アッシュフォード家は立て直すことが出来たわ。

でもね!私はアクアの人生を無茶苦茶にしてまで、家を守ろう何て思ってなかったわよ!

私はあんたの姉なのよ!?お姉ちゃんにちゃんと相談してから行動に起こしなさいよ!この馬鹿!

…でもありがとうね。アクア」

 

姉さんは言いたい事を言い切ったのか、僕の胸に顔を埋めたまま、瞼を閉じてきた。

 

何そのサクセスストーリは??

僕が家を守る為に自ら軍に入るなんてありえねェェ!

絶対ありえねェェェ!天地が引っ繰り返ってもありえねェェェェェ!

 

クソ爺ィィ!

手前貴様がやった事を、ごまかす為にこんな戯言を姉さんに吹き込みやがったな!

周りを見て見たら、今の話を聞いていたのか涙ぐんでいる奴まで居るよ!

言えねェェ!言える訳が無い!

 

実は爺に拉致されて無理やり軍に入隊されました。

 

なんて、こんな空気で言えるかボケェェェ!

誰か責任者連れて来い!

 

おのれ…爺!おのれェェ爺!

 

僕は生まれて初めて、本気で人を殺したいと思ってきたぜ。

今すぐ僕のこの熱い拳を爺にぶち込みたくて仕方が無い!

 

「姉さん…。

お爺様は今学園にいるの?」

 

僕の言葉に、僕の胸に顔を埋めていた姉さんは、顔を上げてくる。

涙で潤んだその表情に一瞬爺に対する怒りを忘れてしまう。

やはり萌えは偉大だ。

この煮え滾る怒りすらも抑える事が出来るなんて。

 

「お爺様?

お爺様ならアクアが、学園に来るって連絡があった後、急に用事が出来たってブリタニア本国へ帰国したわよ」

 

爺ィィィィ!

逃げやがった!?逃げやがったよ!あの爺!

姉さんに萌えて、忘れかけた爺への怒りが再び噴火してきやがった!

 

「そういえばアクアに伝言を頼まれてたわ」

 

「伝言?」

 

姉さんが手を叩きながら発した言葉に、首を傾げる。

爺が僕に伝言…嫌な予感がする。

 

「ええ。

『めんごめんご』って伝えてくれって。

何かしらねぇ?めんごって。

玩具のめんこ?」

 

爺ィィィィィィィィィィ!

 

伝わってねえよ!

姉さんに伝言の内容が伝わってねえよ!僕には伝わったけどよォォォ!

しかも何だその謝り方は!?

何がめんごめんごだ、このボケェェェ!

何かその後にwマークとか(笑)が付いても可笑しくない軽さじゃねえか!

 

くアァァ!

もはや怒りを通り越して憎しみになってきたァァァ!

もう僕の怒りのセルフメーターが振り切れんばかりに上昇してるぜ!?

もう留まる事をしらねェェェ!今の僕ならダース・ブイダーにだってなれる勢いだ!暗黒面だ!ブォースが暗黒面でいっぱいだ!

 

 

「そうだ!すっかり忘れていた。

アクア!あんたに紹介したい人達が居るのよ!」

 

「僕に紹介したい人?」

 

訝しげに尋ねる僕に、姉は一つ頷きながら言葉を紡いできた。

 

「ええ。

とっても吃驚するわよぉ!

さ、ついてらっしゃい!」

 

それだけ言うと、僕の手を掴み、ドンドンと歩いて行く姉さん。

そして何故か付いてくる野次馬な生徒達。

 

あの…こんだけ衆目監視の中、この歳で姉に手を繋がれながら歩くって、かなり恥ずいんですけど…。

しかし唯我独尊で思い立ったら即実行の姉さんに、何を言っても無駄であろう。

しばし僕は露出プレイに耐えるような心境で姉さんに、手を引っ張られるのであった。

 

「さあ、此処よ!」

 

連れてこられた場所は理事長室。

クソ爺はいまブリタニア本国にいると言っていたから、この部屋の主である爺ではないだろう。

理事長室に気軽にこれる者で、僕に紹介したい人?

アッシュフォード家に関係のある者か?

 

「って、何であんたらこんなに着いて来てるのよ。

さあさあ、散った散ったァ!」

 

姉さんは暫し野次馬とかしていた、生徒達を猫を追い払うかのごとく、散らしていく。

生徒達はすこしゴネていたが、素直に帰っていった。

 

「じゃあ入るわよアクア!」

 

姉さんが先に理事長室に入り、僕を促す。

 

僕が中に入ると、其処には二人の男女が僕を待っていた。

 

 

その光景が信じられず、思わず目を瞬いてしまう。

 

 

それは死んだはずの二人。

 

 

僕の記憶よりも成長した二人の姿。

 

 

二人の事が信じられず、思わず姉さんの顔を見つめてしまう。

姉さんは一つ頷き、僕の背を押し、僕は更に二人へと近づく事になる。

 

 

 

近づき、二人の姿を改めて見る。

それは紛れも無い彼らの姿。

昔姉さんと彼らと僕で戯れたあの時から成長した姿であった。

 

 

僕は確信しながらも、何処か信じられないように二人の名前を呼ぶ。

 

 

 

 

「ナナリー!

義兄さん!」

 

 

 

 

「誰が義兄だァァ!

誰がァお前の義兄だァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

うん。

この反応は間違いなくルルーシュだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ二人は、あれからずっとアッシュフォードの元で」

 

「ええ。

二人を公式では死亡扱いとして、アッシュフォードが保護したの」

 

「そういうわけだ。

久しぶりだな。アクア」

 

「…お久しぶりです。

アクアさん」

 

「ああ二人とも、本当に久しぶり」

 

あれから僕達は理事長室のソファーに腰掛け、話し合っている。

僕の隣には姉さんが座り、向かい側のソファーにはルルーシュが座り、その隣には車椅子に腰掛けたナナリーがいる。

 

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとナナリー・ヴィ・ブリタニア。

 

神聖ブリタニア帝国の皇子と皇女であり、僕と姉さんのそれぞれの婚約者であった人物たちである。

二人の母親、マリアンヌ皇妃の暗殺で、皇位継承権を剥奪され、僕達の婚約は解消されたが、まだ僕が幼い頃、よく遊んだ幼馴染というやつだ。

 

 

「世間では死亡した身となると、名前を変えているんだろ?

何て名前にしたんだ?」

 

「ああ。

今はランペルージの姓で、ルルーシュ・ランペルージ。

ナナリーはナナリー・ランペルージだ」

 

え゛?

 

何で苗字だけなんだよ。

二人の昔の姿を知っている奴が見たら、お前たち兄妹だって即に解るのに、何で名前変えてないんだよ。

こいつはかなりやばいんじゃ…。

 

 

「二人を保護した時には、既にアクアは士官学校に通ってたからね。

流石に軍の中にいるアクアには知らせられなかったのよ。

軍にはこの二人の事内緒にしてね」

 

 

いや、姉さん。

そんな気軽に言われても…。

一応僕これでも皇帝直属の騎士なんすけど。

 

 

しかしルルーシュとナナリーに視線を向けると、僕を信じているような表情をしている。

流石に、元婚約者と友人にこのような顔をされたならば、その信頼に応えなければいけないか。

皇帝になんか突っ込まれたら、怖いなぁ。

あのおっさん恐ろしく感が冴えているというか鋭いというか。皇帝に隠している事が、ばれたらマジでやばいなこりゃ。

 

 

「二人の身元を知っているのはアッシュフォードの家の者だけ?」

 

僕の質問に、ルルーシュは一瞬考え込むような様子を見せたが、答えを返してきた。

 

「いや…。

他に一人知っている者が居る」

 

「居るのかい!?誰なんだい?」

 

「枢木スザク。

名誉ブリタニア人の…俺とナナリーの友人だ」

 

「枢木スザク!?」

 

「ああ。

知っているのか?スザクを?」

 

「い、いや。

名誉ブリタニア人という事に驚いただけさ」

 

その思いがけない名前に、思わず驚いてしまった。

そんな僕を不振そうにルルーシュが見つめてきたが、誤魔化す事にした。

 

しかしこんな所で、この名前が出るとは。

 

ユーフェミア殿下にサポートをしてやってくれと頼まれた枢木スザクが、まさかルルーシュとナナリーの知り合いとは…。

これって結構やばいんじゃね?

何かこの二人が軍にバレルのが、秒読みな気がする。

 

 

にしても枢木スザクルルーシュの友人とは。

この頭でっかちで、僕以外友人が居なかったルルーシュを友人とするなんて、そうとう人がいい奴なんだろうな。

 

 

まあ、僕もルルーシュとジノ以外友人なんて出来た事無いけどね!しかもジノはホモだし!

HAHAHAHAHA!

……死にたくなってきた。

 

 

それから僕達はお互いの現状を話し合い、それもひと段落すると、他愛無い話をする事になった。

七年ぶりに出会った僕達の溝を塞ぐ様に。

 

「ナナリー?

どうしたんだい。

さっきから黙っていて…体調が悪いのかい?」

 

「何!?

大丈夫か!?

ナナリー!?」

 

 

僕と挨拶をしたっきり、ナナリーが黙り込んで、元気が無いように見えたのが気になり僕がナナリーに尋ねると、ルルーシュは慌てたように、立ち上がりナナリーの傍へ寄り、その手を握った。

うーむ。

七年前よりもシスコンっぷりに磨きが掛かってるぜ。

 

 

「いえ…すみません。

お兄様、アクアさん。

私は大丈夫です。唯…」

 

 

ナナリーは呟くと、自らの見えない瞳で、自分の体を眺めた。

 

「このような姿でアクアさんに再び出会ったのが苦しくて…」

 

「ナナリー…」

 

 

どこか自嘲するかのような、ナナリーの呟きに、ルルーシュは辛そうに顔を顰めながら、ナナリーの手を強く握る。

 

 

ナナリーは僕達アッシュフォードの一族や、ルルーシュとナナリーの運命を大きく変えた、マリアンヌ皇妃殺害の日に大きな傷を負った。

視覚と足を怪我したナナリーはすぐさま集中治療室へと駆け込まれたのだ。

僕は集中治療室で治療を受けるナナリーは見たのだが、ナナリーの意識が戻ってからは、ナナリーが僕に会うのを嫌がり、会った事は無かった。

 

僕から見れば、ナナリーのこのような姿は既に見ているのだが、ナナリーからすれば、自分の傷ついた体を初めて僕に見せた事になるのであろう。

 

「ナナリー。

確かにナナリーはあの頃とは変わってしまったよ」

 

「アクア!」

 

「アクア!

何を言う…!」

 

僕の言葉にナナリーは更に顔を俯き、姉さんは慌てたように、僕の名前を呼び、ルルーシュは激昂するように、立ち上がってきた。

しかし僕はそれらを無視して立ち上がりナナリーの傍へと歩み寄り、ナナリーの傍で腰を下ろす。

 

「でもねナナリー。

この世には変わらない人間なんて居ないんだ。

僕はどうだい?

僕はあれから軍人となり、今では皇帝直属の騎士様でアッシュフォード卿なんて呼ばれているんだよ?

あの頃の僕からこんな姿、想像出来たかい?」

 

「いえ…」

 

僕の問いかけに、ナナリーは首を振りながら否定する。

ルルーシュと姉さんは先ほどは開いた口を閉ざし、僕達二人を見守っている。

 

 

「ルルーシュだって、姉さんだってそうだ。

今もどんどん変わっていく。

変わらない人間は存在しない。

例え大きく変わったとしても、それは新たな自分になったに過ぎないんだよ。

僕や姉さんやルルーシュが変わったように、ナナリーも唯少し変わっただけなんだから」

 

「はい…ありがとうございます。

アクアさん」

 

 

 

僕の言葉にようやく微笑んでくれた。

その微笑みは昔アリエスの離宮で見た、純真爛漫だったナナリーの微笑みとは違う微笑み。

でもそれはとても魅力的な微笑だった。

……なんか萌えました。ズキュンときました。

その萌えっぷりによせばいいのに、ついホイホイと僕の口が開いてしまった。

 

 

「でも変わったといっても、ナナリーには変わっていない所があるね」

 

「え?何ですか?」

 

 

素直に聞き返してくる、ナナリーの手をそっと握り、普段無表情な僕であるが、顔の筋肉をフル作動させ、ジノの王子さまスマイルを真似る。

歯をキラリンって感じで。

 

 

「ナナリーが…とても可愛いい女の子って事さ」

 

 

くさ!僕くさ過ぎ!マジでくっさー!

普段の僕なら絶対に言わない台詞をナナリーの萌えっぷりに釣られて、ホイホイと口走ってしまったよ!

ちょっと自重してくれ!僕!

恥ずかしさのあまりにサブいぼが出てしまうかもしれない!

 

 

「え…あ…その、ありがとうございます。

…アクアさん」

 

 

僕の言葉に、ナナリーは可愛らしく頬を染め、戸惑いながらも微笑みお礼を言ってくる。

なんつーか破壊力抜群の萌えです。

この笑顔でどんぶり3杯行ける勢いですな。

 

 

「でも、その…アクアさんも変わっていない所がありますね」

 

「え?何がだい?」

 

 

「…いつも暖かくて、どんな時も私を励ましてくれる。

…とても優しい所がです」

 

 

 

ぐっはーーー!

もう、吐血するぐらいに萌えました。

何だ!?この萌え萌えワールドは!?

ぼ、僕は今新たな萌えの境地って奴を垣間見た気がするよ…。

ここまで僕のハートを揺さぶるとは…ナナリーなんて恐ろしい子!

もはやナナリーが萌えの女神に見えてきた。

やはり萌えは世界を救う。

僕は確信したよ。

何時の日か、人は争いの愚かさを悟り、萌えの下に一つになるであろう。

それぐらいに萌えは偉大だ。

 

 

 

だが僕もまだまだ甘いな。

時と場所を間違えた。

僕の背後には嫉妬の鬼と化した、恐ろしいプレッシャーを放つルルーシュさんが待ちわびているのだから。

 

 

認めたくないものだな…若さゆえの過ちとは。

そして頼むから、落ち着いて下さいお義兄さま。

先ずは落ち着いて話し合いましょう。話し合えば分かり合えるはずです。多分。

 

 

「ぷ…くくく、あっはははは!」

 

僕がルルーシュのプレッシャーに脅えて、後ろを振り向けないでいると、不意に姉さんが大きく笑い始めた。

なんだろう?

そんなに僕がルルーシュに嫉妬されるのが面白いのだろうか?

こいつの嫉妬は執念深いから、大変なのに!笑ってないで、助けてくださいよ!

大切な弟の命がもしかしたら消されるかもしれませんよ!姉さん!

マジでヘルプミィィィ!

 

 

その場に居る全ての人間の怪訝そうな視線を受けながら、暫く姉さんは笑い続けていたが、流石に僕達の視線に気付いたようだ。

目じりに浮かんだ涙を手で拭いながら、言葉を発してきた。

 

 

「あはは!ねえ、昔を思い出さない?

昔、マリアンヌ様からアクアがKMのパイロットとして素質があるって聞いた時、ナナリーと私でアクアを自分の騎士にするって、取り合ったでしょ?

それでアクアに嫉妬してルルーシュが、アクアにドロップキックかましちゃったやつ!

あのルルーシュがよ!」

 

 

 

「あ、あれは!嫉妬したんじゃない!

ただ、俺をほったらかしにしていた事に怒っただけで…

というか会長!そんな古い事を今更穿り返さないで下さいよ!」

 

 

姉さんの言葉に、ルルーシュが顔を赤くしながら、慌てたように反論している。

その反応に、姉さんはまた笑い、それに釣られてか、ナナリーも笑い始めた。

益々顔を赤くするルルーシュ。

熱が篭もってそうな顔色だ。

 

 

 

 

 

 

それは僕達がまだ幼く、ルルーシュとナナリーがアリエスの離宮に住んでいた頃の話。

 

マリアンヌ様から、僕のKMFのパイロットとしての素質を聞いたナナリーが、自分の婚約者である僕を、将来自分の騎士にすると言い出したのだ。

そしてそれに対抗して、何故か姉さんも自分の騎士にすると言い張ったのだ。

 

自分の夫となる僕を騎士にすると言い出したナナリー。

 

自分の弟を騎士にすると言い出した姉さん。そもそも姉さんは皇族ですら無いのに。

 

二人はお互いに譲る気配が無く、ひたすら、不毛な戦争を続けた。

この戦争の主な被害者は僕だ。

というか、僕しか被害者がいなかった。

理不尽すぎる。

 

この二人の不毛な戦いは、意外な形で終わりを告げる。

 

四人で居ながらも、放置プレイをかまされていた、ルルーシュが何と、僕に向ってドロップキックをかましてきたのだ!

そしてそのドロップキックを食らい、倒れる僕。

何故僕が…。

本当に我ながら被害者過ぎる。

 

それからはグダグダになり、気付いたら、皆で揉みくちゃになりながら、皆で笑い合っていた、という何とも子供らしいエピソードだ。

 

 

 

しかしルルーシュは今でも、あの時の自分らしからぬ行動を恥じているようだ。

 

 

今も顔を真っ赤にしながら、反論して姉さんとナナリーを楽しませている。

そしてそれは僕もだ。

 

 

暫し、ルルーシュは顔を真っ赤にしながら反論ていたが、自分が道化のような立場に気付いたようだ。

不貞腐れたように、顔を逸らしながら、自分の席に着く。

 

不貞腐れたルルーシュを姉さんとナナリーが宥め、僕達は再びお互いの話を語り合った。

 

僕も姉さんもナナリーもルルーシュも。

 

何時までも楽しそうに。

 

今、この空間は七年前。

失ったと思っていたあの懐かしくも、幸せだった時と同じ瞬間であった。

 

 

おお、何かいい終わり方。

 


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