とある組織の構成員である青年ととある最凶の精霊のクリスマスイブのお話

原作の1年前の物語です

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クリスマスまでに間に合わせようとして間に合わなかったので狂三の餌になってきます


ナイトメア・イブ

今日はクリスマスイブ。しかも、雪が降っているホワイトクリスマスだ。

しんしんと雪が降っている中、俺、星咲 狂(ほしざき きょう)はシャクシャクと薄く積もった道を踏みしめて帰路についていた。

 

「はぁ・・・」

 

帰路についてから何度目かわからない溜息をする。そのわけは数時間前にさかのぼる。

 

いつもと変わらず、いやあえて変えずに仕事をしていた俺は司令に呼びだされた。

なんかやらかしたか?まさか、五河司令を愛でる会で盗撮写真を提供したのがバレたのか?それとも・・・と思いつつ向かうと開口一番

 

「星咲、もう休みなさい」

 

と言われた。どんな罵倒をされるのだろうか、楽しゲフンゲフン内心びくびくしていた俺は呆気にとられて「ふぇ!?」と変な声がでちゃって、五河司令からご褒美をもらっちゃったくらいだ。ありがとうございます!!

 

「今日はクリスマスイブでしょ?だからもう仕事終えてクリスマスをすごしなさい。ただでさえあんたは、ここに配属されてから一回も休暇を取ってないんだから、有給ありまくりなのよ。たまには家族とかに会ったらどう?」

 

こんな俺を拾ってくれた五河司令の善意を断るわけにもいかず

 

「わかり、ました・・・」

 

俺はうなずいた。

 

これはフラクシナスの構成員(家族)を自他共に誰よりも知ってる五河司令も知らないことだが、正直な話、俺と家族の仲は最悪だ。休暇を取らなかったのも家族に会いたくなかったからだ

理由は俺は以前務めていたAST(アンチ・スピリット・チーム)の最強と言われるほどだったが、ある出撃の時にある精霊に衝撃的な出会いをした。そのことがきっかけで精霊を殲滅することに疑問を持つようになり、そのままASTを退職。籍はどこかの駐屯地の隊長がやめてった時と同じ残っているらしいが、ASTが方針を変えない限り、俺が戻ることはない。

俺は正しいと思って起こした行動だが、この行動により問題が発生した。

俺の両親だ。

通常、ASTは家族にすら口外を禁ずる職業だ。口外された場合、顕現装置(リアライザ)を応用した記憶消去処理が行われ、厳しく罰せられる。だが、それには例外があり、家族が既に精霊、対精霊部隊の存在を認知している場合、それは行われない。

俺の場合、父親が元魔術師(ウィザード)で母親が技術士で父親が怪我でやめざるを得なかった時、ついてきたらしい。

俺がASTをやめたと聞いた時、母親はホッとした表情をしていた。一人息子がもう死地に行かなくて済むと思って安心したらしい。だが、父親がそうはいかなかった。父親は妹を精霊に惨殺されていたらしく、戦えなくなった自分の代わりにその精霊を惨たらしく殺せと怒り心頭だった。完全に居心地が悪くなったから、逃げるように俺は家を出て、天宮市にきた。

寝る場所もなく途方に暮れていたところに副司令の神無月 恭平に声をかけられ、住居と金、そして精霊のためにラタトスクに入った。

 

 

家族にはそれ以来、連絡を取っていない。

 

「ああ・・・意味もなく、思い出しちまったな・・・」

 

肩に軽く積もった雪を払いながら愚痴る。そういえば、クリスマスらしい食べ物なかったな。俺の脚は自宅から商店街へと向きを変え、歩みを続ける。

商店街はクリスマスムード一色だった。ところどころでクリスマス割引とかをやってる店があった。

とりあえずジンジャエールと肉、あとケーキ1ホールぐらい買っていくか・・・

 

「〇〇寒いぃ~」

「ははっ、一緒にマフラー巻けば問題ないだろう?」

 

どこで買うか・・・と考えているととある話し声が俺の耳に入ってきた。同じマフラーを二人で巻いてる男女。通称リア充。我々の敵。

そんなことを思ってるなんて露知らず、そのリア充は周りに関係なく桃色空間を展開している。良く見たら、そいつらだけではなく、それ以外にもリア充が蔓延っていた。

友人と呼べるのはフラクシナスの同僚だけというぼっちの俺には色々と辛いものだった。そそくさと買うもの買って、俺は商店街を後にした。

 

 

 

市街地の一角、一人暮らしするには大きすぎる自宅の門を開け、玄関の扉の鍵穴に鍵を刺し、ガチャリと開錠した。

 

「ただいま~」

 

扉を開け、誰もいないはずの家に声が響く。もちろん、返事はなかった。いや、逆に返ってきたらこえぇよ。

靴を脱ぎ、リビングのテーブルに荷物を置き、テレビをつける。どこのチャンネルもクリスマス特集だった。よく考えてみればそんなことは容易に想像できたはずなのにな・・・。

テレビを消し、二階の自室へと向かう。自室では俺の大雑把な性格か、衣服が散らばって床の半分近くが埋もれている。俺はそのことに気にもせず、下着以外服を脱ぎ捨て、適当な部屋着を着こむ。

携帯の充電がまだ十分にあることを確認すると、階段を降り、リビングへ戻る。

テーブルに置いといた袋から肉、ジンジャエールとケーキを取り出し、ボッチパーティの準備をする。

肉を皿にのせ、ジンジャエールを注ぎ、ケーキのロウソクに火を灯す。

 

「メリークリスマス」

 

皮肉を込めてつぶやき、グラスに口付ける。

 

「あらあら、メリークルシミマスではなくって?」

「ぐふぉ!!??」

 

突如として聞いたことのある声が聞こえ、誤って気管にジンジャエールが・・・・痛い・・・・

 

「ゲッホゲホ、お前さん、どこだよ・・・」

「後ろですわ」

 

返答を聞いた瞬間にテーブルに体をぶつけない様に距離を取る。俺が座っていた座布団の影が蠢き、人の形に変化する。

この現象には心当たりがあった。影から出てこないってことは“そう言う事”なんだろう。

 

「“本体”さんはどこだい?」

 

ダメもとで聞いてみる。元々彼女はある人物を探し、色々な場所を巡っていて、以前会った時は次は「オーストラリアあたりですかねぇ~」って答えてた。

影はクスクスと笑いつつある方角を指差し、人影は消えた。

その方向には窓しかなかったはずだがな・・・って、ああ!窓に!窓に!ツインテールの知ってる影が!!

俺は慌てて窓を開ける。そこには

 

「なにやってんだぁ。狂三!」

 

ミニスカサンタ姿で荷物を抱えながら凍えてる時崎 狂三の姿があった。

 

「狂さぁん、やっと気付いてくれましたね~」

 

露出している腕を擦りながら涙目で話しかける狂三。何かムラッとくるな・・・ってそんなことしてる場合じゃねえええええええええええええ!!

 

「お節介焼きの影ちゃんが教えてくれたのよ!とりあえず入れ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず狂三の体を家に入れ、めっちゃ冷たくなっていたから暖房を最大まで上げ俺がさっきまで着てたジャンパーを着せた。

 

「ほらよ、ホットミルクだ。飲め」

「ありがとうございます。いただきますわ」

 

俺からホットミルク入りのコップを両手で受け取り、フーッフーッと息を吹きかけてから飲み始める。

こうみると可愛いもんなんだよな。この目の前にいる美少女が“最凶最悪の精霊“識別名ナイトメアなんて一体誰が信じるんだ。

精霊識別名ナイトメア。

本人は時崎 狂三と名乗っているが、その正体は自らの手で1万人以上の人間を殺害したまさに悪夢(ナイトメア)な精霊。

身の丈を遥かに超える巨大な時計盤の姿をした時を操る天使『刻々帝』(ザフキエル)の能力で相手の時間を一時的に止めたり、自身の時間を切り離して分身体を作ったりできる。さっきの影もそれで切り離された分身体だろうね。

 

「で、本題だが、なにしに来たんじゃ?」

 

狂三がホットミルクを飲み干すあたりで聞いてみる。

 

「狂さんに逢いに来ましたの」

 

オーケェイ!一旦落ち着こう。たしかに狂三は人の時間(寿命)を奪う精霊だ。だけど、たった一人の時間のためにここまでするのかぁ!?

 

「何か勘違いされてませんか?」

「人の心を読むのはやめぇい!!」

 

勘違い、って狂三がそれ以外にわざわざ俺に逢いに来るか?

 

「私はただ純粋に狂さんに逢いに来ましたの。そのためにこんな恰好してきたんじゃありませんか」

 

えーっとつまり・・・狂三はただ、本当に純粋に俺に逢いにミニスカサンタの格好で雪が降っている中、待ってたっとことか!?

 

「ええ、そうですわ」

 

だから、心を読むのをやめろとry

 

「で、なにするんだ?ただこうだべってるだけ、なら外で待ってる必要ないもんな」

「これですわ」

 

狂三はゴソゴソと白い袋の中から某ケーキ有名店のパッケージの箱といくつかの瓶を取り出して100点満点の笑顔でこう言った

 

「二人でパーティしましょう」

 

 

 

 

 

どうしてこうなった・・・・

狂三からパーティしましょと言われ、即答で了承したのが間違いだったのか・・・?

 

「どぉぉぉしたんですかぁぁぁぁ?狂さぁぁぁん?」

 

俺の左腕に派頬を紅く染め、服がはだけて色々と危ない状況になってる狂三が絡みついていた。てかこれは誰がどうみても

 

「酔っぱらってるよな・・・」

「酔ぉぉぉぉっぱらってまぁせんわよぉぉぉぉぉ」

 

うん、確定した。酔っぱらっている。俺も狂三にお酌されて飲んだ時お酒だと気付いた。てか、腕に柔らかい二つのプリンががががががが

それにしてもいくら俺がもうASTじゃないからってこれは油断しすぎじゃないかな?それだけ危険視されてないと考えるべきかそれだけ俺を信頼していると考えるか。個人的には後者を押したい。約得だけど

 

「それにしても暑いですわ・・・脱いじゃいましょ」

「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!」

 

いきなり狂三がすくっと立ちあがったかと思えば服を脱ぎ始めた。急いで狂三の脱ごうとする手を止める。個人的には見たいがそういうのはこういう場では場違いだし・・・

 

「色々と不味いから脱ぐのやめろおおおおおお」

「あらあらあらぁ?なにがまずいのですかぁ?教えてくださりませんか?」

「くっ・・・・」

 

こいつほんとは酔っぱらってないんじゃないかな・・・

と、酔っ払いだから油断していたが、突然前触れもなく狂三に体を押された。

幸い倒れたところには座布団が置いてあり、頭は大丈夫だったけど肩甲骨あたりが地味に痛い。

その上に服をR-17.9ぐらいまではだけさせた狂三が馬乗りでのしかかってきた。

 

「狂三、いきなり何しやがるんだ?」

「キヒヒ、わかってるんじゃありませんの?」

 

うんだからあえてこれを言わせてもらう

 

「やめて俺に乱暴する気でしょ!?エロ同人みたいに!!」

「キヒヒヒヒ」

 

狂三が余計にもたれかかってくる。色々と柔らかくていい匂いがしてもう頭がパァーン状態だよこんちくしょー!!

狂三の顔が眼前に広がる。見れば見るほど狂三ってべっぴんさんだな。

 

「きひ、きひひひ。大丈夫ですわ。すぐに終わりますわ」

 

そういって狂三は俺を影へと引きずり込んだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんてのはゆめだった」

 

そんなことはなかった。狂三が俺の家で俺を押し倒すなんてありえねぇな。それにちゃんとパジャマに着替えてるからありえねぇし。

まあ、とりあえず飯作るか

 

階段を降り、リビングに入る。するといい匂いがぷ~んと漂ってきてエプロンを着た狂三が朝食を作って・・・って

 

「ええええええええええ!!!」

「あら、おはようございます。狂さん」

「なんでいるの!?」

 

あれは夢だったはずだよな・・・・

 

「なんでって、昨夜あんなに求めてくれましたと言うのに・・・」

「求めて!?俺なにしたの!?」

「なにしたって・・・ナニですわ」

「昨晩の俺ナニやってんのよぉぉぉぉぉ」

「あら?寂しいから行かないでくれって泣いて懇願してたじゃありませんの?そ・れ・と・も、ナニ想像したんですの?」

 

もうやだこの娘。

 

「さあ、早く食べないと遅刻しますわよ?」

 

狂三にせかされ、朝食が並べられたテーブルに向かい合って座る。

 

いただきます。

 

二人の声が重なる。なんだかんだで久しぶりのにぎやかな朝食。ふと気づいたら俺は笑みの表情を浮かべていた

 

昨日がどうであれ俺は狂三にこの言葉を送ろう

 

「メリークリスマス!!」




星咲 狂<ほしさき きょう> 年齢未定
所属 AST精鋭部隊→ラタトスク機関フラクシナス

元ASTのエースだったが、時崎狂三と出会いASTに疑問を持つようになり、そのまま退職。現在はフラクシナスに勤務している。
尚、手は出していない。

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