試験要項
以下に本試験の規則を示す。
受験生徒は以下の規則を遵守し、事故の防止に務めること。
その一・本試験は受験生徒同士の模擬戦闘である。本試験において能力以外での攻撃は禁止とする。
その二・本試験は本校に在学する生徒全員が受験するものとする。 受験時期は原則として小等部六年、中等部三年、高等部三年の二月とする。編入学など特殊な事情がある場合に限り、四月の始業式の日に執り行う物とする。
その三・本試験の結果により、次年度の学級を決める物とする。原則として、最終的に各学級の戦闘力が均等になるように割り振る物とする。
その四・本試験での武器の使用は不可とする。但し、自身の能力により創造した物を使うことは許可する。転移系の能力により武器を転送させて使用することは禁止する。武器の使用が確認された場合は停学、退学等の処分を下す事とする。
その五・本試験では生徒の安全を確保する為、肉体的なダメージを無効化し精神的なダメージに転化する精神結界の中で行う物とする。また、万一の事態を想定し脳や心臓、脊椎等への攻撃は禁止とする。
その六・規則違反が確認された時点で試験は中止とし、違反した生徒にはその危険度を元に処分が下される。対戦相手の生徒は別の生徒と再戦となる。他に生徒がいない場合は特例措置として教員と模擬戦を行う物とする。この場合は勝敗ではなく、どれだけ教員に対して戦えるかによって評価する。その為、模擬戦では能力レベルの最も近い教員が全力で戦う物とする。
本試験の規則は以上となる。各規則の詳細は後に記載されているので、生徒は全て確認をしておくこと。・・・・・・・・・
~
正午、影人と白葉は生徒会室に戻って来ていた。
部屋に入った二人を出迎えたのは、目つきの悪い少年と人懐っこい顔の青年だった。
「お、帰って来たな・・・ってあれ?あの犬ッころはどうしたんだ?」
と流が影人に問う。
「犬・・・?ああ、玄と銀のことですか。彼らは犬じゃなくて狼なんですが・・・。いま二匹は地形を覚えるために校舎を回っています。そろそろ戻ってくる頃合いだとおもいますよ。」
「おお、そうか・・・え?狼?」
さらっと告げられた事実に、流は口を開けて唖然とする。
「大丈夫なのか?うちの学校にも動物が苦手な奴は多いぞ?」
眉をひそめて焔が問う。
「ええ、問題はありませんよ。僕が一緒にいないときは隠密行動をとるように言ってありますし、そもそも人を襲うような子たちではないですから。」
「ならいいんだが・・・」
完璧に納得はしていないような顔だが、それ以上の追求はしない。
「ところで・・・要項に書いてあったことに質問があるのですが・・・」
「ん、なんだ?俺に答えられる範囲でいいなら答えるぞ。」
それを聞いた影人は手に持った要項のある箇所を指差す。
「僕の試験の相手は教員の方なんですよね?これには『レベルの近い教員が全力で相手をする』とありますが・・・僕の相手となる先生は誰なんですか?」
「あー・・・ちょっと待ってくれるか?」
そういって焔は机の上とノートパソコン上の資料を確認する。
「・・・見つかんねえな。そんなわけはないんだが・・・」
そう焔が小さくつぶやいたとき。
ズギャァン!!!
すさまじい音を立て、扉が真っ二つに分かれた。
横に。
「その質問には私が答えるわ!」
その扉の先には、竹刀を振り抜いた姿勢の琴音がいた。
「・・・会長?いくら時逆先輩がいるからってそう気軽に物を壊すのはどうかと思うぜ?」
「そんな怖い顔しないでよ焔くん。やっぱり生徒会長たるもの登場シーンには気を使わないと。」
「知らねえよ。登場シーンのたびに背後が爆発する戦隊ものヒーローかあんたは。」
「し、辛辣ね・・・」
ジト目の焔と、頬に汗を垂らす琴音。
そのうしろで、流が扉の残骸に触れる。
「・・・はあ、もういちいち言うのもめんどくせえな」
「いつもごめんね~」
「・・・『
数秒後、扉は動き出し、20秒後には何事も無かったように戻った。
「なあ、会長さんよ・・・」
「どうしたの、流くん?」
額に汗を滲ませた流は琴音に右手を差し出す。
「修理費、二千円になります。」
「・・・あ、後で払うわよ。」
「・・・何やってるんですか琴音さん。」
呆れたまなざしで琴音を見る影人。
琴音はバツが悪そうに眼をそらしてから、コホンと小さく咳ばらいをする。
「さ、さて。さっきの影人くんの質問に答えるわね。」
そういって琴音は紙の束を取り出す。
「どこから出したんですか・・・」
「ふふっまあいいじゃない。まずは白葉ちゃんの相手からね。」
「・・・別に私は・・・知らなくても良い・・・。」
影人の後ろに隠れていた白葉が顔だけ出して小さく言い、また影人の後ろに隠れる。
「はうっ・・・か、かわいい・・・!」
「琴音さん、話を進めて下さい。」
「はっ・・・こ、コホン。まあそういわないで聞いてちょうだい。」
そう言って琴音は手に持った資料を数枚めくる。
「白葉ちゃんの試験相手は、中等部の歴史担当の井土いづち先生ね。能力は『
「レベル3、ですか。まあ丁度いいんじゃないですか。」
と、特に興味もなさそうに影人は言う。
「あら?レベル3って割と高いほうだと思うけど?」
「白葉なら大丈夫でしょう。そもそも今回の試験は勝敗が問題ではないのですよね?」
「ええ、その通りよ。ま、影人くんがそういうなら問題ないのでしょう。」
そういいながら琴音はさらに資料をめくる。
「で、次は肝心の影人くんの相手だけど・・・高等部の数学担当の金剛先生よ。」
「はあ!?会長、なに考えてんだよ!?」
琴音の答えを聞いた焔が驚愕の声を上げる。
「金剛っつうと、無駄に高い戦闘能力がある通称筋肉ゴリラのことだろ?」
「筋肉ゴリラって・・・先生に対してそんなこと言うもんじゃないわよ、焔くん。」
「あの・・・話を進めていただいていいですか?」
話に置いて行かれた影人が怪訝な顔をしながら問う。
「あ、ごめんなさいね。えっと、じゃあ話を戻すけど・・・影人くんの相手となる金剛先生の能力は『
レベル3と4は数値上の差は一つだけだが、実際の戦闘能力の差は非常に大きくなる。レベル4になることが出来るのは才能を持つ者だけであり、上にいく才能があるものは下の練度も高くなる。
レベル4以降の能力者は、レベル3までの能力者とは完全に別物なのである。
この命強学園でも、レベル4を超えている教師はほんの一握りなのだ。
普通に考えて、新入生の試験相手としては相応しくないだろう。
焔の過剰とも言える反応は、ある意味当然のことである。
が、しかし。
「・・・レベル4、ですか?」
影人の表情は、驚きでも不満でもなく、理解し難いと言いたげな怪訝な顔だった。
「あら?不満かしら?」
「いえ、不満と言うか疑問ですね。僕の相手が先生というのは理解できます。しかし何故そのレベルの人にしたのですか?」
試験である以上、様々な事柄を決めるのは教師であるはずだ。しかし影人はある種の確信を持っていた。
この対戦相手カードを決めたのは、間違いなく琴音であると。
琴音は影人の疑問には答えず、誤魔化すように薄く微笑んだ。
「ふふっ、影人くんなら分かるでしょ?」
「・・・はあ、昔から変わってませんね、琴音さんは。」
影人は小さくため息をつく。
「そうかしら?私としては色々変わったと思うけど。」
「変わった、と言うより成長したのでしょう。昔と比べて琴音さんは大人っぽく、そしてとても綺麗になられましたが・・・根っこの部分は昔と同じでいたずら好きのようですね。」
影人が何気なく言ったその言葉に、琴音はわかりやすく狼狽する。
その頬は僅かに紅く染まっていた。
「な、何よ突然・・・ていうか昔の私は綺麗じゃ無かったって言いたいのかしら?」
「まさか。琴音さんは昔から・・・いえ、いつだってとても魅力的な女性ですよ。」
誰の目にも照れ隠しと分かる琴音の言葉に、影人は淡く微笑みながら答える。
控えめに言っても『歯の浮くような台詞』であったが、影人はごく自然に、本心から言っている事は周りの目にも明らかだった。
もうはっきりと顔を赤くした琴音とは対照的に、影人の後ろに隠れていた白葉は無表情ながら不機嫌そうな雰囲気を出していた。
胃もたれしそうな甘い空気と、胃が痛くなるようなギスギスした空気が同居するひたすら居心地の悪い空間で、蚊帳の外に置かれた男子二人は顔を見合わせ無言でため息をついた。
そんな体に、主に胃に良くない空気は、部屋に響いたチャイムの音と同時に霧散した。
「あら、もうこんな時間?影人くん、白葉ちゃん、そろそろ行きましょうか。」
と、いつもの調子を取り戻した琴音が時計を見ながら言う。
「試験場は第三運動場よ。少し遠いからそろそろ出発しましょう。」
「第三って・・・この学校はいくつ運動場があるんですか?」
「影人くん、自分の入学する学校のことくらい調べておかないとだめよ?」
「あはは・・・返す言葉もありませんね。」
と、影人は苦笑いする。
「ま、そのことは後でいいかしら?」
「そうですね。ところで、試験場は遠いんですか?」
「そうねえ・・・少なくとも、校門から生徒会室までの距離よりは遠いわね」
その答えを聞いた影人は少し顔を顰める。
「それは割と距離がありますね。歩いて行くのは厳しそうです。」
「相変わらず体が弱いわね、影人くんは」
「仕方ないじゃないですか。」
そう言いながら影人は生徒会室のドアを開け、指笛を吹く。
「玄、銀、おいで!」
と、影人が呼ぶと音もなく二匹の狼が現れた。
現れた二匹の狼を見て琴音が目を丸くする。
「あら、この子たちがあのクロちゃんとギンちゃんなの?大きくなったわねぇ。」
「なんか近所のおばさんみたいな言い方ですね・・・。まあ琴音さんが前にこの子達を見た時は二匹とも子供でしたからね。ああ、琴音さんは知らないと思いますが、今はもう一匹いるんですよ。」
「ふふっいつか会ってみたいわ。」
そんな他愛の無い話をしている間に、影人は玄の背に乗る。
それを見た琴音は納得したように頷く。
「ああ、影人くんはその子に乗って学校に来たのね。」
「ええ、そうですよ。琴音さんもご存知の通り、僕は自分で動くことが得意ではありませんから。・・・さ、じゃあよろしく。琴音さんについて行けば良いから。」
と言いながら影人は玄の背を撫でる。それに答えるように玄は低く吠えた。
「さ、じゃあ行きましょうか。この学校について、歩きながら色々説明させて貰うわね。」
「お願いします。」
影人がそう言うと、琴音は歩き出す。そしてそれに黒い狼と影人が続き、その後ろから銀と白葉、そして流がついてきた。
「えっとじゃあ簡単に説明するわね。この学校には七つの運動場があるんだけど、その内の偶数番号が屋内運動場で、通称闘技場って呼ばれてるわ。で、奇数番号は屋外運動場。闘技場もかなり広いんだけど、屋外運動場はさらに広くてね。それこそちょっとした学校くらい広いのよ。」
「どんだけの敷地があるんですかここは・・・」
「ふふっ・・・まあここは国内でも数少ない特殊な学校だからね。」
「にしても度が過ぎますよ・・・。ん?ていうことは第三運動場は外なんですか?」
「ええ、そうよ。」
という琴音の答えを聞いた影人は顔を顰める。
「・・・暑そうですね。」
「いくら何でも軟弱が過ぎるわよ、影人くん・・・」
「軟弱じゃないです。虚弱です。」
「いや、影人くん体の強さに関しては最弱ともいえるわね。」
「・・・ほっといて下さい。」
そこで影人は何かに気付いたように琴音を見る。
「あの、琴音さん。運動場ってことは基本何も無いってことですよね?」
「うーん、まあそうともいえるわね。」
と、何処か誤魔化すように琴音は答える。
「そうとも言えるって・・・ちゃんと教えてくださいよ。」
「まあその辺は直接見てもらった方が早いのよ。到着してからのお楽しみってことで、ね?」
そう言って琴音はいたずらっぽく微笑む。
世の男性が見れば10人が10人心を奪われるようなその可憐な表情を見た影人は、しかし小さくため息をついただけだった。
生徒会室を出た約15分後、一行は件の運動場に到着していた。
ちなみにその道中、多くの人の注目を集めたが、誰1人として気にする者はいなかった。
「ここが第三運動場ですか。・・・なんか本当に何も無いですね。」
影人たちがやって来た運動場は、異常になまでに広い平地であった。また、運動場の周囲には客席があり、そこには多くの生徒が座っていた。
「ていうか何ですかこのギャラリーは。」
「ああ、みんなこの学校の生徒だぞ。」
影人の疑問に答えたのは、いつの間にか生徒会室からここに来ていた焔だった。
「いやそれは分かってますよ。僕が聞きたいのはなんで試験なのにイベントみたいになっているのかってことですよ。」
「イベントみたい、じゃない。これは紛うことなきイベントだ。全員なまじ戦闘向けの能力を持っているだけに、誰かが戦う場面を見るのが大好きなんだよ。」
「・・・血気盛んですね。」
呆れたように呟いた影人は、いつの間にか琴音が居なくなっていることに気付いた。
「あれ?琴音さんは何処に行ったんですか?」
「ああ、会長なら実況席にいったぞ。」
「実況席!?いやもうこれ試験じゃないですよね。」
「だから言ったろ、イベントなんだよこれは。そもそも編入生ってだけで大分注目されてるんだ。仕方ねえだろ」
そう語る焔だが、どことなくこの空気を嫌っているような雰囲気を発している。まるで、戦いを好む人間の感情が理解できないと言っているかのように。
その思いを察した影人は、これ以上焔に話しかけることを止めた。
と、そのタイミングを見計らったかのように、影人の服の裾を引っ張る者がいた。白葉である。
その白葉は無表情のまま運動場を指差し、
「・・・大丈夫?」
と影人に問う。
何が、とは聞かずに影人は答える。
「まあ大丈夫だよ思うよ。いやもちろんこのままだったら、暑いし影もないから辛いけど、琴音さんのことだからきっと何かしら企んでるから。」
「・・・そう。・・・無理は、しないでね。」
「うん。なるべく早く終わらせるよ。」
そう微笑みながら白葉の頭を撫でる。
「白葉こそ頑張ってね。」
「・・・問題ない。」
と、その時運動場のスピーカーから聞きなれた声が聞こえた。
『皆さん、大変長らくお待たせしました。時間となりましたので、これより試験を始めます。』
その聞き心地の良い声は琴音のものである。
試験を始めるのに『皆さんお待たせしました』はおかしいだろう、と思いつつも影人はもう突っ込むことはしない。
『実況は私、生徒会長の霧裂琴音が勤めさせて頂きます。解説は、高等部の科学担当の
『よろしくお願いします。』
まるでスポーツ中継のようなやり取りに影人は頭痛を覚える。
『さて、では時間をありませんので早速始めて行きましょう。』
琴音がそう言うと同時に、運動場が青い光で満たされる。
それは段々と強くなり、遂には直視出来ないような強い光となる。堪らず影人は目を閉じる。
そして、直後にその光が弾けた。影人が目を開けると、先ほどの光は淡く小さくなり、運動場を漂っていた。
『はい、これでダメージ変換用の精神結界が起動しましたね。それでは、選手・・・じゃなかった、受験生徒と教諭は入場して下さい。』
その言葉に従い、影人は淡い光が漂う空間に足を踏み入れた。
境界線を超える瞬間に僅かな違和感を感じるが、それもすぐ霧散する。
相変わらず何も無い空間だが、空気が明らかに違った。
「これが精神結界ですか・・・なかなか面白いものですね。」
「そうだろう?最先端の技術を結集して作り上げた、この国の誇るべき発明だ。」
影人の独り言に答えたのは、逞しい体を持つ中年の男性だった。これだけの巨体が歩いてきたというのに、奇妙なほど気配がない。そもそも何処から現れたのか。
不可解な点が多い中、影人は微塵も動揺せずに話す。
「僕もそう思いますよ。肉体のダメージを無くすだけではなく、それを精神ダメージに転換するなんて、普通じゃ無理ですからね。」
「ほう、君は驚かないんだな。私は素人なりに気配を消していたつもりだったのだが。」
「ああ、いえ、気配はそれなりに消えていましたよ。一般の方なら目の前にいても認識できない程度には。ただ変に気配が薄かっただけに違和感がありましてね。余計に気になってしまったんです。」
その言葉に男性は感心したように頷く。
「ふむ、君はなかなかに面白い生徒のようだ。名はなんという?」
「いや、試験相手の名前くらい知ってて下さいよ・・・まあいいですけど。
僕は高等部一年に編入する闇乃影人と申します。あなたは金剛先生でよろしいですか?」
「いかにも。高等部数学教諭の金剛
「では本日はよろしくお願いします。」
同じ漢字が二回続いてるよ、と突っ込みたいのを我慢しつつ、影人は礼をする。それに続いて男性・・・金剛が礼をする。
顔を上げた金剛は、影人の顔をみて少し怪訝そうな顔をする。
「闇乃よ。なにやら顔色が優れない様だが大丈夫か?」
「ここは元気よく大丈夫だ問題ない、と答えたいところですが・・・正直あまり大丈夫じゃないです。長時間直射日光に当たるのは辛いので・・・早く始めたいですね。」
「ふむ、わかった。では試験を始めるとしよう。」
そう言うと金剛は右手を挙げる。それを確認した一人の男性教諭が、運動場に降りてくる。
「準備がよろしいようなので、開始します。審判は私、佐藤が勤めさせて頂きます。細かいルールは事前に確認済みだと思いますので、説明は省きます。」
教諭はそう言うと、地面に手をつく。
「それではまず、公平を期すためにフィールド生成を行います。『
教諭が高らか叫んだ瞬間、運動場に変化が起こる。
何も無かった運動場の右半分・・・金剛側に、様々な種類と大きさの石や金属が現れた。
そして左半分、影人側は闇が広がり夜のように暗くなった。
「これは・・・?」
「佐藤先生の能力だ。お互いが同じ条件で戦闘が出来るように世界を書き換えることができる。」
「凄まじいですねそれ。」
「まあいくつか制約があるらしいがな。」
そこまで語り、金剛は唐突に身構える。
「さて、ではこれより試験開始だ。生徒である闇乃からかかって来るといい。タイミングは任せる。」
「・・・分かりました。では少し待って下さい。」
そう言って、影人は懐から何かを取り出す。
それは丸くなった蛇をモチーフに作られており、そしてその蛇は己の尻尾を咥えて・・・否、喰らっている。
それはウロボロスを象った時計だった。
「能力戦闘可能時間、残り三分・・・ですか。」
その時計を見て影人は呟く。
その言葉に、金剛が一瞬驚いたように目を見開く。
「三分だと?それはどういう意味だ?」
「言葉通りの意味です。それ以上は僕の体が、と言うか体力が持たないんですよ。」
そう言いながら影人は時計を懐にしまう。
「では、お待たせしました。それでは、始めるとしましょう。」
「・・・三分で試験が成立すると思っているのか?」
と、金剛が問う。それは怒っているのでははく純粋な疑問だった。
そしてその疑問に影人は穏やかに笑いながら答える。
「ええ。だって三分以内に決着をつければ良いだけですから。」
そう言いながら影人は虚空に手を伸ばす。
「お言葉に甘えて、僕から行かせて貰います。『
影から創り出した拳銃を、影人は金剛に向ける。
「行きます。『
そしてそのまま、引き金を引いた。