だが長門は帰ってこなかった
捜索も打ち切られ、誰もがあきらめたとき、戦艦長門は戻ってきた
敵として戻ってきた
北方棲姫と共に「盗みを働くために」
戦艦長門 元聯合艦隊旗艦 現在はながもん
北方棲姫 北海道の北東の島に住む深海棲艦 ほっぽちゃん 飛行機コレクター
タコヤキ ほっぽちゃんの艤装、空を飛ぶ 爆弾を搭載できると思う 食用不可
戦艦扶桑 でかい、おかげでジュークボックスが使えない
長門は立ちつくしていた
戦場を目の前にした兵士の反応は様々だ
死に怯え動けなくなる者
自分が助かることしか考えていない者
無謀ともいえるほど勇敢に戦う者
仲間のためだけに戦う者
わたしはそのうちのどれだ?
多数の砲弾がこちらへ向け飛んでくる
それでも長門は動かなかった
そのうちの2つが命中した
1発は右の足に
もう1発は左の砲台に
それでも苦痛の表情を浮かべない
ただ1点を見つめたままでいる
周りの仲間が安否を気遣い、声をかけてくるが
今の長門にとってそれは耳障りなものでしかなかった
視線の先、ひとりの白い少女が泣いている
倒れた女にかぶさるように、必死に体を揺さぶっているが女が反応する気配はもはやない
女はやがて光に包まれ、光が消え去るとそこには何も無かった
白い少女が天に向かって咆哮をあげる
体が揺さぶられる
何事かと目を開けるとそこには白い少女がいた
「ん、ほっぽ、どうした?まだ夜も明けていないではないか?トイレか?」
「ナガトー、ダレカキター。ケハイガスル―」
時計を見ると午前5時
「ほっぽ、お前は布団に戻りなさい。わたしひとりで行ってくる」
「ヤダッ!ホッポモイク!イッショニイク!」
一度こうなると言うことを聞いた試しがない
「では用意しろ。ちゃんとトイレは済ませておくんだぞ」
「ウン」
ほっぽは駆け出していった
それを見送り眠気まなこをこする
さて行くか、まったく夜くらいちゃんと寝ればいいものを、あいつらは本当に勤勉だな
長門は部屋の外に出ると、大きく背伸びをした
満月が煌々と輝いている。
目の前にはその光に照らされた山があった、高さは50メートルほどの富士山のようにきれいな稜線をもつ山だ
長門はその山の一合目付近に手を突っ込み、何かを取り出す
46センチ砲である
しっかりと艤装のマウントに取り付ける
そして再び艤装の山に手を突っ込み、体に取り付ける
長門はその作業を目にも止まらぬスピードで100回ほど繰り返す
その姿はみるみるうちに膨らんでいく
その大きさや艤装を装備した画面上の戦艦扶桑の比ではない
出撃準備作業を終えるとほっぽがやって来た
「ナガト―!マッテー!」
「あわてるな、一緒に行くんだろう、暗いからな、足元に気を付けるんだぞ」
長門はほっぽの手を取る
「ちゃんとタコヤキは持ったか?」
「ウン!」
ほっぽはもう片方の手に持ったタコヤキを長門に見せる
白色のドッジボールほどの大きさの球体
目はないが口のようなものが開いている
「よし、行こう。今日は敵に空母がいると良いな?」
「ウン!ゼロ、レップウ ヨコセ!」
二人で砂浜へ向かう
ここは北の島
少し肌寒いが繋いだ手はあたたかかい
そのうしろ姿は実の親子のようであった
そのころ戦艦金剛4姉妹と正規空母赤城、そして軽空母龍驤は北の島からほど近い海上にいた
目を凝らすと水平線より少し手前に島が見える
今回の作戦目的はこの北の島に住むとされる白い少女から、秋刀魚を奪う任務
「三式弾で焼き払うデース、いいデスかー?へそで紅茶が沸く前に片づけるデース!」
「「「はい!お姉様!」」」
戦艦4隻はティーカップを片手に優雅に砲撃体勢に入った
「一航戦の誇り、もぐもぐ、慢心しては、もぐもぐ」
正規空母は戦闘糧食をむさぼっている
「って誰が甲板胸やー!!」
軽空母は虚空に向かってツッコミの練習をしている
「フォロミー!皆さん攻撃を始めるデース!砲撃をかいs
金剛の言葉はそこまでだった
狙いを定めるために正面を見たのだが、空を砲弾が埋めている
金剛は思考を真面目モードに切り替える
こちらが放ったものではなく、向かってくる
命中コースだ
長年の経験からそう判断した
着弾
体に衝撃を感じる
けたたましい音が数秒遅れてやってきた
遠くに巨大な水柱が上がる
長門は砲撃体勢から体を緩ませた
300の砲身から煙がもうもうと上がっている
砲撃を行った反動で足が砂浜にめり込んでいる
やはり、46センチ砲100スロットは重いな
そう思いながら、話しかける
「ほっぽ、敵の様子はどうだ?」
敵の状況を調べるため、事前にタコヤキを発艦させておき
タコヤキから送られてくる情報をもとに砲身の角度を微調整した
「ウン、ロクセキトモ ウゴカナイ キゼツシテル」
「そうか、では行くぞ」
長門が膝を折り、身を屈めると、ほっぽは長門の頭の後ろに飛び乗る
肩車をしてもらったほっぽの笑顔は輝いていた
意識もうろうとしていた金剛は、なんとか周囲を見渡す
誰かが近づいてきた
とどめをさされると思った金剛は目を見開く
そこにいたのはかつての同僚
そして我が国最大の裏切り者だった
金剛の意識が暗闇に溶けていく
長門は戦艦4隻から水上走行器を残して、装備を外していく
ついでに呼吸ができるようにうつ伏せの者を仰向けにひっくり返した
金剛4姉妹のスロットは全て空になった
長門は持参した風呂敷を広げ、そこに奪った装備を放り込んでいく
「よし、今日も大漁だな」
満足そうにうなずく
一方のほっぽは空母2隻が倒れているほうへ向かう
ほっぽはあおむけに倒れている龍驤を見て何か違和感を感じた
龍驤の胸の部分が膨らんでいる
おかしい、そう思ったほっぽは龍驤の服に手を突っ込み胸の部分を探る
するとゼロ戦が出てきた
「ナガト―!ゼロミツケター」
「そうか、ありがたく頂戴しておけ。ちゃんとお礼はいうんだぞ」
「ウン。シラナイヒトー、アリガトー!」
「よしおうちへ帰ろう」
長門はほっぽの手を引き6隻から離れていく
これが長門とほっぽの日常である
無事帰宅
長門は風呂上りに腰に手を当て、コップに入った重油をぐびぐびと飲んでいる
ふとほっぽに目をやる
ほっぽはもらったゼロの上下をひっくり返すと機体の胴体部分にある名前記入欄から『龍驤』の文字を消し、マジックペンでこれでもかと大きく『ほっぽ』と書いた
アクタン・ゼロが誕生した瞬間であった
長門はその様子をほほえましく見ながら思う
二度とこの子を悲しませたりしない
またあいつらがやって来たら
また装備を奪えばいい
その繰り返しだ
それでいい
今はただそう思う
この子からはもう何も奪わせはしない
アクタン・ゼロ 龍驤の落とし物、アメリカ軍が回収
もしかしたら
次回、 烈風を奪え!