拒絶の血、光抜の速鬼   作:鏡狼 嵐星

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テストやらなんやらでだいぶと遅れてしまいました。
いや~、親がうるさくてねー(言い訳)
設定について何かおかしい点があれば、遠慮なく聞いてください。
ちなみに参考にしたのはぬらりひょ○の孫です。

追記 時系列的に3話から2話に変えました。次の更新はこの後の出来事なので、3話としてあたらしく投稿します。


速の字を持つ少年と堕ちた天使の幼子

暗い夜に光り輝く街並みが目立つ。ネオンライトがうっとおしいぐらいに強く光るので町の中にいなくてもその町がしっかりと見える。そんな街の隣にある山のてっぺんにある木の上に一人の少年が立っている。腰には細く刀のような金棒。まだ少年といってもいいほど外見は幼い。しかし、その眼光は鋭く、子供のようには感じない。

 

「この辺りは大丈夫か」

 

そう呟きながら町を見下ろす。彼の手には数枚の町の地図があり、そのうちの一枚はこの街を指しているようだった。

 

「最後はここか……」

 

一番後ろにあった地図を引っ張り出し、広げる。その地図の右上には『駒王町』と書かれていた。

 

「隣町まで二十キロほどか。なら一分と少しで着くな」

 

木の頂上から身を躍らせたその瞬間にその姿が掻き消え、わずかに風が巻き起こる。その風はわずかに渦巻き消えた。

 

日向雅がこうやって街を回っているのは観光のためでも、遊んであるわけでもない。彼にとって一番ともいえる理由、妖焔山のためである。妖怪たちの集まりである妖焔山がなぜこんなことをするのか、それは悪魔や堕天使などと妖怪の根本的な違いにある。

 

悪魔や堕天使は人間と同じように子をなして繁殖する。それに対して妖怪は生殖ができるようになるには、そういった専門の妖怪でない限りは人型にならないとできないということ、そして弱い妖怪たちはあらゆる種族の恐怖から生まれる存在であることがある。端的に言えば、妖怪は恐怖という感情さえあれば、生まれることができる。人型になるにはある程度の実力が必要となるが、それを除けば、妖怪はどこからともなく生まれるので他の種族のようにまとまる必要がないのだ。

 

ただし、そうであるがゆえに純血が減っている悪魔などとは違う問題が生じる。それはその妖怪に対しての恐怖心が消えると死んしまうという、強者や有名な妖怪でないとすぐに直面する問題があった。これらのことがあり、最初はだれも組もうとはしなかった。そこへ現れたのが、柴死雲外鏡と紅黒零狼王の二人である。彼らは強力な妖怪たちをとてつもない速さでまとめ上げ、神の信仰に付属したあるシステムを作り出した。

 

それは様々な地域に存在する土地神の信仰を使い、弱い妖怪たちの恐怖へと変換するというものだった。もちろん土地神を様々な敵対勢力から守り、人に信仰させる手伝いをすることが条件だが、このシステムを作った時からこの組織は圧倒的な速度でその勢力を伸ばしていったのだ。もともと神に対する信仰心は『畏れ』であり、妖怪に対する恐怖心は『懼れ』であるため、本質的には同じなのだ。よって、弱い妖怪の名を知らしめることはできなくても、神から力を分けて与えることはできると考えた結果であった。

 

土地神は祠の数だけあるといってもおかしくないほどいるので、それを管理するのに日向雅の能力、いや魔法はとても有能なのである。

 

「ここにある神社は十二か……。早く終わらせてしまおう」

 

町の端にある古びた神社に降り立つ。すっかりさびれてしまっているが、奥の社から光は耐えていないところを見ると、この場所の神は消滅していないことになる。

 

「おや、日向雅くんか。毎回悪いねぇ」

 

そこから扉をすり抜けるように出てきたのは初老の男性。白い着物を着ているという点以外は普通にそこらにいる人と何も変わらなさそうではあったが、不思議と敬いたくなる感じがした。

 

「これも仕事なんで」

 

「君はまだ小学生なんだろう? しっかりすすぎてて、心配しちゃうくらいなんだから」

 

苦笑いされてしまったことが不満なのか、少し表情をゆがませる。しかし、苦笑いから一転、険しい表情になったのを見て、何かあったのかと聞いた。

 

「嫌な予感がする。僕の神力の力は予知。この街で何か大変なことが起きそうだ、人が呪い殺されるような嫌な」

 

下を向いていた男性が顔をあげると、すでに日向雅はいなくなっていた。いや、その瞬間風が起こったので、それを探しに行ったことが分かった。

 

「はぁ、無茶するよ。一応妖焔山に連絡を入れておこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町の中にある建物の屋上を飛び回り、それらしき人影を探す。普通なら見落とす頬のスピードだが、日向自身はそのスピードでも周りを確認できているので問題はなかった。

 

「町中じゃない……!?」

 

てっきり街中でそういう行為に及ぶものだと思っていた日向雅は拍子抜けを食らった。町を探したが見つからない、つまり家の中かそれこそ町の外で会いかあり得ないと思ったそのとき、

 

「!! まさか」

 

その考えが間違っていることを祈りながら町のはずれにあり、この街で唯一巫女のいる神社へと向かった。神社に上がるための会談の入り口にたどり着いた時には、すでに何者かが戦闘を行っているような音が響き、人払いの結界が張られていた。

 

「くそっ!!」

 

呪い殺すならば、よほどのことがない限りは一般人は殺さない。それこそ、特殊な力を使うようなものに対して(・・・・・・・・・・・・・・・・)使うのが呪いだ。そうたとえば、巫女のように。

 

一気に階段を駆け上がって上にたどり着くと、五名ほどの男が怯えた表情をした子供を抱えている女性が一人で戦っていた。その女性が巫女らしき格好をしていたことにより、自分の考えが正しいことを知った。

 

「『風貫 群青』ッ!」

 

自分に青い魔力がまとわれる感覚とともに自分の速度が上がる感触を感じながら、女性に切りかかろうとした一人の男に腰に下げていた金棒を叩きつける。男たちも巫女も抱えられている少女並みに押さない少年が戦いに介入してきたことに驚く。

 

「貴様っ、何者だ!? 見たところただのガキか? 早くここから去れ、さもなくば、お前も殺すぞ?」

 

「何をしてるの、あなた!? 逃げなさい!!」

 

立ち位置から前後から声が降りかかる位置にいる日向雅は気怠そうに息を吐き、声を張り上げた。

 

「俺は妖焔山の妖怪の一人、杵槌 日向雅であるッ!! 俺からも問おう、妖焔山の管理下にある神社、その重要な役割を持つ巫女にお前らは何をしようとしていた?」

 

『妖焔山』というワードを着た瞬間、少女以外は顔を少しゆがめたが、すぐに男どもは表情を戻す。

 

「われらはそこにいる堕ちた天使の忌み子を殺すためにここにいるのだ、そこの巫女に用はない」

 

リーダー格と思われる鋭い眼光をした男がにらみを利かす。しかし、その程度に屈しはしない。

 

「ならば、なおお前らの罪は深い。次代の巫女を殺そうとしたことには変わりないからな」

 

金棒を両手で持ち、腕を上げ、顔の横まで持ってくる。戦闘態勢に入ったことを察した男たちはそれぞれの獲物を構えた。それぞれかまがまがし魔力を感じるため、されらすべてが妖等に近いものだと分かった。

 

「子供だからと言って加減はせぬぞ」

 

「上等だ」

 

「あ、あなた何を戦おうとして、キャッ!?」

 

リーダー格の男に反論をした刹那、速度を一気に最高速にあげ、突っ込む。子供ゆえの身軽さを利用し、あらゆる角度から死角を狙う。

 

「ぬ、なかなかに早いな。だが、攻撃が軽すぎるぞ、糞餓鬼」

 

すべて剣で流される。日向雅自身も攻撃がそんなに軽く通用すると思ってもいないし、これで倒せるなんて思うほど自惚れてもいない。最初の基本的な方から徐々に体の無駄な動きを排除していき、速度を変化させ、最初の時点とわずかにラグを生じさせる。それにより、

 

「うぐっ!?」

 

隙が増え始める。初撃は掠る程度ものだったが、傷であるのは確かであった。しかし、一人に集中しすぎていた日向雅は周りにへの配慮が分散していた。リーダー格の男からの攻撃でできた視界の隅に見えた、少女の後ろから切りかかろうとしていたこの場にはいなかった男の存在に初めて気づいた。それに巫女も気づいたのか少女の上に覆いかぶさる。そこへ向かおうとするが、攻撃に隙を見つけられず、無理やりはじいて向かおうとするが、

 

「甘いわ!!」

 

金棒を持っている腕に一撃をもらい、肉が裂けた感覚がした。だが、その痛みも無視し、速度を上げ、切りかかろうとしていた男の体に体当たりするが、一歩遅く、すでにわずかではあるが背中を切られていた。

 

「チッ」

 

彼く舌打ちをしながら、切りかかろうとしていた男の溝に一発入れて気絶させ、残りの男たちに金棒を向ける。

 

「やけに張り切るな。お前が受けたのは『二斬必殺』と呼ばれる呪いだ。これはな、一回切っただけでもしっかりとした呪いとして働くが、二回きられると必ず死ぬ呪いを持っている。その腕では戦えまい。獲物を捨ててこちらへ来い、楽にしてやる」

 

後ろで苦しむ巫女の声が少しの間響く。

 

「誰が、投降などするか。そうならば、もう一度触れずにお前を殺せばいい」

 

金棒を地面に突き刺し、服の一部をかみちぎり、聞き手に巻き付けながら背中に回し、体にくっつけるようにして固定する。左手でもう一度金棒をつかみ、構えなおす。

 

「も、もうやめてぇ」

 

巫女の下にいる少女から消え入りそうな声が聞こえる。だが、日向雅は純粋に問うた。

 

「ここでやめてどうなる? どっちにしろ死ぬのが変わらないなら、惨めでも、滑稽でも、戦って死んだほうが何もしないよりもましだ」

 

少女が黙り込んだのと同時にリーダー格の男が笑い出す。

 

「ふふふ、お前も戦士か、そうなのか。先ほどは無礼だったな、杵槌 日向雅よ。お前ら、手出しはするな! こいつは俺が全力をもって殺す」

 

両手で剣を持ち、しっかりと相手を見据えるその様子はまさに殺しがそこにあるようだった。

 

「姫島家『裏』筆頭。すまんが名は言えぬ、(けい)とでも呼んでくれ」

 

「妖焔山所属、二つ名は『速』、杵槌 日向雅」

 

「……お前、その外見で文字持ちか、なるほど納得だ」

 

妖焔山はある程度の実力を持ち、仕事である程度の成績を出せば、二つ名として漢字が与えられる。その漢字の数が多ければ多いほど実力が高いとされる。

 

先に飛び出したのは日向雅。左手というハンデがないと思えるほどの的確さで荊を狙う。しかし、荊もそれをいなしながら、攻撃を続ける。それが数分の間にわたって続けられたそのとき、真上から落雷が降り注いだ。

 

「大丈夫かぁっ!? 朱璃ぃ、朱乃ぉ!!」

 

雷とともに現れたのは必死の形相のこわもての男性。だが、背中に何枚かの黒い翼があるため、堕天使だと思われた。

 

「うぬ? あれはバラキエルか。今回の暗殺は失敗ということだな。撤退だ撤退」

 

襲撃者たちは各々が脱出をしていく。堕天使のバラキエルと呼ばれた男はそんなことを気にしていない。

 

「朱璃!? 大丈夫かっ!!」

 

「あなた、私は、大丈夫。だから、あの、子を……」

 

巫女に駆け寄った堕天使がこちらを向いたのをわずかに、意識が暗くなって切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れかけた少年を受け止める。第一に思ったのは、

 

「軽い……」

 

状況を見る限り、戦うことができない朱璃と朱乃を守ったのは彼だろう。だが、そんな彼の体は外見相応、いやそれよりも軽い気がした。

 

「おとうさん、その子、お母さんと同じで剣にズバッてされちゃったの!!」

 

朱乃が心配そうに見上げてくる。朱璃の実家である姫島家の刀ならそれは非常にまずい。

 

「分かった! 今すぐ、アザゼルのところへ……!!」

 

朱璃とこの子の呪いを治せるとして一番早くついてかつ可能性が一番可能性が高いのはあいつだ。今すぐにでもと思ったその時だった。

 

 

 

 

「ああ、その必要はねえよ」

 

 

 

 

突如として聞こえた第三者の声。後ろを振り返ると、きれいな柴銀色の髪をなびかせた悪魔のような翼をもつ青年だった。

 

「あなたは……?」

 

「今はそんなことどうでもいいだろ。その奥の巫女、とっと連れてこい」

 

支持されるがままに朱璃を連れてきて、少年のそばへ並べた。なぜか信頼できてしまった、名も知らぬこの青年を。

 

「『両像変形(アビス)』」

 

空中に突如鏡が現れたかと思うと、二人の顔色がよくなり、傷がふさがっているように見えた。

 

「この二人は絶対安静だ。んで、そこの小さいの。お前巫女見習いだろうが、回復魔法の初期でも何でもいいから顔色が少しでも変わったらかけてやれ」

 

そういうと、踵を返し、神社から去ろうとする。

 

「待ってください!! あなたの名前は?」

 

「んあ? しがない柴死雲外鏡だ」

 

後ろ向きのまま手を振り、もう一度目を開いた時にはもういなかった。

 

「柴死雲外鏡……? まさか、そんな」

 

「おとうさん! 早く家に運んで!!」

 

「お、おう、わかったよ、朱乃」

 

いろいろ疑問が残ったが、ひとまずはこの二人だ!


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