拝啓 女神さま、どうもこんにちは、柊葵です。
今回は手紙っぽく書いてみることにしました。
拙い文ではありますがどうぞお付き合いください。まあ脳内お手紙ですけどね。
ではさっそく本題に入りたいと思います。
オレ、やっちゃいました。
多分きっと恐らくは
オレ、やっちゃいました。ヤバいです。マジでヤバいです女神さま。
ルイオスさんという由緒正しきコミュニティのリーダーさんを勢い余ってぶん殴ってしまいました。にも関わらず何故かお礼を言われる始末。彼も色々あったみたいです。これからは友達になってくれるそうなので良かったのかな?
では、またいつか。敬具。
◆ ◇ ◆ ◇
"ペルセウス" との激闘から約二週間。これといて目立ったこともなく日々は流れている。とても平穏な毎日だ。時たま、色々と頭を悩ませることもあるがそれなりに楽しんでやっている。
今やこれがオレの現実といえるだろう。夢幻のように思えるこれがオレの立つ世界だ。チートな人外、高圧的なお嬢様、無表情な親友、大勢のちびっこに半獣人さんがいて "彼女たち" もいる。もちろん、彼もオレの友達になってくれた。
結局のところ答えは分からない。自分の身に何が起きているのかも分からない。現実か、幻か、もうどうでもいい。考えるのはまた女神さまに会った時で構わない。ただ今は、前だけを見て生きていこう。
投げやりな自身を嘲るように脳内で愚痴を零し、閉じていた瞼をそっと開ける。
眩しい。先程から感じていた二つの異和感のうち一つはこの日差しにあったようだ。
カーテンの隙間から入り込んだ日の光がオレの顔を的確に捉え、肌を焦がす勢いで攻め立てる。
容赦ない攻撃から逃れるため、光を遮ろうと右手に力を入れた瞬間、二つ目の違和感の正体に気がついた。
「なるほど。キミが原因だったか、アル」
「……ごしゅじん、しゃま~……えへへ~らめれふよ~」
掛け布団の上からオレに抱きつく形で眠る少女。彼女の名は "アルゴール"。ヤ―さんと同じ星霊の悪魔であり、元・魔王。そして、現在オレ専属のメイドさんだ。
彼女がオレたち "ノーネーム" のもとへとやってきたのは先日行われた "ペルセウス" 戦が終わった日のこと。あの日オレは柄にもなくぶちギレてしまった。目の前で
少し話が逸れたな。えっと、ルイさんをぶっ飛ばした後、オレは彼女を虐げる楔を出来る範囲内で断ち切った。全身に刻み込まれた畏怖の痕をギフトで癒し、自由をその手に。
流石に心の傷まではどうにも出来なかったので今後ケアしていく必要があるのだが本人曰く「ご主人様がアルを愛してくださるのなら過去のことなど記憶から抹消出来ます。さあ結婚しましょう」だそうだ。よく言うよまったく。
よだれを垂らしながら気持ち良さそうな顔で眠る少女の額に一発デコピンをおみまいしてやる。
「にゃふ、もぉ~ごしゅじんしゃましょこは~……えへへ」
ダメだ。間違いなく逆効果だったに違いない。
この子はオレを萌え死にさせるつもりか、と脳内で文句を垂れ、よだれに浸食されないようアルの髪を避難させてやる。
綺麗な白銀の髪だ。女神さまのとはまた別のベクトルで美しい。心なしかいい匂いもする。
「おっと、くすぐったかったかな。ごめんね」
少し気に障ったのか鼻に近づけクンクンするオレの手元から髪たちはするりと逃げ出していく。
蛇のような動きを見せる彼女たちをオレは『|蛇神三(みかみさん)』と命名し、親しみを込めて接している。
名の由来は胸の辺りまで伸びた二つ結びのおさげと前頭葉辺りから "にょろり" と垂れ下がる特徴的なあほ毛が三匹の蛇のように "にょろにょろ" と動き回るから『|蛇神三(みかみさん)』ということにした。
オレの謝罪の言葉に "シャキン!" と決めポーズを取り、再び横たわる|蛇神三(みかみさん)。
きっと許してくれたに違いない。一つ目の違和感の原因である日光全反射攻撃はなかったことにされたが、まあいいだろう、おあいこということで。
さて、今現在の状況をまとめてみると、このそこそこ広めの部屋にはオレとアルの二人がいて、誰かに見つかりでもしたら面倒なことになる、こんところか。
……ヤバいな。これは今日もひと騒ぎ起きそうな気がするぞ。オレは一体どうすればいいんだ。
これから起こるであろう事柄に対し、どのように対処すれば一番被害が少なく済むのかを思考していると不意に "コンコン" という木製の扉を叩く音と "おはようございますぅ~" という目覚めの朝をお知らせしてくれる可愛らしい声がオレの耳へと届いた。
最悪だ。毎朝毎朝どうしてこう二人は鉢合わせしてしまうんだろうか、昨日はしっかりと鍵をかけたはずなのに。
恐るべきデジャヴュ感に苛まれながらも、フラグ回収に余念のない彼女が運よく戻ってくれることを願う。
しかし、無情にも現実はオレの想いを聞き遂げてはくれなかった。
『あれ? 開いてる? 葵さ~ん、起きてらっしゃるんですか~? 入りますよ~』
ガチャリ、とドアノブが水平から垂直へと九十度下に回される。
「失礼します。おはようございます葵さん、朝食の準備がととの……」
ドアノブに手をかけたまま固まる少女。
特徴的な狐耳に彼女のために製作されたのでは、と錯覚してしまうほど可愛らしく着こなす割烹着。
ちびっこ精鋭隊筆頭、年長組リーダー、シェフ、という三つの肩書を併せ持つ彼女の名はリリちゃん。
相棒の二尾さんを引っ提げ今日も元気にオレを起こしに来てくれたらしい。ごめんよ。
「………………だえ?」
せめてそのまま眠っていればいいものを、オレの上で横たわる少女が寝ぼけ眼で応え、二人の間に気まずい空気が流れる。
オレはそっと瞼を閉じ、規則正しい呼吸とともにまた現実から目を逸らした。
瞬間。そこそこ広めの部屋に怒声が響き渡る。
「だ、だだ、だだだ誰ではないですよーッ!! な、何をやってらっしゃるんですか!」
「ん? なんだタヌキか。見て分かんないの? 朝這い」
パンッ、とハリセンの軽快な音が一つ。黒ウサギさんの持つ極悪武器 "素敵ハリセン" だ。
そういえば「一本お借りしてるんですよ、どこかの誰かさんが悪さをしたときように」とか言ってたな。ニコニコ笑顔で。
あれは凄かった。一緒に聞いてたちびっこ精鋭隊のお二人なんて恐さのあまり震えながらオレの足に抱きついてたし。
「二重の意味で間違ってますよ!」
「痛いぞタヌキ。アルを打ってもいいのはご主人様だけだ。まあ今回だけは許してやる。何せ愛しのご主人様はアルの腕の中に、えへへ♪」
「むぅ……そうはいきませんからね。今日という今日は決着を付けさせて頂きますよ!」
ぷくっ、と可愛らしく頬を膨らませ怒りを露わにするリリちゃんに対し、アルは左手で首元のチョーカーの存在を確認しながら「勝手にどうぞ」と気の抜けた返事をする。
「ご主人様はアルのものであり、アルはご主人様のもの。何の問題もないし、お前の入る余地は残されてない。お分かりかな、タヌちゃん」
「ぐぬぬ……またタヌキってバカに。――てーいッ!」
威勢のいい掛け声が聞こえたと思った次の瞬間「ぬふっ!?」とオレの近くから驚きの声が上がった。
間違いない。必殺の弾丸タックルが炸裂したのだろう、腹から重みが消え、床にドサリ、と何かが落ちる物音が響く。
そして、「チッ」と一つ舌打ちが零れ落ちた。
「毎度毎度この黄色いタヌキはよくもご主人様との至福の時を邪魔してくれる。本当に目障りなヤツ」
「私はタヌキではありませんし、増して葵さんはあなたのものではありません! 葵さんは皆の葵さんです」
「黙れ。ご主人様を愛し、愛されるのはこのアル一人で充分。死んじゃえ――
「クソって…………ゆるし、ません……もう絶対に許してあげませんよッ!!」
『とりゃー!』という掛け声とともに今、開戦の火蓋が切って落とされた。
毎朝恒例『ロリっ子大戦争』
うわーめんどくせー、と脳内愚痴り&脳内溜息を吐き、部屋を縦横無尽に駆け回る黄色ロリと銀色ロリを尻目にオレは再び思考する。
正直この二人が朝からいがみ合うことに関しては文句はない。いや、多少はあるが気にならない程度だ。子どもの喧嘩くらい日常茶飯事だろうし。問題なのはオレの周りを飛んだり跳ねたりすることだ。
リリちゃんは兄のように、アルは生涯お仕えするご主人様とオレを慕ってくれている。二人の気持ちは嬉しい。"ライク" とはいえ慕ってもらえると思うだけでニヤニヤが止まらない。
今も "ドヤッ、オレの圧倒的ちびっこ支持率凄いやろ!" と舞い上がっているくらいだ。これだけは誰にも負ける気がしない。
また話が逸れた。えぇーっと、つまり何が言いたいのかといえば、キミたち人のことを好きとか言っといて平気で踏んづけるなよッ!! ということだ。
あぁ痛い。超回復出来るから別にいいっちゃいいんだけど痛いものは痛いんだよ。
こういう時自分が真性のマゾだったらご褒美なのにとは思わないか。
クソ、何故オレはしっかりと鍵をかけておかなかったんだ。バカ者が。
「ご主人様の寝室にいけしゃーしゃーと忍び込んでくるとはなんたる不届きタヌキ。このアルが成敗してくれる」
「な、何を言ってるんですか。先に忍び込んでいたのはアルさんの方ではないですか。葵さんの部屋には鍵がかかっていたはずですよ。昨日しっかりかけたはずなのに」
ブッ!! と思わず噴き出しそうになった。
マジで!? リリちゃんに軟禁状態されて嬉しいな~ってなるか!
頭を抱えて項垂れるオレにさらなる衝撃の事実が襲いかかる。あ、布団の中でね。
「鍵? あぁ、そんなものはアルの|蛇神三(みかみさん)にかかればないも同然。ちょちょいのちょいで攻略しちゃった、てへっ♪」
「そんな、バカな」
無理無理、おかしいから。関西人なら絶対に「なんでやねん!」とツッコミをいれていたぞ。
あの子フッ、って鼻で笑ったあと
……最後の「てへっ♪」に「萌えっ♪」してしまったのはしょうがない。オレはまだ目覚めていない!
布団の中で悶々とするオレのことなど気にすることなく二人のやり取りは続く。
「お前の無能な二尾と違ってアルの
「ぐぬぬ……でも、葵さんは私の二尾を毎日もふもふしてくれますし、『可愛い』って言ってくれますよ」
「ん? その程度でドヤ顔? 子ども用のゴム製プール並みの浅さだね黄色いタヌちゃん♪ アルは毎日ご主人様に抱きしめられながら『愛してる』って囁いてもらってるけど――耳元で」
なッ!? と驚きの声を上げるリリちゃん。
しかし、数秒の後、何事もなかったように恐ろしい爆弾を投下してくれやがりました。ちなみにオレは誰にも愛してるなんて言った覚えはない。
「ふ、ふーんです。アルさんこそ、その程度でドヤ顔なんてププーですよ。わ、私は葵さんと大人の入浴をしたんです。二尾を擦りつけて気持ち良くなって頂きました」
「な、なにーッ!? 貴様よくもご主人様のご子息様に手をかけてくれたな……くそう」
白夜叉あああああああああッ! 過激になっとるやないかあああああああッ!!
ダメだ。一回落ち着こう。
どさくさに紛れて頭の方まで被っておいた掛け布団の隙間から二人の様子を伺う。
おぉリリちゃんのドヤ顔が眩しい、精神攻撃のプロかねキミは。二尾さんも負けじとドヤってやがる。バカにされたのが悔しかったんだろうな。
でもリリさんや、大人の入浴ってなに? ただ単にオレの背中を二尾さんで流してくれただけだよね? これはもふもふ一回休みの刑だね。
きっとまた拗ねるだろうなー、と頬をパンパンに膨らませていじけるリリちゃんの姿を想像しながら視線をアルの方へと移す。
両手と両ひざを地面に付けながら見事な「orz」の形で嘆いていた。
アルのご主人様が、ご主人様のご子息様が汚された、と打ちひしがれる姿にちょっと罪悪感めいたものを感じたのは気のせいではないだろう。なんかごめん。今度頭洗ってあげるからそれで許して。
|蛇神三(みかみさん)もごめんね。まあキミもウソついたからあとでお仕置きだけど。
また一つ脳内溜息をつきながらオレはこのやり取りが次にどういった展開を迎えるのか、そしてどうやって終わるのかを想像する。
あぁなんかちょっとかわいそうに思えてきた。オレの体内時計が正確な時を刻んでいるのであれば間違いない。来る。タイミング的にもそろそろだ、彼女がやってくるぞ。
終わりの始まり。絶望へのレクイエム。こんな時に厨二っぽい言い方を考えてしまう自分が腹立たしい。とりあえず寝たフリで。
ガチャリ、と金属の擦れる音が漏れる。
隔離された戦場の向こう側から絹糸のように洗練されたブロンドの髪をなびかせ彼女は颯爽と現れた。
すると一つの変化が生じる。
先程まで時には全身で、時には言霊で、時には自らの魂の一部で争っていた二人が急に物言わぬ人形のように静かになった。
いや違う。そうじゃない。
怯えているのだ。その身に刻み込まれた恐怖が全身を駆け巡り、蛇に睨まれた蛙のように動くことを許されない。
二人はその場にへたりこみ、ガタガタと奥歯を鳴らしながら頭上にまで迫った
オレはただ、一人安全な場所から彼女たちの無事を祈ることしか出来ない。
沈黙を破壊せし言霊は、鋭く尖った牙が見え隠れする彼女の口元から発せられた。
「リリ」
「ひゃ、ひゃい!」
「またお前は私を失望させたな」
「い、いえ、そういう訳ではなくて」
ギロリ、とひと睨み。真っ赤な瞳が狐耳の少女を射抜く。
何の耐性もないちびっこたちなら間違いなく失禁していただろうその瞳に彼女は「あうぅ、すみません」と震える声で答えた。
「『葵を起こす』という簡単な仕事も出来ぬとはそれでも年長組か。私が留守にしている間お前が彼らを指揮していたと思うと嘆きしか生まれぬぞ。だからお前はタヌキとバカにされるんだ」
「たぬ……は、はい。私はおバカなタヌキです。すみません。役立たずのタヌキでごめんなさい」
「誰もそこまでは言っておらんだろ。まったく相も変わらず思い込みが激しいヤツめ。そこに正座して反省していろ、いいな?」
「はい!」
しょんぼりするリリちゃんの頭を優しくひと撫でし、おもむろに床に転がっていた極悪武器 "素敵ハリセン" を彼女は拾い上げる。
何をする気だろう、と注意深くその動きを観察していると、不意に「ビュンッ」とオレの視界の先を白い物体が横切った。……え?
ぎゃう、と可愛らしい悲鳴が一つ。
「何をしているアルゴール。よもや貴様、仕えるべき主を盾にしようとしたのではないだろうな?」
一切暖かみのない声音でブロンドの彼女は指摘する。
すると両手でお尻の無事を確認していた少女は上ずった声で「ま、まさかー」と白々しい言葉を返した。
「ご主人様に全てを捧げると誓ったこのアルがそのご主人様を盾にするなんてことありえないと思うなー。ドラちゃん頭おかしいんじゃないのー。お年寄りはこれだから……あっ」
軽快な棒読みでオレへの忠誠の言葉をアルは述べてくれた。全然嬉しくないけど一応受け取っておこう。
で、このタイミングで言うのも変だが先程の発言について訂正。
ブロンドの美少女に対し「お年寄り」と口を滑らせてしまったがアルも一応お年寄りの部類に入るくらいにはお年寄りなのだ。
あ、いや、この二人はどちらかというとヤ―さんと同じ部類になるのか。
見た目年齢は三人とも純正のロリっ子であるリリちゃんとさして変わりないけど実年齢が三ケタ以上だからロリ
以前、この件について三人に言及したのだが、ヤ―さんには「女性に対する配慮はどうした? さてはおんしまだ」とニヤニヤとした顔でからかわれ、アルには「大いなる愛の前には歳など些細な問題ですよご主人様。さあ今すぐ結婚しましょう」と軽く受け流された。
で、ブロンドの彼女には今後一切年齢についての話題を振らないでおこうと、オレは心に誓ったのだ。
…………………死ぬなよアル。
「なあリリ、私はお年寄りか? ババアか? 見るに堪えない雑草もどきか?」
「あ、ありえませんッ!! そんなはずないじゃないですか。レティシア様がお年寄りだったらアルさんは干からびたミイラですよ。ね、ね、そうですよねアルさん?」
「はい!? え、あ、ウソ、う~ん……わ、
怒られているにも関わらず張り合おうとする二人にブロンドの彼女は「いい加減にしろ」と落ち着き払った所作で一撃。
バチィィィィンッ!!
くるくる目を回しながらバタリと倒れ込む黄色ロリと銀色ロリ。
心なしか二人の頭上に何個か星が見える。
なんという威力だろうか、流石黒ウサギさんの先輩だ。おやすみ二人とも。
これにて『ロリっ子大戦争』終幕。
やっぱり最後には二人が気絶するんだよな。
んで、廊下を引きずられて去っていくというオチ。
傍から見たらさぞかしシュールな光景なんでしょうね、メイド服を着たロリと割烹着を着たロリがメイド服を着たロリに引きずられていくという。
決して微笑ましくはないね。ハハ、笑えねぇよ。
――それにしても
凛々しい表情で佇むブロンドの少女を瞳に映しながら改めて思う。
オレの待ち望んでいたスーパープラチナブロンドの超美人さんとは少し違ったけど、会えて良かった。
黒ウサギさん言う通り、美人で優しくて面倒見も良く、強くて博識でとにかく凄い、最高の女性だったわけだし。
まさかロリっ子だとは思わなかったけどこれからの成長に期待してみるというのも……あ、いや、もう成長はしないのかな? 箱庭世界では必ずしも見た目と実年齢が比例してるわけじゃないし。
ん? それってつまり彼女は――レティシアさんは
"頭が良くて気配りも出来る劣化しないスーパー美少女"
ってことになるのか。
流石オレの妄想廚二力、とんだチートキャラじゃないか。
「主殿、いつまでタヌキ寝入りに興じているつもりだ? いい加減にしておかないと貴方もこのハリセンで叩き起こすことになるのだがよろしいか? あぁそれと一つ確認しておくが主殿も私のことをその、あれだと思うか? これでも一応女の身、あれ扱いされるのは気持ちの良いものではないんだ。出来れば年上のお姉さんとでも思ってもらえると有り難いのだが」
でも残念ながらオレには幼女や少女への性的嗜好に走るアブノーマルな趣味はないからな。
「主殿? 先程も言ったがもうタヌキ寝入りする必要はないぞ、せめて返事くらいはしてもよいのではないか? ……なるほど、用心深いヤツめ。これでいいだろう? もう両手には何も持っていない。安心して出てくるといい。さあ、早くこのバカどもの運搬作業を手伝ってくれ」
あぁこれがもし所謂そっち系の、ロリータ・コンプレックスの危ないお兄さんだったら心から叫んでたんだろうな、レティシアさんはオレの――
「主殿――いや、葵! 貴様まで私をバカにするか。ババアであるお前のか細い声など聞こえない、そう言いたいのだな。……また無視、か。くだらない。私がほんの少しお前たちより年寄りだからといってこの扱いは最低だと思うぞ。……これもまた無視するか。もういいこの際だ、はっきりと言ってくれ。お前にとって私は口うるさい老が」
「――嫁だァァァァァァァッ!!」
なんて。
◆人物あれこれ◆
◆アルゴール
星霊であり、元・魔王であり、現在は葵くんのメイドさん。
原作では早々に退場したが本作では色々と頑張ってもらう。
◆
アルゴールの髪。
由来。胸の辺りまで伸びた二つ結びのおさげと前頭葉から "にょろり" と垂れ下がる特徴的なあほ毛が三匹の蛇のようだから by 葵くん
リリの二尾さんとは主同様仲がよろしくない。
◆レティシア=ドラクレア――ドラちゃん
頭が良くて気配りも出来る劣化しないスーパー美少女。
"ペルセウス" より救出されてからは "ノーネーム" でメイドとして甲斐甲斐しく働いている。