リクルートファイター葵くん   作:まひる

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おかしい。三巻への導入だったはずがどうして七千字を超えた!?
という訳で幕間的なお話に変更しました。

あ、お久しぶりです。



-とりあえず幕間-
新米メイドペスト、吠える。


 箱庭二一〇五三八〇外門 "ノーネーム" 本拠本館。

 乱雑に物が積まれた部屋の中心でペストは手の中のモノを床に叩きつけた。

 

「ふざけるんなああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 人並以上の聴力を持つリリは「ヒッ!?」と小さく悲鳴を漏らし、頭上で忙しなく踊り狂うキツネ耳を両手で押さえる。

 

「ペ、ペストさん!? お、おち、おちち落ちついてください」

「いや、お前がな」

 

 あわわ、あわわ、とパニックに陥るリリに冷静にツッコミを入れるのはアルゴール。椅子代わりに腰かけていた小さな脚立から身を乗り出し目の前でバタつく二尾ごとリリを捕獲する。

 そのまま前頭葉から這い出るあほ毛で窒息死、という物騒な展開にもつれることはない。常日頃から「黄色いタヌキ、バーカバーカ」とリリを罵る悪童アルゴールも時と場合によっては優しいお姉さんポジションに移り変わるのだ。その証拠に

 

「安心しろ。例え新人が黒死病をまき散らしてもアルが全て石ころに変えてやる。最悪お前を石化してしまえば問題なし」

「石化ーッ!? ち、ちちち窒息死してしまいますよ!?」

「それをなんとかするのが一流加工職人のアルなのさ。安心安全の防音対策から超長期石化保存までなんでもござれ♪」

 

 と、不安そうに眉を下げるリリにおどけた笑みで「アルに任せておけば万事解決」と示すアルゴール。

 意外と面倒見が良く頼れる彼女にリリは体をプルプル震わせながら服の裾を掴んで離そうとしない。

 

「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」

 

 滅多に見ることの出来ない微笑ましい光景を尻目にゲシゲシと地に伏す純白の衣を踏みつけるペスト。湧き立つ怒りが頬を激情の色に染め上げ、瞳を血走らせる。ウッガー! と黒ウサギを思わせる憤怒の嵐は収まりそうにない。

 

「こんなもの着れるかクソババアあああああッ!!」

 

 がるる、と荒れ狂う獣の如き形相で吠えるペストにレティシアは右手を一閃。

 スパンッ、と軽快なハリセンの音が紡がれる。

 

「……痛いじゃない。なにす――ッ!?」

 

 スパンッ、と再び少女を意識外の衝撃が襲う。

 頭を叩かれ強制的に視界を足元に向けさせられたペストが首を上げた瞬間、返しの一手が顎を打ち抜いた。

 

「黙れ、ひよっこ」

 

 盛大に吹き飛ぶ斑ロリ。

 勢い余ってクルクルクル、と綺麗な弧を描くペストにアルゴールは(ドラちゃんに真正面から喧嘩を売るとはなかなかやるな新人)と胸の内で少女に賛美を送った。

 全部で七回転の大技を披露し、ペストがやっとの思いで着地したのは洋服ダンスの角。「ひぶっ」と美少女らしからぬ不細工な悲鳴を漏らしたのも致し方なし。

 だが少女の不幸はそれだけで終わらなかった。止めの一撃とばかりに半開きになっていたクローゼットから溢れんばかりの衣服が雪崩落ちる。

 

「し、死ぬぅ~色々死ぬぅ~」

 

 山のように積まれた衣類の中から少女のものと思われる手だけが突き出ており、まるで墓から出ようとするアンデットを思わせる光景がそこにはあった。

 数秒の後、息を吹き返したペストは勢いよく地上に飛び出し、レティシアを睨む。

 

「貴女馬鹿なの!? 人体の急所とも言うべき顎を狙うなんて鬼の所業よ。軽い脳震盪じゃすまされないことだってあるんだから! そこのところど」

「同じことを何度も言わせるなよ餓鬼、黙れ」

「…………」

 

 口元を歪めギラリと光る八重歯を見せつけるレティシアにペストは自然とその場に正座をしていた。

 二人のやり取りに反応して、光の速さでリリとアルゴールもピシッ、と綺麗に背筋を伸ばしてレティシアの後ろに控えるように立つ。怒られ慣れている二人だからこそできる早技だ。

 

「死ぬ気かお前はー。今すぐ土下座しろー」

「まだ間に合いますよー。乱れハリセンの刑で済みますよー」

 

 ぶちギレたレティシアの怖さを知らないペストに精一杯小さな声音で懐柔を試みるリリとアルゴール。

 しかし、「はぁ? 全然ビビってないわよ」と二人の警告を無視するペスト。上下の歯がぶつかり合う音が真実を物語っていた。

 カタカタカタカタ、と小刻みに震える少女を無視して歩み始めるレティシア。目指す先にあるのはその身に纏うのと同じ純白のメイド服、だったもの。

 ペストに踏みつけられ "純白の衣" から "薄汚れた衣" にジョブチェンジしたそれを拾い上げると、レティシアは一つ溜息を零した。

 

「分からないな。確かに使用人が着るには些か可愛らしすぎるやもしれん。機能性一つとっても動きにくさが目立つ。だがこれもすべては主殿たちからの命。お前もメイドとして "ノーネーム" で働くことになったんだ、受け入れるが通りだろう。住めば都と同じ理論だ、次期に慣れる。――だから脱げ。そして着替えろ。出来ぬとは言わせん」

 

 斑模様の衣を纏う少女ペスト。半月ほど前に行われたギフトゲーム "The PIED PIPER of HAMELIN" において配下のラッテン、ヴェーザー、シュトロムを率いて "サラマンドラ" をはじめとしたコミュニティに挑戦状を叩きつけた彼女だったが、あっさりとゲームに敗れ、現在は一人の仲間として "ノーネーム" に所属している。

 

 そしてペストは今まさに崖っぷちに立たされていた。コミュニティに在籍する以上、働かざる者食うべからず。なにかしら貢献しなくてはならない。

 さてどうしたものか、と思い悩む少女に選択肢は一つしか用意されていなかった。

 

 ハッ、元・魔王のレティシアもアルゴールも今じゃメイドだからな、お前も一緒だ。甲斐甲斐しく御奉仕しろよ斑ロリ、とは十六夜の言葉。

 悪くないわね。これからも女性の元・魔王を手に入れた暁には皆メイドにしましょう、だって可愛いんですもの。男性は執事ね、とは飛鳥の言葉。

 耀と葵は二人の横暴ぶりに苦笑を浮かべた。

 

 ということもありペストは強制的にメイドをさせられることになった。

 借りを返すためだから仕方がないか、と配下の痴女が心配するのを押し切ってメイド業を始めた矢先、さっそく難敵が現れた。

 純白の布地にヒラヒラのフリルを宛がった最高級メイド服。胸元の青いリボンがアクセントとなり、より可愛らしさを引き立たせる。発注先はもちろん "サウザンドアイズ" 和装ロリ直営店。

 

 なかなか良い代物だろう、と先輩金髪メイドにドヤ顔で手渡された瞬間、ペストは床に叩き伏せた。なにが気に食わなかったのか、それは瞳に映る少女にあった。

 

「い・や・よ! 誰が貴女と同じものなんか着るもんですか、死んでもお断りよ」

「あれ? でもペストさんって既にお亡くなりに」

「なってないわよ。リリ、貴女のその大きな瞳は飾りなの? そうでしょ? そうだと言いなさいこのキツネもどき」

「誰がもどきですかーッ!? 私は正真正銘キツネですよ」

 

 二尾をバタつかせて喚くリリ。空気の読めるアルゴールがどちらにつくかなど明白だった。

 

「そうだそうだー。こいつはキツネもどきじゃなくて黄色いタヌキ(希少種)だー」

「え……? そうだったの? リリ(希少種)」

「全然違いますよ! "かっこきしょうしゅ" どころかタヌキでもないですから。狐。由緒正しきお家の狐です」

「などと申しておりますが希少種(リリもどき)はタヌキに間違いありません、なんてね♪」

「そうだったの。実は貴女って "リリもどき" だったのね、かわいそうに」

「もう原型すら留めてまいせんね。悪ノリしないでくださいお二人とも」

 

 いい加減にしないと(物理的に)朝食にしますからね! と懐から包丁にしか見えない刃物ものを取り出すリリに「こ、コイツ目が本気だ、殺される、逃げろ~」と部屋から飛び出そうとするアルゴールとペスト。

 ロリっ娘大劇場に幕を引くのは決まってメイド長たる彼女レティシアだ。一人増えようともその役目が代わることはない。

 

 スパパパパパパパンッ!!

 

「ふむ。やはり人の頭を叩くというのはなかなかに興味深い。叩いた瞬間に腕をビリリと走る衝撃が病みつきになりそうだ。と、いう訳で並べ、駄ギツネ、駄ヘビ、駄…………まあいいか」

「それよそれ! ってまた!?」

 

 うぅ、と瞳に涙を浮かべながら悔しそうに何かを訴えるペストにレティシアは条件反射よろしく右手を振り抜いていた。

 

「すまん。今のは全面的に私が悪い。と一瞬思ったが普段から殴られるようなことをする馬鹿者たちにも責任があるな」

「新人、これがうちの暴君ドラちゃんだ。以後気をつけるように」

 

 ポンポンと優しくペストの肩を叩くアルゴール。この場に葵がいたならば間違いなく「いやいや、キミが一番の元凶だよ、アル」と冷静にツッコミを入れていたに違いない。

 レティシアも似たようなことを考えたのか一瞬だけ瞳を細めるも少し頭に血が上り過ぎたか、と剣を鞘に納める要領でハリセンを壁に立てかけた。

 

「あの、ペストさん、結局何故メイド服じゃダメなんですか?」

 

 狐耳をヒョコヒョコ弾ませながら疑問を投げかけるリリ。

 ペストはそっぽを向く、で応じた。

 

「別になんだっていいでしょ、貴女には関係のない話なんだから」

「そんなことありません。ペストさんはこれから一緒に暮らしていく家族なんですから何か悩みごとがあるなら皆で共有しましょう。私、頑張っちゃいます!」

 

 むふんっ、と荒い鼻息を漏らすリリ。やる気十分な主人に応じて背中の二尾がブルンブルンと力強く応じる。

 

「そうだぞ新人、言いたいことがあるなら今のうちだ。あ、でも、年齢の話はNGだから」

 

 ドラちゃんがマジギレしたら今の数十倍は怖いんだぞ、あれはまだお前には早過ぎる、と小声で忠告するアルゴール。

 胸元に垂れ下がっていたおさげが頭上でバツ印を形成し、前頭葉から這い出るあほ毛が「うんうん」と主の言葉に頷きで返す。

 

「…………」

 

 二人の心配する言葉も虚しくペストは無言で応じた。ジト目のように拗ねた瞳に映るのは少女たちではない。

 

 "フリフリ、にょろにょろ、フリフリ、にょろにょろ"

 

 止めの一言は窓辺に立つ金髪メイドの口から零れ落ちた。

 

「まったく何が気に食わないんだ。それにしても今日は日差しが強いな。天幕があるとはいえ、陽の光を浴び過ぎるのはどうも好かん。あとで葵の血を分けてもらうかな」

 

 ブチリッ、と血管の切れる音ともにペストは唸り声を上げていた。

 

「貴女たち個性が強すぎるのよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 え……? と三人揃って呆けた表情を浮かべるレティシアたちにペストは間髪入れずに吠えた。まずは狐耳少女だ。

 

「リリ!」

「は、はい!?」

「貴女家族のためならなんでもするのよね?」

「あ、えっと、そのつもりですが」

「なら今すぐその耳と尻尾を寄こしなさい。出来ないなら黒死病で斑模様にしてあげるわ。そして、その可愛らしい割烹着を脱ぎ捨てろ」

「えぇー!? それはちょっと難しいというか無理です。この割烹着も母様(ははさま)から頂いたものなのでごめんなさい」

 

 シュン、と狐耳と二尾を萎れさせるリリを尻目にペストは次なる標的に目を向ける。

 

「アルゴール!」

「ふぇ? アルも?」

「そうよ貴女、頭上で可愛らしくクエスチョンマークを物理的に浮かべるアルゴルの悪魔。言いたいことがあるのなら今のうちだったわよね? とりあえず坊主にしなさい、話はそれからよ」

蛇神三(みかみさん)を殺せと言うのかお前はーッ!? 拒否、断固拒否する!」

「そう。なら脱げ。一人だけ特別な感じが気に食わないわ。ぶっちゃけ色合いが被ってるのよ」

 

 アルゴールの白と黒でまとめられた衣服に唾を吐きかける要領でいちゃもんを並べるペスト。視界の先で目を丸くする少女に掴みかからん勢いで睨む。

 

 足許から順に黒いパンプス、自然な形で絶対領域を演出する真っ白なニーハイソックスと白黒のチェックのスカートに加え、袖口が黒く縁取られた半袖の白シャツの上からフリルの付いた黒いメイドエプロンを身に付け、胸元にはスカートと同じ柄の大きなリボンが結わえられていた。

 

 コイツ絶対どこかに先端の曲がった金属の棒を隠してる、と疑いつつペストは最後にして最強の少女に瞳を向けた。

 

「そしてレティシア!」

「うむ。流れからして来ることは分かっていた。どうしたんだ? やはり先程お前が言った通り私と同じ衣服は身に纏えないというのか。とんだ嫌われようだな」

「違うわ、貴女全然分かってない。寧ろ逆。レティシア、貴女は誰よりも美しい。見た目だけの話じゃないわ、言動、行動、その全てが美しい。だからこそ同じ衣装で比べられるのが嫌なのよ!」

 

 我を忘れて暴走するペストにリリとアルゴールは頷きで返す。

 

「レティシア様と比べられる。私なんてその対象にもなれる気がしません」

「言われてみればドラちゃん相手だと苦戦は必須だろうね、もちろん負ける気はないけど」

「やめろ、余計な世辞などいらん。私を陥れようとしたってそうはいかんぞ」

「とかなんとか言いながら口元がゆるゆるだよドラちゃん」

「ち、違う。これは何かの間違いだ」

「はいはい、大嘘吐き。頬はおろか耳まで真っ赤に染めちゃって。まあドラちゃんが美人さんなのは事実だからいいんじゃない」

 

 葵のパーフェクトメイドを自称するアルゴールにまで納得されレティシアはこの場から全速力で逃げ出したい衝動にかられる。だがしかし、話はまだ終わっていないとペストは彼女の背後に回り込み、勢いよく髪に結わえられていた大きなリボンを解いた。

 途端、レティシアは眩い光に包まれ、一瞬の後、黒ウサギの狂愛するスーパープラチナブロンドの超美人へと姿を変える。

 ペストは続けざまに器用におさげで目元を隠すアルゴールの首元に手を伸ばし、黒地のチョーカーを奪い取った。

 するとレティシア同様アルゴールも彼女に匹敵するほどの美しい女性へと変貌を遂げる。

 

「…………チッ」

 

 絶世の美女となった二人を睨みながらペストは驚きの余り二尾をバタつかせるキツネ耳少女に問いかけた。

 

「リリ、私の言いたいことが何か、貴女になら分かるでしょ?」

「あ……はい、なんとなくですが『同じ元・魔王なのに何故私だけが変身できない。ふざけるな!』ということでしょうか?」

「それに付け加えて、レティシアの吸血鬼、アルゴールの石化オプションが本当に気に食わないわ。天はいくつ彼女たちに才を与えるつもりなの、神がいるなら今すぐ私の前で土下座しなさい!」

「そ、それは無理かと思います。ま、まあいいじゃないですか、私もペストさんと同じですよ。変身できない仲間です」

 

 えへへ、と優しげな笑みを浮かべながら手を伸ばすリリ。しかし、ペストがその手を取ることはなかった。壁際まで歩み寄り、三人に背を向ける形でしゃがみ込む。

 

「どうせ貴女もあと十年もすれば彼女たちの仲間入りよ。目障りな脂肪の塊をぶら下げた痴女に大変身。そして私はただ一人、一生無個性なロリで終わるんだわ。最後の砦だったこの斑模様の服も剥ぎ取られるのね、鬼め悪魔め老婆め」

 

 哀愁漂う小さな背中にレティシアとアルゴールは苦笑を浮かべることしか出来ない。今の自分たちが何を言っても嫌味のようにしか聞こえないだろうと判断してのことだった。

 仕方なしに肩を寄せ合い小声でやり取りを始める。

 

「同じ女だからこそペストの気持ちも分からなくはないがあそこまでへこむものなのか、放っておいたら壁と同化しそうな勢いだぞ」

「なるほどね、ドラちゃんは一度坊主にした方がいいよ。リアルな劣等感というものを体験すればきっとあの子の気持ちが分かるだろうから」

「ぬぅ……その口ぶりだとお前はよく知っているみたいだな」

「まあね。長生きすると色々あるんだよ」

「個性や才能から来る劣等感か。なるほど、お前の元・マスターがいい例だな。フフ」

「なに笑ってるのさ?」

「なんでもないよ。強いて言うなら出会いというものは面白いと思っただけだ。一人の人間によって幾人もの未来が描き変えられた、そしてこれからも。我々の主は面白い男だな、阿呆で無鉄砲なところが目立つが悪くない」

「当然。だからこそ私はあの方に命を捧げられるんだよ」

 

 ニヒヒ、といつもの取っ付きやすい笑みを浮かべるアルゴールに「そうか」とレティシアは納得したように頷く。

 

「――ん?」

 

 待て。今コイツ何かとても重要な事を言わなかったか? と浮かび上がった疑問符を辿るレティシア。黒ウサギにして博識で聡明な彼女の思考がその答えに辿りつくのは必然だった。

 

「ところで一つ気になったんだが、お前、歳はいくつだ? さぞ長生きしたんだろう? 答えろ」

「……――――さあ、そろそろ新人を復活させる儀式でもやっちゃおうかなー」

「おい待て、どこへ行く気だ。まだ話は終わっていないだろう、アルゴルの悪魔もどき」

 

 やだなぁーもどきじゃないよ本物だよぉー、と適当な笑みと共に立ち去ろうとするアルゴールの肩をガッシリ掴んで離そうとしないレティシア。拗ねた幼女など捨ておけ、それよりも今はお前だ! と瞳が物語っている。

 驚天動地の人外バトルが勃発するかと思われたその時、二人の足許で「う~ん」と唸り声を上げていたリリがポンッと大きく手を打った。

 

「分かりましたよペストさん、これで万事解決です」

 

 やったぁー♪ と楽しげに二尾を踊らせるリリに塞ぎこんでいたペストから縋る様な瞳が向けられる。決壊しそうな涙の防波堤を拭い去り、少女はリリに詰め寄った、

 

「どういうこと?」

「ふふん、聞いて驚いてください。我々には葵さんがいるじゃないですか!」

 

 あーそれ多分無理だから、と胸の内で二人の女性は否定の言葉を紡ぐ。

 葵の持つギフトは能力(ちから)を付与した相手の潜在能力を最大限まで発揮させるもの。故にいくらなんでも体の成長を促すというのは不可能だろう。それにたとえ出来たとしても僅かな間だけでは満足できるはずもない。

 やめろリリ、変に期待させるな、と願うレティシアとアルゴール。裏腹にリリの言葉を耳にしたペストは天を仰ぎ見、笑った。

 

「フフ、ハハ、アハハハハハ、これで勝てる。誰が最強の元・魔王か教えてやるわ、この老いぼれども。私を蔑んだ罰よ、本物の敗北感というものを味あわせてやる。首を洗ってまっていなさい三下ッ!!」

 

 ドタドタドタ、と忙しなく部屋をあとにするペスト。向かう先はもちろん柊葵の私室。ギフトゲームの参加者として尊敬されるべき人が子どもたちとともに雑魚寝では示しがつきません、と黒ウサギに助言されたのがきっかけで空き部屋を一つ頂いたのだ。

 言いたい放題言われたはずのレティシアとアルゴールは泣きべそ掻いて戻ってくるであろう少女を慰めるため、一先ず少女の姿に戻った。

 その後ペストの野望がどうなったのかはわからない。

 

「ところで先程の続きなんだが」

「あ、そろそろご主人様を起こす時間だ。ばいびー」

「こ、こら、逃がさんぞロリモグリ!」

 




三巻以降のお話しはもう少々時間を頂ければと。
色々と読み進めていくうちにさっそく原作との矛盾点を発見してしまったぜ十六夜さん!
とりあえず細かいところの修正はまたいつかですね。
ではまた。
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