転生したら始祖で第一位とかどういうことですか   作:Cadenza

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長らくお待たせしました。
アンケートへの回答、ありがとうございます。
最も多かったのがキスショットとアークライトの出会い、次にネギま、更にアカメが斬る、そして東京喰種でした。
本来なら二作品だけで留めるつもりでしたが、ネタも思いついてしまい、折角なので全て書きます。
ただ二人の出会いが難航しており、恐らく最後になるかと。
順番は最初に書き終わったアカメが斬る、ネギま、東京喰種、最後に二人の出会いになるかと思います。

今回は番外編初回で、アカメが斬るです。

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アークライトはガチート、アヴァロンもチート化、帝国終了のお知らせ








転生したら人外が蔓延る世界でした 1

 千年の歴史を誇る国家、シン帝国。

 シン帝国を築き上げた始皇帝は、帝具と呼ばれる48の超兵器を作り出した。

 その全てが伝説や神として祀られる超級危険種が素材となっており、それ一つで万軍を滅ぼす万夫不当の力を発揮するモノまである。

 

 しかし、始皇帝は国を思うあまり、帝具の素材集めに手段を選ばな過ぎた。

 素材となった超級危険種の中には、その地で神とされていたものや、存在することでバランスを保つ役割を担うものもいたのだ。

 それが結果、後の時代で帝国の敵を増やすことに繋がった。

 

 だが、そんなのは些事に過ぎない。素材集めの結果、とある国の怒りを買ってしまったことに比べれば。

 

 その国の名は《アヴァロン》。

 帝国よりも更に昔から存在する国家だ。単一種族国家である帝国とは違い、帝国が危険種と定める獣人までもが共存する多種族国家である。

 

 血液徴収アブゾデック。

 アヴァロンの怒りを買う原因となった帝具だ。口内に装着する牙型の帝具で、血を吸うことで怪我の治療や一時的なステータスアップをもたらす。

 素材となったのは吸血鬼と呼ばれる危険種。単一種が多い超級危険種では珍しい、種族の危険種だった。

 その力は凄まじいの一言だ。下位でも千の兵士を蹂躙し、当時の帝国の将軍と互角に渡り合えるほど。

 だが被害を出しつつも、帝国最高位の大将軍に帝具使いまで投入して何とか捕獲した。

 そう、捕獲だ。

 それだけの戦力を投入しながらも、傷を回復させる再生能力により仕留めることはできなかったのだ。

 

 捕獲した上で吸血鬼を研究し、牙を摘出。帝具、血液徴収アブゾデックを完成させた。

 

 だが、捕獲した吸血鬼は、とある国の軍に所属する者だった。

 それがアヴァロン。そして、アヴァロンを治めているのは、不老不死の吸血鬼。

 結果、怒りを買った。と言うかブチ切れた。

 

 そうして始まったシン帝国への侵攻。

 これがそこらの国程度なら返り討ちに出来たのだが、アヴァロンは普通ではなかった。

 

 空を覆う飛行戦艦(・・・・)の天蓋。大地を疾駆する吸血鬼部隊や種族特有の能力を活かした獣人部隊、そして帝具と同等の技術で作られた魔法道具(マジック・アイテム)で武装する人間部隊。

 更に飛行戦艦の先陣を切る百メートルオーバーの龍型超級危険種に、その頭部に乗る漆黒に身を包んだ最強の吸血鬼。

 

 そんな目を疑う軍勢が、帝都の目と鼻の先に出現した。

 

 稀代の名君として語られる始皇帝も、この時ばかりは滅びを予感したという。

 だがそこは、さすが後の世まで語り継がれる始皇帝。その光景だけで負けどころか滅びを悟り、戦闘が始まる前に始皇帝自らが交渉し、アヴァロンに謝罪。

 賠償金に不可侵条約、帝具の技術に情報、その現物を幾つか譲渡する事で戦争を回避しようとした。

 

 最強たる至高の帝具を使えば何とか出来たかもしれないが、アレは動かすのに時間がかかる。アヴァロン軍が現れたのは帝都のほぼ眼前。起動までの間に大損害を負うのは目に見えていた。

 

 始皇帝の態度と誠意を見たアヴァロン皇帝はこれを受諾。戦闘をすることなく戦争は終わった。

 

 始皇帝は同じ過ちを帝国が繰り返さぬよう、後の世にこう残す。

 

 ”彼の国に手を出すべからず。これ破ればその時、帝国の終焉を意味するだろう”

 

 だが、千年の時の流れの中でこの始皇帝の言葉は消失してしまった。残ったのは、帝具の技術と帝具そのものをアヴァロンに譲渡したということのみ。

 

 それが千年後のオネストという大臣が知った時より歴史は変わり始める。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 シン帝国帝都。

 草木も眠る深夜。空には満月が輝いている。

 

 そんな満月の夜の帝都の一角で剣戟が鳴り響いていた。

 相対するは二人。

 

 額に第三の目のようなモノ――帝具スペクテッドをつけた大柄な男。最近帝都を騒がせる殺人鬼、首斬りザンク。

 そしてもう一人。

 妖刀、即死刀などと呼ばれる帝具――村雨を振るう黒髪の少女。殺し屋集団ナイトレイドの一員、アカメ。

 

 ザンクは両袖の中から伸びる隠し剣を、アカメは帝具たる村雨を。二人が動くたび、宙には火花が咲く。

 もはや二人の剣戟は、常人には視認不可能な速度に達している。

 

 それを冷や汗を流しながら見る少年――ナイトレイド新入りのタツミは、ただただ言葉が出ないといった様子だった。

 

「は……速ぇ……」

 

 コレが、帝具使い同士の戦闘。

 

 アカメの帝具――一斬必殺村雨は、その名の通り斬られた者を呪毒で侵し死に至らせる。アカメの速度と剣術が合わさり、恐ろしい力を発揮させる。

 対するザンクの帝具――五視万能スペクテッドは、洞視、遠視、透視、未来視、幻視の〈五視〉の能力を持ち、使用者に圧倒的な情報アドバンテージを与える。これによって素の実力がアカメに劣るザンクは、戦闘を互角まで引き上げているのだ。

 

(心を覗かれて互角。ならば……)

 

 スペクテッドの心を覗く洞視により、戦闘は互角。次の動きを知られてしまうのだから厄介だ。

 なら、心を覗かれても意味をなくせばいい。故に、アカメは心を閉ざした。

 

「ほォ、無心になったのか。凄いな!」

 

 表情を消したアカメに感心するが、しかしザンクの愉快げな笑みは崩れない。

 

「だが、このスペクテッドには未来視がある!」

 

 まるで自慢するように額のスペクテッドを指差した。

 

「筋肉の機微で……お前の次の行動が視える‼︎」

 

 アカメが飛び出す。繰り出したのは振り下ろし。

 ザンクは余裕を持って両手の剣を交差させ、アカメの一撃を防いだ。

 

 完全に予測された事にアカメが動揺し、若干動きが遅くなる。その隙にザンクが左の剣をアカメの足目掛け、地面諸共破壊せんと叩きつける。

 

 バックステップで躱したが、無傷とはいかなかった。右足の太腿に傷を負う。

 アカメが攻撃を喰らった事にタツミは戦慄していた。

 

「ヤレヤレ。その刀……かすり傷も許されないなんてズルイねぇ……」

「私も動きや心を視られている。……お互い様だ」

 

 軽口を言い合うが、そろそろ決着が近いだろう。

 時間的にも騒ぎを聞きつけて警備隊が駆けつけてくる頃合いだ。

 

 それでも良く喋るザンクが何か言おうと口を開ける。そんな時だった。

 

「この深夜に騒がしいの」

 

 ――声が、聞こえてきた。

 

 アカメとザンクが一斉に声の方向を見る。

 二人からそれほど離れていない。ほんの七メートル程。そこには、露出の少ない帝国軍服を着こなし、腰に黒い刀を携えた一人の女性が立っていた。

 

「な……⁉︎ いつからそこに……!」

 

 驚いたのはタツミだ。

 アカメが来るまで先にザンクと戦い、負傷して二人の戦闘を見ていた。

 戦っていない分、周りを警戒していたし、目も離さなかった。

 なのに、気づかなかった。突然そこに現れたとしか言いようがない。

 

「お前は……イヴ⁉︎」

「ふむ、儂を知っておったか。ナイトレイドのアカメ、じゃったかの」

 

 アカメはその女性を知っていた。

 

 名をイヴと言う。大将軍ブドーと将軍エスデスと並んで帝国最強と称される、出身不明の将軍。

 主に帝都の治安維持を仕事としており、時々警備隊にも顔を出すらしい。

 見つかればたとえ大臣の庇護下であっても容赦なくしょっぴくのだから、帝都で悪事を行っている者からすれば正に天敵と言っていい存在だ。

 ナイトレイドの暗殺リストに載っていた警備隊隊長のオーガも、大分前に彼女の手によって捕まえられた。

 

 そんな彼女が何故ここに。

 

「やれやれ、書類処理は面倒じゃのぉ。漸くこうやって動けるわい」

 

 どうやら単に仕事を終わらせてここに来たようだ。

 彼女の仕事は治安維持。なら首斬りザンクを放って置く筈がないだろう。

 

「お前は……お前はなんだ⁉︎」

 

 その首斬りザンクは、驚愕と恐怖が入り混じった表情でイヴを見えいた。

 

「いったい何だお前は⁉︎ いったいお前は何を背負っている⁉︎」

 

 イヴが現れた直後、ザンクは〈洞視〉を以ってイヴの心を視ようとした。

 だが、視えない。洞視だけでなく、透視や未来視でさえ。

 帝具の能力が通じない相手など初めてだ。

 だが、ザンクに恐怖を抱かせたのはそれが理由ではない。

 

 ザンクは元首斬り役人。これまで何百人もの首を斬ってきた。だからなのか、なんとなく死を感じることができる。

 これまで斬ってきた奴らの死が、声として今も聞こえるのだ。スペクテッドを手に入れてからはより鋭くなった。

 ただの精神異常かもしれないが、感覚だけは確かだ。

 

 その感覚が告げている。イヴは普通ではないと。

 濃密など生温い、具現化しそうな程の死の気配を感じる。

 

「うぬは見えるのか。確か元首斬り役人じゃったか。長く死に触れ過ぎた弊害か」

「なんだ……何なんだお前はァアァァア‼︎」

 

 理解できない恐怖を払拭しようと、ザンクがイヴ目掛けて斬りかかる。さっきまで戦っていたアカメは、既に眼中にない。

 村雨を持つアカメより、得体の知れないイヴの方が危険だと判断したのだ。

 

「何じゃいきなり」

 

 イヴは慌てる事なく、静かにザンクの斬り込みをいつの間にか抜刀した黒刀で弾き返す。

 ザンクの腕がビリビリと震えるが、イヴは一歩も動いていなかった。

 

「首斬りザンク。裁判が無くとも極刑はまぬがれんじゃろうが、数少ない帝具の適合者をあの狸が放って置く筈もなし。余計な手を出される前に、ここで終わらせるのが最善じゃな」

 

 一瞬、チラリとアカメに視線を向ける。

 思わず構えるアカメだったが、イヴはすぐにザンクへ戻した。

 

「さっさと済ますとしよう。仕事で些か眠いのじゃ」

「クソがッ!」

 

 再びザンクが斬りかかる。タツミには捉えられない程の速度だが、それをイヴは片手に握る黒刀で、その場から一歩の動かずに全て逸らす。

 フェイントを混ぜても、まるで分かっているかのように対処する。

 技量が違い過ぎた。

 

(これが帝国最強か‼︎)

 

 心を読む洞視はおろか、筋肉の機微を見る未来視まで通じない。

 このままでは近いうちに限界がくる。

 そうなれば待っているのは――死。

 

「ぬうあああ‼︎ 死んでたまるかあああ‼︎」

 

 ザンクは一旦距離を取り、帝具を発動させた。スペクテッドの目が開き、イヴを見据える。

 そうしてイヴの動きが止まった。

 

「ど……どうしたんだ突然……」

「おいイヴ! 何故止まる!」

「無駄無駄」

 

 タツミは怪訝となり、アカメが叫ぶが、それを嘲笑うかのようにザンクが言う。

 

「幻視。その者にとって一番大切な者が目の前に浮かび上がる」

 

 その言葉でようやく理解した。死んだ筈の幼馴染を追いかけてここまで来たタツミだが、アレはスペクテッドの幻視によるモノだったのだ。

 

「効くのは一人だが、その催眠効果は絶大。そして……どんな手練れであろうと、最愛の者を手にかける事など不可能」

 

 ザンクはイヴに向かって歩いて行く。イヴは反応しない。それどころか黒刀を鞘に収めてしまった。

 

「やっぱりな。たとえ帝国最強と言えど同じ。最愛の者を斬れる筈ががない!」

 

 一気に駆け出す。時間はかけない。一撃で首を斬る。

 

「愛しき者の幻影を視ながら死ね! 帝国最強‼︎」

 

 思わずアカメが動く。しかし判断が遅かった。間に合わない。ザンクの剣がイヴに迫る。

 

 ――――刹那、風が通り抜けた。

 

「――な、に?」

 

 鮮血が宙を舞う。それは、イヴのモノではない。

 

「ば……かな……」

 

 ザンクだった。

 眼を見開き、足を止めて前を見る。

 眼前にいた筈のイヴはそこにおらず、自分が斬られていた。

 

「帝具を過信したの」

 

 イヴは、ザンクの背後にいた。黒刀がいつの間にか握られており、鋒からは血が滴っている。

 ザンクは、間違いなくイヴが斬ったのだ。

 

「何故だ……何故……」

 

 袈裟掛けに斬られ、足取りがおぼつかないザンクは、それでも倒れない。あまりにイヴの斬撃が速すぎ、致命傷でも身体が反応しきれていないのだろう。

 

「何故だ、一番愛する者が視えたはず……何故それを……」

「単純じゃよ。あやつがここにいるはずはない。何より、あの程度の一撃など、あやつなら防いだじゃろうからな」

「……ああ、そうか。これが帝国最強か……俺じゃぁ無理だな……」

 

 身体が追い付いたようだ。ザンクがグラリと傾き、地面へと倒れた。

 

「ある意味、こやつも被害者か」

 

 呟き、黒刀を鞘へ納刀する。そうして死体となったザンクの額へ手を伸ばす。

 手に取った帝具スペクテッドを暫く眺めると、「ふむ」と頷いてアカメに向かって投げた。

 

 驚くアカメだが、危なげなくキャッチする。

 

「……なんのつもりだ?」

「持って行くがよい。先にザンクを見つけたのはうぬ等じゃ。儂は横から入ったようなものじゃからの」

 

 理解できない。ナイトレイドは帝都のお尋ね者だ。そのナイトレイド一員であり、手配書まで発行されているアカメに、況してや帝具を譲るなど絶対にあり得ない。

 むしろザンクとの戦闘でダメージを負ったアカメを捕らえようとするのが自然だ。

 

「そう疑うでない。儂には必要ないし、あの狸に戦力を与えるのも癪じゃからの。何よりうぬ等の行動は、儂にも利益がある」

「帝国の現将軍を信じられるとでも?」

「儂をあのドS将軍と同視されるのは心外じゃ。ほれ、さっさと行かんと警備隊が来てしまうぞ?」

 

 イヴの言葉は事実だった。耳を澄ませば複数の足音が聞こえる。十中八九、警備隊だろう。

 悩んでいる暇はない。

 

「……わかった」

「だ、大丈夫なのかアカメ?」

「ひとまずは信用できる。今は急いでここを離脱するぞ」

 

 負傷したタツミを抱え、一瞬だけイヴを見た後、アカメは夜の闇に紛れていった。

 

 残ったイヴ――いや、アヴァロン皇帝アークライト=カイン・マクダウェルの眷属にして伴侶、キスショット=E・マクダウェルは、夜空に輝く満月を見上げ、ポツリと呟く。

 

「やはりこの国はどうしようもない。手を加えるだけ無駄のようじゃ。そろそろ終いじゃな」

 

 そしてキスショットも夜の闇に消えていった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 難攻不落、攻略不可能と言われるアヴァロン。その首都アヴァントヘイムの中心部。

 首都全体を見渡せるようにと作られた皇帝の居城、レーベンスシュルト城。

 最も高い塔に設けられた皇帝の自室に、闇に消えたキスショットが現れ、椅子に座る人物に抱きついた。

 

「あぁ〜、疲れたのじゃぁ。アーク、癒しておくれ」

「イヴ様、ご帰還早々羨ま――おほん、けしからん事をしないでください。それにチェルシー、いつまでも猫に化けてアークライト様の膝にいないで戻りなさい。羨ま――おほん、失礼でしょう」

「エリアスさん、全く誤魔化せてないからね?」

(なんとも平和だな〜)

 

 帝国では大臣や外道共とナイトレイドがせめぎ合っていると言うのに、建国1500年を迎えるアヴァロンと、そして皇帝とそのまわりの者達はどこまでも平和だった。

 

 

 




アヴァロン : とある理由により、セラフ世界よりチート化。分岐点はキスショットとの出会い。帝国のような内乱もなく、長い年月をかけてネギまのヘラス帝国かメガロみたいな状態になってる。

キスショット : 帝国に将軍として潜入中。理由は後々。仕事は治安維持。その所為でとある少女が超改変され、その少女の師匠をやっている。因みに帝具持ち。持ってる理由は手加減用。

チェルシー : 最後にチョロっと。原作での凄惨な死にキャラから一番の勝ち組へ。詳しくは後々。

アカメは後何話かつづく予定です。


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