転生したら始祖で第一位とかどういうことですか   作:Cadenza

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予告通り転生先が違っていたらverアカメの第二弾を投稿。
どうせ番外編だから細かいこと気にせず、自重もしないで書きたいことを書くぜ!
本編最新話の追加版は明日投稿します。


転生したら人外が蔓延る世界でした 2

 何かが違う。おかしい。違和感がある。

 

 転生した当初からその思いが抜けない。ここが紀元前であるというなら、なるほど確かに生前が現代日本生まれの己が違和感を抱くのは当然だろう。

 しかし、違うのだ。妙な引っかかりがある。生前とは、それこそ天と冥界ほどの比べ物にならない超越的な存在になった故に感じてしまう差異なのかもしれない。

 

 その違和感の正体を知ったのは、そういえば自分は何処にいるのかと、反重力の黒翼で衛星軌道まで飛んで位置を確認しようとした時だ。

 

 

 

 

「……地球は青かった」

 

 

 

 

 現実逃避気味にそう呟いたのも仕方ない。

 

 宇宙(ソラ)から見た母なる地球は、己の知る地球ではなかったのだ。

 地形が、大陸が、海が。全てが異なっていた。

 陸とは不変ではなく、時間と共に移動し、姿を変えるものである。現実にあるハワイ諸島も毎年数メートルの規模で動いている。だが、目に見えて陸が変化するのは、それこそ何千何万という膨大な年月をかけてだ。いくら転生した今が紀元前とはいえ、こんなにも違う筈がない。

 

 つまり、ここは地球ではない。いや、地球なのかもしれないが、少なくとも全く別世界の地球。その事実に彼――アークライトはかなりの衝撃を受けた。

 

「………オゥ、ジーザス」

 

 思わず吸血鬼なのに神へ祈り、暫く(三日ほど)月で引き篭もるくらいに。

 そしてようやく精神が回復した頃、アークライトは世界を巡った。ここは全くの別世界。まず何よりも識ることが最優先だ。

 

 それで目にしたのは――地上と天空を闊歩する怪物たちだった。クジラもびっくりな大きさの魚や記憶にある動物の延長線上にある程度ならまだいい。

 だが神龍みたいなドラゴンに質量や大きさを無視してあらゆるモノに変化する生物、八岐大蛇みたいな山脈クラスのバケモノやコアがある限り無限再生する犬もどきはいったいなんだ。

 

 何か? ここはモンスターをハントする世界か神を食らう世界のような完全にアカンところなのか?

 

 いやいやチート通り越してバグのお前が何言ってんだとツッコミが入りそうだが、この頃のアークライトはまだ己の力を把握仕切れておらず、自分が次元違いの超越者であることを自覚していなかったのだ。

 そんなアークライトが骨クッパみたいな図体で破壊光線を吐くような生物たちが闊歩する世界を見てしまえば、そう思うのも無理はない。

 

 

「この世界はヤバい」

 

 

 それがアークライトの出した結論。いくら能力を持っていても使いこなせなければ宝の持ち腐れであり、何よりこんなヤバい世界だ。能力が通用しない相手が出てきてもおかしくない。

 

「取り敢えず鍛えよう。徹底的に」

 

 この時からアークライトの修練の日々が始まった。

 

 そんなこんなで数百年ほど能力の掌握と修練に費やしたり、あまりに追い込み過ぎて精神的にヤバくなったり、その頃にキスショットと出会って回復したり、二人で獣人や亜人などをなんやかんや救いながら旅したり、果てにこの世界での居場所を作ろうと建国してそこでエリアスと出会ったりと、色々なことがあった。

 

 結果、誕生したのがアヴァロン。人間、獣人、亜人、ハーフ、幻獣など、様々な種族が種族を越えて共存する国家。

 アークライトの能力もフル活用して生まれたアヴァロンは、今尚その輝きを失うことなく在り続ける。建国当初より交流のあった亜人の国家ヘラス帝国や、アヴァロンとヘラスがバックにつく、真摯に学ぶ意欲があるならば死神だろうと受け容れるを理念としている学術都市国家アリアドネーも含め、決して揺らぐことのない結束を以って。

 

 だが、アヴァロン建国より1500年のこの時、とある帝国によってアヴァロンの平穏が乱されようとしていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

「イヴ様も戻られたことですし、現在の進行状況の報告を始めます」

 

 エリアスの言葉を皮切りに、アヴァロン首都アヴァントヘイムの皇帝居城、レーベンスシュルト城のアークライトの自室で報告会が始まった。

 尚、さっきまで猫に化けてアークライトの膝上を独占していたチェルシーは元に戻ってソファーに腰掛けている。

 

「まず、シン帝国帝都に潜入させている部隊の報告からして、大臣のオネストがアヴァロンを標的としているのは確実です。ただ、どうやらオネストは、アヴァロンを国ではなく何かしらの組織と見ているようです」

「まぁ、あっちじゃアヴァロンの文献なんて残ってないしね。千年前の始皇帝もアヴァロンを知らなかったんだし。と言うかあの大臣なら、たとえアヴァロンが国家だと知ってても、至高の帝具があるからと気にしなさそうだけど」

「ええ、その通り。ですがチェルシー、むしろその方が好都合というものです。油断と過信ほど破滅に近いものがないと骨の髄まで思い知らせてやるだけのこと。アークライト様のアヴァロンを狙った時点で手加減容赦など必要ありません」

「おおぅ、エリアスさんがナチュラルにえげつない」

 

 表面上は冷静に見えて実は一番キレてるエリアスに、これ帝国終わったわと慄くチェルシー。

 おほんと咳払い。エリアスが続ける。

 

「シン帝国の状況ですが、イヴ様の潜入調査にチェルシーら諜報部隊からの情報を合わせ分析……するまでもなく、最悪の一言です。大臣以下一部の貴族ばかりが私腹を肥やし、下の民たちは杜撰な法令や重罪に苦しむ。周りは敵対異民族と革命軍に囲まれ、まさに風前の灯火。治安こそイヴ様が警備隊を掌握してから向上していますが、全体から見れば微々たるもの。これはイヴ様の手腕云々の話ではなく、あまりに規模が大きすぎるが故です」

「じゃろうなぁ。まさに焼け石に水。熟れて落ちる寸前じゃよ、アレは」

 

 聞けば聞く程、もう崩壊寸前のシン帝国。もう放っておいても勝手に滅ぶんじゃないかという有様だ。だからといって手を抜くつもりはない。

 

「次はシン帝国の戦力です。数多くの将軍や兵が帝国に見切りをつけ、革命軍に合流しているとはいえ、一般兵の数は未だ十万はくだらないでしょう。これはそれほど問題はありません。十分に対処可能です」

「魔導精霊艦が相手では、ただの歩兵など幾らいても数にならないからな。だがエリアス――」

「はい。そちらも調査済みです」

 

 しかし、重要なのは歩兵ではない。鎧に剣と盾で武装した兵など、アヴァロンの魔法師部隊や魔導甲冑部隊の前では、何千何万いようと敵ではない。帝国兵は地を歩くしかないが、アヴァロン兵は上空から一方的に攻撃できる。魔導精霊艦ともなれば語るまでもない。

 

 アークライトが気にしているのは、それを覆す特記戦力のことだ。

 

「帝国最強の双璧とされる将軍エスデスと大将軍ブドー。第一に上がる特記戦力はやはりこの二名でしょう。双方共に一騎当千の実力を持ち、更に率いる部隊の練度と士気は帝国一般兵と比べ物になりません」

 

 特にエスデスは、その身を帝具と融合させたことで半分人間をやめている。身体能力は人外のソレ。技量も一流。勘も鋭い。並の帝具使いなどとは比較にすらならない。革命軍も一級の帝具使いを複数あてて互角がせいぜいと判断する、まさに最大の障壁だ。

 

 エスデスにはネームバリューこそ劣るものの、大将軍ブドーも強大だ。直属の近衛兵は練度も高く、ブドーをトップとして手足のごとく自在に行動する恐るべき軍団である。

 

「――ですが、こちらもさしたる障害ではありません」

 

 そんな帝国最強を、エリアスは問題ないと断じた。革命軍か革命軍の暗殺組織であるナイトレイドが耳にすれば正気を疑う発言だ。

 しかし、エリアスの言葉は偽りも侮りもなく、ただ事実を告げていた。

 

「常勝不敗などと言われていますが、所詮は勝ちしか知らない井の中の蛙です」

 

 曰く、確かにエスデスの指揮能力は高いが、その思考は常に”狩る側”にあると言う。

 あくまで己は狩人であり、相手は狩られる獲物。故に、如何に追い詰め、如何に嬲り、如何に殺すかしか頭にない。と言うより、それしか知らない。しない、と言ってもいいかもしれない。

 生まれながらの捕食者である、というのがエスデスの全て。狩られる側、喰われる側、獲物が何を考えているかなど知ったことではない。

 これらが大前提としてエスデスの基盤となっている。

 

 だがそんな考え、本来なら通用しない。なまじ強い力を得てしまった為、その考えをこれまで通せてしまった。

 だからこそエリアスからしてみれば、とても予測しやすい。上手くその思考を刺激し、こちらの布陣に誘導してしまえば完封は可能だ。

 

「ブドーも同様です。武官は政治に口を出すべからずと、軍人の節義を守るような如何にも耳に良いことを言っていますが、裏を返せばただ古いものを墨守するだけの思考が中世的な堅物です」

 

 曰く、帝国の巷ではブドー大将軍をオネストの対抗馬と見込み、彼が動くことを熱望する声があるが、そんなものは儚い幻想である。

 なるほど、確かにその実力は強大だ。直属の近衛兵を指揮し、戦場に現れるのならそれは恐ろしいものだろう。

 だが、エリアスからしてみれば、だから?としか言いようのない。

 早い話がブドーには、政治的な能力が皆無なのだ。たとえ彼に帝国の闇を一掃できたとしても、その先を欠片も考えていないのだろう。にも関わらず今になって余計にでしゃばろうとしている。

 これならどこまでも将に特化しているエスデスの方が何倍も脅威だ。

 

 先にエリアスはエスデスをああ言ったが、それは現時点での評価であり、もし然るべき経験を積んだならばアヴァロンにとっても脅威と言える程の逸材になるだろう。

 正直な話、あの性格でなかったなら引き抜きたいくらいだ。

 

「以上が二人の戦力分析です。他に将軍は複数いますが、特記戦力と言えるのはこの二人のみです」

「革命軍が聞いたらなんて言うかなぁ。それを受け入れちゃってる私も随分染まったと思うけど」

「戦いとは数です。更に言えば質と量こそが戦争の必勝条件。単体で戦況を覆せる個は、それこそ極致というべき領域に至った存在。それ以下ではどうやっても個は個のままです」

「その極致の例が私の前に三人ほどいるんですけど」

「私など、アークライト様とイヴ様に比べればまだまだ。それに貴女もやろうと思えばできるでしょう」

「戦艦クラスの魔導精霊艦を余裕で相手できる人がなに言ってるんですか……。確かにできますけど、数秒だけですからね? しかも死ぬほど疲れるし、最初は本当に死にかけましたからね?」

 

 尚、客観的に見れば皇帝と皇妃と参謀総長に対して軽い口調のチェルシーだが、その能力と立場的に何かとアークライトらと会うことが多く、そして今は四人しかいないのも相まって誰も咎めることはない。

 

「第二は帝国が保有する帝具です。特筆するべき帝具と共に、特徴と対処法を説明します」

 

 エリアスが手元の端末を操作すると大型のモニターが投影され、そこに帝具の詳細が示されていく。情報源は八百年程前に帝国から拝借した、全ての(・・・)帝具が載る全書だ。

 

「まずは、将軍エスデスの魔神顕現デモンズエキス」

 

 無から氷を精製し、自在に操る能力。単純故に強力で応用性も高い。奥の手の記載はないものの、新たに生み出された例もあるので調査を続行。

 これといった欠点は見当たらないが、敢えて言うなら遠距離攻撃がない。アウトレンジからの艦砲射撃か魔法師の遠距離魔法で近づかせないように体力を削り、消耗させるのが最善。

 

「次は、大将軍ブドーの雷神憤怒アドラメレク」

 

 雷を操る能力。特に攻撃力が高く地形を変える程のもので、それでいて電磁シールドを張れるなど攻防一体の帝具。奥の手は蓄積された電力を強力な荷電粒子砲として放つソリッドシューター。

 弱点は身体への負担が大きく、適合者でも長時間の使用は確実に寿命を縮めること。高齢のブドーでは死を覚悟しなければ全力は出せないだろう。長期戦に持ち込むのが好ましい。

 

「そして、帝国の皇族の血を引くものだけが使用できる、最強にして至高の帝具、護国機神シコウテイザー」

 

 全高数百メートルオーバーの超級帝具。皇帝自身が乗り込み、操縦することで初めて起動する。外見は巨大なロボットで、様々な武装を持ち、いずれもアドラメレクとは比べ物にならない大火力を誇る。その巨体故に動くだけで敵軍を蹂躙する質量攻撃となり、正直、始皇帝は何を思ってこんな阿呆なモノを作ったんだとツッコミたいレベルだ。

 

「基礎能力が異常なので奥の手らしきものはありませんが、まともに相手をするのはアヴァロン軍でも厳しいものがあります。本当に何を想定したらこんな代物を作る発想に行き着くのでしょう」

「帝具の中でも抜き出てぶっ飛んどるからのぅ。一つだけ違和感がパナいわ」

「帝国中央の宮殿に埋まる形である訳だが、どうやって動かすつもりだったんだろうな。城下に出ようものなら一瞬で廃墟だぞ。固定砲台としてならわからなくもないが……」

「それなら人型にした意味ないよねー。浪漫兵器って言うの? ちょっとチェルシーさんには理解できないなー」

 

 憐れ至高の帝具。散々な評価である。

 

「他に死者行軍八房、万里飛翔マスティマ、煉獄招致ルビカンテ、魔獣変化ヘカトンケイル、修羅化身グランシャリオ、神ノ御手パーフェクターなど、未確認を含めて複数を有しています」

「帝都上空を守っている危険種を操る帝具はどうするんですか?」

「既に対策済みです。帝都上空全域を単独でカバーしているのは驚異に値しますが、それでも所詮は帝具によるもの。帝具使い一人を始末してしまえば総崩れは確実。無論、帝国もそれは承知しているでしょう。徹底した隠蔽と警備が予想され、特定するのは容易ではありません。そこは諜報部隊の仕事です」

「それってもしかして……」

「無論、貴女もですよチェルシー。貴女だってエインヘリアル諜報部隊の一員なのですから」

「ははは、ですよねー。ホント、毎度毎度難易度高いよ。……まぁ給料凄いし待遇良いし、何より側にいられるから文句ないんだけど」

 

 最後は呟くような声量で言ったのだろうが、他の三人の聴力は人外なのでバッチリ聞こえている。だが、情けで聞いていないことにした。

 

「たとえ開戦まで帝具使いが見つからなくとも、魔導精霊艦隊の対空兵装ならびに主砲による艦砲射撃と、強力な個体はS級魔法師で対処します。殆どが帝国で言う特級か一級の危険種で、超級危険種はいないようです。隠している可能性も否めないので調査は続行します」

 

 エリアスが言うS級とは、非公式に作られたアヴァロンの魔法師のランク付けだ。

 S級とは魔法師の中でもエース級の逸材で、単独で竜種を相手どれる。尚、SS級は英雄クラスの魔法師で、アヴァロンでも数えるほどしかいない。ぶっちゃけて言えばネギまのナギやネギクラスだ。ちなみにアークライトは二人しかいない頂点のSSS級である。

 

「帝国に関して口頭で報告すべきものは以上です。残りは報告書に纏め、後日にお届けします」

「ご苦労様エリアス。しかし、千年前の始皇帝の頃と比べて、随分と衰えたな。あの頃は大将軍は三人、将軍は四十八人と、アヴァロンにも劣らない人材に溢れていたのに」

「やはり始皇帝が特別だったのでしょう。この千年で始皇帝と同等、もしくは超える才を持つ皇帝は生まれていません。始皇帝を超えようと試みる皇帝はいましたが、いずれも失敗に終わっています。私見ながら、始皇帝はアークライト様に匹敵する皇帝だったかと」

「俺の方を買い被り過ぎじゃないか?」

「こんな超大国を作っておいてナニ言ってんですかアークライトさん」

「プライベートはともかく、皇帝モードの時はノリノリじゃろうて。それはもう厨二な内容を饒舌に語って――」

「それ言うのやめてぇ!?」

 

 恥ずかしい事を思い出したように顔を覆うアークライト。キスショットと同様に老若男女問わず魅了する、神秘的と言うべき美貌を持つ彼がやるにはあまりにシュールであるが、こういう親しみやすい姿を見せるのもアークライトの魅力だろう。

 

「んんッ! それは置いといて。こっちの戦力状況は?」

「旗艦グラズヘイム以下、ブリュンヒルド級、航空母艦、巡洋艦、駆逐艦。魔導精霊艦隊の編成は終了しています。ただ、グラズヘイムのグングニルの艤装が遅れています。開戦までには間に合わせます」

「物が物だから仕方ないな。急いで事故だけは起こさないでくれ」

「承知しました。――魔法師中隊、魔導甲冑大隊、混成師団。アヴァロン総軍の編成は既に完了。後は帝国帝都での準備を残すのみです」

「相変わらずアヴァロンの早さはヤバいですね。帝国は戦争の準備なんてまったくしてないのに、こっちはもう万端なんだから」

「練度は高くとも実戦経験がないのが不安ではありますが。不安要素をなくす為にも帝都での準備を急がねばなりません。必要ならオールベルグも向かわせますが、イヴ様、いかがなさいます?」

 

 エリアスの口から出たオールベルグという言葉に、他人に悪感情を抱くこと自体が珍しいキスショットの表情が崩れた。

 

「むっ、オールベルグか。儂は苦手なんじゃがの……。特にあやつが」

「え、まだアタック続けてるのメラルドさん。そこんところどう思ってるのアークライトさん的には?」

「口では嫌そうに言ってるけど、俺からするとどこか楽しんでるように見えるな。キスショットは友達少ないからな。嬉しい限りだ」

「楽しんでいるという点は否定はせんが、友達少ないは心外じゃ。というかうぬに言われとうないわ」

「て言うか、あのやりとりを楽しそうで済ますって……。やっぱ負けず劣らずぶっとんでる」

 

 アークライトが「ぼっちちゃうわ!」と叫び、キスショットが「いやぼっち言っとらんわ」と返す。チェルシーは二人のやりとりに慄く。エリアスはそんな光景を微笑ましく柔らかい笑みを浮かべている。

 

 アークライトもキスショットも、今やアヴァロンの皇帝とその王妃。そうそう休まる暇などない。チェルシーにしても一度任務に向かえば同様だ。だから、四人だけのこんな時くらいいいだろう。

 三人を諌めることなどせず、エリアスは温かく見守っていた。

 

(いくら吸血鬼で肉体的な疲労は感じず傷も治るとはいえ、精神的なものはそう回復できません。こういうのも必要でしょう。本音を言うと私も混ざりた……おっと危ない)

 

 思わず出そうになった欲を内心で抑える。万能メイドであらゆる分野を熟せるのだが、たまにとんでもないことをぽろっと漏らして周りを戦慄させることがあるのがエリアスだ。

 おかげでアークライトに想いを伝えられた実績もあるので一概に欠点とはいえないが。

 

(さて、では本土防衛に残す戦力の算出でもしましょう。とは言ってもアヴァロン(ここ)を攻めるなど、たとえ我々の存在を知っていても帝国には無理な話でしょうが)

 

 混ざりたいと思いながら結局は仕事のことを考えてしまうエリアスが、テラス越しに外を見やる。

 そこには青い大空とアヴァロンの街並みが広がっているが、エリアスの目には見えていた。アヴァロンがある世界(・・・・・・・・・・)を外界と隔てる大結界越しに見えるソレが。

 

(アヴァロンが()にあるなど、誰にも想像できませんよね)

 

 青い地球が、遥かソラの彼方にあった。

 

 

 




ちなみに今日、オーディナル・スケール観に行ってきました。いや大満足。もしや第3期!?と思える場面もあったし。ラストバトルは鳥肌立ちました。アルペジオcadenza以来です。作画頑張り過ぎだよ。できればもう一回観たいです。

それではまた明日。

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