呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
今回は、主役とヒロインが出てこず(汗)話が少し重いなと感じる一方です・・・
あと本編の設定を少し変えてみました。次回はコラボを更新できたらなと思ったり・・・
あと最近はいろいろと忙しい・・・
とあるマンションの一室では、華やかなお茶会が開かれていた。席を一緒にしているのはマミとまどか。彼女らの手前には色とりどりの洋菓子、ケーキ香ばしい紅茶の香りが漂っていた。
「鹿目さんは、魔法少女になるのに少し戸惑いがあるようだけど、ゆっくり自分の納得のできる願いを見つけるべきだと思うわ」
「そうですか。ただ、私ってすぐには決められなくて・・・でも・・・マミさんは凄く素敵だなっていつも思います」
「そう?あなたのお友達は私をあまり好意的には見ていないようだけれど・・・どうしてアナタは私を?」
さやかの事である。彼女が慕っている杏子のことを考えれば敵対の目を向けているマミに対して好意的には見られないらしい。
「さやかちゃんは本当は凄く良い子なんです。だけど、少し頑固なところがあって」
「そう。良いわね、そういう風にお互いに気心が知れている関係って」
まどかにとって、さやかはとても良い友人である。そのことにマミはまどかを羨ましく思った。
以前はそれなりに居た気心が知れた友人達も今や顔を合わしても一言の挨拶だけの関係になってしまっている。
嘆く間もないほどにやらなければならない使命がマミにはあった。
「はい。マミさんはあの時私と仁美ちゃんを助けてくれました。とてもじゃないですけど、私は凄く格好いいなって思いました」
「格好が良いね。そういうものじゃないわよ。いつも上手く立ち回れるとは限らないわ」
「そうなんですか?」
”記憶”にある彼女はいつも先頭に立っていて、それでいて凄く頼もしく凛々しかった。
「そういうものよ。いつ、魔女にやられてしまうか分からないわ。初めて魔女と戦ったあの時だって、死んでいてもおかしくなかったもの」
「えっ!?マミさんが!?!」
「あの時は運が良かったのよ。逃げたい、死にたくないって思うだけで精一杯だった。そんな風に自分勝手な気持ちだったからこそ・・・・・・」
マミの脳裏に閉じていく魔女結界に取り残された”少年”の姿が過ぎった。それ以前から自分は何も変わっていないことを思い知らされた。
「鹿目さんにだけは話して置くわ。私が魔法少女になった訳を・・・・・・」
あの日、久しぶりにママとパパと私、家族で遊園地に行く予定だった。もちろん小さい頃から大好きだったあのキャラクター達の居る場所へ・・・
お気に入りの服にお気に入りの靴で精一杯のおめかしをした。ママは大好きなお菓子を用意してくれている。今日一日、楽しく過ごせることに心を躍らせていたときだった。
家族は遊園地にたどり着こ事はなかった。突然の衝撃と音と共に視界が暗転した。何があったのか分からなかった。
分かったとき、ママとパパは冷たくなり動かなくなっていた。気がつけばお気に入りの服は赤く染まって、身体に鈍い痛みが走った。
頭が痛い、身体が痛い、意識がはっきりしない・・・・・・怖かった。自分という存在が消えていくことが怖かった。死ぬことが・・・一人ぼっちで死んでいくことが・・・・・・
”君の願いを一つだけ、叶えてあげるよ。僕と契約して、魔法少女になってくれないかい?”
霞んでいく視界に映った小さな白い影。それに手を伸ばし、
”た・・・たすけて・・・・・・”
自分という存在が消えていく事に・・・死にたくないがゆえに、彼と契約を交わした・・・・・・
「考える余裕なんてなかったわね。だから、鹿目さん、考える時間があるのなら自分の納得できる願いを見つけて欲しいの」
「そうですか・・・何だか、マミさん。私を魔法少女にしたいのかなって思っちゃったことがあったのにしたくないように言うんですね」
「そうね。キュゥべえに選ばれたのなら無関係では居られなくなるわ。あの子は、私たちの危機を感じて助けてくれる、そんな感じがするの・・・だから放っておけなかったの」
笑みを浮かべてマミはまどかに自身の想いを語る。その後は、少しだけ雑談をしてまどかは部屋を後にした。まどかが去った後、マミはテーブルにうつ伏せになった。彼女の様子は酷く疲れていた。
「考える余裕なんて本当は無いはずなのに・・・どうしてこういう風に言っちゃうのかな・・・・・・」
本当はまどかに考える時間などないことはマミには分かっていた。理由は言うまでもなく数週間後にこの街にやってくるであろう”ワルプルギスの夜”に備えて”力”を蓄えなければならないのだ。
それを考えるとまどかには一刻も早く魔法少女になってもらいたかった。だが、それを強要することはできなかった。佐倉杏子の言うように魔法少女などならない方が良いのだ。
彼女には分かっていた。まどかを魔法少女にすることは、かつて自分が謳歌していた”あの日々”を失わせることになることを・・・・・・
失って初めてわかる”価値”。それを他の人間が奪うことなどあってはならないのだ。故に孤独だった。一人ぼっちで死ぬことが怖い少女が死ぬことが怖くて一人ぼっちで戦うなんて・・・・・・
だからこそ一緒に戦ってくれる”仲間”が欲しいと思った。最初の一人とは上手くやっていけると思ったが、甘い考えであったことを思い知らされた。
「誰でもいい・・・・・・誰か、私と一緒に居て・・・・・・一人ぼっちはもう嫌なのに・・・・・・」
「大丈夫だよ、マミ。君が僕に言ってくれたよね。僕らは友達だって」
マミの頬に自身の頬を擦り付けているのはキュゥべえである。
「例え君が一人ぼっちでも僕がマミの傍にいるよ。だって友達だからね」
「キュゥべえ・・・・・・ありがとう。何だか、情けないところ見せちゃったね」
はにかんだ笑みを浮かべてマミはキュゥべえを胸元に抱き寄せた。
自宅に戻ったまどかは、ベットの上に横になり今日の出来事と”記憶”を照らし合わせていた。
”記憶”の中にいるマミはいつも華やかであり、憧れの魔法少女だった。
しかし、今日あったことは”記憶”とは違っていた。もう少し後に出会うはずだった杏子が現れたことさらには、今までにいなかった彼女の伯父までも・・・・・・
それよりも彼女が居なかった。最初に出会うはずだった暁美ほむらが存在していなかったのだ。
「どうしてかな?なんで、ほむらちゃんは私の前に出てきてくれないんだろう」
危険に晒したくないが故に自分の前に出てきてくれないのだろうかとまどかは思った。こういうことは他の”記憶”にもあった出来事だからだ。
「そんなんじゃない。言ってくれない方が余程、心配だよ」
気分が優れなくなったのかまどかは、一口水を飲みたくなった。部屋を出てキッチンへと向かうのだった。
部屋から出たあと、飾ってあるぬいぐるみの間から白い生き物が躍り出た。キュゥべえである。
興味深そうにキュゥべえは部屋を見渡した後、彼女の机の上に飛び乗りそこに置いていたノートに前足をかけた。丸い赤い瞳は瞬き一つせず、ノートに記載されている内容に目を通す。
記載されているのは、少女漫画チックなイラストにその日あった出来事を日記として書いている。ノートの中に”暁美ほむら”という名前が頻繁に出てきていた。
興味深そうにその名前を見るキュゥべえは、さらにソウルジェムとグリーフシードを思わせるイラストにも目を向けた。さらには、巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか、上条恭介という名前も・・・・・・
呉キリカ、美国織莉子、千歳ゆまと言った彼女とは接点のない者の名前までもが…これらの名前に覚えがあるのかキュゥべえは小さな首を傾ける。
何故、まどかがこのようなモノを書いたのかが分からなかったのだ。だが、頻繁に出てくる”暁美ほむら”の名前に再び目を向けた後、周りに溶け込むようにその姿を消した。
「キュッぷい」
一階へ降りたまどかは、父 知久と顔を合わせた。
「まどか、まだ起きていたのかい?」
「うん。ちょっと眠れなくて・・・パパもまだ起きていたの」
「いつものことさ。起きているついでに手伝ってくれるかい?ママが帰ってきたっていえばわかるね」
苦笑しながら玄関に視線を向ける父に釣られてまどかも視線を向けた。
そこには酔いつぶれた母 詢子の姿があった。
「ま、またなの。ほんとうにもう~~~」
呆れながらいつもの母の様子に苦笑せざる得ないまどかだった。
「・・・・・・・・・ぐぅえええ・・・・・・み、水・・・・・・」
「はいはい。いつものことだけど、程々にね」
既に用意してあったコップ一杯の水を差し出し、詢子はおぼつかない手でそれを飲んだ後、気持ちよさそうに眠ってしまった。
「やれやれ、ベットまで連れて行かなくちゃいけないな。まどか、ママの荷物を運んでくれ」
「うん。パパ、一人で大丈夫?手伝おうか」
「大丈夫だよ。これぐらいいつものことだからね」
笑みを浮かべる父 知久の表情に安心したまどかは母 詢子のバックを手にとる。そのバックから一枚のチラシが落ちていった。
「なんだろう?何かの広告かな」
落ちたチラシを広げた瞬間、まどかがよく知る”少女”の顔がそこにあった。
「ほ、ほむらちゃん?」
”探し人 暁美 ほむら”
そこには、メガネに三つ編みのどこにでもいる少女の写真が大きく載っており、数日前から行方不明であるということが記載されていたのだった・・・・・・・・・
知久によってベッドに運ばれた詢子は早速布団に包まり安らかな寝息を立てて夢の国へと旅立った。良い夢を見ているのか表情は少しにやけている。
そんな詢子の様子に一仕事を終えたことを確認し、二人は互いにホッと一息ついた。
「ココアでも入れようか?」
「うん。お願い」
一階のダイニングキッチンへ移動したまどかの前には父 智久の入れたココアが湯気を立てている。
「なんでママは、あんなに仕事が好きなのかな?昔からあの会社で働くのが夢だったなんてわけないよね・・・」
これを言うなら、マミも”魔法少女になって悪い魔女と戦う”というのもないだろう・・・
「ママは仕事が好きじゃなくて、頑張るのが好きなのさ」
「?」
智久の言葉の意図が今一よくわからないのかまどかは疑問符を頭上に浮かべた。これに少し苦笑しながら智久は
「嫌いなことも辛いこともいっぱいあるだろうけど、それを乗り越えたときの満足感がママは好きなんだ。だからこそ、今の難しい仕事にやりがいを感じているし、満足なんだろうね」
自身の伴侶についてとなると中々、舌の回りが良い。
「・・・・・・ママはそれで満足なのかな?」
「そりゃ、会社勤めが夢だったわけじゃないだろうさ。ママはそれでも自分の理想に沿った生き方をしている。そういう生き方で夢を叶えることもできるんだよ」
「生き方で夢を叶える?」
「どう思うかはそれぞれだけど。僕はママのそういう生き方が好きだよ。そういう所は尊敬できるし、自慢できる素敵な人だってね」
”生き方で夢を叶える”良く分からないが、自分の理想とするやり方というのがある事は朧げながらまどかも理解した。
「それと、まどか。最近、少し悩んでいるようだけど何かあったのかい?」
最近であるが、まどかが一人で悩んでいるような様子を見かける。時折、涙している光景も・・・・・・
「あ、うん。なんでもないよ。この間見たTVが凄く考えさせられる内容だったから、私も色々考えなくちゃって」
この”悩み”は言えるはずもなかった。故にごまかすしかなかった。嘘をつくしか・・・・・・
「そうなのかい?何かあったら僕たちに言ってくれるかい」
「う、うん。何かあったらね」
まどかは、分かっていた。自分が嘘をついていることを父がお見通しであったことを・・・・・・・・・
夜の公園を一人の少女が歩いていた。右手には黄色に淡く輝くソウルジェムを片手に周囲を見回しているのは、巴マミである。
いつもの日課である”魔女””使い魔”を狩るための巡回を行っているのだ。周囲に怪しい気配はなく、これといった反応はない。
だが正面から自分に向かってくる気配を感じる。そう覚えのある気配は黒いコートを羽織った佐倉杏子。伯父である魔戒騎士はこの場には居ない。
昨日キュゥべえが言った”殺し屋”と言われる”魔戒騎士”の身内らしい服装だとマミは思った。
「・・・・・・何しにきたの?直接、私を殺して縄張りを奪おうっていうのかしら」
口調こそは穏やかだが、目は笑っておらず相変わらず拒絶の意志を見せている。
「そういうわけじゃねえよ。アタシはマミともう一度・・・・・・元通りとはいかないけど、やり直したいって思って」
「随分と図々しい話ね。勝手に私の下から離れて、また仲良くしたい?ふざけないでよ・・・」
「ああ、それについてはアタシも同じだ。だけど、アタシとマミがもう一度組めば、もう魔法少女を増やすことなんてないんじゃないのか?」
「何を言っているのかしら?あの子はキュゥべえに選ばれたのよ。無関係ではいられないわ」
「そうだけどな。関わらないなら関わらないほうがずっといい。資格があるからって、アタシ達がお節介で余計なことして、そいつの人生を奪っていいわけじゃないだろ」
杏子の言葉がいやにマミの胸に響く。自分の件は仕方がなかったが、他の子はそういう状況ではない。選ぶか選ばないかは決められる。
それは自分も時間があるのなら、しっかり考えて納得のできる答えを得て欲しいということが彼女の理想なのだ。だけど・・・・・・今は悠長に考えられる時間はない。
驚異が刻一刻と迫っている。数週間後に迫った”ワルプルギスの夜”が”見滝原”が来るのだ。
「だからさ、アタシ達でもう一度”組もう”。傷の舐め合いってワケじゃないけど、一人で突っ走るよりも話せる知り合いぐらいは居たほうがずっといいだろう」
手をだし杏子はマミに歩み寄る。だがその手をマミは取ることはなかった。
「・・・・・・仲間がいるから、さらに私を加えたいのかしら?もしかして、私を哀れんでいるの?」
「ッ!?!違うっ!?!アタシは、ただマミに謝りたくて。もう一度やり直せたらって・・・・・・」
「別に構わないわ。私のことを思うのなら、二度と私の前に姿を現さないで・・・・・・」
背を向けたマミに杏子は
「待ってくれよ!!!話を・・・・・・」
気がつくとマミは”魔法少女”としての姿になり杏子に銃口を突きつけていた。
「話す暇なんてないわ。私は色々とやらなければならないの。それこそ、あなたと話している暇なんてないほどにね」
彼女の目は完全に拒絶の意志を持っていた。二度と話しかけるなと言わんばかりに、二度と関わるなと・・・・・・・・・
背を向けて去っていたマミの後ろ姿と自身の招いた後悔に杏子は苛立たように近くの街灯をに思いっきり八つ当たりをするのだった。
マミ
佐倉さんのいう事は最もだけど私は、彼女のそれを信用することができない。言うまでもなく私は彼女に少し嫉妬している。
そうだ、彼女には血のつながりなる”家族”が傍にいる。それもいざと言うとき守ってくれる人・・・・・・願っていても決して現れることなない人が彼女には、すんなりと現れたことが・・・・・・
私にも血の繋がった親戚がいないわけでもないがほとんど顔すら覚えていない他人同然の人たちだ。故に私の持っていないモノを手に入れた彼女が少し許せない。
ワルプルギスの夜を倒すのなら、佐倉さんの”力”は魅力的で立派な戦力なのだ。だけど、こんな気持ちを抱いている私と一緒にいれば確実に不協和音をもたらすかもしれない。
彼女の申し出は受けるべきだった。だけど、彼女に対して、その伯父に対して不信感を抱いている私が一緒にいてはダメなのだ。一緒にいては、迷惑をかけてしまう・・・最悪の場合、ワルプルギスの夜すら倒せない。
ずっと一人でいたから、こういう風に捻た考えを持ってしまったのかもしれない。この感情は心の奥に閉まって、いずれ来る”ワルプルギスの夜”に備えて力を・・・・・・
この時私は失念していた。そうワルプルギスの夜以外にそれと同等、それ以上の驚異が見滝原の闇を徘徊していたことに・・・・・・
私は思い知らされる・・・・・・アレは希望も絶望を全て飲み込む”黒い炎”であることを・・・・・・誰もアレを止めることなど叶わないことを・・・・・・
見滝原の病院の一室で一人の少年が呆然とした表情で自身の左手を見ていた。普通の人ならば意識しれば指が動くのだが、少年のそれは全く動かすことがかなわないのだ。
そう彼はこの左手を動かしたかった。大好きな”ヴァイオリン”を弾きたかった。
”前回の検査の結果だが、君の左手の指の治療は不可能だ”
残念だがと言われたが、その一言で納得できなかった。少年は取り乱したように喚いたが喚いたところで結果が変わることはなかった・・・・・・
その夜、少年はまるで世界に取り残されたような孤独と絶望を夜が明けるまで感じるのだった・・・・・・
積み上げられた贈り物を恨めしげに見つめたあとそれらを動かなくなった左手で崩すことで己の中の苛立ちを紛らわせることしかできなかったのだ。彼は・・・・・・
夜が明けた病院の一角に一つの”呪い”の種が植えられた。それはこの世の”災厄”を振りまく”魔女の卵”グリーフシード”・・・・・・
ゆっくりと鼓動を始め、周囲の絶望を取り込み始めた・・・・・・・・・
次回よりシャルロッテ戦に入ります。