呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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牙狼 三期目面白いですね。あの三人の掛け合いは結構好きだったり(笑)

今回、まどマギのキャラが少し牙狼よりになってきました・・・言うまでもなくあの子ですけど




第十三話「黒炎(3)」

 

 

「いやぁ~~、みんな、悪いね。付き合ってもらっちゃって」

 

時刻は、本日の授業の過程を終え下校である。見滝原の病院へ向かう道を三人の女子中学生が歩いていた。

 

まどか、さやか、仁美の三人。最初の第一声はさやかである。

 

後頭部を掻きながら、さやかはいつものように明るい笑顔を向けていた。

 

「そんなことないよ。さやかちゃん、今日は私も特に用事はなかったし」

 

「そう…で、やっぱり会ってるの?」

 

「えっ?なんの事」

 

「三年生よ。三年生、あの人と会ってるんでしょ。よした方がいいんじゃないの?」

 

”三年生”という単語が誰を指しているかは言うまでもないだろう。見滝原に拠点を置く魔法少女 巴マミのことである。

 

「どうして?マミさん。凄く良い人だよ」

 

「確かにいい人かも知れないけどさ。あの人ってさ、なんか身の丈に合わない理想を他の人に押し付けて一緒に居ると息苦しくなりそうで……」

 

さやかは、少し言葉を選ぶように応えた。普段なら感情の赴くままに様々な言葉が出るのだが、杏子に釘を刺されていて言えないのである。

 

「そんなことないよ。ただ一生懸命なだけで…」

 

”他のさやかちゃんは、マミさんに憧れていて、その意思を継ごうとしたんだよ”目の前にいる友人とは違う”時間軸”の彼女は、身の丈に合わない理想を継ごうとして潰れてしまった。

 

「実際、正義の味方ってさ。凄く損な生き方だよね。姐さん、言ってたよ。そういう生き方をするのはそうする以外でしか生きる術がない人がするものだって」

 

「でも、その代償に大切な人を救えるのなら、そういう選択もありなのではないですか?」

 

「仁美ちゃん」

 

仁美の言葉にまどかは驚いた。言うまでもなく、人としての生き方を捨てて、他者を救うという選択は”未だに姿を見せない彼女”と同じだからだ。

 

「仁美が言うなら、そうかもね。アタシもなんていうか、叶えるに値するんじゃないかなっていう願いが無いわけじゃないし……」

 

さやかは”幼馴染”を救いたいという願いがあった。だが、今の日常を捨てて戦い続けるという選択に戸惑いを覚えていた。

 

「だったら、選択すればいいんじゃないですか。欲しくても資格がないからと言って叶えられない側からすれば、迷うなんて……」

 

強い口調で仁美はさやかを責めるように言う。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。でも、願ったら願ったで……」

 

願うことで人としての生き方を失うことにさやかは戸惑っている。一時的に戦うのなら、何とかできるかもしれないが、戦い続けるというのは難しいのだ。

 

少し前に姐さんこと杏子の自宅にお邪魔した時に彼女の伯父にそう言われたのだ。魔法少女ではないがそれに近いことをしているとの事……

 

「その人のために人生を投げ出すのが嫌ですか?それだけの価値があるのではないでしょうか。投げ出せないのは、願いなんてその程度なんですね」

 

「仁美ちゃん。落ち着いて!!」

 

一方的にさやかを責めるような仁美に対して、まどかが間に入って止める。

 

「仁美もどうしたの?アタシが何したって言うのよ」

 

突然の彼女の態度にさやかも少し怒りを感じていた。言うまでもなく、理不尽だったからだ。願いが叶えられるのならさっさと叶えろと頭ごなしに怒鳴られているようなモノだったからだ。

 

「何もこうもありませんわ。私、用事がありましたので失礼します」

 

仁美も仁美で怒りを感じているのか、そのまま二人に背を向けて離れていってしまった。その後姿に

 

「なによ、仁美ッたら。アタシだってね、好きで資格があるわけじゃないのに……ったく、あの三年生と関わってから碌なことになりゃしない」

 

「さやかちゃん。それは違うよ。マミさんがというよりも簡単に願いが叶えられるっていうのはおかしいと思うんだ」

 

「どういうこと?仁美があんな事を言うようになったのは……」

 

「うん。よく考えてみれば、キュウベえってどうして皆を魔法少女にしたいのかなって…願いを叶えさせてくれるなんて少し都合がよすぎないかな……」

 

「言われてみればそうね。怪しいおじさんにおいしい物で釣られているようなものね」

 

小さい頃に親に口が酸っぱくなるほどまで言われていた”知らないおじさんから物を貰わない”と…考えてみれば、人畜無害そうな顔をしているけど、その素性は良くわからない。

 

「相手が怪しいおじさんじゃないからって油断したわ。仁美も仁美であの外見にだまされちゃったのか」

 

「……さやかちゃん。仁美ちゃんには、キュウベえは見えないよ」

 

「うぐぅ……さやかちゃんに名探偵はつとまりそうにないわ」

 

怪しい男に騙されたのなら、自分がと意気込んだものの肝心の相手が見えないのなら、何も出来ることはないと悟り、さやかはがっくりと肩を落とすのだった。

 

その様子にまどかは穏やかそうに微笑んだ。

 

(こういうのって、良いよね。さやかちゃん・・・・・・それに仁美ちゃん)

 

去っていった仁美が行ってしまった方角に視線を向ける。時刻は夕暮れ時に近い、昨日のこの道は真っ赤に染まっていた。

 

真っ赤に染まった道は、華やかな”レッドカーペット”とは真逆の血塗られた魔法少女たちの歩む道を表しているかもしれない・・・・・・

 

その道を今も”彼女”は歩んでいる。となりで百面相をしているさやかも”別の時間軸”では・・・・・・

 

脳裏に浮かんだ嫌な光景に目をそらすように、さやかに伴って病院へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の一室 上条 恭介の個室の前に一人の少女が立っていた。少女は 暁美 ほむら。

 

(この時間軸でも上条恭介はそうなのね・・・・・・)

 

昼間も外が明るかったにも関わらず、カーテンを締め部屋を暗くしてベッドの掛け布団に篭っている姿を見てほむらは呆れるような視線を向けた。

 

天才的なヴァイオリンリストでありながら、事故によりその将来を絶たれてしまった少年。友人であったさやかの幼馴染であり、想いを寄せる相手であった。

 

これまでの彼のさやかに対する扱いに対しては、僅かながら怒りを覚えることはあった。ヴァイオリンリストの将来を絶たれたあと、彼に期待を寄せていた人達は手のひらを返したように態度を変えたが、変わらずに接したのはさやかだった。

 

上条恭介とは、何度か別の時間軸で接してきたが、ほとんどはさやかを異性として見ていなかった。時には”自分はさやかの好みではない”というすれ違いもあった・・・・・・

 

この時間軸もそうなのだろうと・・・・・・苦い思いを感じながら、ほむらは病室に背を向けていった。その際に盾を動かし、時間を止めて・・・・・・

 

止まった時間の中を歩みながらほむらは、これからのことを考えた。

 

(流れは幾つか巡った”時間軸”と同じ。だけど、イレギュラーのホラー、バラゴの件があるからどう変わるかわからない。極力イレギュラーは、排除しなければならない。かつてのオリコ、キリカのような介入は認められないわ)

 

早速であるが他のイレギュラーの芽を摘むための準備を行ったが、幸いなことに彼女が危惧した”二人”は既に死亡していた……とはいっても魔法少女になる前ではなく、ある”陰我”に関わった事によって……

 

この世界の恐ろしさは、これまでの時間軸を遥かに上回っている。どんなイレギュラーが潜んでいるかわからない。

 

気を引き締め彼女は病院周辺の探索を始める。言うまでもなく、ここに現れる”魔女”の元である”グリーフシード”を処理するために……

 

(いつものことだけれど、グリーフシードの場所が時間軸が変わる度に変化していく……)

 

グリーグシードがある確率の多い駐輪場を重点的に調べたが全くなかった……続いて屋上に足を向ける。その背後を廊下の影から白い小さな生き物が見ていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

まどかは、待合室でさやかを待っていた。落ち着かないのか辺りを見回している。まるで何かを気にしているように……

 

「よ!おまたせ!」

 

気がつけばさやかが傍に来ていた。

 

「あれ?上条君は」

 

「なんか今日は都合が悪いみたいでさ。わざわざ来てやったのに失礼しちゃう」

 

口調は良いとはいえないが表情は、少し影が差しているが明るいものだった。

 

「そうなんだ…じゃあ、戻ろうか」

 

共に連れ立って病院の中庭から帰宅の途につく。

 

(マミさんには、言っておいたけど、ここはあの”魔女”はでてこないのかな)

 

少しだけ気が楽になったのかまどかが安堵の息を付いた時だった。

 

「あれっ?さっき、あんなのあったけ」

 

さやかが何かを見つけたのかそれの近くに近寄ろうとする。遮るように白い影が飛び出す。

 

「大変だっ!!!それは、グリーフシードだ!!それも羽化しかかっている!!!」

 

近づくさやかに警告するようにキュウベえが彼女を庇うように立ちふさがる。

 

「えっ!?!こ、これが姐さんの言ってた。魔女の卵!!!早く姐さんに!!」

 

急いで携帯電話を取り出そうとするが、グリーフシードは瘴気を発し、周囲を巻き込むように結界を発生させた。

 

「まどか!!早く逃げて!!!」

 

不用意であったが直ぐ近くまで着てしまったさやかは、キュウベえ共々結界の最奥部に近いところに来てしまった。

 

以前見た光景と違い、所々に病院の薬品庫を思わせる光景に対して…

 

「って、今日のさやかちゃん。アンラッキーな出来事が続きすぎじゃありませんか?」

 

親友に理不尽に怒られ、幼馴染とは面会できず、さらには魔女と遭遇といった最悪な出来事が連続して起こったのだから…

 

「これは困ったことになったね。美樹さやか、一応聞いておくけど、この状況を打開できる手があるよ」

 

「それは聞かないでおく。だって、アンタの都合がいい様な展開だしね。この状況」

 

さやかは、足元にいるキュウベえと少し距離を置くように離れた。

 

 

 

 

 

 

 

その頃病院の近くに来ている人物がここにも居た。

 

「なんだ?ソウルジェムが反応していやがる……この感じは魔女か……」

 

伯父のモノに似せたコートを靡かせながら病院へと杏子は足を向けた。念のため伯父に一言連絡を入れて……

 

<おじさん。病院に魔女が出た、アタシは先に行くから>

 

携帯電話ではなく最近習った ”鳴札”を使って……

 

 

 

 

 

 

 

 

佐倉杏子がいる場所とは真逆の位置に巴マミは居た。

 

「鹿目さんの言ったとおりだわ。ここに魔女が現れる……」

 

病院に現れる可能性は無くはなかったが、実際に現れたとなると話は別である。

 

それと同時に僅かながら不信感に似た感情を覚えた。

 

「鹿目さん。夢で見たっていうけど……もしかして、キュウベえの言った彼女の才能だというのかしら…」

 

まるで見てきたかのように話したまどかに対し、彼女はキュウベえの言うように魔法少女として破格の才能だといえばそれまでだが、

 

それ以上に説明の付かない得体の知れなさも感じていた。

 

「でも、”ワルプルギスの夜”を倒すためには……」

 

キュウベえに選ばれたのならと無理やり納得させて……

 

 

 

 

 

 

 

その光景を屋上からほむらは見ていた。これまでの時間軸と同じく”駐輪場”のグリーフシードが孵った。

 

「あそこは念入りに調べたのに・・・どうして・・・まさか・・・・・・」

 

考えたくはないが、この魔女の出現にはアレが、インキュベーターが関わっているのではという考えが浮かんだ。

 

複数のインキュベーターが同時進行に活動しているとは聞いているが同じ場所に複数でいる光景、活動している光景は未だに見たことがなかった。

 

この魔女の出現と一緒に関わってくるのが”巴マミの死”である。一緒にいるのは最高の素質を持った少女となると・・・・・・考えつきたくもない最悪なシナリオが読めてしまう。

 

「私はいつまでたっても、弱い暁美ほむらということね。巴さんのためにもここは、私が・・・・・・」

 

結界に閉じ込められたかつての友人、引き離された親友の元へたどり着く為にほむらは、屋上から飛び降りようとするが・・・・・・

 

「できれば、このまま此処にいてくれないかな?君が関わったせいで、僕らの警戒する不安要素が関わってしまったからね」

 

振り向くとそこには、手摺の上に座り込んだインキュベーターの姿があった・・・

 

可愛らしい容貌であるが、その目には感情はなく無機質な冷たい赤が存在していた・・・・・・・・・

 

「バラゴとは正反対なのね。あなたは・・・・・・」

 

暗黒騎士は闇色の狼の貌に浮かぶのは感情のない白い目だが、目の前にいるインキュベーターのように感情がないのではなく、感情を見せないようにしている。そんな目なのだ・・・・・・

 

盾から、彼が渡してくれた”武器”を取り出す。それは紫色の弓・・・・・・

 

「あなたの忠告は無視させてもらうわ」

 

淡い紫の光の矢をインキュベーターに向けて放ち、粉砕した。

 

 

 

 

 

 


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