呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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あれから遅くなりまして申し訳ないです。

言っておきますが、私はマミさんが好きです!!

ティロ・フィナーレな彼女が好きです。豆腐メンタルな彼女が好きです。

なんとなく詰の甘いマミさんが好きです。

今回の話は、マミさんが嫌いなの?と言われかねないのでこう言っておきます。






第十四話「黒炎(4)」

 

 

ほむらが病院へ行っている頃、バラゴは自身の表の顔である”カウンセラー”の仕事を行っていた。

 

「先生……先日の件ですが……」

 

「お気持ちをお察しします。暁美さん」

 

「はい……ど、どうしてあの子が……あの子がこんな目に……」

 

涙を浮かべて女性は俯く。その強い感情の表れなのかスカートを掴む手が強かった。

 

「今は、落ち着いて下さい。警察も捜査をしていますから、必ず娘さんは無事な姿であなた達の元へ帰ってきます」

 

「………はい。先生」

 

女性こと、暁美 ほむらの母が落ち着くまでバラゴは彼女を宥めていた。

 

暫くして彼女が帰宅した後、バラゴは依頼された仕事の書類に目を向けた。その書類に記載されていたのは、黒縁めがねに三つ編みの少女 暁美ほむらの写真があった。

 

 

 

 

 

 

 

バラゴ

 

まさか、こういう事になろうとは……自分でも不思議に思ってしまう。

 

このことを知ったのは僕が彼女と出会ってから、少し経ってからのことだ。

 

依頼は、心臓の病を煩い長期の入院生活で極度の人見知りである彼女のカウンセラーの件だった。

 

見滝原に行かなくとも僕は、暁美ほむらと出会う”運命”にあったようだ。そして、時間を遡行しなくともほむらは……

 

”魔法少女”としての業に関わっていたかもしれない。そう思うと僕の中の黒い感情が騒ぎ出す。

 

手に入れた”母の映し身”が再び、奪われること、傷つけられることが許容できない。

 

だから、誰にも渡すつもりもない。返すつもりもない。例え彼女の親であろうとも……そう、彼女はずっとこのバラゴの傍に置く……メシアと一体化し”唯一の究極”の存在になった後も……

 

「僕の方でも探してみますから、何か分かりましたら必ず連絡を入れます」

 

「はい、先生。お願いします」

 

ほむらの母は、涙ぐみながら僕に頭を下げて礼を言った。この茶番とも言えるやりとりは、我ながら自分は歪んでいると思う。

 

思えば、師である冴島 大河の元を離れる時から自分の歪みは自覚している。

 

大河の息子 鋼牙は覚えていないだろうが僕は彼と何度か夕食の席を共にしていた。その度に目に付くのは、幸せそうに笑う彼の顔を見るたびにこう思ったのだ。

 

”お前のその幸せを滅茶苦茶にしてやりたい”

 

大河は、孤児である僕に本当によくしてくれた。魔戒騎士としても一人の人間としても尊敬に値する人物だった。”アイツ”とは違って……

 

魔戒騎士としての修行を重ねる度に僕は、更なる力を求めた。”もっと強い力を”

 

誰よりも強い力を欲した僕は、何時の頃からか師である大河の方針に事あるごとに反抗し、最終的に意見が合わなくなり、僕は彼の元を飛び出した。

 

”バラゴ、闇に囚われるな”

 

去り際にそんな戯言を言っていたが、僕はそれに囚われてはいない。それを望んだからだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原病院

 

魔女結界に囚われたさやかの身を案じるまどかの前にマミが現れた。既に魔法少女の姿になっており、いつでも戦いに望める態勢だった。

 

「鹿目さん。後は私に任せて」

 

結界に足を踏み入れようとした時、まどかは

 

「マミさん。私も一緒に行ってもいいですか?」

 

「もちろん、構わないわ。だけど、ここの魔女は少し嫌な感じがするわ。私が居るからって油断しないで……」

 

彼女の手を取り、マミは結界の中へと足を踏み入れるのだった。その様子をほむらは物陰から見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむら

 

この”時間軸”、ほとんどの時間軸で巴さんとまどか、さやかは彼女に憧れを抱き行動を共にしていた。私自身にとっても巴さんは憧れ人だった。

 

魔法少女としての華やかさ、思想に関して彼女ほど”魔法少女”としての理想はなかった。

 

それ故に魔法少女が抱えていた”闇”に耐えられなかった。

 

不安定な”ソウルジェム”と言う名の入れ物に入れられた”魂”は、世の中の”呪い”の影響を大きく受ける。

 

そのことは今はどうでもいい。今は、巴さんとまどか、さやかの安全を如何に確保するかだ。

 

名乗り出れれば良いのだが、今の私は彼女達と一緒に入られない。言うまでもなく、あのバラゴと関わらせてはならないのだ。

 

関わらせたら、彼女達にどんな影響がでるか分からない。最悪、まどかに危害が加わるかもしれない……

 

魔女結界に入った二人の後をつけるべく私も物陰から飛び出そうとした時だった。見知った赤髪の少女が魔女結界の前に現れた。

 

……佐倉杏子。何故、見滝原に居るの?

 

 

 

 

 

 

魔女結界に入った二人は、薬品庫を思わせる迷路を行く。

 

『キュウべえ、そっちの状況は?』

 

『大丈夫だよ、マミ。魔女はまだ孵化していない。だけど、そうゆっくりしていられない状況だね』

 

マミはテレパシーで結界の最奥部に居るキュウべえに呼びかける。

 

『この声って、三年生ですか?』

 

彼女に対して、相変わらずの憎まれ口を叩くのはさやかである。

 

『さやかちゃん。今は、そんなこと言ってる場合じゃないよ』

 

さやかを宥めるまどかだった。

 

「そうね。今は憎まれ口を叩かれても助けなければならない人には変わりないもの」

 

マミは苦笑しながら、結界の奥へと進んでいく。

 

「おい、アタシも一緒に行くよ」

 

いつの間にか背後には、黒いコートを羽織った杏子の姿があった。

 

「・・・・・・・・・佐倉杏子・・・・・・・・・」

 

マミはこれまでにない程、冷たい目をしていた。

 

 

 

 

 

 

「杏子ちゃん?」

 

「ったく、あんまり魔法少女には関わらない方が良いって、あれほど言っただろう」

 

まどかの姿を視界にいれた杏子は、小言の耐えない姑のように顔を顰めたが、直ぐに表情を引き締め、

 

「奥にさやかが居るんだろう。だったら、アタシが出ても問題はないな。それと……」

 

杏子は魔導筆を懐から取り出したと同時に、青白く輝く金魚に似た奇妙な生き物を呼び出した。

 

「っ!?!」

 

「杏子ちゃん!?!それなにっ!?!」

 

マミは今まで見たことのない杏子の技術に、まどかは自身が知っている杏子とは違うことについてそれぞれが驚いていた。

 

「こいつか…魔界魚の一つだ。こいつに結界の外まで道案内をさせる。アタシがさやかを助けるから……っ!?!!」

 

杏子が言い切る前に彼女の身体が複数のリボンにより一瞬にして拘束されてしまった。

 

「ま、マミさんっ!?!」

 

「マミっ!?!てめぇ……何しやがる!!こんなことしている場合じゃねえだろ!!」

 

「怪我をさせるつもりはないわ。佐倉杏子、アナタは信用できない」

 

「!!ここの魔女は今までのとは違うんです!!!!一人でも多くの仲間がいないと!!!そうやって、ほむらちゃんの話も聞かなかったから!!!」

 

マミの言う事もある程度理解できるが、ある程度事情を知っているまどかからしてみればこの事は納得ができなかった。思わず、”彼女”の事を口にしてしまうほどに……

 

「鹿目さん。何故、ここの魔女が強いとわかるのかしら?あなた、魔法少女でもないのに……」

 

「そ、それは……前にも夢で見て……」

 

杏子に向けていた冷たい目とは違い、疑いの目をマミはまどかに向けていた。思えば、この少女には不審に思えるところがいくつもあった。

 

後で聞いたが、キュウベえは、まどかに接触したのはショッピングモールが初めと言った。何故、学校で出会ったとき、あのようなことを言ったのだろうか?

 

最近行動を共にするが、魔女が現れる場所もかなり正確に言い当てた。今回の病院に現れた魔女も同じである。

 

この少女は、魔法少女の事情をどういうわけか知っている。それをいかにして知ったかは分からない。ただ無条件に歓迎すべきではないと………

 

マミの中に芽生えたまどかへの不信感。身の回りで起ころうとしていることを見てきたかのように言い当てることに不気味さを覚えていた。

 

(・・・・・・不気味な子だけど、ワルプルギスの夜を倒すためには・・・・・・・・・この街を護るためには必要不可欠)

 

その名をを聞くだけでほとんどの魔法少女が縄張りを放棄する最悪の魔女を迎え撃つためには自身にいやでも納得させなければならなかった。

 

「・・・・・・・・・良いわ。そういうことにしておいてあげる。だけど、これが終わったら全てを話して・・・・・・」

 

穏やかに笑みを浮かべてマミはまどかに問う。まどかは、何とも言えない表情でただ無言で彼女の表情を見つめるしかできなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・どうしても秘密にしておかなければならないの?これから、仲間になるかもしれないのに、隠し事なんて・・・・・・」

 

「なら、マミさん。杏子ちゃんを開放してあげてください。悪い子じゃないんです・・・・・・だったら・・・・・・」

 

「それはできない。彼女は一度、私に手を上げてきたわ。同じ志を持っていたと思っていたのに・・・・・・彼女は・・・・・・」

 

彼女の脳裏に説得をする自身に刃を向けてきた杏子の姿が浮かぶ。あの時ほど、魔法少女になってから絶望、失望したときはなかった・・・・・・

 

信じていたものに裏切られてしまう事に・・・・・・その絶望を齎した彼女のことが信じることができない。そして・・・・・・

 

”俺は、この子の伯父だ”

 

どんなに待っても訪れなかった救いの手があっさりと差し伸べられた彼女に嫉妬する心。

 

「ここで言い争っても無駄ね。鹿目さん、行きましょう。ここには使い魔は居ないわ。帰る頃には彼女も無事でいられるわ」

 

「ま、マミさん!!」

 

これ以上、話すことなどないと言わんばかりのマミに対して、まどかは申し訳なさそうに杏子に視線を向け彼女の跡を追うのだった。

 

 

 

 

 

「ちっくしょう!!!マミの馬鹿野郎!!!いや一番の馬鹿野郎は、アタシだ!!!」

 

自身を罵り、かつて自分が彼女にしてしまったことを後悔するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 その様子を物陰からほむらは悲痛の表情で見ていた。かつて自身が体験したことがそのまま目の前で展開されていたのだ。

 

古傷を抉られるようで精神的な苦痛さえ感じられる。配役が変わり、自分の役を杏子が請け負っている。

 

(・・・・・・何故、巴さんはあそこまで杏子を拒絶するの。それにまどかも少し違う・・・・・・)

 

杏子に対しての仕打ちに抗議を行っているが、マミに問い詰められている。あの表情は、時間遡行を行い、これから起こることを話したときの時間軸に似ていた。

 

「まさか、イレギュラーはホラーや暗黒騎士だけではないと言うの?」

 

何がどうなっているのか、理解が追いつかない。ここで自分が仲裁役として名乗り出るわけにもいかない。でても事態を悪化させるだけだ。

 

「杏子が魔戒法師の術を使っているようだけど・・・・・・彼女ともここでは会わない方がいいわね」

 

盾の砂時計を回し、時間を止める。こうすることで自身以外に動ける者は誰ひとりとしていない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

魔女結界の傍に二人の男が対峙していた。一人は、赤毛の男ともう一人は黒いフードを目深にかぶった男。バドとバラゴである。

 

「・・・また会ったな。バラゴ」

 

不敵な笑みを浮かべながらも二振りの風雲剣を構える。内心、結界の中に入った杏子のことをふと気にかける。

 

最近は、魔戒法師の修行をさせているため、ある程度の実力を持っているものの保護者としては心配なのである。

 

「お前と話している暇はない。私は、この先に用があるのだ」

 

フードの奥から青白い顔に浮かぶ十字傷と濁った黄色い目が浮かび上がる。その視線は人間というよりもホラーのそれに近い。

 

「道を外れた暗黒騎士にしては、真面目なことだ。魔女はホラーに比べればお前にとっては対した足しにもならなさそうなのにな」

 

軽口を叩くバドに対し、バラゴは特に反応することなく剣を構える。

 

「バラゴ、お前に問ふ。お前には、護りたいと思える存在ができたのではないか?その子は、魔法少女か?」

 

構えを取りながら、最近になって知った魔女と魔法少女と関わった自分とバラゴを重ねる。

 

ここに来るのは魔法少女のみであり、魔戒騎士、法師はこの魔女結界に足を向けることはない。

 

「・・・・・・・・・・・・答える必要などない。私にそんなものなどない」

 

「そうか・・・・・・お前は、他の暗黒騎士にも言えることだが、まだ引き返すことができる。だから、己の内なる光を認めろ。認めないなら、俺が認めさせてやる」

 

バドの言葉にバラゴは”何を勝手なことを言っている”と言わんばかりの視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

バラゴ

 

下らない。いまさら、そんなモノを認めろというのか?僕は魔戒騎士よりも遥かに強い力を求めて、暗黒騎士 呀へとなった。

 

唯一の究極の存在になるために・・・・・・ただ、それだけの為だ。”究極の存在”になる為ならば、不必要な弱さなど………

 

内なる光など、この暗黒騎士の力に比べれば、何の意味もない……

 

かつて、大河の元で修行をし僕は、牙狼の名を継ぐに相応しい実力を得た。だが僕はさらに力を求めた……

 

牙狼の称号は最高位であるが、それ以上に強いホラーは多く存在する。それらに敗れた過去の牙狼もまた存在する。

 

故に僕は、狂おしいまでに修練を重ねた。魔戒騎士が強靭であっても所詮は人間。何処かで必ず壁があり、それを乗り越えることが出来なかった……

 

更なる強さを求める僕に大河は、”闇にとらわれるな”と言っていたが、その闇を利用することはできないかと何時の頃から考えるようになった。

 

魔戒騎士の力もホラーと同種の”魔戒の力”であり”闇の力”の一種なのだ。故に僕は大河の元から飛び出した。最強の…それすら越えた究極の力を求めて………

 

そういえば、大河と居た頃を思い返していたが、奴はこの手で僕が殺したんだった……

 

奴の死に様は、犬死そのものだった。その場に居合わせた馬鹿な息子 鋼牙を庇い、死んでしまったのだから……

 

あの時は、この十字傷の呪いを解くために居合わすことは出来なかったが、心底愉快な光景がそこにあっただろうな……

 

そうだ。このバドは恐らくは魔法少女と関わっている。ならば、その少女にこのバドの骸を見せ付ければ、どれほどの絶望が降りかかるだろうか?

 

逃してしまった楽しみをここで再び味わうのも良いだろう……ほむらの事は気になるが、彼女はそれなりの実力を持っている魔法少女だ。

 

後で少しだけ小言を言っておこう。心配する必要はない……

 

まずは、この目障りな魔戒騎士を………喰らうとしようか……様々な騎士を喰らってきたが、ほとんどの騎士が情けない断末魔の声を上げて僕の血と肉となった……

 

こいつは、どんな断末魔の声をあげるだろうか……

 

 

 

 





ここでなんですが、時間遡行者って基本的に事情を知らないと気味が悪いなと思うこの頃です。

もしくはその物語の結末を知って、行動する様って格好良く見えるんだけれど、手際が良すぎると周りって不信感を抱くのではと・・・・・・

バラゴって、結構ひねくれているというか、かなり歪な人間だと思います。

小説版だと、内心鋼牙に嫉妬していたようにも見えましたので・・・・・・

次回はいよいよ、あの二人が激突。そして、マミさんは・・・・・・

それでは、では!!!


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