呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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連続投稿です。これにて次章へと向かいます。結構大変なものですね・・・・・・


第十六話「黒炎(6)」

 

二人の魔法少女は時間の止まった世界を駆け抜けていた・・・・・・・・・

 

様々なモノが止まった世界をマミは不思議そうに見渡した。

 

「こ、これがあなたの魔法なの?」

 

「はい、巴さん。今は、私の魔法よりも魔女を倒しましょう」

 

”それと、絶対に手を離さないで”と付け加え、ほむらはマミの手を引く。かつては、誰かを引っ張る立場だったマミはこの状況に不謹慎であるが、心地よさを感じていた。

 

(私もこういう風に手を引いて欲しかったなって、思っていたわね)

 

魔法少女になり立ての頃、先輩となる、手本となる魔法少女が居らず、一人で人々の生活を脅かす魔法少女になる為に特訓をしていた時にいつも思っていたこと・・・・・・

 

”私にも仲間が居たらな”と…・・・。今は、拒絶してしまったが佐倉杏子。キュゥべえが見出した”鹿目まどか”が居るが、二人に関して思うところがある。

 

杏子はかつての対立から、まどかは、その特異な振る舞いからの不信により・・・信じたいが、どうにも信じきれない。

 

「巴さん。今、笑っている場合じゃないんですが・・・・・・」

 

「あら?ごめんなさい・・・・・・前から、こういう風に手を引いてくれるのが夢だったから」

 

気づかない間にマミは笑っていたのだ。ほむらは、油断でもされたら命取りになると言いたかったが、魔女に対して少し怯んでしまった彼女を厳しく叱咤するのを戸惑ってしまった。

 

「分かります。誰かと一緒に戦えるっていうのはそれだけ、心強いんです。今まで一人だっただけだと・・・・・・なおさら・・・・・・」

 

ほむらは、自分はその逆と内心呟いた。ただ一人を救いたくて、魔法少女になり、新人魔法少女として皆の中に飛び込んだ。

 

時間を繰り返すたびに、ズレは生じていき、独りになった。一つの衝突から始まった不穏から、仲間は仲間でなくなっていったのだ。

 

最初に感じていた心強さから独りで戦うことの心細しさ・・・・・・それを隠すために高圧的に強く見せかけていた自分自身・・・・・・

 

「この話は、またいつかに・・・・・・巴さん!!!」

 

ほむらとマミは魔女シャルロッテの正面に来ていた。ほむらの意図を察したのか、マミは笑みを浮かべ

 

「えぇっ!!!これが本当のティロ・フィナーレっ!!!!」

 

時間停止を解除したと同時に白銀の大砲が魔女シャルロッテの正面を打ち抜いたと同時に牙が漏がれたと同時に頭部は粉砕された。

 

その瞬間、結界の主シャルロッテは倒され、魔女結界が崩壊していく・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「おぉっ!!!!先輩!!!やるじゃないですか!!!それに・・・・・・あの魔法少女も!!!!」

 

倒され消えていく魔女の姿を正面に背を向ける二人の魔法少女にさやかは歓声を上げた。まどかもまさかの彼女の登場に笑みを浮かべていた。

 

今にも彼女の下に駆け出したかった。結界が消えたあと二人のもとへ行こうと・・・二人から距離を置いて、キュゥべえはマミ、ほむらの近くの結界の綻びに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

綻んだ場所にキュゥべえと瓜二つの小動物がいた。それは、器用に尾で羽化寸前の”グリーフシード”を消滅寸前のシャルロッテ目掛けて飛ばしたのだった。

 

飛ばされたグリーフシードは、消滅寸前のシャルロッテを取り込み、急速に羽化し現れた姿は、先ほどのシャルロッテそのものだった。

 

まるで成長する蛇のように脱皮を思わせるように第二のシャルロッテは、巨大な口を開け二人に迫ったのだ。

 

「巴さん!!!!離れてっ!!!!」

 

マミを突き飛ばしたほむらを寸前でシャルロッテの巨大な顎が牙がそのか細い身体を貫いた。

 

血が飛翔し、シャルロッテは弄ぶように大きく首を回し、ほむらを痛めつけた。先ほど倒されたシャルロッテの怨がそのまま宿ったかのように・・・・・・

 

振り回されるたびに体の肉が裂け、骨が砕かれる感覚が激痛となってほむらを襲う。

 

その光景にマミは青ざめた表情で呆然と見つめていた。自分があのような目に遭っていたかもしれない恐怖と先ほど色濃く感じた恐怖が同時にマミを襲う。

 

「あっ・・・ああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!」

 

魔法少女は、普通の何の力もない少女のように悲鳴を上げた。その光景にさやか、まどかの二人も青ざめるしかなかった・・・・・・

 

先程までの勝利は一瞬にして消え失せ、最悪の事態に・・・・・・絶望へと至ろうとしていた時だった・・・・・・

 

魔女結界が大きく揺れ始めた。まるでこの結界の主に呼びかけるような衝撃が襲ったと同時に・・・・・・

 

異様な寒気、暗く冷たい空気が漂い始めた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

二人の男が激闘を繰り広げる中、結界の中の異変が同調するようにこの戦いの進行を進める。

 

バラゴは自身がほむらに掛けた術 ”束縛の刻印”が異変を知らせるのを感じていた。

 

脳裏にフラッシュバックするのは、魔女によって傷つけられ、血を流し、まるで捨てられた人形のように結界の中に捨てられるほむらの姿だった。

 

その光景にバラゴの心は今までにないぐらいの衝動に駆られた。この騎士との戦いに構ってなどいられないと。

 

胸元の魔導具を手に取ったと同時に彼は、暗黒騎士の鎧を召還する。突然、呀に変化したバラゴにバドは、驚く。

 

「ここで鎧を……いや、俺との決着をつけるためじゃない!!!」

 

バラゴこと呀は、バドのことなど既に眼中になく彼を攻撃せずにそのまま押し通るように結界の入り口に刃を突き立てガラスが割れるような音を立てながら結界へと強引に侵入を果たしたのだ。

 

呀の侵入に対し、結界は阻むように閉じるのだが、その侵入を拒めずに入り口は頑なに閉じてしまった。

 

結界の入口で腕のしびれを抑え、バドは閉じてしまった結界を見ながら・・・・・・

 

「こうなってしまうと開けるのは、骨が折れるぞ」

 

内心”まるで思春期の子供の心のように頑な”だと思いながらも・・・

 

この結界を強引に開けて侵入した 暗黒騎士のことを懸念していた・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

結界に侵入を果たした暗黒騎士 呀は真っ直ぐに結界の中心を見据え前進した。重い鎧独特の音を立てながら………

 

その足取りは何処となく急いでいるようにも見えた………

 

 

 

 

 

 

 

杏子は、自身を拘束するリボンの力が緩んだ際にそこから抜け出し、結界の中を走っていた。

 

「くそっ!!マミのリボンはそう簡単に抜けられないのに…何かあったのかよ!!!!」

 

急いで中心へ向かおうとしたとき、”それ”は結界の迷路の壁を勢いよく破壊して躍り出た。

 

伯父の狼を模した鎧に酷似した闇色の鎧を纏った”それ”は結界の中心だけを見据え、杏子の前を過ぎていった。

 

何も映さない白い瞳を杏子は見た。それは、映る物全てに価値を見出さずに居る恐ろしい目だった……

 

かつて父から聞いた悪魔の…最近になって見た魔獣ホラーに通じるモノだった……

 

(こ、こいつヤバイ…ヤバすぎる!!!!)

 

本能的に杏子は悟った。目の前に居るこいつは”暗黒騎士”であり、魔戒騎士が越えてはならない一線を越えた恐るべき存在であることを……

 

金縛りにあったように動けなくなり、結界の中心に進んでいく暗黒騎士をただ見送るしかなかった………

 

「はは……風雲騎士バドの血筋のアタシがビビッて動けなかった」

 

 

 

 

 

 

結界の中心にたどり着いたと同時に呀は、真っ先に自身が求める”少女”を探し始める。

 

少女は、力なく横たわっている。その光景に対し、さらにこのような目に合わせた魔女に対しこれまでにない憎悪の念が彼の中に渦巻き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

”………オマエカ。母さんをこんな目に合わせたのは……許さない…絶対に……許さない………殺してやる……コロシテヤル”

 

 

 

 

 

 

 

駆け出したと同時に呀の姿がぶれたが、次に現れたのは魔女 シャルロッテの正面だった。そのユーモラスな表情を見ることなく強烈な蹴りを加えたと同時に背後に回りぬいぐるみを掴み叩き伏せ、上空へと投げ飛ばす。

 

空中へと投げ出されたシャルロッテをさらに追撃すべく飛翔する。魔女側もただやられている訳には行かず、蛇のように呀の身体に巻きつき、拘束するが……

 

力任せに拘束を解きいたと同時に一瞬にして切り裂くことで、バラバラにした。苦し紛れなのか残った頭部が呀に喰らい付くが、その鎧を砕くことは敵わず触れて瞬間に弾けてしまった。

 

それは一方的な暴力だった。恐ろしい魔女であったが、一撃一撃で徹底的に痛めつけられていく姿は、あまりにも無残であった。

 

この場に居合わせた少女達は、あまりの光景に青ざめるしかなかった。突如現れたこの”暗黒騎士”の残忍な戦い方に……

 

弾け原型を留めていない顔に更に拳を当て、掴み叩きつけ、さらに魔女を痛めつけたと同時に直接その頭部を直接喰らう。

 

声にならない叫びを上げようにも上げることができず、魔女は苦しそうに悶え抜け出そうとするものの芋虫のように手足をもがれ、どうすることもできなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ傍でこの光景を見たマミは、あまりの残虐さに青ざめていた。先ほどの一瞬の死とは違う。一歩一歩死へと近づくたびにその恐怖が痛みと共に襲ってくる恐怖に………

 

声も出せずに、以前見た吸収ではなく魔女を喰らう光景に青ざめるしかなかった。これが魔女よりも遥かに恐ろしい存在であることに……

 

同じく、さやかもまた……

 

まどかは、あの闇色の狼を見て……

 

「……呀………暗黒騎士」

 

その呟きは誰にも聞き取られることなく直接喰らわれる魔女の声にならない断末魔と共に結界は晴れていった……残っていた部分を握りつぶしながら・・・・・・

 

結界が晴れると同時に呀は鎧を解除し、横たわっているほむらの元へと駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむら

 

馬鹿ね……暁美ほむら。アナタはどれくらい魔法少女をやってきたの?あそこは、時間停止の魔法を使う場面だったのにどうして使わなかったの?

 

……結局私は、まどかだけじゃなくて皆を救いたかったのかもしれない……なんて不相応な願いで、傲慢なんだろうか……

 

みんなの見たくない嫌な部分を多く見るたびにそれと同じくらいにみんなの良いところ、大好きなみんなの姿を見て……結局、どちらとも決められずに居るなんて……

 

だからこそ、冷酷になりきれずに私は巴さんを突き飛ばしたんだ…彼女に傷ついて欲しくなくて……叫ばないで巴さん…叫ばれたら、悲しくなっちゃいますから……

 

シャルロッテは油断ならないのは分かりきっていたのに、こういう事は今までになかった……

 

こんなに痛めつけられても私は死なない……普通なら死んでしまってもおかしくはないのに……この身体が生きていないことを改めて実感させられる……

 

背骨を牙で砕かれ、内臓はぐちゃぐちゃで動くことすらままならない……ここでこんなドジを踏むなんて、何をやっているの?暁美ほむら

 

あなたはまどかを救うという願いがあるのに…他の誰かを助けて命を落とすなんて、何を考えて……

 

アレ……少し寒くなってきた……ソウルジェムは割れていないのに……

 

ああ……バラゴが着たのね……この場には、まどか、巴さん、さやかが居るのに…ここで立ち上がらないと…あいつが何をしでかすか………

 

「ほむら君。無理をしないでくれ……君を失うわけにはいかない」

 

見慣れた手と声が私を抱えてくれた……彼らしくない言葉と一緒に………

 

何なの?アナタは……どうして、私に構うの?私を助けようとするの?アナタは……バラゴ。私に何を望んでいるの?

 

ねえ、応えてよ……バラゴ……

 

 

 

 

 

 

結界が晴れ、まどかとさやかは呆然とした面持ちで先ほどの光景を思い返し

 

「な、なんなのよ!!!あいつは!!!!」

 

魔法少女になり、願いを叶えるというのはアレと戦わなければならないと思うとさやかは魔法少女になりたくないと思った。

 

誰がなんと言おうとも・・・・・・

 

マミは呆然としている二人から逃げるようにこの場を後にしていた。一刻も早く先ほどの恐怖から逃げ出したかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

まどか

 

アレは夢だけじゃなかったんだ・・・・・・どうして、ほむらちゃんは・・・一体何がどうなっているの・・・

 

分からない。何がどうなっているのか・・・・・・・・・私は、どうすればいいの?

 

せっかく”未来”が分かっているのに・・・・・・これじゃあ、なんにもできないよ・・・・・・

 

ほむらちゃん・・・あなたに何があったの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回予告



あの日から、私はマミさんと会っていません。杏子ちゃんとさやかちゃんはいつも通りだけど、

魔法少女の事を話題にはしません。でも、魔法少女への道は私達のすぐ傍にあることは変わりません……


あんな怖い目に合うくらいなら資格なんて持つもんじゃないって…仁美。あんな目にあってもアンタはそういうことをまだ言うの?

だけど、怖い目にあっても叶えたい願いがあることに気がついた……だから願うよ……アナタの為に……恭介。


呀 暗黒騎士異聞 第十七話「願望」



ああ…アナタは結局、願いを叶えるのですね。羨ましいですわ……私には叶えたくても叶えられないのに……

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