呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
序 「面影」
普通の人間が決して立ち入ることの出来ない異界に三人の白い少女達が存在していた。
「最近、妙なモノが北の管轄に現れ始めましたね」
「他の管轄でも似たようなモノが現れていますが……」
「そうですね。バラゴ様の計画の支障になるのでしょうか?」
「ありえません、それらは”力”こそは、強いですが、”ソウルメタル”以外の武器でも排除できます」
少女達は互いに微笑みあい、
「「「邪魔になれば”排除”すればいい」」」
「”メシア降臨”は、バラゴ様の悲願。絶対に邪魔はさせません」
三人の白い少女の傍らで、執事服を着た男が無表情にそれを聞いていた………
?????
”キャハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!”
巨大な異形が子供のような笑うと共に彼女の意識は、黒い闇に落ちていく。
そして、目覚めるとき、よく知る天井が映り”ここへ戻ってくる”。
「……また、ここから始まったのね」
少女はベットから起き上がり、いつもと変わらぬ窓から見える夜を見た。
夜の闇は相変わらず暗く冷たい。これもいつもと変わらない………
彼女の名は”暁美ほむら”。
起き上がり彼女は病室の姿身の前に立つ。
そこに映っているのは三つ網をした冴えない眼鏡を掛けた何処にでもいる普通の少女であった。
「誰も……未来を信じない……」
眼鏡を外し、手の中のソウルジェムを握り締めたと同時に身体の中から立ち上がる力を瞳に向け、視力を矯正させる。
三つ編みを解き、長い髪を肩に、胸に下ろす。鏡の向こうにいる黒髪の少女に対して、
「誰も未来を受け止められない………だったら、私は……」
決意と共に彼女は病室を抜け出した………
「私が、ここにいる理由。まどかを今度こそ助けること……」
彼女は知らなかった”この世界”の闇に潜む”魔獣”の存在を…………
勝手知ったる”暴力団”のアジトに入り込み、そこにある銃器を手際よく回収した後のことだった………
”ソウルジェム”が何かに反応するように揺らめいた。
「……魔女?いえ、このあたりに魔女は居なかったはず……」
”魔女”。それは彼女にとって重要な意味を持つ”言葉”である。
「………この揺らめき方……いつもと違う」
脳裏にイレギュラーという言葉が浮かぶ。彼女は、何度も”いつも”を繰り返している。だが、それは同じ”いつも”ではなく、少しだけ違っているのだ。
今回の事態も同じ事と思ったが、確かめるために反応のある場所へと向かう。
………
「ねえ?お兄さん、私と一緒に過ごさない?」
人気のない繁華街の裏側に妖しくも美しい女性が一人、何処か垢抜けない青年に声を掛けていた。
突然、綺麗な女性に声を掛けられたのか青年は酷く緊張している。
「うふふふふふ、とっても可愛いわね、あなた」
青年の頬を撫で、局部に細い手を這わせる。こみ上げてくる快感に青年は興奮さえ感じた………
「………ほんと、食べちゃいたい」
女性の変化が起こる。胸部から巨大な昆虫を思わせる脚が現れ、青年をがっちりと補足したと同時に喰らった………
「魔女じゃないっ!!?!」
ものかげから様子を見ていた、ほむらは今までの時間軸に存在しなかったイレギュラーに対して悲鳴を上げた。
「あら?あなた人間?いえ、死人かしら?それにしては、活きが良いわね」
女性は四本の腕を生やし、さらに八本の足を出現させたと同時にその本性を露にした。それ”ホラー”は端正な顔を邪悪にゆがめてほむらを見るのだった。
ホラーは、一気に跳躍しほむらのまえに現れた。あまりの跳躍力に驚いたが、直ぐに気を引き締め、これを回避すべく彼女が持つ”能力”を駆使し、その場の”時”を止める。
モノクロになった時の止まった世界で彼女は手際よく、ホラーの身体とその周りに爆弾を仕掛ける。
”時”が動き出し、爆弾が爆発しホラーのその身体を大きく焼き払った。
「……何なの?こいつは……今までこんな奴は、居なかったわ」
正体は良くわからないが、これで終わったと彼女は思った。だが……
「随分と不思議な”力”を使うのね?私たちとの相性はどうなのかしら?」
爆炎の中から、ホラーは何事も無かったように現れた。
「っ!?!!何故!?!」
驚くほむらにホラーは、悪戯が成功した子供のように笑い
「お前達”人間如き”の武器が我ら”ホラー”に通じるものか」
八本の足を大きく飛翔させ、ホラーはほむらに飛び掛った。脚の爪が彼女を貫き、その華奢な身体を拘束する。
動揺していたために反応が遅れ、回避することが出来なかった。時間操作を行おうにも肩を貫かれ、楯を弾かれてしまった。
「くっ!?!」
盾に縋るような視線を向けるほむらにホラーは、
「それがあの”力”の源か……弾いて正解だったな」
(こ、こいつ…さっきの一瞬だけで私の”能力”を把握したの。魔女よりも厄介……いえ、魔女以上よ)
魔女は狂気と本能で動く化け物であるが、こいつは獣ではあるが人間以上に知恵が回る恐るべき魔獣だ。
「フフフフフ、その手にあるものに”命”を感じる。まずはそれを喰らうとしようか」
胸が開き、そこから巨大な口が現れる。
「嫌だっ!!!死にたくないっ!!!!!!!私はまだっ!!!!!あの子をまどかを救えていないのに!!!!!!」
「絶望こそが最大の”ご馳走”」
ソウルジュウムが彼女の絶望で僅かに濁りかける。
”ガシャン”
突然、その場に重々しい足音が響く。それは感情の映らない”白い眼”を持った漆黒の狼であった………
????????
「ほう……妙なものが居ると思えば、中々面白い”能力”だな」
その男は黒いローブを纏っていた。彼は、ある目的の為にこの場所に現れた”ホラー”を狩りにきたのだ。
そして、今しがた始まった戦いを見ていた。年は14ぐらいであろうか、そこに居たかと思えばいきなり、別の場所に現れ、爆発する。
「……法術………ではないか」
あれは”ホラー”に対して有効ではない。その証拠にホラーは平然としており、動揺した少女を捕まえてしまった。
少女が何者かはしらないが、知りもしない他人を助ける事を男はしない。何故なら、男の心に”光”など存在しないからだ………
「嫌だっ!!!死にたくないっ!!!!!!!私はまだっ!!!!!あの子を”まどか”を救えていないのに!!!!!!」
叫んだ少女の顔を見た時、男の黄色い目が大きく見開かれた。
少女の顔に男はある”面影”を見出していた。それは男にとって掛け替えのない”存在”だった……
男は、見下ろしていたビルから飛び降りたと同時に、赤紫の光を出現させたと同時に黒く禍々しい鎧を纏った……
「お前は!?!魔戒騎士?」
ホラーは禍々しい鎧を着た男に対して、疑問の声を上げた。
ほむらは、嫌に焦った怪物の声に反応するように背後に現れた”存在”に眼を向けた………
「違うな。俺は、お前を喰らいに来ただけだ」
「!?!お前が、最近我らを喰らっているという、ホラー食いの魔戒…ッ!!!!!」
その瞬間、ホラーは強烈な力に殴られ壁に叩きつけられたと同時にその向こうへと吹き飛ばされてしまった。
砕かれた壁の破片を押しのけ、目の前に居る騎士に眼を向ける。
だが騎士はいつの間にかホラーの目の前に居り、四肢を全て両断する。その剣技は素晴らしいモノであった。
この後の惨劇など、誰も想像ができないほどの………
達磨にされてしまったホラーを呀は両手でそのホラーを掴み、頭から喰らった……
その光景にほむらは、いいようのない生理的嫌悪感に陥った………
あのおぞましい怪物をそのまま口にして、生きたまま喰らうなど、おぞましいこと以外の何者でもない。
突如湧き上がる嘔吐感に支配され、彼女は激しく嘔吐してしまった。
ある病気に犯されたようにひたすら嘔吐するしかなかった。そして、あまりの現実に対して気を失ってしまった………
ホラーの肉片を喰らうたびに男は力を得る。喰らうたびに黒く禍々しい鎧はさらに禍々しく輝いていく……
全ての肉片を喰らった後に男は言いようのない高揚感に浸った後、うつ伏せに倒れている少女に歩み寄る。
その少女を抱え、愛おしそうにその頬を撫で………
「………母さん………」
男 ”バラゴ”の脳裏にある”大切な存在”と少女 暁美ほむらは、瓜二つであった………