呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
この話では、少し異質ですが、もっと異質なのは・・・・・・
そこは、どこまでも続く白い世界だった。他の色の存在を許さない絶対の白い空間で二人の少女が組合っていた。
”嫌だ!!!貴女は、私じゃない!!!!”
いや、桃色の髪の長い少女が見滝原中学の制服の少女の手首を押さえていたのだ。
”私は、鹿目まどか。全ての魔法少女の魂を、希望を絶望に終わらせないために此処にいるんだよ”
”まどかは私!!お前じゃない!!!そうやって、誰かを置いていって貴女は特に何もできないから、魔法に縋って女神様気取りなの?”
”そうじゃないよ。希望を願った魔法少女達の願いを絶望で終わらせないために……”
”分かるもん。私と同じなのは嫌だけど、何の取り得もないただの女の子。誰かを救うだけの力も頭もないもん”
まどかは涙目で目の前にいる”もう一人の自分”を否定する。かつてのある世界で一人の、自分によく似た少女は絶望を感じていた。
希望を願っても最終的には絶望に至り、全てを呪いながら生きていく運命を書き換える為にその少女は願った。
だけど、少女は人としての”力”ではなく、”魔法”に縋ったのだ……
少女は分かっていたのだ。自分が如何にちっぽけで弱い存在であるかを……魔法という奇跡を得ても所詮は矮小な存在である人間では、どうにも出来なかったのだ。
だからこそ、魔法以上につよい魔法で願ったのだ。この絶望を希望に変えたいと……だがそれは少女が人としての力に絶望し、インキュベーターによって齎される魔法に縋ったことを意味していた。
絶望に染まり呪いを撒き散らす前に。苦しむ前に救うための”死”ならば、それも良いだろう。
”それに最後は、ほむらちゃんの為みたいに言ったけれど本当はほむらちゃんの為でもなんでもなかったんでしょ”
”この姿になって私は、ほむらちゃんの本当の姿を知ったの。弱くても傷だらけになってもずっと頑張ってきたほむらちゃんのことを……”
金色の目が少しだけ悲しい色を浮かべたが、もう一方の桃色も目は怒りに染まっていた。
”本当は、さやかちゃんの為だったんでしょ。さやかちゃんの願いが無かった事にしないために……それを誤魔化さないでよ”
もし、魔法少女も魔女も無い世界にして欲しいと願えば、今までの事はなかったかもしれない。だけど、それでは美樹さやかが願った希望も無かったことにされてしまう。
決して彼女を見ることがなかったのに、彼に尽くした彼女の大きすぎる代償を無かったことにしないために……
全てを知り、人の理解が及びもしない存在と化した”彼女”に対し、まどかは否定した。
鹿目 まどかは一介の14歳の少女でしかない。それは他の魔法少女も同じことだった。ほむらもほむらでその行動が完全に正しかったとは言えないのは、まどかも分かっていた。
だけど、その結末を”安楽死”というのは、あんまりではないかと……誰かによって齎された”力”ではなく、自分自身を誰も信じられないのだろうか?
魔法に縋っても、格好良くはならないし、元の自分と比べるだけ惨めではないか……
かつて、母から恐ろしい話を聞いたことがある。ある北欧で一人の神父が夜、神に祈ったのだ。
教会に住む十数人の孤児達に幸せを与えて欲しいと……その夜、神は願いを聞き入れたのだ。神にとっての幸せを子供達に、人間にとっては不幸を…
翌朝、子供達は全員、息を引き取っていたのだ。神の元に召されることが幸せという、人の感情では理解が出来なかった……
目の前の少女は、かつて聞いた恐ろしい神と同じに見えた。
”なら、あなたはどうやって、皆を救うの?あなたにできるの?”
そう問われてしまうとまどかは、何もいえなくなってしまう。だが、少女は続ける。
”いつかあなたも契約をするかもしれない。その時、私はあなたと……”
少女が手を伸ばした瞬間、まどかの身体は溶け込むように少女の中へと消えていく。その光景にまどかは悲鳴を上げた。
「まどかっ!!まどか!!!」
母が自分を必死で呼びかけていた。
「っ!?!……ママ」
「どうしたんだい?ずっと酷く魘されていたけど……」
「アレ?ここは……私の部屋」
見慣れたぬいぐるみのある部屋は、自分の部屋だった。
「そうさ。アンタの家だよ。昨日は災難にあったんだね。警察のパトカーが家の前に止まった時は驚いたよ」
母は冗談交じりに笑ったが、よく見ると目の下に隈があった。一晩中、自分の傍に付いていてくれたようだ。
「さやかちゃんと総一郎さんが一緒に来てくれたんだ。集団自殺に巻き込まれそうになったんだって?気をつけなよ」
「……うん、ごめんなさい」
「謝る必要はないさ。まどかは身体をゆっくり休ませろ」
毛布を掛けられ、まどかはそのまま横になった。
「が、学校は……」
「そんなのは、別に後からでも取り返せるさ。だから、今日はゆっくり休む」
「は、はい」
「じゃあ、また昼頃になったら顔を出すから、絶対に起き上がっちゃ駄目だぞ」
笑みを向けて母 詢子は部屋を後にしたが、まどかの様子にただ事ではないことを感じていた。
リビングに降りた詢子はソファーに腰掛け、洗い物をしている和久に最近の愛娘の様子を訪ねた。
「なぁ、知久。まどかは、此処のところずっと張り詰めていたのかい?」
「うん。ここ最近、思いつめたみたいに悩んでいて、一人で泣いていたりもしているんだ。もしかしたら……」
TVで見かける学校の問題。まさかと思うが、それではないかと知久は懸念していた。
「そっちの線は無いよ。一応、和子に教えてもらった。どういうわけか面識の無い上級生とつるむ様になってたりはしていたみたいだけど……ただ……」
「ただ?」
詢子は、今の娘の様子がかつての自分の姿にダブって見えていた。そう……あの時
「知久、忘れていないよね。まどかが生まれる時のことを……」
「忘れないさ。どうしようもなかった僕達に渇を入れてくれた……まさか……」
当時学生だった自分たちは、羽目を外して子供を作り、周囲の猛反発に対し、大学を辞め、駆け落ちをする様に見滝原へとやってきた。
だが、生活は苦しく、精神的にも体力的にも限界だったことを憶えている。そんな時に、信じられない事態に遭遇してしまった。
魔戒騎士とホラーとの戦いに遭遇してしまったのだ。好奇心に誘われ、あろうことか自分は”魔獣 ホラー”の返り血を浴びてしまったのだ。
「そうさ。今のまどかは、アタシがあのホラーの返り血を浴びて、自分があと数日で死ぬのに悩んでいた時と同じなんだよ。まどかを生んであげられないことを凄く悔やんだんだ」
当時の切迫した生活と十数日後には死んでしまう自分と”一人で生んで育ててやる”と無責任なことを言ってしまった事に激しい後悔の念を抱いた。
生まれてくる命を死なせてしまうことへの申し訳なさだった。
その時の詢子の表情によく似ていたと知久は、改めて気づいたのだ。血の影響でホラーがやってくる気配に苦しみ、そのホラーに襲われることに恐怖していた。
彼女を護ることができない自分を情けなく思っていた。そんな自分達を護ってくれたのは、黄金騎士 牙狼の称号を持つ魔戒騎士だった。彼は、大河と名乗った。
「言われてみれば、そうだね。あの時の大河さんには返しきれない恩ができただけど…大河さんは……」
大河には、自分達を護り、ホラーの血を浄化してくれた。今の自分たちがいるのは大河のおかげであった。
「何年も前に亡くなったってな……アタシがまどかを生んだ時にあの子の名づけ親になってくれた」
その時の大河は、”もう二度と会うこともないだろう”と言って、姿を現すことはなかった。
大河からは息子がいると聞いていたが、その息子とは、二人は面識が無かった。大切な愛娘が人智を超えた恐ろしい事態に巻き込まれている。それをどうにかしてあげたいが、二人にはそれを打開できる術は無かった。
もし、ホラーの返り血を浴びているようなことがあれば、もう一度、魔戒騎士の助けが必要になるかもしれない……
”その子の名前は、まどか。たくさんの人達の愛を受けて生まれた子。いつかその子がたくさんの人を愛せるように……”
一人ベッドに腰掛けていると自分以外の気配が現れたことを察する。一瞬であったが、大きな動物の影が室内を大きくよぎった。
「……初めて君と出会ったとき、君は泣いていたよね」
まどかの前に現れたのは、白い小動物であるキュウベえだった。愛らしいぬいぐるみを思わせる姿をしている。
だが、この愛らしい姿とは真逆のおぞましい行いをしていることをまどかは知っていた。
「私と契約したいの?」
冷たい目で感情の揺らぎのない赤い目を見た。恐らくは、契約を持ち掛けるであろう……
「そうしたいけど、君とは契約をしないほうが良さそうだからね。だから、言うけど魔法少女とは関わらないでもらえるかな」
キュウベえから返ってきた言葉は、まどかの予想を遥かに斜め上を言っていた。
今までのキュウベえ、インキュベーター達は自分に契約をしつこく持ちかけた。このようにインキュベーターから断るとは、一体何がどうなっているというのだろうか?
「っ!?!どうして!!?」
まどかは、思わず声を上げてしまった。そんな彼女を意に介することなく淡々とした口調でキュウベえは続ける。
「それが今のマミの考えでもあるんだよ。それと暁美ほむらの願いでもある」
キュウベえから出た暁美ほむらという単語にまどかは、異常なほど食いついた。
「ほむらちゃんを知っているの?!?」
「あぁ、知っているよ。時間遡行者だよね、彼女は」
驚いたまどかの反応を見てキュゥべえは、やはりかという視線を向けた。
「おかしいとは思ったんだ?君が何故、そんな破格ともいえる素質を持っていた事と奇妙な行動の理由がね」
舐め回すような視線をまどかに向け、キュウベえは自身の仮説を述べる。
「君には、恐らく暁美ほむらが繰り返したであろう平行世界の因果が集約している」
しかし、それだけならばキュウベえに対する行動は説明がつかないものをまどかは感じていた。
「それだけじゃないって顔だね。恐らく君は、暁美ほむらが、他の時間軸、平行世界の自分が体験したことが知識として流れ込んでいる」
キュウベえの確信を突く言葉にまどかはさらに目を見開かせた。キュウベえ、インキュベーターの察しのよさは自分等では、どうにもならないではないか……
「それはね……ある”平行世界”での二度によって行われた改変が原因だと思うよ」
平行世界の改変。かつてみた悪夢の中で最も忌まわしいと思ったのが、少女達の希望のために、人を捨て、概念へとなった自分が宇宙を大きく変えてしまう光景だった……
「君の可能性の一つ、そしてあの暁美ほむらの可能性の一つが起こした改変によるものだね」
まるで見てきたことのように語るキュウベえに対し、まどかは普段の彼女らしからぬ程、声を荒げていた。
「何で、そんな事が分かるの!?アナタは、他の世界の事が分かるというの?!?」
宇宙から来たといわれるインキュベーターたちの科学力は、自分等が理解できないほど高度な物だとはおぼろげながら理解していたが、まさか想像を遥かに超えるものとは、思わなかった。
「僕達の文明は君たちが思っている以上に進んでいるんだよ。平行世界に関しても観測は出来ている。だけど、それに干渉をするわけにはいかない。だからね……」
キュウベえは、更に前に歩み寄り、
「故に平行世界の因果が絡み付いている君とは契約をすることはできない」
”君とは契約をしない”こんなことを言われた鹿目まどかが今までの”時間軸”に居ただろうか?まるで理解が追いつかなかった。
インキュベーターは、何が何でも宇宙の為にエネルギーを集めているのではなかったのか?破格の才能を持つ自分を何度も狙ったのではないのか?
「どういうこと?この世界のアナタは、他のインキュベーターとは違うというの?」
「アレらも同じ存在ではあるのだけれど、僕らはあそこまで感情的ではないよ。とは言っても、僕も当初は君とは契約を交わしたいと思っていたんだけど、君の行動を見ていてある種の警戒を憶えたんだ」
ようするに自分の、鹿目まどかの行動に不信感を抱きこのような答えをインキュベーターは持ったのだ。自分の独りよがりの行動が恨めしくなった。
「平行世界の僕らの最大のミスは、本来干渉してはいけない”平行世界の因果”に干渉、それによる危険性を無視し、目先の利益に走ってしまったことだ。
契約した覚えのない暁美ほむらを目の敵にし、彼女が原因で因果が増したイレギュラーの君を都合よく思うのは、少々身勝手だね。あの世界の僕らは」
「目先の利益って……私達を利用することが……」
「説明をしなくても分かると思うけれど、君たちの犠牲は決して無駄じゃない。むしろ、怠惰に生きていくよりかはずっと有意義だと思うよ」
何も悪いことはしていないと言うようなキュゥべえに対し、まどかは表情を険しくする。普段の彼女らしからぬ表情である。
「そもそも僕たちが何故、少女達を魔法少女にしている理由は君も察しがついているだろう」
頷くことはなかったが、微妙なまどかの表情の変化に肯定と見たのかキュウベえは更に続ける。
「話は少し戻すけど、平行世界は互いに干渉をしないように一定の距離を取っている。その平行世界に大きな異変が起これば周りも余波の影響を受けかねない」
「変化といえば君に流れ込んだ知識ぐらいなモノだけど、暁美ほむらの時間遡行による影響も多少なり世界に及ぼしている」
「少しもったいないかもしれないけど、僕は安全を取ることにするよ。仮に君に契約して、その後にエネルギーの回収が出来ても、宇宙の破滅になれば、それこそ本末転倒だ」
故に危険な鹿目 まどかとは契約を交わさない。それがインキュベーターの意思だった。それでは、まるで宝の持ち腐れではないか。
「考えてもみなよ、宇宙を改変できるほどの因果をもった君が魔女にでもなったら、地球だけに被害は留まらない。おそらくは他の星星、文明すら破壊されてしまう。宇宙を救う為に、そこに住まう高度な知的生命とその文明を犠牲にするわけにはいかない」
「待ってよ……だったら、どうして私達を犠牲にしているの?他の星の人達は大切にできるのに?」
ここも今までに聞いた事がない。宇宙を存続させるためなら、あらゆる物を犠牲にするのがインキュベーターではないのだろうか?
「心があるのならと、言いたいのかい?君は既に知っているけれど僕達には、そう思える”感情”と呼べるものはない。過去にはあったかもしれないけど、君達を哀れむことすら出来なくなるほど磨耗しているのかもしれない」
小さな赤い目にはやはり感情の色はなく、ただ”執着”に似た何かを感じさせるものが存在していた。
「話を平行世界の干渉についてだけれど、それはこの宇宙の星星にもそれは適用される。宇宙に住まう知的生命体達は互いに争ってきた歴史がある。僕達の祖先も遥か遠い昔の銀河の果てで争ったと記録が残っていた。見せようか、この宇宙の歴史を」
テレパシーの応用により、まどかの中に様々なモノが流れ込み、映し出された。
一つの闇から全てが始まり、巨大な爆発と光によって、いくつもの銀河が誕生し、その星星で生命が生まれ、文明を築き、高度に発展した文明は、宇宙全体を駆け巡るようになった。
そこにあったのは、いまの地球では到底追いつくことはできないであろう程の文化が存在していた。
「やがて星星は、この宇宙が終焉を迎える事を知った。それを打開するために色々と策を労したよ。滅びる宇宙を捨てて、新たに生まれる宇宙に移住するか、この宇宙を継続させること二つの意見に星星の文明は分かれた」
まさか、そこまで大きな存在があるとは、まどかは息を呑んだ。こんな相手に戦いを挑むなど例え、魔法の力を得てもどうしようもないではないかと……
自分に自信のない彼女にとって、誰の役にも立てないことはとても嫌なことだった。だからこそ、魔法の力を得た”自分たち”は誰かの役に立てることを喜んでいたのだ。
「!?!でも、移住ができるのなら!!」
キュウベえの話を聞くと少女達を魔女にしなくても何とかできる方法があるではないかと、まどかは察したが……
「聞こえは良いけどね、そこに生まれる文明や知的生命体達の未来を踏みにじることだよ。本来、そこに居る筈の彼らの居場所を奪うなんて、野蛮そのものだよ、まどか」
そういう事なのだ。移住先はこれから、生まれようとしている世界なのだ。それを滅びようとする世界が延命の為に犠牲にして良いわけがない。
「この宇宙が如何にして発生し、知的生命体が文明を築き上げてきたと思う?これは奇跡なんだよ」
「僕たちや君達がこの宇宙に生まれたのは、奇跡に近い偶然だよ。それが二度も生まれることはありえない。君たちが住まうこの星に生命が生まれたのは、奇跡だ。まさに宇宙の素晴らしさでもあるんだ」
「人間はこんなことを言う。またやり直せば良いと……でもね、こればかりはやり直しも利かない。だから僕達は、君達の希望を絶望に染めてもやらなければならないんだよ」
「移住を推進している文明は、今も野蛮な侵略の準備をしているよ。唯一つ感情的といえるのが、宇宙を存続させるための”執着”これこそが僕らに唯一残された感情かもしれない」
「だからこそ、僕らはやらなければならない。かつての時間軸の君や、今も繰り返しているであろう暁美ほむらのようにね……」
思わず下唇を噛んでしまった。事情さえ分かってしまえば、何とかできるとは甘い考えだった。インキュベーターは一筋縄でなどうにもならない存在らしい…
嫌な気持ちではあるが、どこか自分達に通じる共感のようなものも感じるがそれを受け入れることは出来ない。
「君が美樹さやかのように僕に取り入って利用しようなんて魂胆は駄目だよ。僕もある程度は君達の事を利用させてもらっているから……」
キュウベえは言いたい事を終えたのか、背を向け、
「君は、暁美ほむらに対して何を思って、彼女の事を懸念するんだい?」
「それは…私なんかの為に……あんなに傷ついて…苦しんで、泣いている子のことを思わないなんてできないよ!!!」
事情を知らなかったからこそ、”他の自分”は彼女 暁美ほむらを傷つけてきた。でもこの時間軸の自分なら……
「それは、彼女に対する同情と哀れみなのかい?実際に、話したことのない彼女を君の自己満足で完結し拒絶するんだね」
「そんな事はないよ!!!!何なの!!アナタは!!!本当にインキュベーターなの!?!!」
感情がないといわれる異星人の筈なのだが、何故か感情を感じさせる目の前の存在があまりにも異質だった。
「そうさ、僕はインキュベーターだよ。この星での役割は、君たちにとっては不快なことだけど、僕らにとってはどうしてもやらなくちゃいけないことだ」
キュウベえは姿を歪ませたと同時にまどかの前から姿を消した。消えたキュウベえが居た場所を呆然としてみるが
「異物の排除は、それなりにさせてもらうけど、暁美ほむらに関しては暫く保留にさせてもらう。理由は君自身にもわかるよね」
声だけが頭に響くがそれを無理やり消すように毛布を頭から被り、まどかは自分では理解が追いつかない事態に苦しむしかなかった……
(どうして、私はこんなにも駄目なんだろう。誰の役にも立てなくて、誰の為にもなれないなんて…ごめんね、ほむらちゃん……)
世界にとっては異物であるほむらの事をキュウベえ達が異様に敵視していたのは良くわかった。
異物であるほむらは、もしかしたらこの世界に存在していないかもしれないのだから……
(待って!!?!私もしかしたら、今までの私達が会っていない人と会っている!?!)
飛び起きたまどかは、机の上に折りたたんでいた”探し人のチラシ”を手に取った。これを配っていたのは……
(ほむらちゃんのお母さん!!!)
そう、今までの自分達は彼女の両親に直接会った事がない。一度だけ、両親と一緒に暮らしている時間軸が在ったが、そこでの自分は会っていない。
異物であるほむらは、その魔法の影響により彼女の両親は存在しないことになっていたのだが……
「この時間軸は……一体……」
居ても立っても居られないのか、まどかは彼女 暁美ほむらの母に会わなくてはならないと思い、部屋を飛び出したが、両親に止められてしまい、逸る気持を落ち着かせるしかなかった。
探し人 暁美 ほむら
連絡先 暁美 レイ
暁美 シンジ
(私に何が出来るか分からないけど、魔法に頼れないなら……私は、私の足でほむらちゃんに会いに行くから!!それまで待ってて!!!)
あとがき
まどマギにおける登場人物の親についてですが、明確な描写は、まどか、マミ、杏子の三人はハッキリとしています。
ハッキリしないほむらは、小説版では共働きで中々家族一緒になれなかったというのがありましたが、時間遡行による影響で移動した世界から異物とされ、両親が存在しないことにされていると聞いています。
一応これで、ハッキリとさせましたが、こうなるとさやかの両親というのが謎になってしまいます。
どこにもそういう話がないので、本編でのオリジナル設定で警察官の父を持っています。
この時間軸では、異物のはずのほむらに両親が何故か居ます。これは後々の予定で大いに活用したいと思います。
キュウベえに関してですが、本編見てもイレギュラーのほむらを警戒して、異常なまでの素質を持ったまどかに警戒を持たないのはあいつら、自分に都合の良い解釈しているなと常々思ってしまいました。
私の方が変かもしれませんが、何でこんな少女にこんな素質が?少しばかり様子を伺うと思います。見ていて、ほむらよりもまどかの素質のほうが危ないんじゃないかと放送中に何度も思いましたから……
理由が分かったのなら、手を出すのはかなり危険ではないかという考えが出来なかったのかしらと?そういう恐怖も持たないから、手を出してしまったんでしょうね。
彼?を単なるやられ役、アンチのように劣化?はさせたくないので、このようなバックに大きなモノが控えているという具合にしています。
実際、キュウベえが何故宇宙を延命させようという具体的な目的が本編では語られていないんですよね。色々と悟っているのなら、宇宙が滅ぶのも仕方なしと割り切ってしまいそうなんですが……
インキュベーターが感情を持たないというのは、進化の途中だったのか?はたまた、目的の為に自らそういう風に自分達を改造したのかを想像すると凄く面白いなと……
もしくはキュウベえの宇宙における立場がどんなものなのかも興味は尽きません。
新たに生まれる宇宙は平行世界が生まれるのではなく、脱皮するように新生する宇宙です。異世界、平行世界への干渉はインキュベーター達はタブーとし、絶対に犯してはならないというルールを持っています。
主人公のまどかは、エイリアンのリプリー並に逞しいと思っていますので、きつい事を言われても、切欠があれば、立ち上がれると思います。
まどかの誕生日に彼女が生まれる前の出来事”生誕”のエピソードを掲載できるようにしたいものです……今年の秋……というか、半年後に……
次回は、本編と平行してバドおじさまと杏子ちゃんの番外編も掲載できればと思います。それでは、では!!!!