呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
「大丈夫か?まどかちゃん、身体が冷えているな。ちょっと待ってな。おばさん、ちょっとキッチン借りるよ」
そのままジンは冷蔵庫を開けると何やら食材を探していた。
「あら。ジン君。ココアなら私にも一杯お願いできるかしら?」
「言われなくてもみんなの分はちゃんと作っておくぜ。さすがはおばさん、オレのレシピに必要なものはチャントありますね」
「ふふふふ。貴方のココアは私達家族は皆大好きよ。中々、貴方の作る味にならなくて、貴方に淹れてもらうのがいつも楽しみなのよ」
「じゃあ♪ここは一つ、ジン・シンロンが張り切りましょうかね♪」
食器棚よりカップを取り出して行くが、その中には自身が好んでいる色のマグカップがあり、さらには……
「このカップは・・・・・・確か、アスカが気に入っていた奴だな」
懐かしそうに笑い、マグカップを手に取った。
キッチンでココアを作っているジンを横目にまどかは改めて、ほむらの家のリビングを見渡した。
自身の家によく似た構造であり、所々に家族の写真が飾られている。自分の知るかつての三つ網に眼鏡をかけた大人しい様子の彼女を囲むように集合する父、母、ジン、アスカが写っているモノ。
病院の病室で撮影されたものから、旅行に行ったであろう様子を写したものもあった。
そんな中、まどかが思わず目を止めてしまった写真が一枚。
髭面の顔の厳つい男性が満面の笑みで幼いほむらと一緒にいる一枚。
「・・・・・・すごい顔」
幼女を誘拐する決定的瞬間に見えなくもない一枚だった。
「あらあら、お義父さんったらまどかさんをびっくりさせて。ちょっと怖いけど優しくて、ちょっと可愛い人だったんですよ」
「えっ!?!」
もしもこの頃のほむらと同じ年齢だったのなら、顔を見た瞬間大泣きするであろう ヤクザというよりもマフィアとしか言いようのない外見の男性 暁美 ドウゲンは 暁美ほむらの祖父であった。
さらに信じられない一言が母 れいは祖父 ドウゲンを可愛い人と言ったことだった。
「あの・・・・・・このヤクザじゃなくて・・・え、えーと」
「あらあら、外見でいつも誤解されていたんですが、本当は繊細でとても気の優しい人だったんですよ」
まどかの発言は失礼極まりないものであったが、それもこの祖父にとってはいつもの事であったのか 母 れいは懐かしむように笑みを浮かべるのだった。
「そうだったんですか?お祖父さんなんですね。ほむらちゃんの・・・・・・」
両親、義兄、義姉に続き、祖父の存在にまどかは”記憶”にはない彼女の家族の存在に対し、驚くしかなかった。
自身の家族は両親と弟が居るのだが、親戚に出会ったことは一度もなかった。
ましてや祖父母の存在は両親のどちらからも聞いたことはなかったのは、自身の両親がそれぞれの家と絶縁して、駆け落ち同然で見滝原にやってきたことを彼女は知る由もなかった。
「それにほむらはお義父さんが大好きで一緒に良くいたものなのよ」
「そ、そうなんですか?えぇ~~~」
ほむらの家族と関わってから困惑する場面が多く、まどかは彼女の一族はもしかしたら一癖も二癖もあるのではないかと思うのであったが、
「じゃあ、ほむらちゃんはおじいちゃんっこだったんですね。今、ほむらちゃんのお祖父ちゃんは・・・・・・」
幼少の頃に可愛い孫娘に相当なつかれていたのだから、かなり溺愛しているのではと察するが・・・
「もう随分前に亡くなってしまったわ。いえ、あの娘の目の前で命を奪われてしまったの」
「えっ!?!それって、殺されたってことですか!?!」
まさかの展開にまどかは声を上げてしまった。
「えぇ、あの後、ほむらは急に病気がちになってしまったわ」
あの忌まわしき事件によって、ほむらが大好きだった祖父 ドウゲンは帰らぬ人となり、目の前で家族が奪われてしまったことの精神的な傷は深く、一時的に記憶すらも失ってしまった。
祖父から引き放され、誘拐された彼女はあろうことか”ニルヴァーナの本部施設”で保護された。違法な実験を行っていたことが明らかになりほむらは寸でのところで実験にかけられることはなかった。
「じゃあ、心臓の病気の原因って・・・・・・」
「私自身もあの娘と同じ病気だからというのもあるんだけど、心の傷の方があまりにも深かったわ」
当時のことを思い出すだけで悲しい気持ちになる。身勝手な”人類の幸福”を謳い、多くの人を悲しませたあの団体は今での許せない。ほとんども関係者が原因不明の事故死を遂げている。その幹部でありながら、今ではその罪を省みることのない”恥知らず”なあの男のことも・・・・・・
「ごめんなさい。ほむらちゃんのお祖父ちゃんに失礼なことを・・・・・・」
「大丈夫ですよ。お義父さんはそういうことに慣れてて自分からネタにしていましたし、お義父さんも草場の陰で笑って許していますから」
れいは懐かしむように写真に写る義父 ドウゲンに笑みを向けた。
「それにお義父さんは子供好きで職業は意外にも絵本作家だったのよ」
立ち上がりながらリビングの本棚から一冊の絵本を取り出した。
「この絵本は知っているかしら?」
「あっ!?!それっ、火の子どもですよね!!」
”火の子ども” 怖い物として教えられる火を擬人化し主人公とした絵本である。
燃やしてしまう火でありながら、寒い夜の日に凍える子供の傍に寄り添い、温め、時には森に仲間たちのために火を使った料理を振舞ったり、暗い洞窟に迷い込んだ子供たちの先頭に立ち明かりとなって導いたりという、内容はとても優しく、一部の大人にも人気のあるシリーズだった。だが途中で作者が急死したためにシリーズは10冊目で止まってしまっている。
「火って本当は凄く優しいんだって、この火の子どもがわたし、すごく好きなんですよ」
自宅に今もあり、弟のタツヤもお気に入りの一冊で父も母もこの本を読んでいるときは凄く優しい気持ちになれるのだ。まさか、ほむらの祖父が作者だたっとは・・・彼女からはこの話を聞いたこともなかった。
ただ、一度だけ何処かの時間軸で寂しそうにこの絵本を眺めていた光景があった。
「そうなのよ。あのこの”ほむら”は火の子のように小さくても良い、誰かの手を温められるようなそんな当たり前の優しい気持ちを持てる人間であってほしいというお義父さんのお願いもあったの」
ほむらの名付け親は祖父だった。
「そうだったんですか・・・・・・ほむらちゃん。辛かったんですね」
ジンから話に聞いた姉であるアスカ、名付け親である祖父とほむらの人生は唐突なまでに大切な人達と引き離される運命にあった。
あまりにも理不尽ではないか・・・そしてそんな子の事情も知らずに身勝手なまでに別れを告げた自分自身の浅はかさに嫌悪すら感じた。
「ごめんなさい。お花を摘みに行ってもいいですか」
まどかは断りを入れてこの場を離れた。胸中にあるこの気持ちを整理したかったのだ。
まどかは二階に来ていた。暁美家のお手洗いは二階にあり、彼女はほむらの家族と接することで改めて自身が彼女について何も知らなかったことを思い知らされた。
(ほむらちゃん・・・・・・常に理不尽な何かに大事な人を奪われてばかりだったんだね)
”鹿目さんを護れる自分になりたい”
それは過去になくした自分自身への無力感と自傷にも似た怒りがあったのかもしれない。
(これ以外にどうしようもないからこそなのかな・・・・・・でもね、ほむらちゃん。一人ぼっちはだめだよ。お母さんもジンさんもみんな、ほむらちゃんを心配しているんだよ)
今も何処かにいるであろうほむらに一度でも構わないから、家族の元へ帰ってきてほしいと願わずにはいられなかった。
その部屋の前を通り過ぎようとしたとき、ふと誰かの気配を感じた。
部屋は自分にはなじみのない和室であり、ガラスの引き戸の前にいつの間に立っていたのだった。
「ここは・・・・・・」
引き戸を引き、部屋の奥には、ほむらの姉 アスカの遺影とその位牌が置かれていたのだった。
「ほむらちゃんのお姉ちゃんのアスカさん」
今の自分と同じ14歳なのだが、自身と違い本当に綺麗な少女だ。
(アスカさんって本当に私と同じ女の子なんだろうか?とてもじゃないけど同じ生き物とは思えない)
思わず溜息が出てしまう程だ。ほむら地味なお下げに眼鏡といった何処にでもいる子なのだが、顔立ちそのものは整っている。眼鏡を外し、お下げではなくストレートの黒髪の彼女ならアスカと並んでも決して見劣りはしないだろう。
「もしもアスカさんが生きていたら・・・・・・ほむらちゃんはどんな子になっていたんだろう」
母 れいもジンと一緒になって楽しそうに話すのだからきっと明るくていい娘だったのだろう。
ほむらは血は繋がらなくても本当の姉のように慕っていた。
「そうだね。きっと明るい子になっていたと思うよ。だけど、それは決して叶わなかっただろうね」
「・・・・・・インキュベーター・・・・・・」
「まさか君がここまで来るとは思わなかったよ。暁美ほむらについて色々知ったみたいだね」
まどかの足元にはいつの間にかキュウベえが座っていたのだ。
「何をしに来たの?まさか、ほむらちゃんの家族に何かするつもりなの!?!」
自分とは契約をしないと言っているので、契約ではないのは分かるが、魔法少女候補にいないほむらの家に現れるのは何か目的があるのではと、まどかは彼女らしからぬ考えを抱くのだが、
「いやいや、君の様子が気になっただけさ。学校にも行かずに何をしているんだろうってね。ちょっとした気晴らしだよ。僕も一日中契約ばかりするのはさすがに疲れるしね」
「疲れる?あなたが?」
インキュベーターらしからぬ言葉にまどかは違和感を感じたのだ。感情を持たないはずのこの”エイリアン”が何故か感情的というか妙に人間臭い言動に・・・・・・
「女の子を付け回したのはさすがに失礼だったね、謝るよ。まさかここでアスカの顔を見ることになるとはね」
「インキュベーター。どうしてアスカさんのことを知っているの?」
キュウベえではなく、インキュベーターと呼ばれたことに今更ながらキュウベえは驚くものの直ぐにまどかの疑問に応えるのだった。
「彼女はかつての魔法少女候補だったんだ」
懐かしそうにキュウベえはアスカのことを思い返していた。そう彼女は心臓の病の為、数週間後にはその命が危うい状況にも関わらず、治せる契約を・・・・・・
「でも、断られちゃったんだよね」
「アスカさんが魔法少女の素質があった?」
まどかは二重で驚愕した。アスカが魔法少女候補であったこと、さらにはキュウベえの契約を断ったことに
「彼女は本当の意味で興味深かったよ。願いは必要ない魔法は単なるまやかしでしかないってね」
再生される記憶の中の彼女は
”へぇ~~、アタシの病気を治せるんだ?だから契約して魔法少女に?”
”そうだよ、君には素質がある。その理不尽な運命もきっと変えられる”
”冗談じゃないわよ。アタシはね、アタシ自身の人生を自分で生きているの。それを横からしゃしゃり出て指図なんかされたくもないわ”
”そうかい?君の運命は人類ではどうしようもないんだよ?他の人達を悲しませることになるのに”
”だから、アンタが救うっていうの?それこそ余計なお世話よ!!!!”
”アタシは例え大人になれなくても、明日、亡くなったとしても今、生きている時間を大事なアイツとほむら一緒に過ごしたい!!!それは魔法なんかに頼らなくても叶えられるアタシ自身の願いなんだから!!!”
”それは君の傲慢そのものじゃないか”
”そうかもしれない。だけど、アタシ達はいつかは別れなければならない時が来る。その時が何時かは分からないけど、アタシはアタシの時間を生きていたいんだから!!!!”
「彼女は言ったよ。自分の願いは魔法に頼らずとも叶えられるって」
「そ、そんな、それじゃあ、ほむらちゃんは・・・・・・」
アスカは最後の最後まで自分らしく生きる事とほむらとジンらと一緒に生きる事を短くとも願ったのだ。
その願いは彼女自身の命の続く限り叶えられたが・・・その後、姉を亡くしたほむらは”死”という抗えない運命に絶望したのだ。そして、”魔法”の存在を彼女に教えた”鹿目 まどか”・・・・・・
あまりにも間の悪い状況が続く暁美ほむらの運命・・・・・・
「人生とはままならないものだよ。だからこそ奇跡を願うし、魔法の力を欲しがるんだろうね」
ほとんどの魔法少女候補者は、”奇跡”に”希望”を見出し、契約する。だが、彼女だけは契約しなかった。
それは多くの少女達と接したキュウベえにとっては驚きであり、また異端でもあった。
「アスカはとても幸福な人生を送ったと思うよ」
遠目からその後のアスカを見ていたが、彼女は毎日を噛みしめるように心の底から笑っていた。
喧嘩をしたり、喜んだり、泣いたりと感情豊かに過ごしていたのだ。一般の幸せというモノがあるのならまさしくあれの事だろう。心から恋している異性が居て、自分を慕ってくれるか妹分、さらには血がつながらなくても家族同然に扱ってくれる人がいる。
これを幸せと言わずになんと言えばいいのだろうか。
「ただ、たった一つの心残りがあるのなら・・・・・・」
”キュウベえ、アンタに一つだけ聞いておくわ。ほむらに素質はあったりする?”
”ああ、彼女も素質がある。それなりにね・・・・・・”
「今も時間遡行をして繰り返しているほむらにお別れを言えなかったことだけだろうね」
”だったら、ほむらに手を出さないで。アタシの妹を不幸にするのは許さないんだから”
「あぁ・・・・・・本当に人生とはままならないものだね」
背を向けて部屋を後にするキュウベえだったが・・・ふと見覚えのある人影が部屋の前に立っていた。
まどかに聞こえないようにしてその人影に
「君の妹に手を出したのは別の時間軸の僕であって、僕自身じゃないんだよ」
言い訳がましく弁明するがその人影の視線の厳しさが緩むことはなかった・・・・・・
「あれ?まどかちゃんもしかしたら気分が悪くなったと思ったらこの部屋に来てたのか?」
「あっ、ご、ごめんなさい。わたし、勝手に・・・・・・」
いつの間にかジンがプレートに三つのマグカップに注がれたココアを持ってきていた。
「まあ、その辺は気にしなくていいぜ。アスカも案外、ほむらの友達のことが気になってたりするかもな」
まどかにマグカップを手渡し、アスカの遺影と位牌の前にココアを供えた。
「でも・・・・・・わたし・・・・・・」
真実を言えば、姉のアスカから見たら自分はある意味彼女が危惧した不幸に誘い込んだ疫病神そのものなのだ。
「でも、ほむらはまどかちゃんのことを悪くは言わなかったんだろ。だったら、いいじゃねえか」
「ジンさん・・・・・・もしかして・・・・・・」
「いんゃあ、オレは何も知らねえよ。アスカがいきなり魔法少女になったら病気が治るって変な事言ったことなんてな」
唐突なジンの爆弾ともいえる発言にまどかは驚いてしまった。まさか、ジンは魔法少女のことを・・・・・・
「さすがに14にもなって魔法少女はどうかと思ったけど、世の中はそんな都合の良い奇跡なんてなかったしな」
ジンはマグカップに口をつけ、自身の入れたココアに舌鼓を打ちながら
「本当ならな・・・・・・オレはほむらの兄貴分なのにさ、妹の前でみっともない恰好をさらしちまった」
あの日、心の底から恋をしたアスカが亡くなった時、それ以外何も見えなくなってしまった自分のあの情けない姿。暁美家の人は仕方のないことだと優しい言葉をかけ、ほむらと同じように気にかけてくれた。
「でも大事な人が亡くなったのなら仕方ないですよ」
「大事な人が亡くなったことは悲しいさ。だけど、去っていった人が大切にしていた妹に目を向けるべきだったんだ。それを怠ったオレは本当にみっともなかった」
今でも後悔している。あの14歳の頃のただの子どもでしかなかった自分。兄貴分と言いながら、妹分に何もしてやれなかったことに・・・・・・
その後は、何とか立ち直り、ほむらとは普通に接することができたのだが・・・・・・以前と違い僅かであったが溝ができていた。
「オレはほむらに言ったんだ。心臓の病気が治せる医者になるって、その時は必ずもう一度会いに行くって」
医者を目指すため、それなりの高校に行くためほむらと別れなければならなかったが、何度も手紙を送った。
返事は決まって帰ってこなかった。ほむらの両親曰く、姉 アスカの件を今も引きずっていることと・・・・・・
彼女から暫く一人になりたいと告げられたことを・・・・・・
「こっちに来て色々あったし、様子を見てあのアパートからこっちに迎えに行く予定だったんだけどな」
いつまでも一人暮らしをさせるわけにもいかないので、時間を見て彼女を迎えに行き、見滝原に建てられていた祖父 ドウゲンの家に越してきたのだ。
「・・・・・・・・・初めて会ったほむらちゃんは自分に自信が無くていつもビクビクしていました」
「アスカが初めてほむらと出会った時もそんな感じだって言ってたな」
自分は拝んだことはないと軽口を叩くジン。まどかの声色が少し沈んでいるのが気になり、気を明るくしたかったのだ。
「ん?まどかちゃん、右の所の生え際が少し違うけど、前に事故でもあったのか?」
改めて気が付いたが、まどかの右側の頭部に大きな傷があったのだ。具合からしてここ最近になってできたようだ。
「これですか?半年前に車に跳ねられちゃって……一か月ぐらい意識がなかったって聞いています」
「だいじょうぶか?意識不明の重体だったのに……」
まどかの意外な事情にジンは驚きの声を上げるが、まどかは少し照れ臭そうに笑いながら
「うん。それが後遺症もなにもなくて問題ないっていってくれました」
”運が良かった”としか言いようがなかった。ジンもそういう幸運もありなんだろうなと思い、改めてアスカの遺影に視線を向けた。
「まどかちゃん。そろそろ下に戻ろうか?おばさんが心配してたからな」
「は、はい」
リビングに戻るとほむらの母 れいと初めて会うほむらの父 シンジがソファーに腰を掛けていた。
「シンジおじさん。只今、戻っております」
白髪交じりの黒髪の中性的な顔立ちの男性 暁美 シンジは苦笑し
「久々に会えて良かった。もっと顔を見せに来てほしいんだがね」
「オレも予定がつくようにはしたかったんですが・・・・・・」
「ジンも大学生で留学の件もあるから、なかなか時間がとりづらい部分もあるのは仕方がない。ほむらの為に来てくれて助かったよ」
二人は血こそは繋がらないが、実の親子のように関係は良好である。それは今は居ないアスカも同じである。
仏間に遺影と位牌があるのはアスカは父親こそは今も存命であるが行方が分からないため、彼女は実質 天涯孤独の身であったのだが、養子縁組で暁美家に引き取られた経緯があった。正式に養子の手続きが終わったのは彼女の死後であったが・・・・・・
「それで、その娘は・・・・・・」
「ほむらのこっちでできた友達のまどかちゃん。何となくほむらに雰囲気が似てるような気がするんだけど、おじさんはどうよ?」
「大人しい雰囲気は何となくほむらに似ているかな。実際に会うのは初めてだね 鹿目まどかさん」
「えっ?わたしのことを知っているんですか?」
まるで自分を知っているかのような口調の父 シンジにまどかだけではなく、れいとジンも
「あれっ?シンジおじさん、まどかちゃんと知り合いだったの?」
「あなた・・・・・・まどかちゃんの名字はまだ話していないわよ。わたし」
驚く三人をよそにシンジは一枚の写真を取り出した。そこには”まどか”と”ほむら”の二人がお互いに肩を並べて写っている光景があった。見滝原中学の屋上で撮られたもので二人は同じ制服を着ており、ほむらの姿はお下げに眼鏡と言ったまどかもジンも知る姿だった。
「なんだ?この写真・・・・・・ほむらはまだ転校してなかったよな。まだ制服だって・・・・・・」
ジンの疑問に対してシンジは
「僕も信じられなかったさ。何故、三國さんの娘さんがこれを持っていたのかって・・・・・・」
そしてもう一枚を取り出す。そこには暁美家の父 母 ほむらと三國光一の娘である織莉子が写っていたのだ。
「撮影日が今日から二週間後?!!」
何がどうなっているのか全くもってわからないのだ。フェイクなどではない。そもそも暁美 シンジがこのような悪ふざけをするはずがないのだ。
「あの・・・・・・これを一体何処で?」
まどかもまたこの写真に困惑していたのだ。
「この写真は織莉子君が持っていたんだ。三日目前に亡くなっていたんだけど、この二枚の写真を持って穏やかな顔で眠っていたよ」
三國 織莉子 かつて様々な時間軸で最悪の魔女になるであろう自分を抹殺しようと動いていた魔法少女。
汚職議員の娘と聞いていたが、実際のところはよくわからないというのがまどかの織莉子に対する答えだ。
この時間軸は、知らない自分が見た光景でもある魔法少女にならなかった織莉子がほむらと一緒に過ごしていた。
姉気取りの織莉子だったが、結局のところほむらは彼女を姉としては認めなかった。それは”アスカ”の存在があったのだからだろう・・・・・・
「多分、ほむらは自分に降りかかる理不尽を何とかしようとしているんだろうね。僕たちが手を差し伸べても取ってはくれないかもしれない。だけど、ほむらの家はここにあるということだけは伝えられたら・・・・・・」
父 暁美 シンジはそれ以上のことは何も言わなかった。
その後、まどかはジンが付き添いで自宅まで送ることになり、暁美家を後にした。
家を出る際に父 シンジより
「この写真はまどかさんが持っていてくれた方がほむらも喜ぶから、持っていてくれないだろうか?」
手渡された写真を手にまどかは、今日知った”暁美ほむら”の過去と彼女自身について思いを馳せる。
(わたしに何ができるんだろう・・・・・・でも、ほむらちゃんは一人じゃないんだね。ずっと悲しいことがあって悔しいことがあって魔法少女になったんだね。でもね、もう終わりにしようよ。わたしに何ができるかわからないけど・・・・・・まだ、お互いにお話もしてない友達だけど・・・・・・)
帰りの途中で母と合流し、上条恭介が事件に会ったこととどういう訳か志築 仁美が重傷を負ったという知らせが入り、さらにはマミのマンションが火事に遭うという今までにない状況・・・・・・
これからのことに不安を覚えるまどかだったが、自室のベッドにそのまま横たわり疲れたのかそのまま寝息を立てたのだった。いつもなら夢に現れる”知らない自分”に怯えるのだが・・・・・・
今夜、知らない自分が現れることはなかった・・・・・・
まどかを見下ろすように白い少女は黄金に輝く視線を手元にある写真に向けていた。
”もうすぐだよ・・・・・・ほむらちゃん。やっとアエルネ”
白い少女の顔は”鹿目まどか”そのものであった・・・・・・・・・
次の話の投稿は早ければ、明日にはだせるかもと言うぐらい勢いがあったりします笑
ほむらの過去は、この作品独自の捏造設定なのですが、私が感じたほむらの願いは、一種の逃げです。
姉の死を認められず、家族や兄と接することで姉との思い出が過り、彼女が居なくなったことに耐えられなかったと言った感じです。
ほむらの祖父 ドウゲンのもとねたはマダオじゃなくてエヴァの碇ゲンドウです笑
ちなみに絵本作家でした。