呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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傍から見た本編をある少年の視点です。





幕間 とある学生の日常

 『見滝原市 栄町お住いの皆さんにお伝えします。只今、近隣で事件が発生しました。犯人は拳銃を所持しています。決して、外出はしないでください。犯人は近辺に潜んでいると思われます』

 

 

 

外からのアナウンス スマホのニュースに載っている文字を見滝原中学 在籍 中沢 ゆうきは、ここ最近の見滝原は物騒になってきたと内心、つぶやいていた。

 

見滝原の治安が悪くなってきたのは今に始まったことではなかった。数年前には”カルト組織 ニルヴァーナ”が隣の風見野に居たことも覚えていた。あの頃は、とにかく知らない人には絶対に声をかけたはいけないし、掛けられても応えてはいけないと聞かされていた。

 

自室のベッドに横たわりながら、彼はここ数日の自身の周りが奇妙なことになっていることに気が付いたのだ。

 

まずは、ここ最近の鹿目まどかさんの様子がおかしいのだ。元々、大人しい子でクラスでは目立たない存在であったが、何よりも気配りができて隔てなく誰にも優しく接してくれる子なのだが・・・・・・

 

それは、ほとんどが女子に限った話なのだ。クラスメイトから聞いた話だと鹿目まどかさんは、男性が少し苦手らしく初対面の人に対してはかなり警戒してしまうのだ。自分から男子に話しかけることはなく、大抵は幼馴染である友人の美樹さやかが間に入る。

 

でも、そんな彼女は誰かを探しているように街のあちこちを歩き回っているというのだ。今日も学校に来ておらず、母親が直接確認しに来ていた。

 

一体、誰を探しているんだろうと興味が湧かないわけではないが、鹿目まどかさんに聞いても彼女は答えてくれないし、自分を避けてしまうのでどうにもならないと思う。自分、中沢 ゆうき にできることは何もないのだ。

 

鹿目まどかさんの変化がはっきりしてきたのは、佐倉杏子さんが転校してきたころだ。

 

 

 

 

 

 

 

佐倉杏子さん。色々あって見滝原中学に転校してきて、今やクラスの中心的な人物だと思う。

 

性格はサッパリしていて、誰にでも明るく接してくれるし、勉強も運動も中々のものだ。転校生と言うのは、こういう感じの子がデフォルトで皆がイメージする。

 

今、ベッドにおいてある”友人”から借りた”ライトノベル”も転校生が来てから、主人公の日常が変化し、非日常に変わるというものだ。そして異世界へ向かい、大冒険と言う流れだ。

 

ここ最近、流行りの死んで転生する内容と比べると一昔前の物語に近いが、もう一人の友人が好んで見ているのは”転生もの”であり、やはり友人も”神様”に”チート”を貰えることを常に願っていたりする。

 

佐倉杏子さんを見ると何処となく物語の登場人物を思わせるんだ。僕らの日常にこそは居るけど、何となくだけど本当は僕らとは別の世界を生きているんじゃないかと思う時がある。

 

偶々、用事で見滝原から遠出をするサイドカーに彼女の保護者である伯父と乗って居たのを見た。

 

あの伯父は見た目がかなり若く、黒いコートを着ていてすごくさまになっていて、本当に日常を生きる人間とは思えなかった。

 

やはり、僕らとは違う世界を生きていて、偶々僕らが彼女らと一緒に過ごしているだけなのだろう。

 

ただ一緒にいるだけで、僕が何かの役目を負うとかそういうことはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

佐倉杏子さんは意外な人と関りがあった。巴マミ先輩だ。

 

一つ上の三年生で、綺麗な先輩だということぐらいは知っているが、三年生には一つ上の従兄弟が居て同じクラスだけど、誰とも話さないし、表面上の付き合いはするけど、踏み込んだ付き合いをする人ではないと言う。

 

そんな巴マミ先輩は、佐倉杏子さんと知り合いなんだろうけど、あまり良い雰囲気ではなかった。

 

ハッキリ言えば敵対関係のような険悪なもので、何故か鹿目まどかさんと美樹さやかさんが巻き込まれていたけれど、これもまた良くわからなかった。

 

友人曰く”きっと、俺たちの退屈な日常が終わるんだ。凄い大冒険が始まるんだよ”と興奮気味に言っていて、さっそくちょっかいを掛けようとしていたが僕とクラスメイトで強引に止めることで事なきをえた。

 

巴マミ先輩も過去に家族を事故で亡くして一人暮らしだと聞いている。その為、人との関りを極端に避けているのではという噂が立っているのだけれど、真実は分からない。

 

先輩の暮らしている地域は見滝原の中でも富裕層が住むマンションで、しかも新築だったりする。

 

当然のことながら、保護者が居るかと思いきや保護者は居ないらしい。先輩自身がそれなりの資産持ちで家族が亡くなった後にその遺産をモノにしようとする”親戚”と揉めにもめたというのだ。

 

これは、巴マミ先輩の気持ちは痛いほど良くわかる。かという我が家も母親が父 僕からしたら祖父が所有するマンション一戸を譲渡したのだ。かなり条件が良くて資産価値もそれなりのモノだったんだけど、それを他の親戚が妬み、母は嫌がらせを受ける羽目になったのだ。

祖父は、経済的に楽にできるようにと将来は売って、何かの足しにしてくれという軽い気持ちだったんだけど、周りはそうじゃなかったんだ。母は祖父以外の親戚とは一切の縁を切っており、二年前に祖父が亡くなってからは完全に絶縁している。時折、マンションの件で連絡を入れてくるがほとんど無視している。

 

かという僕も親戚がぼくらを居ないもののように扱っていて、父さんも内心かなり怒っていた。

 

そういうことがあったから、先輩は人と関わることが嫌になったんじゃないかと思う。

 

そんな先輩も何故か学校に来ていなかった。何かの事件に巻き込まれたのだろうか?先輩の事情が事情だから、巻き込まれてしまう可能性は十分にあるんじゃないかな・・・・・・

 

資産目当ての何かだとすると本当に怖いのは”人間”だよ。お金の為なら何でもするし、子供だって殺す事も平然でやってのけるかもしれないから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここまでなら、単なる日常だけれど一番の非日常になったのは上条恭介の手が治ったことだ。

 

不幸な事故とで右手が動かなくなってしまい、得意な”ヴァイオリン”を弾けなくなってしまった。

 

上条恭介は、学校では知らない人が居ないほどの有名人だ。天才ヴァイオリニストであり数々のコンテストで受賞しているし、学校でも彼が生徒であることを宣伝しているし、学校の入学案内にも載っていたりする。

 

でも、彼がヴァイオリンを弾けなくなった途端に誰も相手にしなくなってしまった。手は治る見込みが厳しいらしくそんな彼を応援するどころか学校側は直ぐに切り捨ててしまった。入学案内からも削除されてたし、彼に期待をしていた志築家も全くもって相手にしなくなったんだ。

 

かなり酷い話だとは思うけど、僕自身は上条恭介とそこまで仲が良いわけではない。

 

というよりも美樹さやかさん 志築 仁美さんの二人以外に親しい人が居ないのだ。

 

それもその筈、彼はヴァイオリンに情熱を注いでいたから、僕らとはあまり関わり合いがなかったんだ。

 

偶に話をするんだけど、そのほとんどが”音楽”のことばかりで、正直話が合わないし、僕らのほとんどがクラシック音楽よりもポップミュージックに興味があることにも影響していると思う。

 

手が治ったことは、僕らも喜ばしかったし、彼を切り捨てた学校側も手のひらを返してサポートすると言っているのだから何とも言えない気持ちになった。やっぱり人間って怖いとつくづく思う。

 

ずっと上条恭介を支えていた美樹さやかさん、志築仁美さんの二人も変わってしまった。

 

彼の回復は喜ばしいことなのに、志築仁美さんが美樹さやかさんを親の仇を見るような目で見るようになったんだ。

 

一体、何があったんだろう。二人の関係が変わったのは、佐倉杏子さんと巴マミ先輩に関わり合いを持ってからだった。

 

巴マミ先輩は鹿目まどかさんと美樹さやかさんに何かを訴えていたみたいだし、佐倉杏子さんはそれに反対している光景を時折見ることがあった。あとは志築仁美さんが巴マミ先輩に何かをお願いしていたが、巴マミ先輩は軽くあしらっていた。巴マミ先輩はそれなりの資産はあるけど、見滝原で一番の資産家の志築さんが懇願するなんてことがありえるんだろうか?

 

「ゆうき、今、大丈夫?」

 

考え事をしていたら、母さんが部屋のドアをノックしていた。

 

「良いよ。今は宿題も終わって何もしてないから」

 

「ゆうき。今日、上条さんの所で事件があったそうよ。奥さんは亡くなって、上条君も重傷を負ったって」

 

「えっ!?!上条恭介が!?!」

 

まさかの事件に僕は声を上げてしまった。なんということだろう、まさか上条恭介がまた重傷を負ってしまうなんて・・・・・・彼は一体、どんな不幸の星の元に生まれたんだと聞きたくなってしまったが、こんな不謹慎なことを考えてはいけない。母さんが態々このことを言いに来たのは・・・・・・

 

「ゆうき、こんばんは外でお食事の予定だったけど、とてもじゃないけどいける雰囲気じゃないわ、お父さんも念のため今日はビジネスホテルに泊まって明日には帰るって」

 

「うん、僕は別に構わないよ。気にしないで」

 

「ごめんね。必ず埋め合わせはするから・・・・・・ちゃんと窓の鍵は閉めておくのよ」

 

母さんはそのまま下に降りて行って暫くしてから家の窓のシャッターが下りる音が響いた。

 

まさか、上条恭介はこんなことになるなんて・・・・・・もしかして、知らない間に変なことに巻き込まれたのではなかろうか・・・・・・多分、原因はここ最近変わってきた鹿目まどかさんの周りかもしれない・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿目まどかさんと言えば、上条恭介と同じで半年前に交通事故に遭ってたんだ。しかも上条恭介もその場に居合わせていた。かという僕も偶々、その現場を見てしまったんだ。

 

余所見運転をしていた車に引かれてしまい、鹿目まどかさんの身体が歩道に入ってきた輸送用のトラックに跳ねられた光景は今でも怖い物を感じる。

 

人間があんな簡単に吹き飛び、まるでボールが跳ねるようにアスファルトを跳ねて血の海に沈む。鹿目まどかさんの意識のない虚ろな目が僕を見たとき、思わずその場を逃げ出してしまった。

 

上条恭介も跳ねられたけど、重傷こそは負ったけど鹿目まどかさんのように意識不明の状態にはなっていなかった。

 

あれから聞いた話だと鹿目まどかさんは、打ち所が悪く意識不明の重体になり、目覚めることはなくなったと聞いた時、僕は恐ろしくなった。単なる中学生が自意識過剰ではあるが、あの場から逃げたことに罪悪感を感じずにはいられなかった・・・・・・

 

だけど、鹿目まどかさんは奇跡的に回復したのだ。それもたった二週間で・・・・・・

 

何故、こんなことが起きたのかは分からない。だけど、上条恭介に起こったこととはまったく別の何かが彼女に起こったのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

もう一つ、分からないことがある。佐倉杏子さんが転校してきた時、もう一人転校生が居た。

 

彼女の名は 暁美 ほむら。今は、行方不明になっている・・・・・・

 

駅前で彼女の母親が”探し人”のチラシを配っていたことを見かけたことがある。

 

上条恭介が登校した時に、鹿目まどかさんが佐倉杏子さんに

 

「ほむらちゃんを知っているの!?!」

 

と言っていた。二人はまさか知り合い?鹿目まどかさんがどうして転校生の暁美 ほむらさんと知り合いなのだろうか?

 

分からない・・・・・・

 

だけど、鹿目まどかさんと暁美ほむらさんの二人の関係はもしかしたら、僕には想像もつかない何かがあるのかもしれない。

 

見滝原で時々、化け物を見たという噂話さえもある。

 

誰もが一度は想像する非日常に飛び込む冒険譚。だけど、僕はそんな非日常に飛び込むつもりはない。

 

だって、僕は物語の登場人物でも何でもないただの一般人なんだ・・・・・・

 

そんな一般人に何ができるんだと言うんだよ・・・・・・

 

だから僕は関わらない僕は何の変哲もない日常を生きる何処にでもいる男子中学生だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 あとがき

中沢くん視点の暗黒騎士異聞。

ほとんどがまどか達の学校でのやり取りを傍で見ていただけの話です。

この時間軸でのまどかは訳アリです。

あとは中沢くんは少しドライと言いますか、心の中ではフルネームで人を呼びます。

設定ではクラスの学級委員長なので和子先生と絡みが多いということにしています。

突発的に話を振られるのはそういう理由があったりします。

彼自身も言っていますが、基本的に本編で絡むことは一切ありません。

彼は偶々そこに居合わせただけの一般人ですから・・・・・・

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