呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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第二話「魔女」

 

 

まどか

最近、夜、眠ることが怖いです。あの怖い夢を見てから、また恐ろしい夢を見るのではと・・・…

悪夢は、自分が犯してしまった罪、不安に対して、それを軽くする為に見るものだと仁美ちゃんが教えてくれました。

悪夢を見るうちは、心は安定しているそうです。でも、どうしてあんな恐ろしいモノを見てしまったのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

深い眠りに付いた私は、気がつくと世界の終わりとしか表現できない場所に佇んでいました……

廃墟と化した街、夜なのに真っ赤に染まった空……影が差したとき……

”キャハハハハハハハハハハ!!!!!!!!”

空に、巨大な見たことのない怪物が浮かんでいました。あの”闇色の狼”と同じぐらい怖い何かを感じました……

全てを憎むかのように街を破壊し、狂ったように甲高い笑い声を上げる怪物に対して小さな影が纏わり付いて居る事に気がつきました。

その子は、”闇色の狼”が出たあの夢に出てきたあの綺麗な女の子でした。

女の子は、空を飛び怪物に対して果敢に戦っていました。

”頑張って”

手を握って女の子を応援しました。だけど、私の声が届くはずもなく”怪物”の風圧で木の葉を飛ばすかのようにビルに叩きつけられてしまいました。

”きゃああああ”

臆病な私は顔を覆って叫ぶことしか出来ませんでした。私は見てしまいました叩きつけられた女の子の脚が奇妙にねじれてしまったのを……

女の子は、血だらけになりながらも怪物にもう一度立ち向かおうとしています。思わず、私は”逃げて”と叫びました。

声が届いたのか、女の子は私のほうに視線を向けました。その瞳は気高くて、何故か哀しい色を浮かべていました。

彼女の瞳に対して、私は何か申し訳がない気持ちになりました。とても大切な何かを忘れているような気がして……

”アハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!”

理不尽な怪物の笑い声と共に彼女が居た場所が吹き飛ばされてしまいました。小学生の頃にビデオで見せられた”核兵器”で攻撃されたかのように……

”酷い!!!あんまりだよ……”

こんな事を言うのは、誰にでも出来ます。 だけど私には何もできませんでした。彼女の元へ駆けつけて起すことも出来ないのです

ただ、脚が震えて……あの怪物に対しての恐怖だけが先立って、何もできない自分が腹立たしくて……悔し涙がただ零れるだけです。

彼女は、無理やり脚を矯正させて再び怪物に向かいますが、力の差は歴然としていて……

血塗れだった身体はさらに血に塗れて……

”何故、彼女がこんな目に遭うのか?君はそう訊きたいんだよね?”

背後から突然、誰かが私に話しかけてきました。そこにいたのは、猫とウサギを掛け合わせたような小さな生き物でした。

”そこで諦めたら終わりだよ、だけど君なら彼女の運命を覆せる”

その生き物の視線が私が見ていた彼女に向いていました。突然、爆発音が当たり一帯に響きました。気がつくと怪物から炎が上がり、少しずつ地上へ落下している光景でした。

それと同時にあの女の子もゆっくりと地上に……

”彼女、暁美ほむらはよく頑張ったよ。ワルプルギスの夜をたった一人で倒してくれたんだから…だけど、君は彼女の運命を変えたいとは思わないかい?”

私は思わず頷いてしまいました。たった一人で怪物と戦って、それで死ぬなんてあまりにも酷い話です。せめてもう一人だけ仲間が居たらと……

”本当に変えられるの?私なんかが……”

”もちろんさ……だから、僕と契約して魔法しょ……”

突然、その生き物が赤紫の炎で燃やされました。この炎に私は、覚えがあります……私の前にあの”闇色の狼”が”血塗れになった暁美ほむら”を抱えて佇んでいました……

無言のまま”闇色の狼”は、大きく剣を振りかぶりながら近づいてきて……

 

 

 

ジリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

いつものように目覚ましが鳴ったと同時に彼女の視界に映ったのは、いつもの見慣れた自室の部屋だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……貴方は何者なの?何故、私を……」

ほむらの問いに対して、バラゴは特に感情を出すことなく

「特に他意はない。君が持っているこの”能力”が気になったからかな」

バラゴは、楯を片手に応えた。あの時の戦いで、瞬間移動をしたかのように現れた”術”に対して不思議に思い、操作をしてみたのだが、

彼がその”能力”を扱うことは出来なかった………

ほむらはバラゴの特に何でもないような応えに落胆を示すことなく”そう”と呟いた……

彼女は察することはできなかったが、彼が彼女を助けた理由は……彼女がバラゴの大切な存在に瓜二つだったからだ……

「………それは、他の人が扱えるものではないわ。私達の”願い”がそのまま”能力”になっているから……」

例え同じ”魔法少女”でも他の”魔法少女”の能力を扱うことは出来ない……

「”願い”か……君は、どうやって”願い”を叶えて、”能力”を得た?」

「………それは尋問なの?でも、私も貴方から聞きたいわ。あの化け物と……”闇色の狼”について……」

ほむらは、バラゴに問う。昨日の出来事の”真実”を………

傍にいるエルダの視線が鋭くなるが。ほむらはそれに動じることはなかった……

バラゴとエルダの二人は知らないが、ほむらがかつては心を通わせた者達に”白い目”で見られたことによって何の感情も抱かなくなったことを……

ましてや、他人同然の二人に対して………

「いいだろう。君の持っている情報との等価交換だ」

バラゴの言葉にほむらは無言のまま頷いた・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

バラゴは、”魔法少女”と”魔女”について知ることとなる……

ほむらは、”魔獣ホラー”とそれを喰らう”暗黒騎士”の存在を・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ほむら

どうやら、この時間軸にはとんでもない”イレギュラー”が存在している。

とてもではないが、私の力では太刀打ちすることはできない。私の知る”魔法少女”達でも・・・・・・

一番のイレギュラーは私が"それら"と接触を持ってしまったことだ。

「………昨日の”闇色の狼”はあなたなのね……」

あんなおぞましいモノをよく口に出来るものだと内心思うのだが、よくよく思えば、自分達の”魂”を浄化するときも”同様のもの”を犠牲にしていたではないかと・・・・・・

「あぁ、あれこそが僕の姿である”暗黒騎士 呀”だ。こっちにいるのが下僕であるエルダだ」

誇らしげに語る彼の目には、何も映っていなかった。あるのは、あの闇色の狼と同じ………

エルダは、まるで死人のように青白い肌をしていて、人間とは到底思えない。私の知る魔女よりも魔女らしい。

いや、この二人はまともな”人間”ではないのだろう……

それは、私も同じことだ……あの”白い悪魔”と契約した時に、この身は”人”のモノではなくなったのだから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラゴ

何故だ…この小娘を見ていると妙に苛立ってくる。いや、苛立っているのは僕自身か……

理由は言うまでもなく、僕の母さんによく似た少女が僕の知らないところで苦しみ、傷ついている事が許せない………

遠い昔に奪われたモノと同じものが目の前にあった……彼女を見つけたとき、思わず手を伸ばし掴んでしまった……

全てを諦めたかのような”目”に苛立ちをさらに覚える。”メシア”降臨の為のゲートである、画家を目指し、未来へ希望を抱くあの少女とは正反対の”目”に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

互いの心情を察することなく、ほむらとバラゴの二人の会談は続く……

「つまり君は、”インキュベーター”なるものと契約して”魔法少女”となり、”力”を得たというのか……」

「ええ、私と同じ年齢の少女に契約を持ち掛けて、願いに関連した”力”を与えるわ」

「なるほど……だが、それだけではないのだろう?他に何かあるのではないのか?」

バラゴはほむらの知る”真実”にはさらに残酷なモノが隠れていることを察した。

ほむらもほむらで恐ろしく察しのいいバラゴに対して、内心冷や汗をかいたが、ここで事実を話したとしても彼らに何のメリットはないと思い

「えぇ、魔法少女となった少女は”魔女”という化け物と戦うことを義務付けられるわ。だけど、”魔女”は”魔法少女”の成れの果てなの」

少女が”化け物”になる。その言葉にバラゴは、自身が喰らう魔獣 ホラーを重ねた。

(………ある意味、陰我というわけか。希望の先は絶望か……)

あの魔獣は人間に憑依しその陰我に応じた能力を得る。少女から大人になるからこそ、”魔法少女”は”魔女”になるのだろうか?

(三神官がホラー以外で邪気をもつ存在が居るといっていたな。前々から居たらしいが、最近はさらに活発になっていると……)

バラゴは噂程度で聞いていたホラー以外の邪気を持つ存在”魔女”に興味を抱いた。

「………面白い。その魔女とやらを見てみたい。結界の中には君達が居れば入ることはできるだろう」

「っ!?!!」

突然のバラゴの言葉にほむらは目を見開いた。

「何故…あなたが”魔女”と戦う理由なんてないわ。これは、私のやらなければ成らないことよ。あなたには、関係のないこと」

話の内容によっては、危険に巻き込みたくないという発言だが、ほむらの本心は違っていた。

言うまでもなく、彼女にとって最大のイレギュラーである”暗黒騎士”が介入することでどのような事態が起こるか分からないからだ。

できるかぎり”イレギュラー”は関わらせてはならない。

「私を助けてくれたことには変わりないから一言だけ忠告させてもらうわ。貴方を関わらせたら……魔女、いえ、魔法少女にとって”良くない”ことが起こるわ」

ハッキリとほむらは、バラゴを拒絶する。彼の強大な戦闘能力は、彼女の目的からすれば非常に魅力的だが、それを含めてもバラゴは危険すぎるのだ。

「………それは、そうだ。今の僕は、道を外れた”外道”だからね。だからこそ、違う道を外れた”存在”に興味があるのだよ」

穏やかに語るがその声色には明確な悪意が存在していた。”関わらせてはならない”、そう思い、ほむらはソウルジュウムを輝かせ、変身したと同時にバラゴの手にある”楯”を奪うために飛び掛る。

「………君は、もう少し賢いと思っていたのだが……」

右手を翳したと同時にほむらの意識が一気に重くなった。何かに対して強制的に意識を落とされたように……

「どっ、どういうことなの?……魔法も無しに……こんな真似ができるなんて……」

相手は卓越した剣技による戦闘を主としていると判断していたが、得体の知れない術まで使うのは予想が出来なかった。

「君が寝ている間にその”宝石”を調べさせてもらった。それには”魂”があることを……」

”ソウルジュウム”がある左手を手に取る。

(………くっ、私は何てとんでもない奴に捕まってしまったのかしら!?!)

バラゴは、”ソウルジュウム”に手をやったと同時にほむらの身体に奇妙な痛みが走った。それは、何かに焼かれたような痛みだった。

「くぅっ!?!」

その瞬間、ほむらの胸に奇妙な形をした刻印が刻まれた。それは”ソウルジュウム”にも同様なものが……

「いつ、逃げ出されるか分からないからね。だから君に”束縛の刻印”を刻ませてもらった」

それは、太古の昔に失われたはずの”秘術”。その肉体と魂に楔を打ちつけ、術者の思い一つでその肉体と魂を死に至らしめる呪いである。

これに酷似したもので”破滅の刻印”と言うものが存在する。

「だから君は、これから僕のお願いを聞いてもらうよ。魔女のところに案内したまえ」

「何が、お願いよ……私をこんな風にして……あなた、”人間”じゃないわ」

ほむらの言葉に、バラゴは鑑賞するように彼女の顎に手をやり

「そうさ、今の僕は……”闇”そのものだ。だから、”人間”じゃないんだよ。君と同じくね」

その言葉に悔しそうに唇を噛み、ほむらはこの”男”がこれから起すであろう災いに対して不安を募らせるのだった。

(……ごめんなさい。まどか、巴さん、杏子、さやか……みんな、こんな事を言ってもどうしようもないよね。あなた達を見捨ててきた私が謝っても……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラゴ

何故、君は僕を拒絶する?君の願いは分からないが、この僕の力が必要と思わないのか?

母さんの顔と声で僕を拒絶するなんて……苛立ちを覚える。いや、僕は許せないんだ。

助けられないのなら見捨ててしまっても君のせいではないだろうに、それなのに”運命”として受け入れ、どんな理不尽な目に遭ってもそこから逃げようとはしない……

”あの人が私を選び、私があの人を受け入れた。これは宿命なのよ”

”私達は家族なの。あの人は普通の人じゃない。魔戒騎士なの、過酷な運命を生きているあの人を支えることがどんなに大変なことか”

あいつは、母さんをモノのように扱い、理不尽な目に遭わせた。毎晩のように酒に酔い、その勢いに任せて暴力を振るう。

当然のことながら僕も殴られなかった日はなかった。

だからこそ、逃げようと言った。あいつの、ホラーの居ない地へ行き平穏に暮らそうと……

”ホラーの居ない場所なんて、世界中の何処にもない!!!誰のおかげで、お前達が生きていられると思っている!!!!!”

結局は、いつものように殴られ、修行という名の一方的な暴力を受ける……

彼女の願いがどんなものかは知らないが、どうあってもそこから逃げるということは無いだろう。

傷つき、その果てに命を散らすことは覚悟の上なのだ。だからこそ、僕は彼女をこの手から逃すつもりはない……

この手から離れたら、僕は二度、”大切なもの”を失うことになるのだから……

たとえ怒り、恨みを向けられようとも”母さん”を二度、失うよりはずっとマシなはずだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原 工業地帯

辺りが夜の闇を迎えようとしていた頃、工場の片隅でそれは生まれようとしていた……

手に納まるぐらいのアンティークに見える”ソウルジュウム”から生まれたのは……

 

人形の魔女   属性  喪失

 

首だけになった子供用の人形の周りに所々、欠けている”人形”もしくは、部分が徘徊し始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

?????

「きゅうべえ、この近くに魔女が?」

「うん、僕が気づいた時には既に羽化していたんだ」

工業地帯に見滝原中学校の制服を着た少女が黄色く輝く”ソウルジュウム”を手のひらに載せ、目の前を行く白い猫に似た小動物”きゅうべえ”の案内で奥へと進む。

「最近は特に多いわね」

「そうだね、マミ。そろそろ魔女の結界に近づくよ……」

きゅうべえは、結界の入り口に三人の影を見た。その内の黒いローブを来た”人物”を見た瞬間、その歩みを止めた。

「どうしたの?きゅうべえ、何かあったの?」

「…………マミ。既に誰かが入ったみたいだよ。ここは、先約に任せても構わないんじゃないかな」

”誰か”と聞き、マミの表情に警戒の色が浮かぶ。

「ここは、私の管轄なのに……もしかして、私以外に魔法少女が……」

彼女が知る”魔法少女”の事を思ったが…

「いや、杏子じゃないよ。マミの知らない子だよ」

「じゃあ、尚更行かないと……どんな子か確かめないと……」

「待ってよ、マミ。グリーフシードのストックはあるから……」

きゅうべえの言葉をスルーし、マミ結界に入る前に自らの”ソウルジェム”を掲げ、魔法少女へと変身を果たした。

マミの後姿を見送るきゅうべえは、

「……まったく、”彼ら”とは出来る限り接触はしないようにしていたのだけれど……イレギュラーな事態だ」

 

 

 

 

 

 

 

結界の中は、奇妙な世界だった。壊れたおもちゃ達が暮らす………

「この中が魔女の結界よ。アレは使い魔……」

観念したのかほむらは、バラゴを結界の中へと案内したのだった。追従するようにエルダが続く。

「……………」

背後に居るエルダをほむらは、少しだけ一瞥する。アレから全く言葉を発していない彼女が気になったのだ。

そんなほむらの視線をエルダが気に留めることはなかった。

三人に対して使い魔達が集まり始める。使い魔は、魔女の手下であると同時に人を襲う怪物である。

当然のことながら、三人を襲おうとしているのだ。

「ほむら君、この奥に魔女がいるのかい?」

バラゴに対して睨み、苦渋を舐めるように頷く。

「ならば、先へ進もう」

声を上げずに使い魔達が道を阻み、左右に展開する。

バラゴは剣を構え目の前に居る使い魔に対して踏み込んだ……

 

 

 

 

 

使い魔達の身体が一瞬にして切り裂かれ、破裂し、群は瞬く間にその姿を消滅させた……

 

 

 

 

 

「……………先に進むまでもなかったか」

バラゴが視線を向けると醜悪な顔をした首だけの巨大な怪物が直ぐ近くまで迫っていたのだ。

「どれほどのものか……その”力”我が肉と血と成すのに相応しいだろうか?」

何百体ものホラーだけではなく、バラゴは様々なモノを喰らってきた……

ホラー以外に喰らってきた”者達”を脳裏に浮かべ、バラゴは首飾りを外し、それを掲げたと同時に赤紫の光を纏い、”暗黒騎士 呀”へとその姿を変える。

 

 

 

 

 

黒いマントを靡かせたその背中は、見ようによっては頼もしく見えるがほむらにとってこの背中は自身を束縛する忌まわしいモノだった…………

ほむらを一瞥することなくバラゴは、魔女へと歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

魔女は、本来戦う相手とは全く違う存在に対して困惑するが、直ぐに攻撃を開始する。

目が見開き衝撃波が呀に襲い掛かるが、呀を動かすことは出来なかった。まるで山のように微動だにせず、それどころか一歩ずつ確実に迫ってくるではないか……

ゆっくり近づくのに飽きたのか呀は脚に力を込めたと同時に一瞬にしてその姿が消えた。

魔女の目に感情を映さない白い目をした闇色の狼の貌が映りこんだ後に自身の結界の上空が映し出された。

呀による拳が振り上げられたのだ。先回りされ、蹴りを加えられ、地上に激しい衝撃と共に落下する。

起き上がり反撃をするが、呀を怯ませることは出来なかった。そのまま魔女を両手で掴んだと同時に魔女の姿が霞み始めた……

声にならないオゾマシイ断末魔の叫びを上げる魔女であったが、それを助けるものは居なかった。

黒い血の霧のような粒子が呀のからだに吸収されていく……そして、魔女が喰らわれた後、結界は消滅した………

 

 

 

 

 

 

 

 

「………思ったほど、足しにはならないようだな」

ホラーの陰我と比べると少し、物足りなさを感じつつ、ほむらの方へ視線を向け

「ほむら君。この魔女の序列はどんなモノだい?」

「………そうね。魔女の中ではあまり強いほうではないわ。それよりも比べ物にならない魔女もいるわ」

「その魔女の名は?」

「………”ワルプルギスの夜”。一ヵ月後に来る 最強最悪の魔女よ」

もはや拒否する権利もないためほむらは、バラゴに逆らうことができないのだった……

「そうか……メシア降臨の前にその”ワルプルギスの夜”を喰らって祝杯をあげようじゃないか。君もそれを望むのだろう?ほむら君」

感情のない白い眼の奥にある黄色い目に”邪気”が浮かぶ。彼が見ているのは、絶対に並ぶものの居ない唯一の究極となった”自分”。

如何なる者が来ようとも決して、自分を止めることは敵わないのだ。

「あなた、狂っているわよ。あなたは、何を私に望むの!!?!!何を企んでいるの!?!!」

「バラゴ様に何を問う。お前は既にバラゴ様の物。それ以上でも以下でもない」

エルダがほむらの正面に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルダ

「全てはあの方の思うまま……お前は、何も憂う必要もない。ただ、バラゴ様のお傍に居ればいい」

”あの方の失った大切な人”の生き写しであるお前は、ただあの方の心を慰めればいい。ただそれだけで……

 

 

 

 

 

 

 

結界が崩壊した後、マミは、工業地帯から離れた場所に居た……

その表情は酷く怯えていた。まるで恐ろしい”モノ”を見てきたかのように……

「何なの……アレは……魔法少女でもないのに……どうして魔女を……それにあの子は、どうして……」

 

 

 

 

 


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