呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
ほむらとバラゴがアスナロ市に現れた 使徒ホラー バグギを倒すために向かいます。
見滝原で起こっている事態と並行して進めていきます。
かずみマギカとのコラボになりますが、時系列はかずみマギカ本編の前です。
今回もオリキャラも居り、特別編の敵役も登場します。
アスナロ市
見滝原より離れた場所にある地方都市であり、元々は海外より移住してきた異国の人達が多く住まう町であったがここ最近は国際化の波もあり目まぐるしく発展している。
その発展を象徴するのが様々な企業によるその技術や新製品を発表するイベントが近日中に開催されることになっている。
最新のAI技術を中心とした、最新鋭のロボット工学などを全面的に押し出すイベントであり、介護用はもちろんのこと人に代わって危険な作業を請け負う機種までもがラインナップに組み込まれている。
会場は、アスナロ第三ドームであり、ここはアスナロ市の中でも一際巨大な施設であり商業施設はもちろんのことながら遊園地なども施設がある最大の行楽しせつである。
アスナロ市 東北 京極神社
高層ビルが立ち並ぶアスナロ市のはずれにあるこの神社の周辺は発展の波から取り残されたのか畑などがあり、古い民家が立ち並び地域に京極神社は建っていた。
京極神社 由緒正しき神社と言われ、その歴史は二百年以上前の明治維新の後に建立され、維新、幕府等の派閥を問わずにその犠牲者を弔っている。
アスナロ市は地方都市でがあるが、都市群は首都東京に匹敵するほどの規模を誇り、ドームやタワー等の巨大建築物が立ち並ぶ程の発展を遂げている。
都市の外部に位置する京極神社は二百年以上前からその周りをあまり変化させず、少し前の昭和の風景を見ることができる。
この神社の神主 京極 カラスキは、眼前にあるアスナロ市を見ていた。決して眠ることのない大都市を眼下に彼は少し疲れたような視線を向けていた。
神主こと京極 カラスキは若く年齢は十代後半であり、高校を卒業後そのままこの神社の神主に就いていた。
彼の要望は垂れ目であり、髪はくせっけが強く、さらには天然パーマが部分的なのか毛先がカール状になっており、いつもは神社に訪れる人たちに人懐っこい笑みを浮かべているのだが、この時ばかりは物憂げな表情を浮かべていたのだった。
「……何処を見ても人の陰我は業が深いったらありゃしない。少し前に妙なことを誰かがやらかしたのか、嫌に痺れるモノが出たね~~~」
肩で杓杖を鳴らしながら、カラスキは眼下の大都市へと進んでいった。遥か眼下にある大都市へ向かう石段は何時にも増して冷たく、夜風の寒さは肌を刺激する。
「さてと……番犬所の依頼だと、風雲騎士が担当している暗黒騎士がこっちに来るかもしれないか・・・そういえば、見滝原に飛んでったジンの妹分のほむらちゃんが行方不明になっているんだよな」
数年の付き合いの友人が何時にも増して慌てて見滝原に飛び出していったのを思い出し、彼の妹分が何事もなく親元に帰る事を心の内で祈るのだった。実を言えば友人の妹分である 暁美ほむらとは何度か会っているが、姉であるアスカにベッタリしていたことと兄である人に少しだけ嫉妬しながらも幸せそうにしていたことだけはよく覚えていた。
一般人である彼らとは少し距離を置いていたので、それほど親しいわけでもなかった。言うまでもなく、この京極神社は”闇の世界”に関わる場所であり、魔戒騎士、法師を統括する番犬所、その上位組織である元老院の下請けであり人の世に蔓延る様々な”呪い”、”陰我”を回収し、速やかに封印を施す役目を負っている。
さらには、ホラーの居場所やその情報を魔戒騎士らに提供を行うなどのサポートに徹している。
カラスキ自身はさすがにホラー等と戦えるほどの戦力を持たず、情報の提供、さらには陰我を持ちかねないモノの回収と保管を生業としている。
今夜も自殺した”女性”の遺品の中にある”やばいもの”を警察より引き取りに行かなくてはならないのだ。
カラスキは”見かけたら絶対に連絡しろよ!!!それじゃ!!!”といつものように勝手気ままに厄介ごとを押し付ける友人が渡した 探し人のチラシに目をやった。
”探し人 暁美ほむら ”
「神社の神主にどうしろというんだ・・・・・・全く・・・・・・おいらは超能力者でもなんでもないんだぞ」
”ワルプルギスの夜”
魔法少女たちに伝わる最大級の脅威を誇る魔女。その正体とルーツは不明であり、分かっているのはその強さは一つの文明を崩壊させる程であるということ。
魔法少女達は、個々に動いているため連携を行うことは滅多にないが、時折、他の魔法少女の噂がワルプルギスの夜のように伝わることがある。
この時間軸では、ある魔法少女の噂が魔法少女達を騒がせていた。
”魔女のように結界を張り、魔法少女を襲う魔法少女が居る”
呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 壱
数日前 アスナロ市 繁華街
二人の魔法少女はいつものように魔女狩りの為に魔女の結界の中に入ったのだが、
「な、何なのよ?この結界は!?!どうして違う魔女がこんなに居るのよ!!?!」
通常の魔女結界ならば、使い魔達が闊歩しているのが普通であるのだが……この結果居はどういうわけか……
”ぬいぐるみの魔女”、薔薇の魔女”、”甲冑の魔女”等、複数の魔女が大量に存在し、それぞれの使い魔達までもが結界の至る所に居るのだ。
「わ、分からないわ。も、もしかして、複数の魔女が集まったって言うワルプルギスの夜の結界だとでも言うの?」
パートナーである魔法少女も訳が分からないという顔をしていた。魔女同士の潰しあいはごく稀にあるが、魔女達は潰しあうことなく自分達を攻撃している。
一度は逃げようともしたが、どういうわけか入り口はなく自分達の行く先々に魔女、使い魔が現れる。
最悪の可能性である”ワルプルギスの夜”は複数の魔女の集合体である噂もまた存在している。だが、
「違うよ。ワルプルギスの夜は結界を必要としないんだ。確かに複数の魔女の集合体ではあるんだけどね」
二人の魔法少女の前に彼女達にとっては、顔なじみのマスコットキュウベえが現れた。
「じゃあ、どうして他の魔女や違う使い魔達がごっちゃになっているのよ?」
「それは、彼女の結界の特徴だよ。なんていうか、僕には良く分からないけど人間は何かをやたらと集めたがるんだよね。コレクションと言ってね」
キュウベえは小首を傾けながら、懐かしそうに結界を見渡していた。
「キャハハハハハハ!!!!!ごきげんよう!!!!麻須美 巴でぇ~す!!!」
キュウベえに応えたのか、分からないが二人の魔法少女の前にアイドルがコンサートに現れるように派手な音楽とさらには様々な演出と共にわざとらしくポーズをとる 魔法少女 麻須美 巴が現れた。
「あれ?君ってそんなキャラだったけ?」
「インキュベーター、すっごく懐かしいじゃないの?もう五年以上は経ってるわよね」
キュウベえに視線を合わせるようにして麻須美 巴は笑みを浮かべる。いつものように無表情なキュウベえことインキュベーターが笑みで応えることはない。
「まあ、そんなところだね。それにしても君は相変わらずだ。また、こんなに魔女を取りこんで……君はワルプルギスの夜にでもなるつもりかい?」
「別に……ただ私自身の楽しみと食事も兼ねての活動よ。まぁ、ここには私の”魔女プラント”もあるから、グリーフシードには困らないんだけどね~~~」
両手を大きく掲げると同時に大量のグリーフシードが結界か降り注いできた。
「ちょっと!!!なんで、こんなに大量のグリーフシードが!?!」
「拙いわ!!!ここは、大量の魔女と使い魔がいる!!!!そこにグリーフシードなんかばら撒かれたら!!!!」
予想通りグリーフシードが結界に蔓延する瘴気に当てられ一斉に還り始めたのだ。急いで引き上げなければとこの場から飛び上がるが…
「せっかく着たのに、もう帰るの?私と遊びましょうよ♪」
彼女の衣装は、見滝原を縄張りとする魔法少女に酷似しているが、麻須美 巴のオレンジを基調とし衣装はさらに派手にしており、色鮮やかな装飾品が身につけられている。
勢いよく駆け出し、右腕が魔力により硬質な刃に変化しそれを振りかざすことにより相手の魔法少女の首を刎ねたのだ。
「よくもっ!!!」
仲間を殺された怒りから、彼女は剣を突き立てて攻撃を行うものの麻須美 巴は平然と右腕の刃で受け止め、金属音を鳴らしながら
「も~~~う、最近の子はどうしてこうも手が早いんですの~~~~」
麻須美 巴は口調とは裏腹に恐ろしく獰猛な笑みを浮かべ、
「そんな子は、バラバラにしちゃおうかしら♪」
真須美 巴の影が立ち上がり、もう一人の彼女が現れ、後ろに回り込んだのだ。
「なっ!?!……」
驚くものの二人の真須美 巴は左右対称の動きで少女を仕留めた。
モノ言わぬ肉塊となった二人分の遺体より彼女は迷うことなくソウルジェムを取り出し、自身のソウルジェムと重ねた。
真須美 巴のソウルジェムは他の魔法少女とはかなり異なっていた、通常のソウルジェムは卵を思わせる形をしているのだが、彼女のそれは一応はソウルジェムの形を保っているが頭頂部が開くというギミックがあり、その奥にはオレンジを思わせる色をした赤い球体が波打つように輝いていた。
「キャハ♪」
倒した魔法少女のソウルジェムをかみ砕き、そこに詰まっているモノを取り込むことにより真須美 巴は言いようのない高揚感に浸っていた。
「ァハハハハハ・・・・・・いいわぁ、やっぱり育ち切った魔女よりも、魔法少女の方が穢れが無くて本当に食べ心地が最高よ・・・・・・」
続けてもう一つソウルジェムを食す。彼女は、魔法少女でありながら魔法少女を喰らう存在である・・・・・・
「やれやれ…ホラー食いのホラーが居るのなら、魔法少女を喰らう魔法少女が居てもおかしくはないか」
キュウベえの赤い瞳は彼女の歪な輝きを放つソウルジェムを見つめていた……
「ホラーね・・・・・・あの魔女とは違う存在でしょ。アレはアレでそこそこ話が通じるから割と便利よ」
「まさか、君はホラーとも結託していたのかい?」
驚くインキュベーターに対して、真須美 巴は
「感情のない癖に驚く真似はよしなさいよ。私はね、利用できるものは何でも利用するわ、奪う側に回れるのならね」
「やれやれ、ホラーと結託するというか利用する狡猾さをもつのは君ぐらいだろうね、ホラーに憑依されないように気を付けたほうが良いよ」
インキュベーター事 キュウベえから見ても真須美 巴は異常の事この上ない。今まで多くの魔法少女と契約してきたがこのような存在は長い魔法少女の歴史から見ても他に例はないであろう。
仮にホラーと、いやホラーと既に接触済みでホラーと利害関係が一致すれば嬉々として協力をしたことも想像は容易であった。
「キャハハ♪インキュベーター、私はね、自分が常に奪う側で居たいのよ。だからね、自分が奪われることは耐えられないし、私を奪おうというのなら何だろうと容赦はしない」
「おっと、僕もある意味、君から何かを奪った立場になるのかな?」
「そこは大丈夫ですよ。私が奪う側に回ると決めたのは魔法少女になってそれなりに時間が経ってのことだから、あなたは例外にしておくわ」
感情はないはずであるが、妙に薄ら寒いモノを感じさせる存在である 真須美 巴。かつては蓬莱 暁美の仲間であったが、この真須美 巴は放置しておくと何をしでかすかわからないため、目に届く場所に居てもらった方がよいという理由で組織に誘われた経緯がある。
結界を閉じるべく自身のソウルジェムをかざすと同時に結界内に居た様々な魔女がソウルジェムに飲み込まれ、捕食されていく。
その光景にキュウベえもわずかながら戸惑いを隠せなかった。
「き、きみは随分と食べるんだね・・・・・・少し食べすぎじゃないかい」
結界を閉じたのではなく食べたのだ。そこに居た魔女、使い魔ともども・・・・・・
「う~~ん。私は割と食べる方だし。、それに魔法少女って太らないから食べ放題なのよ」
”そういう風に作ったのはあなたじゃないの”と言わんばかりの笑みを浮かべて・・・
「せっかくだからデザートも探さないと♪」
まさか自分が食われるのではないかと一瞬ではあるが冷や汗をかいたキュウベえだが、彼女のデザートは視線が物語っていた。
通りを行きかう一人の男性に熱い視線を向けた居たのだから・・・・・・
その後、アスナロ市で魔法少女ではない一般人を”食”していたところに不意を突かれて、アスナロ市を拠点とする魔法少女の集団「プレイアデス聖団」によって捕らえられ、拷問にかけられ見るも無残なダルマにされていたのだが・・・・・・
”BAGUGI”
このメッセージに応えると同時に真須美 巴はそこから逃げ出した。そこに保管されていた大量のソウルジェムを持って・・・・・・
「ふふふふふ~~ん♪今日は、どういう風に着飾っちゃおうかな♪」
思わず鼻歌を歌うほどであった。つい先ほどまで達磨同然に四肢を切られていた筈なのだが傷は完全に癒えていた。
彼女が現在いる所はアスナロ市の高級住宅街のある豪邸であり、その一室で大量に積まれている衣装一つ一つに袖を通している。
「この帽子可愛いわ、このバックも♪。やだわ、また子供っぽい趣味が出ているわ。あの後輩たちに舐められたのもこの容姿のせいかしら?」
丸い楕円形の姿見に写る自身の姿を彼女は上機嫌に眺めた。彼女は自身を子供のような趣味と言っているが、彼女の容姿は14歳のそれであるが年齢以上に大人びていた。
まるでアイドルのような愛くるしい貌であるが、大人の女を思わせる肢体と何処か気怠そうにしている雰囲気が非常に妖しく彼女を魅せていた。
鮮やかな黒髪を靡かせながらまた衣装に手を伸ばしていく。その時、不意に開け放たれた部屋の扉の前に大柄なトレンチコートと帽子を目深にかぶった大柄の人影がいた。
「あら、バグギ?もしかして、お仕事?」
目深にかぶった帽子と極端に建てられた襟の間に一対の赤い光が灯った。
「そういうことなの?ホラーもこうやって話すと結構話が分かってくれるのよね」
気軽に話しかける真須美 巴であるが実際のところはこの使徒ホラーである バグギに対して全面的な信頼はしておらず内心、どう付き合うべきか測りかねていた。
当然、ホラーであるのだから善意で助けたなどという輩が居たら真正の阿呆であろう。自身をプレイアデスから助けたのは何らかの利用価値があるからであろう。
「♪なるほど、アナタ達、使徒ホラーは、ホラー食いのホラー。アスナロ市に何か大物が来るのですね」
真須美 巴は大柄のトレンチコートの人物の腕に自らの豊満な胸を色白の長い腕を絡ませて妖しく微笑んだ。
『そうだ……あの黄金騎士を葬った暗黒魔戒騎士、そして……メシアが気に掛けている呀が如何なる物か……楽しみではないか』
バグギと名乗る使徒ホラーの声は、機械のそれを合成したような物であった。
「私も楽しみだわ。貴方の話だと、その暗黒騎士が魔法少女を連れているって……」
『あぁ……つい先ほど、このアスナロ市に入った。これは、数十分前の映像だ』
アスナロ市 中央駅より人ごみと共に都市へと足を踏み入れる 見滝原の魔法少女 暁美ほむらと暗黒魔戒導師 エルダ、見滝原の駅より、アスナロ市へ向かうバラゴの姿が映し出されていた。
「ここがアスナロ市・・・・・・思っていたよりもずっと大きい都市ね」
アスナロ市の中央にある巨大なターミナル駅より降り立ったほむらは早朝ならでは通勤ラッシュに感心していた。
見滝原もそれなりに大きな都市であるが、アスナロ市のターミナルの規模はそれを凌駕しており商業施設もそうだが、国際便空港用のラインも引かれている。ここ最近の海外資本の参入が激しく、様々な企業のビルが乱立している。目的の為、ほとんどを見滝原からあまり出たことのないほむらは珍しく自身の気分が高揚しているのを感じていた。
「何を浮かれている。我々はバラゴ様を迎えなければならない、早く拠点へ移動するぞ」
やはりここでいつものように厳しい言葉をかけてくるのはエルダである。普段の魔戒導師の衣装ではなく、西洋の喪服を着ている。ほむらもまたゴシックな喪服を身に着けており、彼女たちのことを周りの人間は遠方から身内の不幸に駆けつけたのだろうと考えていた。
「分かっているわよ。アイツが何を考えているかは分からないけど・・・・・・」
エルダは、バラゴに長く仕えていた為、その思惑を粗方把握していた。自身の心を慰撫させる存在である彼女を見滝原とは別の場所に連れ出したかったのだ。ここ最近は、ほむらは最初の頃のように露骨な嫌悪感を表に出すことはなくなっており、偶にバラゴとお茶をすることがある。最も一方的にバラゴが話しかけており、ほむらはそれに応えるといったものである。最近は練習もかねてアップルパイをほむらが作り、それをバラゴが頂くという光景になっている。
「お前はそれで構わない。バラゴ様がお前に望む役割は私とは違うのだからな」
無表情なエルダの言葉は、ほむらにとってはいつものことである。
このエルダとの付き合いは、長くはないのだが彼女は自身を気遣っていることを察しているがこの無表情さと冷たい言いようはどうにかならにかならないだろうかと思わなくもない。
だが、”人の振り見て”という言葉があるように、エルダの振舞は自身のこれまでの”時間軸”の振舞そのままではないだろうかと時折思うことがある。
事実、エルダは未来を占い、その先を覗くことができる”魔戒導師”であったが、とある”最悪な未来”を見たが、それを間違いの未来として認めず、その果てに”最悪な未来”を受け入れなかった自身の愚かさに絶望し、その果てにバラゴの下僕として今に至っている。
バラゴに対して、同族嫌悪に近い感情を持っているがエルダに対しては奇妙なシンパシーを感じていた。
「それもそうだが、お前には何が見える?」
つい先ほど手渡された”魔戒札”についてだった。タロットカードに似た模様が描かれており、かつて敵対した白い魔法少女が使っていた・・・・・・
手元にある魔戒札に意識をやり、直感的に脳裏に現れるイメージを見る。
”歪な形をした二つのソウルジェム”
「・・・・・・・・・」
このイメージは何なのだろうか?奇怪な形をしたソウルジェム二つ。
そして自身が手にしたカードは・・・・・・
「それは”死”を意味する。終わりにしなければ、始めることが叶わぬようだな・・・・・・」
妙に心当たりのある内容だ。結局のところ、自分はここでも変わることがなく、繰り返すだけなのだろうか?
「お前の事ではない、ほむら・・・・・・ここで誰かが終わることのない何かを繰り返しているようだ」
「そう・・・・・・同じ時間を繰り返している魔法少女が”キリ”と私以外に存在するのかしら?」
”キリ”・・・・・・かつての時間軸でまどかと同じぐらい、いえ、もしかしたら他の誰よりも仲間を感じていた魔法少女。
”君もいつも同じ時間を繰り返しているのかい?私もそうなんだ、いつも同じ14歳を・・・・・・”
この時間軸でもいるのではと探したのだが、彼女は見滝原に居なかった。もしかしたら、ここアスナロ市にいるのかもしれない。
”どこかの時間で私たちは出会うと思う。でも君は私が隣にいても気が付かないかもしれない”
あの時間軸以来、彼女とは会っていない。”キリ”と私は呼んでいるが、彼女の姿は” キリカ”そのものであり、あの時はキリカの姿を借りていただけだった。
(今更何を感傷的になっているのかしら?ワルプルギスの夜を倒す・・・・・・だけどまどかは未だに魔法少女になっていない。私が現れない方が彼女にとって幸せかもしれない・・・・・・)
一抹の寂しさを感じ、ほむらはこの時間軸における異質さに不安を覚えていた。
魔女以外に人々に災いを齎す 魔獣 ホラー。さらにはそのホラーを糧にする 暗黒魔戒騎士 呀の存在。
そして、魔法少女の契約をまどかへ持ちかけないインキュベーターと来ているのだ。
これまでのインキュベーターは、まどかの破格の素質から得られる”エネルギー”を搾取しようとあの手この手と動いていたのだが、今回はあまりにも消極的なのだ。
インキュベーターも油断してはいけないが、インキュベーターが危険視するまどかの身に何かとんでもないことが起こっているのではないだろうか?
いつにもまして思考に囚われていたが、不意にあの”魔戒札”により得たイメージが脳裏をよぎった。
閃きにも似た感覚であり、その感覚に導かれるままほむらは足を進めた。
エルダは追わずに彼女の後姿に僅かながら喜色の笑みを浮かべていた。
「・・・・・・それでいい。魔法少女としてはともかく、お前は魔戒の者としてならば私をも遥かにしのぐ素質を持っているではないか」
ここ最近、自身の教えをモノにしていく彼女に対してエルダは久しく満足していた。
「・・・・・・そこまでして私を殺したいの」
人気のないビル街の一角で少女は、自身を追ってくる彼女達に対して声を上げた。
目の前に現れたのはモノクル(片眼鏡)を掛けた乗馬服を思わせる男装の麗人を思わせる装いの魔法少女 浅海 サキ。
対する少女の姿は浮浪者そのものであり、その目には生気がなくただ絶望の色だけが色濃く存在していた。
「・・・・・・あなたはとても危険すぎる。辛いけど分かって、ミチル」
「違うっ!?!私はお前たちのミチルじゃない!!!!」
声を上げる少女 ミチル?はハッキリとした拒絶の意思を示す。
「でもね・・・あなたは存在するだけで、周りが危険に冒されてしまう」
「私を勝手に生み出して、危険だから処分する?そんなこと分かるもんか!!!」
ミチル?は怒りの赴くままに腕を振り上げる腕は獣の腕を思わせるそれに変化し彼女へ振り下ろそうとするが、
「ボクのサキに何をするんだ!!!!この偽物!!!!!」
この場に似つかわしくないテディベアの大群がその行く手を阻むと同時に巨大なステッキを魔法によって出現させて勢いよく振りかざし、ミチル?を弾き飛ばした ピンク色の髪と可愛らしいフリルの衣装の小柄な少女
若葉 みらいはその外見とは似つかわしくない声を上げていた。
コンクリートの壁に叩きつけられたミチル?は背中に激しい痛みを感じる。自身の戦力はこの二人の足元にも及ばない。そういう風に生み出されたのだから当然かもしれない・・・・・・
だけど、このまま何もわからずに死んでいくのだけは嫌だった。
「貴女たちがアスナロ市の魔法少女ね」
聞きなれない声と目の前から聞こえてきた。ふと顔を上げると黒い髪を靡かせた見知らぬ魔法少女が立っていたのだ。
驚くミチルだったが、二人の魔法少女らも突如として現れた魔法少女 暁美 ほむらに対して同じだった。
「だ、だれ!?!」
「どこから現れた!?!」
自分らに察知されずに現れたほむらは、未知の存在である。これを警戒せずには居られなかった。
「何処からでも良いじゃない。私はこの子に用があって来たの」
一見するとほむらは、怪我をした少女を助ける”正義の味方”に見えなくもなかったが、実際のところは”このミチル?”が自身の”魔戒札”による占いにより見えたことと僅かながら”陰我”を発していたことに興味を持ったからである。
(打算的な考えね・・・・・・本当に私は・・・・・・純粋に助けたいじゃなくて、この子には私を飛躍させるのに役立たせることができるから、助けるなんてね)
元々自分が正義という物とは程遠いとは考えていたが、これでは益々悪役染みているではと自嘲するほむらであった。
「これは面白いことになって来たわね・・・・・・」
その光景を第三者が見ていたことに”プレイアデス聖団”と”暁美ほむら”は知る由もなかった・・・・・・
真須美 巴
彼女は新しい玩具を貰った子供のように笑っていた・・・・・・
続 「 呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 弐」
あとがき
こちらもやってみたかった特別編。アスナロ市でのほむらとバラゴの活躍。
今回の敵は使徒ホラー バグギ。特別編ということもあり、劇場版 GARO RED REQUIEMを意識して、使徒ホラーに出ていただきました。
物語は、かずみマギカ本編が始まる前です。
当時のアスナロ市はキュウベえが認識できないようになっていますが、この作品のキュウベえは何故か、真須美 巴には認識されています。
キャラ紹介
真須美 巴
イメージカラー オレンジ
人物像
元 蓬莱暁美と共に”メビウスの目”の所属していた魔法少女であり最高幹部だった。
容姿はアイドルのような愛くるしい顔と少女らしからぬ抜群のスタイルを持つ。
何処となくけだるそうな表情は、見る者の劣情を誘います(笑)
性格は、異常なまでな冷酷さと残忍さを持ち、”常に奪う側に回る”という信念で動いており、他者の存在は自身の糧であるとし、犠牲にすることに戸惑いはない。
幹部ではあったが、自己中心的な性格で周りとの協調がなく、蓬莱暁美を持っても放っておくと何をするか分からない存在であり、自身の利益の為ならば裏切ることも辞さない。
魔女と同じく結界を張ることができるが、これはほぼ使い捨てであり解除すると中に居る存在までもが消滅してしまう。
近接攻撃を得意とするのは、奪うことをより実感するためである。
彼女の恐ろしいところは、魔女、魔法少女を”食す”ことであり、さらには人間すらもその対象であり、性行為と食事を同時に行い、その快楽を楽しみ、相手の命を奪うことに喜びを感じる最悪の魔法少女である。
特別編における 脅威である 使徒ホラーと利害関係で結託しています。
過去の彼女は「外道魔法少女 蓬莱暁美★マギカ」の第二回にでています。
やっていることは特別編とかわりません。
元ネタは 巴 マミですが、マミとは正反対のキャラクターです。
余談
一応は、プレイアデスの魔法少女狩りの被害者になるのですが、この女が被害者面したところで自業自得と切り捨ててしまって結構です。
京極 カラスキ
アスナロ市にある京極神社の神主であり年齢は19歳であり、ほむらの兄貴分である ジン・シンロンとは中学の頃からの馴染みであり、当然のことながらほむらとその姉であるアスカの事も知っている。
偶にジンと一緒にキャンプの手伝いやイベントでアスカらにこき使われていた(笑)
ほむらとは、そこまで親しいわけではなくジンの友人のうちの一人として、ほむらの記憶に薄い人物。
魔戒騎士や魔戒法師らをサポートする下請けを行っており、曰くつきのものを回収、封印することを生業にしています。
こちらも元ネタは、エヴァの二次創作で書いていたシンジの仲間としてのキャラですが、あの作品のような力はなく、魔戒法師見習い以下の一般人よりは少しだけマシな力しかありません。