呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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第三話「騎士」

 

 

見滝原の隣町に一人の少女がいた。隣町の商店街を傍から品定めをするように視線を動かしている。

赤毛が特徴のポニーテールの活発そうな印象を持った少女の名は、佐倉杏子・・・…

視線が近くを通った男性の後ろポケットに刺さっている長財布で止まる。

「あいつで良いか……」

杏子は、人ごみを少しだけ警戒をしてから後ろポケットの財布に手を伸ばし、そのまま自身の懐へと納めた。

「~~~~~♪」

上機嫌で杏子は男が十分に離れたところで反対方向へと歩みを進めるのだが、ここで黒いコートを着た男とすれ違ってしまった。

「そこの人。財布を落としましたよ」

黒いコートの男が手渡したのは、先ほど杏子の懐に納められた財布であった……

しばらくして、納めたはずの財布がなくなっていたことに杏子が驚いたのは割愛しておく………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バラゴ達は魔女結界から出た後、拠点とする屋敷に戻っていた。ほむらは、病院へ戻ろうかと考えたが、自身に刻まれた呪いの事を考えてバラゴと一緒に居ることにしたのだ……

彼はどういうわけか自分に執着している。魔法少女に興味があってとも考えたが、それよりも深い思惑を感じていた。

普段なら、武器の調達、自作の爆弾などを製作しているのだがこういうイレギュラーの状況では、どうしても手が止まってしまう。

この屋敷には照明の類は存在しておらず、蝋燭だけが唯一の明かりである。揺らめく火を横目にほむらは、隣に居るエルダに視線を向ける。

エルダはタロットカードに似た22枚のカードを宙に浮かべ、占っている。彼女は魔法を使っていないのにこのような芸当ができるのだ。

「…………ねぇ、あなた。あいつは暗黒騎士と分かったけど、あなたは何なの?」

無言ままエルダは、カードを仕舞いほむらに視線を向ける。

「………………バラゴ様がおっしゃっていただろう、私はあの方の下僕だ」

「そうじゃなくて、あいつが暗黒騎士ならあなたは……」

「………私は、魔戒導師だ。最も今の世に導師は私以外にいないだろう」

淡々と言葉を出すエルダは、興味がないように語った。不自然なほどに青白い肌には相変わらず人間という感じがしない。

「そう……あなたも魔女と戦えるだけの”力”を持っているの?」

「…………お前の同類の成れの果てか……あんなもの恐れるに足らん。最も今の私に恐ろしいモノは何もない」

興味のないようにエルダは自分の事を言う。まるで全てに諦めがついたかのようなそんな冷めた視線だった。

”私なんとなく分かっちゃうんだよねぇ……あんたが嘘ついてるの”

”何もかも諦めたような目をしている”

いくつかの時間軸であの子に言われた言葉が浮かんだ。自分の弱さのために親友を恩人を救えないことを言い訳に、周りを切り捨て体裁だけを取り繕うとしていた、いや、今の自分にあまりに似ていたのだエルダの目は……

「…………だから、あの男に従っているの?あの男は、あなたを仲間としてみているの?」

とてもではないがほむらは、あのバラゴがそのような感情を持つとはどうしても思えなかった。

「前にも言っただろう、お前は、いや私達はバラゴ様の”モノ”私たちの行く末はあの方が決める。だた、それだけのこと」

要するに道具である。あの男は、自身の目的のためにあらゆる物を犠牲にしてきたのだろう……ただ一つの目的のためだけに………

どうしてだろうか、ほむら自身、バラゴに対して言いようのない嫌悪感を抱くことに気がついた……

彼の目的は分からないが、そのために使える駒はとことん利用し、邁進していくさまは………まるで…………

「っ!!?!!」

言いようのない怒りが、自己嫌悪が自分に渦巻くのを感じる。心に呼応するようにソウルジュウムが僅かに濁り始めた……

エルダは、ほむらに向かって先ほど回収したグリーフシードを手渡す。自身を気遣っての行為ではい、まるで主人のお気に入りの道具を手入れするかのような態度である。

「……お前は、バラゴ様のものだ。故に勝手に死ぬことは許されない」

そう一言入れてから、エルダは部屋から出て行ってしまった。軋む音が少しずつ遠ざかっていく…………

ほむらは苛立ちを抑えられなかったのか、扉に向かって近くの花瓶をそのまま八つ当たりのようにぶつけた………

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむら

何なの……この気持ちは、あの男の事を知れば知るほど、私自身を嫌悪する………

聞けば元々アイツは、魔戒騎士でその道を外れて暗黒騎士になった。暗黒騎士になった理由は、絶対的な力を手に入れるため………

何故、力を欲するのかは分からない………

まどかを救う事を考えれば、暗黒騎士は魅力的な戦力だ。戦列に加えれば、ワルプルギスの夜だって恐れるに足らない……

だけど、暗黒騎士を利用するという選択肢は私にはできなかった。そう考えると、私の中の何かが拒絶する………

その力があまりにも危険だったからだ。でも、それだけだろうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

このまま部屋に閉じこもっていることに気が滅入ったのか、ほむらはそのまま扉を開けるとそこには、エルダが立っていた……

「来い……バラゴ様をお迎えするために……」

エルダの顔から視線をそらし、ほむらは頷く。

お断りと言いたかったが、今の自分が抱く嫌悪感の正体が気になり、それを確かめるために一緒に行くことにするのだった……

 

 

 

 

 

屋敷の外から出た後、エルダの術によって展開された魔方陣の淡い光と共にバラゴが居るであろう廃工場の前に立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

とある廃工場にバラゴは着ていた。時刻は深夜を回りっており、辺りは不気味な静けさを保っていた。

その闇の中に魔獣ホラーは存在していた。西洋の悪魔を思わせる姿をバラゴの前に現れる。目の前の闇から、左右の闇、背後からもその気配が………

それらのホラーに対して鎧を召還することなく剣を構え、その爪は弾き、肉体を切り裂く…

複数の敵に取り囲まれても動じることなく手際よく切り刻む……

切り裂かれた悪魔達は黒い瘴気となって消滅する。本来なら此処で喰らうはずだが、戦っている最中に現れた気配を警戒し、喰らわなかったのだ。

「我が名は、バラゴ。千体のホラーを食らいしとき、メシアと一体となりし最強の力を手に入れる」

バラゴは、現れた気配に対して話し掛けるように問う。バラゴの問いに応えるように周りに雷が振り注いだ。

「面白い術だな。西の騎士 バド」

いつの間にか開いていた扉の前に男が静かにバラゴに歩み寄る。

「知っているかバラゴ。かつてお前のように闇に魂を売り渡した者たちが居たが、誰一人として成功しなかったことを………」

歩み寄り男 バドに対してバラゴは

「だからこそ、この私が……いや、私だからこそ成し遂げられるのだ」

バラゴは不敵な笑みを浮かべ、バドに言葉を返した。

バドは何も言わずに、光を纏い”鎧”を召還する。その鎧は、銀に輝く狼の姿をしていた。二振りの剣 風雲剣を構える。

バラゴもまた、応えるように首飾りを外し、それを頭上に翳し円を描き、鎧を召還する。

その鎧は、先に召還したバドのものとは違い、黒く禍々しいものであった。

その宣言と共に、バドと呀の両名が剣を構える。廃工場で二人の騎士による一騎打ちが始まる。

地を駆けバドは、呀に剣撃を浴びせるが、呀はこれを力押しで返す。バドはそれを利用し、一瞬にして背後に回りこんだと同時に、その姿を分身させ、呀の左右に銀の影が横切り、交差するように向かってきた。

呀は攻撃を受け、鎧から火花が散る。だが、すぐに建て直しバドの本体の首を掴み、力任せに壁に叩きつけるが、バドは身体を反転させて壁を蹴り、地に着地する。

「思い出せ、バラゴ。お前が魔戒騎士になったその日の事を……」

呀は、何も応えることなくバドの言葉を嘲笑うように自身の剣に炎 魔道火を付け バドに切りかかった。バドもこれを一振りの剣で防ぎ、もう一振りで切りかかるがそれを腕で防ぎそのまま両者は組み合った。

呀は蹴りをバドの腹に加え、吹き飛ばしそのまま一閃を浴びせた。一閃を浴びたバドは膝が落ちるも踏みとどまる。それを見逃すほど呀は甘くない、そのまま止めを差すために切りかかるが、バドの姿が一瞬にして消えてしまった……

「バラゴ!!!!今なら、引き返せる!!!!内なる光があることを認めろ!!!!!」

廃工場に木霊する消えたバド声に対してバラゴこと呀は、無言のまま何もいう事はなかった………

バラゴに追従するように現れたエルダとほむらもまたこの声を聞いていた。

「バラゴ様。お見事です」

呀は臣下の礼で恭しく頭を垂れるエルダを通り過ぎ、廃工場を後にする。ほむらは、廃工場の闇に視線を向け、あの声の言った意味を考えるのだった……

(そういうことなの………でもね、私はもう引き返せない。あの男の手に落ちる前から、私の運命は……あの子の為に捧げたのだから………)

ソウルジュウムが装着された左手の甲に視線を向けた後、バラゴとエルダの後を追ってその場を後にした……

このまま逃げても構わないが、少なくともあの男の傍から離れないでいようと思った……

傍から離れたら、あの男は大いなる災いを振りまくから、それを予防するためにと自身に言い聞かせ………

戦っているバラゴを見て、あの背中は最初見たときは自分を束縛する忌々しい物だったが、今先ほど見たとき、今までにない程に”親しみ”に似た何かを感じた……

それを認めるのが嫌なのか、ほむらは苦虫を潰したような表情で歩みを進めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原の隣町の外れに一人の男が壁に持たれ掛かっていた。

その男の名が、バド。先ほど、呀と一戦を交えた魔戒騎士である……

「……さすがは黄金騎士 牙狼に師事しただけある……確かに最強の暗黒騎士だ……奴は……」

戦いのダメージを引きずりながら、その場を離れようしたとき、バドは赤毛の少女が佇んでいるんのを見た……

「………あんた、怪我してるのか?」

少女はバドの元に駆け寄った……普段の彼女を知る者から見ればこういうだろう……

あの佐倉杏子が………そんな行動はありえないと…………

 

 

 

 

 

 

 

 


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