呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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気が付けば、この作品も50話目に入りました。

アスナロ市でのほむらとバラゴですが、見滝原の風雲騎士一家と違い、二人はほとんど別行動を取っています。

お互いの目的を知っているモノの互いに干渉せずに、寄り添っているという奇妙な関係です。

フライングして、かずみ☆マギカの本編でのキャラがゲスト扱いで登場。どうなることやら・・・・・・

時系列では、見滝原でさやかがホラー ミューゼフと初交戦した日です。







呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 肆

 アスナロ市 京極神社

 

「あんた・・・・・・龍崎駈音さんかい?まさか有名人がこんな寂れた神社にって・・・・・・」

 

バラゴの表の・・・人間社会においての姿と名である”龍崎駈音”は、この国では知らない人が居ないほどの有名人であろう。書籍の執筆からTV番組のコメンテーター等と幅広く活躍している人物である。

 

だが、その実態が”魔戒騎士”の逸れ者である”暗黒魔戒騎士”であることを知る者は本人と一部の者に限られる。

 

神社の神主である 京極カラスキはまさかの有名人の訪問に驚きの声を上げるのだが・・・直ぐに警戒の色を浮かべた。

 

「・・・・・・どうやら、君は私の”闇”が見えるようだな」

 

「生まれてからずっと見ていたからね・・・そういうモノをね・・・あんたのそれは”人間”が持っていいモノじゃないよ」

 

カラスキの”霊感”がバラゴの抱える”闇”の深さを正確に捉えていた。ハッキリ言って、これほどまでの深く濃い闇を見たこともないし、感じたことがない。

 

人間と言うよりも形を持った”呪い”・・・”火羅 ホラー”に近い・・・・・・

 

「君はどうやら、私の”力”を正確に判断できるようだ・・・そして私に勝てないこともしっかりと弁えている」

 

これまで”龍崎駈音”の姿で”自称 霊能力者”の類は見てきたが、どれもそう思い込んでいるだけの愚かな一般人でしかなかったが、この京極カラスキは”自称”ではなく本物であり、知恵もしっかりとある。

 

「・・・あんたにはどうあがいても勝てない・・・だけど、アンタなら”使徒 火羅 馬愚魏”を倒せると思うよ」

 

使徒ホラー バグギの名前をまさか一介の神主から聞くことになるとはバラゴも予想外であった。

 

「知っているのか?バグギを・・・・・・」

 

「ここはアスナロ市の東北に位置する神社。”鬼門”の位置にあるのはちゃんとした理由があるんよ」

 

カラスキは、アスナロ市における”歴史”を語る……

 

「今でこそ、この国一の経済都市と言われているけど・・・三百年前は”飢饉”や”戦”、”災害”が頻発していてたくさんの人間が亡くなった忌まわしき土地だった・・・立ち入り禁止にしているが、この裏の山にはそういう曰く付きの土地が多く存在しているんだよ・・・・・・それ故にこの地は”新しい呪い”を今も呼び寄せる」

 

そんなことを知っている人間は、このアスナロ市にはもう居ないし、誰も知ろうとしないがねとカラスキは付け加えた。

 

「・・・・・・バグギはこの土地に何度も姿を見せている・・・その度に”魔戒騎士”や魔戒法師”には痛い目に遭わされているからね・・・殉職してるの魔戒騎士じゃなくて、うちの身内がほとんどなのよ」

 

「フフフフフ・・・魔戒騎士ともあろうものがホラーを狩る為に、この土地を護る者を犠牲にするとは随分と良い身分なものだな・・・・・・」

 

内心、バラゴは記憶の中の忌まわしい”あの男”もホラーを狩る為ならば平気で”仲間である魔戒騎士”を平然と捨て駒扱いしていたことを思いだしていた。

 

本来ならば”魔戒騎士”と”魔戒法師”は互いに協力する関係にあるのだが、実際は法師を下働き扱いする魔戒騎士が多く、そのさらに下の立場である”京極神社の身内”の扱いはある意味”奴隷”に近い・・・・・・

 

番犬所も謝罪等をしているらしいが、やられた側からすると形だけのパフォーマンスでしかないのだろう。

 

「おいらも番犬所にはお願いしたんだけど、ことがことだから、いい返事がもらえなくてね・・・下手な騎士に来られてもまた”呪い”を増やしてくれそうだから正直、アンタを見たときに渡りに船と思ったのよ」

 

「ほう・・・この私の力を借りようというのか?いや、利用しようと考えているのか」

 

バラゴの目がホラーを思わせる”黄色い目”でカラスキを睨みつける。カラスキはバラゴに対し

 

「いんやぁ~~、利用なんて考えてないさ・・・おいらはこの地で”呪い”を見張る役目を負っている。それに死なせたくない人も居るし・・・アイツらにはそんな事を知らないで”往生”してほしいんだ」

 

カラスキは自らの顔に手を翳すと同時にその顔が変化していく・・・・・・

 

「その顔は・・・・・・”呪い”か・・・・・」

 

「あぁ・・・・・・おいらは、色々と訳ありでね・・・」

 

黒く澱んだ眼は鮫のそれを思わせ、目の真下には黒に近い紫の隈が濃く縁取られ、口は耳まで大きく裂けていた。その顔は、まさしく”異形”のそれであった・・・・・・

 

「人の世の呪いって奴だよ・・・・・・そんな呪いに塗れた奴でも役目は果たさなくちゃいけない・・・だから、アンタに頼むよ・・・”龍崎駈音”さん・・・・・・いや、”暗黒騎士 呀”さんよ」

 

カラスキは膝をつき、頭を下げたのだった。バラゴはまさかこのような態度を取られるとは思わなかった。

 

内心、驚いていたが表には出さなかった・・・

 

「おいらも”闇の世界”を生きる者の端くれ・・・当然、流れを知らなきゃ生きていけない。ホラー食いの魔戒騎士の噂は聞いているよ・・・・・・だからこそ、アンタにとってもバグギは絶好の獲物じゃないかい」

 

裂けた口を歪ませるようにカラスキは笑う。彼なりの敵意がないことを示しているのだ。

 

「ハハハハハハ、君は本当に賢い神主だ・・・役目を果たす為なら手段を択ばないその心がけ・・・良いだろう、お互いに損はない・・・」

 

”生まれ持った呪い”故に魔戒の術を修めることが許されなかったのだろうか?この青年の過去などバラゴにとってどうでも良かった・・・まさか自分から協力を申し出てくれたことは、彼にとっても都合がよかったのだ。

 

「バグギについて、今分かることは?」

 

「この土地にバグギは何度も現れているからね・・・・・・今回は大々的に派手に動いているよ」

 

カラスキはバラゴを神社の本殿に案内する。内心、バラゴは、この青年は”獲物”の動きをしっかりと追ってくれていることに感謝していた。このまま”エルダ”と同じように”下僕”とするのも悪くはないと思ったが、彼はあいにく”ほむら”の関係者でもあるのだ・・・手を出すのは辞めておいた方がよいだろう・・・

 

「あぁ・・・それとバグギとは別に誰かが動いているようなんだ」

 

思い出したようにカラスキは、ここ最近”アスナロ市”で気になっている事をバラゴに話した・・・・・・

 

「他に何者かが暗躍しているのか」

 

バラゴが気にするところは、以前ホラーの始祖メシアの牙と呼ばれた ”ギャノン”の遺骸を探しに行ったとき、既に持ち去った何者かであったが、未だにその影をバラゴを見ることはなかった・・・・・・

 

いつかは相対することになるかもしれない・・・・・・

 

「誰かが外法の儀式を行っているんだよ。それも性質の悪いことに”死人”を生き返らせようとしているんだ」

 

この世で最も忌むべき行為、それは”死者の魂”を辱めることである・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 肆

 

 

 

 

 

 

 

彼女が目覚めたのは、数日前の事だった・・・・・・

 

目覚めたというよりも最初からそこに居た・・・

 

自分を囲む6人の少女達・・・・・・彼女たちの顔には見覚えがあるというよりも知っている・・・

 

そうだ、自分は彼女達を知っている。

 

「海香、カオル、サキ、みらい、里美、ニコ・・・どうしたの?私・・・どうしてここに・・・・・・」

 

「「「「「「ミチル!!!!」」」」」」

 

6人の少女達は潤んだ眼で自分の名を呼び抱き着いてきた。

 

何故、みんなは泣いているんだろう?私は、いつものように魔法少女として活動していて・・・・・・

 

「あれ?昨日、わたしどうやって帰って来たんだっけ・・・」

 

「昨日の魔女の攻撃で今日まで気を失っていたんだ・・・大丈夫、またいつもの通りにすればいいよ」

 

「みんながここまで連れてきてくれたんだ・・・・ありがとう・・・」

 

前に出ようとしたら足が縺れてしまった……上手く歩けないというよりも、初めて歩いたような気がする。

 

笑顔で礼を言ったが、どうも表情がぎこちない・・・上手く笑えていないのだろうか?

 

6人が戸惑うように自分を見ている。彼女達は縋るように・・・それでいて・・・確かめるような視線で・・・

 

「ねえ・・・ミチル・・・もっと堂々としてよ・・・私達のまとめ役なんだからさ・・・・・・」

 

「この間の小説の感想を聞いても良い?聞かせてくれるよね?」

 

「信じてくれてるんだよね?ミチルが、私達を信じたように・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ふむ・・・・・・何か困った事でも?」

 

「どうして・・・そんな顔をするの?」

 

分からないのだ。6人の事は知っているはずなのに分からない・・・そんな矛盾に対して苦痛の表情を浮かべた瞬間・・・・・・浅海サキが

 

「お前は私達を裏切った!!!!お前はミチルじゃない!!!!!」

 

望んだ答えを答えることができない”中途半端な存在”に対し、6人は一斉に魔法少女へ変身し、拘束しようと向かってきた。

 

「裏切るも何も!!!私は、お前達のミチルじゃない!!!!だったら、何なんだ!!!!」

 

ミチル?より黒い瘴気が漂う。人と言うよりも”獣”に近い姿になり、6人を”怒り”の感情の赴くままに向かっていく。

 

傷つきながらもミチル?は6人を薙ぎ払い、乱れる感情のまま屋敷の外へと飛び出していった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 数日前の出来事が不意に脳裏を過る。6人の知っているはずの誰よりも親しみを感じていたはずの少女達が何故か怒りすら感じるほど嫌悪している・・・・・・

 

そんな矛盾に知識こそが十数年生きてきた経験があるのに、実感すら湧かない感覚に違和感を覚える。

 

「・・・・・・どうしたの?そんな顔をして・・・これで少しは落ち着きなさい」

 

ふと顔を向けると自分を6人の少女達”プレイアデス聖団”より助けてくれた暁美ほむらがココアを自分に差し出していたのだ。

 

「あ、ありがとう・・・」

 

自信が無さげに返事を返す彼女に対し、ほむらはこの少女は自分に”柄にでもない”ことをさせたがると思い

 

「どういたしまして・・・そんな風に自分を卑下してはだめよ・・・もっと自分をしっかりもって・・・」

 

内心、自分こそもっとしっかりしないといけないのにこのような話をするのはあまりにも滑稽だった。

 

”ほむらちゃんって、名前凄くかっこいいよね。なんだか燃え上がれーって感じで”

 

自信がなかった卑屈な自分にエールを送ってくれた”鹿目さん”の言葉が過った・・・・・・

 

「でも・・・わたしには・・・・・・そんなモノは・・・何もないんです・・・アルのは知らない誰かの借り物でしかないんです」

 

あまりにも辛い思いをしたのか表情を伏せてしまった。逆効果だったかと内心焦ったが、直ぐに”姉”の姿が浮かんだのだ。

 

ここ数年、思い出すこともなかった、いや記憶の何処かに鍵をかけてみないようにしていた”姉”の言葉が

 

”ほむら!!!そんな辛気臭い顔しないの!!!ほら、笑う!!!”

 

強引に頬を摘み、無理やり笑い顔を作られたのだ、気が付けば、ほむらはそのままミチルの両方の頬を摘みむりやり笑い顔を作らせていた。

 

「にゃ・・・にゃにを・・・しゅ、しゅるんでしゅか?」

 

「辛気臭い顔を見ているとこっちも辛気臭くなるのよ・・・笑いなさい」

 

ミチル?からするとほむらの言葉は無茶苦茶であった。しかも命令口調である・・・・・・

 

だが、悪い気はしなかった。とりあえずは笑っておかないと頬は掴まれたままだ。

 

「は、はひ・・・あはははははは」

 

乾いた無理やり声を出して笑うのだが・・・・・・

 

「まぁ・・・・・・それで勘弁してあげるわ」

 

改めてココアをほむらは差し出した。

 

「勘弁って・・・・・・ほむらさんって・・・無茶苦茶じゃないですか!!」

 

「そうね・・・私の姉がそういう人だったからよ。ついでに兄はとんでもない”馬鹿”だけど・・・」

 

口調こそは酷いが、表情は穏やかなモノであった。まさか”姉 アスカ”のように振舞うことになろうとは、今までこんなことはどの”時間軸”ではなかったのに・・・・・・

 

「じゃあ、ほむらさんは・・・お姉さんなんですねって、痛っ!!」

 

「貴方の方が見た目年上でしょう・・・・・・まったく世話が焼けるわ」

 

額を押さえているミチル?ほむらは彼女に理不尽にもデコピンをしていた。

 

見た目の割には幼いのか、ココアを口にすると小さな子供のように喜んでいた・・・・・・・

 

その様子にかつて”兄”に淹れてもらった”ココア”を一緒になって飲んでいた”幼い自分”と”姉”の姿が浮かんだ。

 

 

 

 

 

”ジンお兄ちゃんのココアって美味しいですね。アスカお姉ちゃん”

 

”まぁ、馬鹿ジンにも一つぐらい取り柄はあったってことね”

 

”まったくもう少し味わって飲めよ。おまえら”

 

 

 

 

 

 

 

ほむらはミチル?とその後も交流を続けていた。時刻は夜の10時を回ったぐらいで彼女は急に眠気が襲った為、ベッドで静かな寝息を立てていた。その様子に年齢以上の幼さを改めて感じていた・・・・・・

 

本来ならバラゴが来るはずだったのだが・・・

 

彼はここ”アスナロ市”で協力者を運よく得ることができた為、独自にアスナロ市で動くことを”エルダ”から知らされた。

 

「まったく・・・自分勝手なのは相変わらずね・・・・・・」

 

そういう自分も”見滝原”から離れている為か、彼の事をどうこう言える立場ではないのは自覚している。

 

その協力者が兄 ジンの友人であることは想像もしないだろう・・・・・・

 

「バラゴ様にもお考えがある・・・お前こそ私が与えた”課題”はどうだ」

 

「言われるまでもないわよ・・・・・・”魔戒札”は凡そ理解したわ。ただ、まだ見えていないモノも多いけど」

 

ほむらは自身の周りにタロットカードを思わせる78枚の札を展開させる。その中より彼女はある一枚を取り出したのだ・・・・・・

 

「・・・・・・正義か・・・・・・」

 

”正義 JUSTICE” 自分にはあまりにも過ぎた言葉である。何故、こんなモノが・・・・・・

 

「ほむら・・・これは感情を制しよという意味だ。お前が連れ込んだあの女の件は、少し厄介になるかもしれん」

 

ほむらの心情を察しているのかエルダは、庇うように助言する。

 

「エルダ、それはどういうこと?あの子は名前を言うだけで戸惑っているわ・・・まるで・・・・・・」

 

自分ではないのにそう呼ばれているかのように・・・まるで似ている誰かの姿を重ねているような・・・・・・

 

「魔法少女という者はお前を含めて、命を糧に願いを叶える。だが、ここに居る魔法少女は、あまりにもそれを逸脱している・・・お前自身も分かっているだろう・・・戻ってこない者を呼び起こそうとしているのだ」

 

「まさか・・・エルダ・・・ここの魔法少女達は・・・・・・」

 

ほむらは、誰もが特に自身も身を持って味わった忌まわしい”現実”・・・・・・

 

近くのベットで寝ている”ミチル?”にほむらは視線を向けた・・・・・・

 

「まさか・・・この子は・・・死者だというの?そんなことありえない・・・だって・・・・・・」

 

ほむら自身が味わった”死”による大切な人達との別離・・・・・・

 

だがミチル?は生きているのだ。”死”のような冷たさを感じないのだから・・・・・・

 

「そうだ・・・身の程を弁えぬ奴らは禁忌に手を出したのだ」

 

エルダのいう”禁忌”とはそういうことなのだろう・・・

 

キュウベえですらそんなものを願おうならば、別の願いにすり替えようとするほどなのだから・・・・・・

 

「・・・・・・まさかこんな事になるとわね・・・正直に言うとあの子を助けるべきではなかったのかもしれない。だけど・・・・・・あの子をアイツらに渡すことを嫌う私が居るわ」

 

ほむらは、この地であの子を”アスナロ市の魔法少女達”から護ろうと決めた。それは自身の正義感等でもなんでもない。ただ、気に入らないだけなのだ・・・・・・

 

あのミチル?の甘え方は、かつて姉 アスカを慕っていた自分によく似ていたのだから・・・・・・

 

「・・・・・・それで構わない。今夜は少しばかり騒がしくなる・・・・・・」

 

エルダもまたほむらが展開した”魔戒札”の中にある一枚に視線を向けていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 

 

ほむらとエルダらが拠点としているホテル周辺の空には、夜間見かけることがない鳩が飛んでいた。

 

鳩はやがて一人の少女の元へと降りる。

 

宇佐木里美・・・プレイアデス聖団所属の魔法少女である。

 

魔法少女としての姿は”メルヘン”を意識したのか動物を擬人化したかのうなものであり、彼女の能力は…

 

「そう・・・ここにその魔法少女が居るのね」

 

鳩より”くるっぽー”と気の抜ける返事をもらい、そのまま寝床へと帰した。

 

テレパシーを使い、アスナロ市に展開している他のメンバーに伝える。

 

<みんな・・・12人目とサキちゃん達を襲った魔法少女の居場所が分かったわ・・・場所は・・・>

 

5人の魔法少女達はほむらとエルダが滞在するホテルへと向かっていった・・・・・・

 

「ごめんなさい。12人目のミチルちゃん。ミチルを取り戻すためには、貴女は居てはいけないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 第三ドーム イベント会場

 

明良 二樹は、夜間警備のアルバイトの為、近日中に開催予定のイベント会場に来ていた。

 

いつもならば、警備主任に挨拶をし、決まったコースを巡回する予定だったのだが・・・・・・

 

「キャハハハハ!!夜のお勤め♪ご苦労さま♪」

 

警備の制服を着た 真須美 巴が警備主任席に座っていたのだ。

 

視線を部屋の端に向けるとそこには、ミイラ化した警備主任だったモノがあった・・・・・・

 

(あちゃ~~、警備主任、やられちゃったか。まぁ、あの人色狂いだったからこうなっちゃたんだね)

 

仮にもバイト先の上司であり、顔見知りであるのに明良 二樹は特にこれと言った感情は湧かなかった。

 

ただ昨日まで生きていた人間が突然死んだだけのことだから・・・彼にとって死ぬことはそこまで珍しいものではなかった。

 

事実、ずっと楽しくやっていけるはずの”兄”ですら、数年前に亡くなったのだから・・・・・・

 

「主任は巴ちゃんで良いのかな?バイト代はちゃんと出せる?こう見えても結構ギリギリの生活だからね」

 

異常な状況にも関わらず、和やかに話しかける彼もまた”異常”であった・・・・・・

 

「ちゃんと出すわ♪前金で思い切って1000万円でどうだぁ~~ってね♪」

 

とんとテーブルに1000万円の札束を明良 二樹に出したのだった。明良 二樹もこれには驚いていた。

 

あの”奪う”ことのみを信条としている真須美 巴がこのようなことをするとは・・・・・・

 

「バグギに頼もうと思ったんだけど、アイツ、忙しいからって私をないがしろにするのよ・・・復讐にも人手がひつようなの」

 

「復讐?なにをするつもりだい・・・」

 

真須美 巴が笑っているが目が笑っていないことに明良 二樹は気づいていた・・・・・・

 

明良 二樹は、口調こそは真面目だが、目は興味津々と言わんばかりに輝いていた。

 

「今夜、プレイアデス聖団が総出で昼間の魔法少女を襲撃しようと動き出しているのよ。そこを私達も出張るわけ」

 

楽しいイベントを盛り上げようと陽気に笑っているが、心の内は怒り狂っており、自身に屈辱を与えた”プレイアデス聖団”を徹底的に攻撃をするつもりのようだ・・・・・・

 

「私達って言ったよね。さすがに僕も”魔法少女”相手はきついよ。危険手当込みの前払いのようだけど」

 

「そこは・・・人手は呼んであるわ。直ぐに採用したわ」

 

真須美 巴は既に呼んでいた三人の魔法少女を明良 二樹へ紹介する。

 

「プレイアデスに怨みを持っている子達よ・・・私が声を掛けたら喜んで協力してくれたわよ」

 

甲高く笑う真須美 巴に対し明良 二樹も笑う。

 

「へぇ~~~、聖団の癖に怨みを買っているなんて興味深いね・・・」

 

「アンタ達・・・いい加減、アタシ抜きで話をするなって・・・」

 

「ごめんなさいね。ユウリ・・・二樹さんとは話が合って、ついつい弾んでしまうのよ」

 

金髪のツインテールの髪型の衣装がワインレッドの帽子とスカート、露出の高いボディースーツをきた魔法少女が不満そうに口を挟んだ。

 

「貴女だけじゃなくて”わたし”たちも居るんですけど・・・・・・」

 

「あやせさん達も待たせてしまったわね。貴女の欲しがっているジェムはそこでたくさん手に入るわよ」

 

真須美 巴の発言にユウリは

 

「待て、プレイアデスはアタシの獲物だ。ジェムは絶対に壊してやるんだ」

 

「えぇ~、勿体ないよ。命は粗末にしちゃいけないんだよ」

 

白いドレスを着た魔法少女 双樹 あやせが反論する。互いの主張を通したいのか、口論になりそうだったが

 

「まぁまあ。私達はプレイアデスに復讐したいという共通の目的で此処に来ているの。つまりは、どのようにしたいかは、私は特に指示したり、命令なんてするつもりはないわ」

 

真須美 巴の発言にユウリは

 

「どういうことだ?アンタ・・・アタシ達を利用したいんじゃないのか?えぇ、魔法少女食いの魔法少女さん」

 

「ねえ、ソウルジェムってどんな味がするの?」

 

「アンタは黙ってな!!ややこしくなるから!!!」

 

自分の好奇心のままに発言する双樹 あやせに思わず声を上げてしまったが、真須美 巴は心底面白そうに笑った

 

「キャハハハハハハハッ!!!!」

 

「何がおかしい!!!」

 

「まあ落ち着きなよ、ユウリちゃん。巴ちゃんのこういう態度はいつもの事だからね」

 

一般人らしいこの青年も妙に腹立たしいのだが、魔法少女のような力はないので特に無視しても構わなかった。

 

「だって、そうでしょ。魔法少女ってのは自分の願いをかなえるために奇跡を願っているのよ・・・それを態々、遠慮するなんておかしいじゃない・・・・・・」

 

凄みのある笑みを浮かべ、真須美 巴はさらに言葉を掛ける・・・・・・

 

「これはね、争奪戦よ・・・相手は6人いるわ・・・それをどれだけ多く狩れるかの競争と言う訳。貴女達の望みも叶うし、私の望みも叶うの・・・これは、ズルもなにもない公平な提案なのよ」

 

ユウリは、真須美 巴の言葉に一理あると考えた。双樹 あやせはプレイアデスに怨みを持っているか微妙なところであるが、真須美 巴そのものを信用しているわけではないが、自分が本気で戦えば問題はないだろうと考えた。

 

「あれぇ?わたしたち以外にもう一人いるって言わなかった?」

 

「あぁ~あの子ね。顔合わせは現地でってことで先に行ったわよ」

 

真須美 巴の発言に対して、ユウリは

 

「なんだとっ!?!出し抜こうだなんて許せない!!アタシは行くよ!!」

 

「じゃあ、わたしも~~」

 

飛び出していったユウリに続くように双樹 あやせも続いていった。

 

二人が居なくなった後、真須美 巴は満足そうに”ニンマリ”と笑った。

 

「巴ちゃんも悪い子だね~~実際のところ、美味しいところはみんな、巴ちゃんが持っていくつもりなんだよね」

 

明良 二樹は真須美 巴の意図が分かっていたのだ。

 

「魔法少女は我儘で欲張りなのよ・・・二樹・・・貴方にはこれを渡しておくわ」

 

真須美 巴は明良 二樹に”箱に詰められた大量のグリーフシード”を手渡した。

 

「魔女の卵を随分と奮発したんだね。君の事だから、これを使って場を盛り上げろっていうことだね」

 

楽しい玩具が手に入ったかのように明良 二樹は笑った。

 

「玩具は組み合わせて遊んだほうが面白いわよ・・・」

 

真須美 巴はさらに明良 二樹へもう一つの玩具を提供する。

 

「最新式よ・・・気に入る?」

 

「当然だよ。ロボットは男の子の浪漫だからね」

 

明良 二樹の前には、5体の金属でできた骸骨を模した機械人形が赤い目を光らせて整列していたのだ。

 

「さて・・・私達も行きましょうか。なんなら、特別手当もつけるわよ」

 

「バイトの仕事はちゃんとやるさ・・・雇い主の意向にはちゃんと添うよ」

 

 

 

 

 

 

今宵、アスナロ市において盛大な”宴”が始まる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

続 呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 伍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

バラゴ、まさかのアスナロ市で現地協力者ゲット。

協力者は魔戒騎士関連アンチ気味な神主(笑)

バグギは、頻繁に”アスナロ市”に出ています。

ほむらは、複数の魔法少女が一斉に揃うことになるとは思いもよらないでしょう。

真須美 巴は明良 二樹と一緒に三人の魔法少女を利用して場を盛り上げちゃおうぜと燥いでします。ユウリと双樹あやせらがゲスト出演。さらにもう一人の魔法少女も現地入り・・・・・・

明良 二樹は、現地の会場でのスタッフとして場を盛り上げる予定です(笑)

チョイ役と言っておきながら、さっそく裏方として活躍するありさま・・・・・・

明良 二樹と真須美 巴はお互いに”同類”としてみているのでかなり仲が良いのですが、男女の仲ではありません。同好の士です・・・・・・

元ネタの何処かで見たことのある少年は、似た他人の双子の弟とその同好の士をみてなんと思うのでしょうか?まあ、彼の場合、自分以外は玩具ですからね・・・・・・

真須美 巴とは絶対に敵対しそう(笑)

万が一、話があったとしても二人で盛大に楽しんだ後、お互いに滅ぼし合うことを楽しみながら殺し合う関係がお似合い・・・・・・嫌んな関係だこれ・・・・・・

そこは明良 二樹に頑張ってほしいですが、火に油を注ぐことしかしなさそう(汗)

次回は、ほぼ戦闘パート・・・アスナロ市編は予定ではあと6話ほどで終わらせたいと考えています。



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