呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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魔法少女喰い 真須美 巴がほぼ出張っています。

魔法少女でありながら”魔女”と同様に”人”を襲い、その命を喰らうことを好む。

さらには、同族であるはずの”魔法少女”にも手を出し、その”ソウルジェム”が大好物である。

本人の性格は、残忍極まりなく冷酷非情。利用できるものは徹底的に利用しつくす。

こうしてみますと、真須美 巴って”何か”に似ていますよね・・・・・・






呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 拾壱

アスナロ市 京極神社 

 

バラゴはバグギが潜伏する”アスナロ市 第三ドーム”に向けて歩き出した。

 

彼の胸中に渦巻くのは、”自身の大切な存在”をホラーに奪われた自身の不甲斐なさと使徒ホラー バグギの行動に対しての怒りの感情が渦巻いていた。

 

必ずこの手で”バグギ”を滅ぼすことを誓いながら・・・・・・

 

 

 

 

 

バラゴのあまりの怒りの様子に浅海サキは、彼が”人間”ではない何かというのはソウルジェムで直に感じる。

 

「な、なんなんだ・・・あいつはあの雷獣と同じではないか・・・・・・」

 

「ハハ・・・アッチよりまだ話は通じる方だよ・・・バラゴさんはよ・・・」

 

主に敬称をつけずに”さん”付けする京極カラスキにエルダは視線を鋭くするが、彼は自分と違い下僕ではなく、このアスナロ市における協力者ということを思い出し、視線を緩めた・・・

 

「エルダさんよ・・・バグギの方は分かるんだが、もう一人の方は何なんだ?あの気配は”ホラー”のそれじゃないぞ。魔法少女なのか魔女なのか良くわからん」

 

「さぁな・・・ほむらは”魔戒札”で奇怪なソウルジェムを見たという・・・そのうちの一つであろう」

 

ミチルのグリーフシードとソウルジェムが掛け合わせたものではなく、一見すると一般的な”ソウルジェム”なのだが、蕾のように開き、その中心に異様な輝きを放つコアを持っている今までにないタイプのモノだった・・・

 

「それは、魔法少女喰いだ・・・」

 

浅海サキが二人の疑問に応えた。

 

御崎海香に意識を憑依させ操っていた”バグギ”とは別に牧カオルの身体を乗っ取り操っていたのが”魔法少女喰い 真須美 巴”であることを・・・・・・

 

「魔法少女喰い?なんだ・・・そんなのが居るのか?」

 

カラスキは、あまりに突拍子のない言葉に思わず声を上げてしまった。

 

「あぁ・・・私達魔法少女の間でも噂になっていて・・・魔法少女でありながら魔女と同じように”人間”を襲い、その”命”を喰らう存在が居ると・・・そいつは”魔法少女のソウルジェム”が大好物であると・・・」

 

浅海サキは実際に真須美 巴の食事を見たことがないが、御崎海香と牧カオルはそれを見ており、余りのおぞましさに暫く食事さえ喉を通らなかったという・・・・・・

 

「・・・ここ最近、奇妙な変死体が彼方此方に出ていたのは・・・そいつの仕業だったんかい」

 

カラスキもここ最近、バグギが現れる前に様々な年代の”人間”が干からびた木乃伊になって発見される現象を不審に思っており、犯人はホラーかと思っていたのだが、ホラーの気配はなかった。

 

まさか”魔法少女喰い”なる存在の仕業であることに、彼は・・・・・

 

「正直言わせてもらうと・・・そいつはもう魔法少女じゃなくて、魔女でもないか・・・」

 

「はい・・・真須美 巴はもう”人”ではありません・・・”化け物”以外のなにものでもありません」

 

浅海サキもまさか仲間の牧カオルの身体を操り、自身の魔法を使わせたことに真須美 巴の力は魔法少女の範疇をすでに超えていることを察したのだった・・・

 

「・・・実物を見たわけじゃないが、真須美 巴という魔法少女喰いはもう人間じゃないんだろうな」

 

カラスキは、彼なりに真須美 巴という存在を推察する。

 

「はっきりいえば、あまりにも業を重ねすぎて、色んな怨みを受けて、少しずつ変わっていったんだろうな」

 

”魔女”にはならず、”魔法少女”の形だけをした”怪物”へと・・・・・・

 

そんな”怪物”に魅入られるほど”暗い感情”を持っていたからこそ、牧カオルは乗っ取られたのだろう・・・

 

自分達の行為が”バグギ”や”魔法少女喰い”を呼び寄せてしまったことに浅海サキは、改めて”プレイアデス聖団”が行った”業の深さ”に後悔の念を抱いた・・・

 

「奴が雷を操るのならば・・・私にも・・・」

 

少しでもこの”罪”を清算するためにも彼女は、バグギと戦うべきだと考えるが・・・

 

「そいつは難しいな。同じ”雷”でもバグギとサキちゃんのだと桁が違いすぎる。核の炎とマッチの火ぐらいの差がある」

 

「・・・おいらは、一応はアスナロ市を見張る役割を持っててね・・・無駄死は見過ごせないよ」

 

浅海サキは、俯いた・・・自身のあまりの無力さに・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

暁美ほむらが最初に感じたのは冷たいフロアの感触だった。

 

「・・・・・・ここは・・・・・・」

 

何処かのイベント会場なのか、様々な”機械”が展示されており、イベントに協力している企業、団体のロゴが会場全体に存在していた。

 

会場は一部の照明のみが照らされおり、展示物の影が様々な角度に存在しており、開場されれば華やかなイベントとして歓迎される会場もこれでは”不気味”以外の何物でもなかった。

 

特に人型の受け応えする”ロボット”は埃除けなのか白い布が頭から掛けられている姿にほむらは嫌な視線を向けた。

 

「こんなもの・・・掛けたら掛けたで気味が悪いわ・・・」

 

せめてもの抵抗で布を取り去るが、中途半端に笑顔の素顔には影が差している。

 

「・・・どっちでも変わらないのね・・・」

 

ほむらは、布をその辺に捨てて会場を歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

会場を歩いているとほむらは、会場に”奇妙な残骸”が足元に落ちていることに気が付いた。

 

「これは・・・ソウルジェム」

 

手に取ってみるとそれは、自分を含めて魔法少女に馴染み深い”ソウルジェム”であった・・・

 

割れているというよりも”なにか”に噛み砕かれて、吐き出されたかのような壊れ方をしていた・・・

 

「ホラー?・・・でもこんな風に人間を食べるのかしら?」

 

人を喰うホラーがどのようにして人間を喰うか方法は様々だが、魔法少女の”ソウルジェム”はどのようにして食べるというのだろうか?

 

ホラーの中には人から魂を抜き出す方法を持つ者もいるようだが・・・

 

魔法少女の場合は、どうなのだろうか?

 

可能性としては・・・”ホラー”とは別の”何か”が魔法少女のソウルジェムを食べていた・・・である。

 

「魔女でもこんなことをしない・・・じゃあ、一体・・・」

 

ほむらは、あとで京極神社でこのソウルジェムを丁重に葬ろうと考え、楯にしまう。

 

薄気味の悪さを感じつつほむらは、改めて足元を注視し目を見開いた・・・

 

足元に・・・会場全体に散らばっている奇妙な残骸は、全て”ソウルジェム”のそれであったからだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむらは、弓を手に一層、警戒を強めて会場を捜索していた。

 

”蝶の使い魔”を放ち、辺りを探索もさせていたが、その”使い魔”が何かを見つけたと知らせてきたのだ。

 

そこへ行くとほむらは、俯せに倒れている 牧カオルと御崎海香の二人を見つけた。

 

「この二人は・・・」

 

一瞬、声を掛けるべきか悩んだが、この状況では危険を承知で前に進まなくてはならない為、ほむらは二人を起こす。

 

最初に起こした御崎海香は先ほど見た表情と違い、青白いものではなかったが、牧カオルは、右目が潰れており、先ほどの飛び出した”ソウルジェム”の影響もあったようだった・・・・

 

牧 カオルは先ほどやられたこともあり少し距離を置いてから倒れている御崎海香を起こした。

 

「こ、ここは・・・アスナロ市第三ドーム イベント会場」

 

御崎海香は、今現在自分が居る場所は近日中にイベントが開催される会場であることを察した。

 

自分もオープニングセレモニーに出席の予定だったのだから・・・

 

「どうやら、バグギの意識は今は無いようね」

 

ふと横を見ると京極神社で自分達を保護してくれた”暁美ほむら”が立っていたのだ。

 

「あ、あなた?こ、ここは一体・・・どうして私はこんなところに?」

 

「覚えていないのね・・・貴女は・・・」

 

ほむらは”エルダ”より譲り受けた”魔導火”を点火する。

 

魔導の修行を受けた者にしか扱うことが出来ず、常人ならば一瞬で焼き尽くされる代物であったが、

 

ほむらは、これを”エルダ”の指導により扱うことが可能となり、彼女自身もホラー対策で使用するようになっていた。

 

御崎海香には、ホラー特有の”魔界文字”は浮かび上がらない為、どうやらバグギの意識は彼女より離れているようだった・・・・・・

 

一安心し、ほむらは牧 カオルに近づこうと足を進めた時だった・・・・

 

突如として、会場内に”華やかなBGM”が鳴り響き始めたのだ。

 

会場の至る所からバルーンが飛び出し、さらには照明が華やかな色合いで点滅する。

 

 

 

 

 

 

「はぁ~~い♪真須美 巴でぇ~~す♪」

 

 

 

 

 

真須美 巴がバックスクリーンに映し出したのは”裏表のない目 メビウスの目”だった。

 

ほむらは、過去に訪れたある”時間軸”で”裏表のない目”の紋章を見た。

 

「・・・貴女・・・蓬莱暁美の関係者だったのね」

 

「あら、貴女、蓬莱さんを知っていたの?あなたのような子、見かけたことはないんだけどね~」

 

ほむらの意外な発言に真須美 巴は上機嫌に笑った。

 

「ただ名前を知っているだけよ・・・あまり良い印象は持っていないわ・・・・・・」

 

蓬莱暁美は”インキュベーター”と手を結んでいたが、真須美 巴はさらに最悪で”使徒ホラー”と手を結んでいる。

 

悪辣さならば、話に聞いていた”蓬莱暁美”よりも彼女の方が上であろう・・・

 

「キャハハハハハハ!!!!イベントは二日後なんだけど、今夜は一足も二足も速い前夜祭を始めるわよ!!!」

 

異様なまでに高いテンションにほむらは、内心”ゲンナリ”していたが・・・

 

横に居る御崎海香の真須美 巴を見る目は怯えを含んでいた。

 

「魔法少女喰い・・・」

 

「魔法少女喰い?どういう意味・・・」

 

御崎海香の言葉にほむらは、怪訝な表情を浮かべるのだが、その意味を彼女は直ぐに理解した。

 

「キャハハハハハハ!!!!!早速ですが、昨日作りました”動画”を公開しまぁ~す!!!!」

 

耳障りな笑い声だとほむらは、今更ながら不快感を表した。

 

スクリーンに映し出されたのは、数人の少女達だった・・・・・・

 

「あの子達は!?!」

 

いつの間にか意識を取り戻していた牧 カオルは悲鳴にも近い声を上げていた。

 

「アン!!レン!!!ミドリ!!桜子!!!一葉!!!!」

 

スクリーンに映っていたのは、かつてのサッカーの”チームメイト”達だった。

 

少女達、一人一人が拘束され全員が恐怖で引き攣った表情をしていた。

 

<怖いよ・・・帰してよ>

 

<アンタ・・・何なのよ!!!アタシ達が何をしたっていうのよ!!>

 

撮影者に向かってせめてもの抵抗として声を上げる少女達であったが・・・・

 

<キャハハハハハハ!!!別に・・・貴女達は何もしてないわよ、私がこれから、貴女達に何かするのよ>

 

「やめろ!!!やめろ、やめろ!!!!やったら、許さない!!!絶対に!!!!」

 

牧カオルは、真須美 巴の元へ勢いよく駆け出し、彼女に向かって攻撃を行うのだが・・・

 

「・・・・・・じゃあ、許されないわね・・・これ、今朝撮った動画だから」

 

必死の形相の牧 カオルと違い、真須美 巴はただ端的に言葉を返した。

 

スクリーンでは・・・

 

<きゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!>

 

首元にあるソウルジェムが蕾が花を咲かすように割れ、そこから一人の少女から”生気”を吸いとっている真須美 巴の姿があった・・・

 

”生気”を吸い取られた”少女”は木乃伊となり、そのまま倒れ込んでしまった。表情は恐怖で歪んでいた。

 

他の少女達も目の前の光景に青ざめ、必死になって逃げようとするが逃れられるはずもなく・・・

 

<・・・次はどの娘にしようかしら・・・>

 

スクリーンに映る真須美 巴はこれ以上にないほど”邪悪”に笑っていた・・・・・・

 

「う、うわあああああああああああああッ!!!!!!!」

 

牧 カオルは怒りに我を忘れて真須美 巴に殴りかかった。

 

「キャハハハハハ!!!良いわよ、いくらでも相手をしてあげるわ!!!」

 

両腕をブレードに変え、牧 カオルの蹴りを回避し、ブレードを振り下ろすことで切断した。

 

「ああああッ!?」

 

右足を切断されても牧 カオルは攻撃を続けるが、真須美 巴は追撃にさらに右腕を斬りそのまま蹴りを加えてステージから彼女を突き落とした。

 

「キャハハハハハハ!!!良いわねえ、仇を討ちたくても、討てない無力さを怨み死んでいく”人間”の惨めさはこれ以上にないぐらい気分が良いわよ!!!快感だわ!!!キャハハハハハハ!!!!!」

 

耳障りな笑い声とあまりに”性悪”・・・もはやそれすら生ぬるい”害悪”でしかない真須美 巴にほむらは、これ以上にない不快感と怒りを覚えていた。

 

魔法少女喰いの意味は、おそらくそのままの意味である。あの”化け物”は、人間は当然のことながら、”魔法少女”もその餌食にしていた。会場全体に散らばっていたソウルジェムの欠片は全て・・・・・・

 

「これ以上は動かないでね。二人とも♪」

 

御崎海香が牧 カオルに駆け寄る。

 

直ぐに何かが身体中を駆け巡る不快感を感じるが自身の身体が動かなくなってしまった。

 

「こ、これは・・・・・・」

 

御崎海香は自身の手がまるで誰かの意思に支配されている不快感とこれから訪れる”絶望”に表情を歪ませた。

 

(・・・こいつの能力は一体何なの?悪の道を行く魔法少女は居るけど、こいつはもう魔法少女じゃない。もっと別の”何か”よ)

 

ほむらは、目の前にいる脅威 真須美 巴に対し、視線を鋭くした。

 

スクリーンでは、数人の少女達は皆、真須美 巴によって”喰われていた”・・・・・・

 

”恐怖”と”絶望”に満ちた悲鳴が会場全体に響く・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 第三ドーム 入口

 

都市全体が異様な天候と雷鳴が木霊する中、バラゴは誰も居ない”アスナロ市 第三ドーム”へと進む。

 

二日後に開催される”イベント”を知らせるポスターや電子掲示板に様々な情報が表示されるが、彼にはどうでも良いことだった。

 

『ハハハハハハハ。ようこそ、我が根城へ』

 

ドーム全体に呼び掛ける為のスピーカーよりバグギの声が響く。どうでも良いのか、バラゴは歩みを止めることはなかった。

 

イベント会場の至る所に目深に帽子を被ったトレンチコートの大男達が集まっていたのだった。

 

バグギが作り出した”機械人形”達が・・・・・・

 

「いい加減その下らないガラクタには飽き飽きしているんだ。余計な遊びをするつもりはない」

 

普段の彼らしからぬ口調でバラゴは、首元の”魔導具”を掲げ、呀の鎧を召喚する。

 

機械人形らは、その腕に昨夜のバグギ同様に放電を発生させていた。それも全員がである・・・

 

暗黒騎士 呀は無数に存在する”機械人形”の相手をするつもりなどなく、一刻も早くバグギの元へ行くことを考えた・・・・・・

 

一体一体が昨夜のバグギに近い”力”を有しているのだろう・・・・・・

 

ほむらに刻んでいる”束縛の刻印”を感じられないのは、彼女がバグギの領域内に居る為、安否が確認できない。

 

そこで彼は、久しく呼び出していなかった”魔導馬 雷剛”を召喚する。

 

かつてまだ、”魔戒騎士”であった頃に100体のホラーを狩り、その試練を乗り越えた時に得てから数える程しか召喚していなかったが、この”機械人形”を蹂躙し、バグギの元へ突破する為には”雷剛”を駆った方が効率が良い。

 

そう判断したバラゴは、この”魔導馬”を召喚したのだ。

 

漆黒の巨体に孔雀の羽を思わせる尾羽、頭部には五本の角を持ち、巨体を誇るかのように蹄音を鳴らす。

 

暗黒騎士に堕ちてから、今の姿へと変わってしまった・・・・・・

 

雷撃を放ちながら、急接近してくる”機械人形”らの集団目がけて、雷剛はそれらの攻撃を諸ともせずに駆け、去り際にそれらの四肢を四散させた。

 

さらに破壊された残骸を踏みつける。

 

搭乗者の呀に、攻撃の影響はなく雷剛は意思にそうように駆け出した。

 

その行き先は、”バグギ”本体の居るこの領域の中心地であった・・・・・・

 

 

 

 

 

第三ドーム 施設 イベント会場

 

「あら?バグギが暗黒騎士と早速、始めたみたいね」

 

会場全体に鳴り響く”警報”に真須美 巴はどこ吹く風と言わんばかりに涼しげであった。

 

「まぁ、いいわ・・・牧 カオルは十分絶望させたし・・・もう少しだけ熟すのを待ちましょうか」

 

ほむらは、哀れにも真須美 巴にいい様に扱われ、意気消沈している彼女に同情した。

 

「この二人はわたしが”食べる”として・・・暗黒騎士はどうせバグギには敵わないのだから、摘まみ食いぐらいは許してもらえるかしら?キャハハハハハハ!!!!!」

 

笑いながら真須美 巴はほむらに迫ってきた。

 

両手をやはりブレードにして接近して来たため、同じように接近戦用の”鉤爪”を袖から展開させ、これと切り結ぶのだが・・・・・・

 

「キャハハハハ!!!以前と同じとは思わない方がよろしくてよ♪」

 

真須美 巴がほむらの目の前で影が起き上がり”もう一人”の真須美 巴となって飛び出してきたのだ。

 

「っ!?!」

 

同じようにブレードで切り付けてきたが、ほむらはブレードを往なして二人の”真須美 巴”から距離を取る。

 

「「キャハハハハハハ!!!やるじゃないの。普通なら大体が死んでるのに、お姉さんもっともっと張り切っちゃうわ」」

 

耳障りな声が二重に響き不快感がさらに強くなるのだが、ほむらは油断してはならないと目の前の敵に集中する。

 

(こいつに時間停止はおそらく通用しない・・・)

 

”時間停止”どころか、一度見せた技、真須美 巴自身が見た動きなどは完全に読まれてしまっているだろう。

 

「でも・・・我慢比べなら負けない」

 

「「いいわよぉ~~~。ゾクゾクするわ・・・貴女のその澄ました顔を滅茶苦茶にしてあげるわ」」

 

真須美 巴は愛らしい顔に禍々しい笑みを浮かべてさらにほむらへの攻撃の手を強めるのだった・・・・・・

 

ほむらも迫りくる二人の”真須美 巴”らを”鉤爪”を駆使して切り結ぶ。

 

楯を回し”時間停止”の動作をすると”真須美 巴”は笑う。回せるものなら回してみろと言わんばかりに・・・

 

”時間停止”を実行すれば、確実に何かを仕掛けてくることをほむらは、先ほどの”京極神社”での一戦で理解していた。

 

故に時間停止を使わずに戦わなければならなかった。迫ってくる真須美 巴の首のチョーカーに存在する”ソウルジェム”目掛けて思いきり”鉤爪”伸ばし、粉砕する。

 

これが本体ならば決着であるのだが・・・

 

通常”ソウルジェム”が砕かれると魔法少女は即死なのだが、真須美 巴は平然としていた。

 

ソウルジェムを砕かれたもう一人の真須美 巴に至っては笑っている。

 

どうやらもう一方の方が本物のようだったが・・・

 

「キャハハハハハ!!!!彼女達もジッとして居られないわね」

 

”フィンガースナップ”を鳴らし、会場全体に黒い半透明の生気のない表情をした”魔法少女”らが現れた。

 

その光景にほむらは、”魔女の使役する 使い魔”、”ワルプルギスの夜が使役する 影魔法少女”を連想した。

 

それらのどちらとも違う”魔法少女”らから感じられるのは、魔女に似た”邪気”だった・・・

 

「貴女に紹介してあげるわ。暁美ほむらさん・・・この子たちは”プレイアデス聖団”の魔法少女狩りにあって、ソウルジェムと身体の繋がりを断たれていた子達なのよ。それをバグギが小腹が空いたからといって食べちゃって・・・そのまま恨んで死んじゃったから、こんな風になっちゃったの♪」

 

とんでもないことを軽く笑いながら発言する 真須美 巴にほむらは、嫌悪感を抱いた。

 

自分の名前を彼女に告げたことはないのに知っていることについては、どうでもよいことだった。

 

「バグギの影響があるから、私に手を上げることはしないから・・・使い勝手は、二樹に渡した魔号機人以下で正直、居るだけで何の役にも立たないのよねぇ~~」

 

その使徒ホラー バグギに魔法少女を喰わせ、彼女らをこのような目にあわしておきながらとほむらは叫んだ。

 

魔法少女が偶然ホラーと遭遇し、その餌食になってしまう。自身もバラゴの助けがなければ餌食になっていた可能性はあった・・・

 

だが、進んでホラーと結託し、あろうことかおやつ感覚で魔法少女をホラーに喰わせるという最悪な行動にほむらは、真須美 巴の邪悪さは人間のそれではなく”ホラー”のそれ・・・

 

”ホラー”そのものであることを確信した・・・

 

拘束された御崎海香 牧 カオルは何故、あの時、真須美 巴を狩った時に殺さなかったことを今更ながら後悔していた。何かと実験に利用できそうという理由と、極悪人だから何をしてもかまわないという理由で”モルモット”として扱おうとしていた矢先に使徒ホラー バグギの手を借りて脱走し、今では立場が完全に逆転していた。

 

「貴女達二人は、私が後でじっくりと”食べて”あげる。だから、そのままそこに居なさいな」

 

真須美 巴はさらにほむらを追い詰めるべく、バグギに喰わせた”魔法少女”らの”怨みの残留思念”を嗾ける。

 

勝手な思惑で狩られ、さらには死んだ方がマシだと思えるほど惨い境遇に落された”彼女”らに悲痛な思いを抱かずにはいられなかったが、ほむらはここで止まるわけには行かなかった・・・

 

自身の願いの為にもだが、ここで”真須美 巴”だけは絶対に倒しておかなければならなかった。

 

ここで自分が負けてしまえば、真須美 巴は”見滝原”等に向かい、そこでも同様の悪事を働き、ほむらにとって身近な人達に災いを振りまく。

 

兄から話を聞いた”家族”はもちろんの事ながら、”鹿目まどか”、”美樹さやか”、”巴マミ”、”佐倉杏子”達が危険な目に遭うことだけは何が何でも阻止しなければならなかった・・・

 

状況はハッキリ言って最悪である。切り札の時間停止は見破られ、対策されていることから、使うことはできない。

 

この状況でできることは、魔法少女としての”素の力”が最弱である自身の身で戦う以外にないということだった。

 

(・・・・・・時間停止を知られちゃいけない奴に知られるって、これ以上に嫌なことはないわ)

 

かつてのほむらならば、この状況に絶望していたかもしれないが、今の彼女は自身が驚くほど冷静であった。

 

昨夜話をした”メイ・リオン”より語られた過去の魔法少女から彼女に送られた言葉・・・

 

”自分を認め、信じてあげること・・・”

 

自分自身に自己嫌悪を抱く彼女にとっては、ハードルがかなり高いのだが、こんな自分でもやれること・・・いや、やらなければならないのだ・・・・・・

 

”魔法少女の残留思念”が迫り、一人一人の顔は生気がなくほとんどが無表情である。

 

彼女らは一人一人がほむらに訴えていたのだ・・・

 

”・・・・・・コロシテ・・・・・・”

 

”モウコンナのイヤだヨ”

 

”クルシクテ・・・イタイ”

 

ホラーに喰われることは苦痛を伴うと聞いているが、憑依されたら最期、地獄に等しい苦しみを味わうことになると言うが、ホラーの手にかかった者に痛みや苦しみに程度など関係はなかった・・・

 

ほむらは、彼女達の訴えを胸に苦痛を感じつつも進み、一人ひとりに手を掛けた・・・・・・

 

自分自身が正義に程遠いのは良く分かっている。

 

そんな自分でもできることは、彼女らをこの手で葬り、魔法少女としてではなく人間らしい”安らかな眠り”に就かせることと元凶である 真須美 巴を倒すことだ・・・

 

「っ!!真須美 巴っ!!!」

 

「キャハハハハハハ!!!いいわよぉ~~♪その顔、もっともっと歪ませてあげるわ♪」

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市を一人の少女がアスナロ市 第三ドームを目指して走っていた。

 

ほむらと共にいたミチルであった・・・

 

「ほむらさん!!!!直ぐに行くから!!!」

 

彼女は京極神社でほむらが攫われた事を知り、彼女の元へ向かっていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

彼女を追うように数百メートル離れた場所では、

 

「ほむら、ミチルちゃん。無茶しやがって!!!」

 

ジン・シンロンもまたミチルを追っていたのだった。そして、あるものを”バラゴ”に渡す為・・・

 

「あの化け物を倒せる道具を忘れていくって、かなり頭に血が上ってたんだな、龍崎先生」

 

ジンの手には”雷清角”が握られていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続 呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 拾弐

 

 

 

 

 

 




あとがき

真須美 巴のターンですが、正直ここまで邪悪だともう魔女とかそういう次元ではないですね・・・円環の理も絶対にこの女だけはお断りでしょう(汗)

真須美 巴とほむらとの対決。時間停止を知られている為、迂闊に使うとやられてしまうので、彼女自身の”素の力”で戦います。

一応は”魔戒導師見習い”なので、彼女にとってはアスナロ市での”死闘”です。

ミチルは、ほむらを追って、バグギらの待つ拠点へ・・・ジンもまた向かいます。

プレイアデス聖団の二人は、完全に動きを封じられほぼ傍観するしかない状況です。

バグギとバラゴの対決。

バラゴに魔導馬を召喚させました!!公式では魔導馬を召喚の事実はなくOVAのみでの描写です。こちらでは魔導馬を召喚できますが、使うような相手が居なかったので召喚する機会がなかったという具合です。こんな風に書きますと何だか雷剛が不憫(笑)

バラゴ、まさか”雷清角”を忘れていくという渾身のミスを犯す!!!

それだけ頭に血が上っていました・・・・・・

本当ならば、後一話で終わらせようと考えていましたが、二話程で終わらせようと思います。後一話で終わりそうにないので・・・・・・

次回は、・・・バラゴ、ほむららが戦っている間、あの青年もまた・・・







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