呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝) 作:navaho
これ書いているとき、すんごい自己嫌悪に悩まされました・・・
理由は、本編を見て頂ければ・・・・・・
アスナロ市 京極神社
バラゴがバグギの元へ向かった前後の出来事だった・・
「メイ!!ミチルちゃんを頼む!!オレは、カラスキ達の所に行く!!!」
背を向けるジンにメイは
「分かったよ、そっちも気を付けて・・・」
「あのメイさん・・・一体何が・・・」
不安そうに声を上げるミチルにメイは・・・
「うぅん、ミチルンは気にしなくていいよ」
メイは妹を宥める姉のようにミチルの頭を撫でる。
彼女は察していたのだった。この京極神社に昨夜の”雷獣”が現れていたことに・・・・・・
ここでミチルを怖がらせてはいけないとメイは自身の恐怖に耐えていた。
「・・・なんだろう・・・海香とカオルに嫌なモノが入っている?」
ミチルは、”プレイアデス聖団”のメンバーの気配を察することができるのだが、そんな二人に”嫌なモノ”が取り憑いているのを感じていた。その気配は・・・
「っ!?!ほむらさんっ!?!」
「えっ!?ほむほむがどうしたのミチルン!!?」
ミチルはメイの腕から飛び出し、そのまま外へと飛び出していった。
彼女は感じていたのだ。二人の”身体”を使って”ほむら”を連れ去ったことを・・・・・・
「待ってよ!!!ミチルン!!!!一人で飛び出しちゃ!!!!」
背後から聞こえてくるメイの叫びは既に遠くなっていた・・・・・・
ほむらは、真須美 巴の”影に干渉する魔法”により拘束されていた。
さらには彼女のソウルジェムに奇妙な影が生き物のように這い上がり、包み込む。
「キャハハハハ!!!貴女の”心の影”どんな形をしているのかしら♪」
真須美 巴は自身の脳裏に映る影を手繰り寄せ、手を伸ばすのだが・・・
だが、奇妙な”紋章”が浮かび上がり、それによって弾かれてしまったのだ。
「っ!?なぁにぃこれぇ?変な紋章ね・・・しかも魔法じゃない”何か”を感じるわ」
浮かび上がった”紋章”とは、バラゴがほむらに施した”束縛の刻印”であった・・・
この”刻印”に込められた術は、真須美 巴の干渉を防ぐのだが・・・・・・
「これは・・・外からじゃダメなやつね・・・」
なにかを察するように真須美 巴は笑った。
「外が駄目なら内側からやってみるのも良いわよね・・・」
視線をほむらから、拘束されていた御崎海香へ移し、牧カオルを”影”で操ったことと同じように・・・
「あっ・・・あぁあああああ・・・・・・っ」
御崎海香は、自身の精神に干渉してくる”真須美 巴”に魔法に反抗できずに、彼女の意に反してほむらに向かって彼女自身の”記憶操作の”魔法の光を放った・・・・・・
御崎海香を利用することでほむらの精神に干渉し始めたのだった・・・
「!?!こ、これはっ!?!な、なに・・・・・・」
酷い眩暈とさらには精神に響くような鋭い痛みを感じる。
まるで”精神攻撃”を行う”魔女”の攻撃を受けたかのようだった・・・・・・
”・・・・で・・・ね・・・・・ちゃ・・・”
霧の奥から聞こえてくるような”懐かしい声”が聞こえてきた・・・
それが少しずつ鮮明になり・・・
”元気でね・・・ほむらちゃん”
自身の魔法少女としての始まりであった”鹿目まどか”の死の直前に聞いた声であった・・・・・・
決して覆ることのない”死”をみた光景・・・・・・
「やめなさいっ!?!やめろっ!?!!私の中に・・・私の心を汚すなっ!!?!」
時間も場所も違う”死”の光景が目の前に同時に存在していたことにほむらは、悲鳴を上げた。
真須美 巴の耳障りの笑い声すら聞こえないほど、彼女は目の前の”過去”に苦痛を感じていたのだった・・・
暗黒騎士 呀は魔導馬 雷剛と共に警報音が鳴り響くアスナロ市 第三ドームの中を疾走していた。
大勢の人間の移動を考えられているのかドーム内の通路は広く、様々な施設が存在している。
だが人々の娯楽のこの場所も今は忌々しい”魔雷 ホラー バグギ”の影響を受けており、強大な邪気に包まれていた。
その影響はアスナロ市にも与えており、昼間であるのに夜に活動を主とする”ホラー”にも力を与える程であった。
呀は、施設内の開けたセンターに辿り着く。
球場、イベント会場、記念館、屋内遊園地に繋がるターミナルとも呼べるこの場所だった・・・
白い眼には、彼の感情など映してはいない。
だが、実際の彼は施設内で”暁美ほむら”を自身が彼女に施した”束縛の刻印”の気配を探していた。
普段ならば彼女が何処に居ようと直ぐに見つけることが叶うのだが、”バグギ”の影響のあるこの施設では、阻害されており探すことが困難であった。
鬱陶しい”バグギ”の邪気に苛立ちを感じながら、亡者のごとく寄ってくる”バグギ”が殺したであろう”人々の残留思念”が生者を恨む亡者のように迫ってきていた。
「・・・・・・・・・・」
無言のまま呀は、それらを黒炎剣で斬る。ホラーの犠牲者である為”魔戒騎士”であるのならば、悲しみを抱き、ホラー討滅の決意を固くするのだが・・・
呀は”魔戒騎士”の逸れ者であるが故に、そのような情を抱くことはない。
自分の行く手を邪魔する”バグギ”が殺した人々の”残留思念”の事など、死骸にたかる蠅程度にしか思っていない。
彼にとって優先すべきは、この地に囚われているであろう”暁美ほむら”を救うことであり、さらにはこの事態を引き起こしてくれた”バグギ”をこの手で抹殺することにあった・・・・・・
その為にどれだけの犠牲を払うことに心を乱すこと等なかった・・・
『ハハハハハハッ!!!!意外と早く来たな・・・暗黒騎士!!』
視線を向けると百メートル以上はある三本の長大なエスカレーターの頂上にバグギは居た・・・
バグギは本来の姿である”金色の雷獣”の姿だった。
伝承に伝わる”雷獣”、”鵺”に酷似しており、目は黒一色に染まっている。
力が有り余っているのか周囲には紫電が発生していた。
「フン・・・下らない絡繰りは良いのか?」
『ハハハハハ・・・アレでの遊戯も過ぎれば飽きるというモノよ』
呀の挑発ともいえる嘲りに昨夜の戦いは”単なる遊戯”であったとバグギは応えた。
「お前の事情などどうでも良い・・・私はお前をこの場で制してくれる」
呀は黒炎剣に”紫色”の魔導火を展開させ、バグギに対し構える。
『ハハハハハっ!!その構えは確か”黄金騎士”の構えだな!!!暗黒騎士でありながら、未だに黄金騎士の技に縋るとは!!!暗黒騎士よ!!お前は所詮は我にとっての”餌”でしかない!!!』
暗黒騎士 呀に対して挑発するバグギ。黒い瞳のない眼が大きく歪むように笑う。
「餌?お前が私を喰らうのではない・・・私がお前を喰らうのだ」
雷剛に疾走の意思を伝え、呀はバグギに対し攻撃を開始した。
呀の先制攻撃を端にして、魔雷ホラー バグギと暗黒騎士 呀との最終決戦は幕を切った・・・・・・
それは魔戒騎士とホラーの戦いである”守りし者”のそれではなく、闇を徘徊する”怪物”同士の互いに喰う喰われるの血生臭い闘争であった・・・・・・
その頃、ミチルは道中に発生していた”魔女の使い魔”を倒しながらアスナロ市 第三ドームを目指していた。
最初こそは、ぎこちなく自身の”暗い感情”の赴くままに戦っていたのだが、彼女は少しずつ変化をしていた。
黒を基調とした魔法使いを思わせる衣装身に着け、先が折れた黒い帽子を被り、その手には十字の刃を備えた槍があった。
もしもこの場に”プレイアデス聖団”のメンバーが彼女を見たら”和沙ミチル”と声を揃えて叫んでいたのかもしれない。
獣を思わせる荒々しい戦いが非効率であると分かってから、ソウルジェムに意識を向け自身の”魔法”を望むように変化させていく。
大きく飛翔しマントを靡かせて高層ビルからビルへと飛び、アスナロ市 第三ドームの敷地内へと入り込んだ。
同じようにアスナロ市 第三ドーム直通のモノレールの駅より一人の青年が飛び出した。
ジン・シンロンである。彼もまたこの場に来ていたのだった・・・・・・
「待ってろよ、ほむら・・・ミチルちゃんも無茶はしても無理はするなよ!!!」
若干の息切れをしているが、この際それは関係なかった。一刻も早く”妹”の元へと向かわなければならなかったのだから・・・・・・
「・・・私が・・・契約したから・・・・・・」
目の前で繰り広げられているこれまでに廻ってきた”時間軸”の出来事にほむらは、言いようのない”絶望”を感じていた。
”精神攻撃”を行う魔女が苦手となっていたほむらは、改めて自分が抱えている暗い感情に目を背けていたことに気が付いたのだった・・・
暁美 ほむらが魔法少女になったきっかけは・・・”鹿目まどか”の死・・・・・・
今の自分が居るのは”鹿目まどかの死”があっての事であり、それを出発点としている限り覆すことはできない。
自身が魔法少女である限り”鹿目まどか”の死は避けることのできない確定した”未来”だった・・・
「・・・こんなことって・・・私が行ってきたことは・・・結局はまどかの”死”から逃げていただけなの・・」
「キャハハハハハっ!!!そういうことだったのね」
ほむらの”精神”に干渉し、彼女の真実を知り真須美 巴は笑った。
「”時間”を止めるなんて珍しい能力だけど、魔法少女としての”願い”は割と一般的だったわねぇっ!!!」
倒れ込んでいるほむらに対し、真須美 巴はその腹に蹴りを入れる。
「がはぁっ!?!くっ・・・」
意外と強い衝撃を受けほむらは、腹を抑え反撃にでようとするが、”精神攻撃”による影響でその動作が遅れてしまう。
「貴女も廻った”時間軸”で・・・見たわよねぇ?所詮は”不相応”な願いに酔っているだけだってね!!!!」
さらに髪を掴み、真須美 巴は、その邪悪な笑みを見せつけるように顔を近づける。
「貴女のその願いは・・・所詮は、その場しのぎでしかなかったわね。いつかは訪れる”破滅”を避けているだけ・・・良いわぁ・・・こんな澄ました子を絶望させるのは・・・気持ちが良いわぁ」
耳障りな笑い声が会場全体に響く。
真須美 巴のあまりの邪悪さに”プレイアデス聖団”の二人も青ざめていた。
魔法少女は良くも悪くも”個人主義”であるのだが、この真須美 巴の”邪悪”さには及ぶことはないだろう・・・
「だからこそ”絶望”して”呪い”を振りまく。素晴らしいわ・・・これこそ、魔法少女のフィナーレとしては最高よ。あぁ、でも、私は”無念”を感じながら滅んでいく様を見る方がもっと好きだわ」
自分が目を背けていた”事実”を突き付けられ、自分の戦いがほとんど通用しない真須美 巴に対し暁美ほむらの心は折れかけていた・・・・・・
「フィナーレなんかじゃない・・・・・・私が此処に来たから・・・・・・」
直接、魔法少女特有の”テレパシー”を通じて彼女は語りてきた・・・
真須美 巴は語り掛けてきた彼女の声に少しだけ”覚え”があった・・・確か・・・・・・
「アスナロ市に来た時に見かけた娘の声に似てるわね・・・・・・でもあの娘は・・・」
不思議なのだ。”彼女”は既に魔法少女としての最期を迎えているはずなのだから・・・
そして、その後は・・・
「貴女達が作った”和沙ミチル”って、こんな風にしっかりとした自我を持ってたかしら?」
”影”を使い、二人の記憶を検索する。この行為は、真須美 巴にとっては気軽にできるものだが、やられている側からすると苦痛極まりなく頭の中をかき混ぜられるような痛みを伴うのだから・・・・・・
「ふぅ~~ん、ようするに”和沙ミチル”のリアルな自動人形を作ったわけね・・・そりゃあ、失敗するわよ。こんなモノを”和沙ミチル”なんて名付けられたら当の本人は怒り心頭でしょう」
真須美 巴は”プレイアデス聖団”の行っていた”和沙ミチル”の復活に対し、これ以上にないほどの”醜悪さ”を覚えていた。自身のように”悪”であることに背を向けて、魔法少女だからという理由で正当化するようなやり方は何様のつまりだろうかと・・・・・・
「繰り返す・・・どんなことがあっても彼女を取り戻すまでは・・・キャハハハハハ!!!本当に愉快だわ」
真須美 巴は自身を真面だとは思ってはいない。”最悪”の極悪人であると認識している。
それ以外に何者でもない。”奪う”ことをモットーとしているのだから、それに免罪符を求めるなど、自分の”極悪人”としての生き方を否定するほど彼女は愚かではなかったのだから・・・・・・
「まぁ、その点は暁美ほむらさん・・・貴女は能力以外は普通の子ね・・・鹿目まどかも随分と残酷なことをしてくれるわね・・・まるで自分から離れないように”呪っている”みたい」
「くぅっ!!?貴女なんかにっ!!!まどかをっ!!!」
「侮辱しないでって言いたいわけ?本当に健気な子ねぇ~~、約束を守るのは良い事よ。でもね、約束しちゃいけない約束も世の中にはあるのよ!!!!」
真須美 巴はほむらの胸に蹴りを入れる。さらに仰向けになった彼女の腹にさらに蹴りを加えた。
「ほんとに嫌になるわね~。事実、魔法少女ってオブラートなホラーみたいなものなのに・・・自分が尊い何かと勘違いしている子に振り回されている子を見るのわねぇ~~っ!?!」
真須美 巴は会ったことはないが”鹿目まどか”とは絶対にそりが合わないだろうと確信していた。
見ているだけで嫌悪感が湧くのだった・・・
この”アスナロ市”での事が済んだら、久しぶりに”見滝原”に行ってみるのも悪くはないだろう・・・
居るだけで”苛立つ 鹿目まどか”を消すために・・・・・・
そんな事を思っていると先ほど、テレパシーで呼び掛けてきた”彼女”が・・・
『そこまでにして!!!ほむらさんをこれ以上、傷つけないで!!!』
イベント会場の屋根を突き破り、彼女は降り立った・・・・・・
「う、うそっ!?」
「み、ミチル?ミチルが・・・・・・」
御崎海香 牧カオルの二人はこの場に現れた”魔法少女”に対して、”復活”を望んだ彼女だと口々に叫ぶが・・・
「私は・・・貴女達のミチルじゃない・・・私は、ほむらさんのミチルだ」
黒い帽子を被り、黒を基調としたマントを靡かせ十字の刃の槍の切っ先を真須美 巴に向ける。
真須美 巴は”12人目”のミチルの存在を知っており、まさか”プレイアデス聖団”ではなく、”暁美ほむら”を助けに現れたことに愉快なモノを感じていた・・・・・
「み・・・ミチル・・・貴女・・・」
ほむらは驚くように目を見開いた。まさか、あの弱弱しい”ミチル”が魔法少女の姿になってこの場に現れたことに
「キャハハハハハ!!!良いわね、”プレイアデス聖団”が作り出した”人形”が”人間”になるなんてね・・・」
「私の事なんてどうでもいい。だから、ほむらさんを・・・・・・虐めるなぁっ!!!!」
槍を振るい、真須美 巴をほむらから離すべく割り込むのだが・・・・・・
「キャハハハハ!!!私もこの子の事は割と気に入って居るのよ・・・バグギに喰わせるのはちょっともったいないのよねぇ~~~」
ほむらを抱えて真須美 巴は飛翔する。彼女の言葉に御崎海香は・・・
「貴女は・・・あの雷獣の仲間じゃなかったの?まさか、裏切るつもり?」
「あんたぁ、馬鹿じゃないの?魔法少女って、基本的に頭に膿が湧いているお花畑な子しか居ないから、そこは察してほしいわね」
御崎海香の言葉に不快感を感じたのか、先ほどまでの笑みが消え無表情で彼女は応えた。
彼女は耐えがたい怒りを感じると表情がなくなるようだ・・・・・・
「貴女達のせいよ・・・アイツは私を”利用”できそうだから助けたのは分かりきっていたことだわ。そもそもホラーが人間を助けるのは何かと利用できるからよ」
当然のことながら助けられたのなら、ある程度の義理を果たさなければならなかった。
だが、その義理も大したものではなかった・・・自分の性分は”奪う”こと・・・
故にホラーに助けられたからと言って、その力が強いからと言って媚びる気などなかった・・・・・・
ホラー化することで”下僕”にしてやるとバグギから言われた時は、言いようのない不快感を抱いていた。
「まぁ、その辺りは人間も変わりはないわね・・・アイツらはこっちに来るのに”人間の邪心”が必要だから、”人間”を下等な餌としかみていないのに”人間”が居ないと”形”さえ作れないくせにね・・・・・・」
故にホラーに憑依されるようなヘマを犯すことはなかった・・・
「話が長くなったわね・・・じゃあ、貴女が魔法少女として戦うのなら私は”悪役”らしく”変身”しないとね」
”変身”というあからさまな言葉に一同は疑問符を浮かべる・・・・・・
「変身?どういうこと・・・貴女はもう・・・魔法少女に・・・・・・」
ほむらは、あり得ない”イレギュラー 魔法少女喰い”に問いかける。
「キャハハハハハ・・・そのままの意味よ。私はあと一回・・・一回だけ・・・変身を残しているのよ」
人差し指を立て自分には”切り札”があることを一堂に告げた。
「たいていの魔法少女は”変身”するまでもなかったんだけどね・・・」
真須美 巴は自身のソウルジェムを変化させるその輝きは”グリーフシード”に変化する際に発生する”邪気”に酷似しているが、それ以上になにか悍ましい”思念”の輝きを放っていた・・・
「キャハハハハハ!!!ア~ハハハハハハハッ!!!!」
黒い影が集まっていき、それらが真須美 巴を中心に”変化”していく。
視線がミチルを見下ろすように上がり、巨大な影が彼女を包む・・・
その光景に”プレイアデス聖団”の二人はあり得ないモノを見た・・・・・・
ほむらも同じだった・・・さらに、彼女が変化したこの”姿”には覚えがあった・・・
「この姿・・・私を殺しかけた”あの蜘蛛”そっくりじゃないの・・・・・・」
この”時間軸”で初めて遭遇したホラーの姿は蜘蛛と人間の女を掛け合わせたものだった・・・
更にセリフを追加するならば、真須美 巴はもはや魔法少女ではなく、また魔女でもない”存在”だ。
「「キャハハハハハハ・・・・待たせたわね♪第二ラウンドと行きましょうか?」」
上半身には真須美 巴の胴体を有し、巨大な蜘蛛の身体が組み合わさった”異形の魔法少女”の姿があった。
下半身には蜘蛛の捕食用の牙と口がそのままではなく、人間の”口”と蜘蛛の”口”が掛け合わさった不気味なモノであった・・・・・・
魔力もまた桁違いに上昇しており、ソウルジェムも”魔女”が近くにいるように反応している・・・・・・
「「キャハハハハ、ミチルちゃん、暁美ほむらを助けられるかしら?」」
二重に響く声は人のそれではなかった・・・
蜘蛛のように身体を動かす度に地面が抉れる。巨大の割には移動速度が速くミチルはこれを回避すべく飛翔し、槍を振り回すことで衝撃波で刃を作り、真須美 巴に放つが・・・
「「なぁに?これ?」」
それらを全く意に介さず、真須美 巴は背部にある八本の脚を構える。
先端には”ソウルジェムを思わせる卵型の”器官”が存在し、蕾が花を咲かすように開き、無数の光の線を放つことによりミチルのその身体に容赦なく痛めつけた。
「ミチルっ!?!!」
魔法少女として駆け付けたが相手があまりにも悪すぎた。
真須美 巴は魔法少女としてあまりにも強い、強すぎるのだった・・・
かつての時間軸にも”似たような蓬莱暁美”の仲間が居たが、ここまでの”変化”をすることはなかった。
傷つくミチルに対し、ほむらは思わず叫び、拘束する真須美 巴の脚を強引に振りほどき彼女の元へ向かうのだが・・・
「「うぅ~~ん。良いわねぇ、友情って・・・貴女達は少しだけしまっておきましょうか?」」
身体中に穴を空けられた彼女の姿は痛々しく、一部の手足は欠損すらしている。
あまりの惨状にほむらは、表情を歪めた。彼女に無茶をさせてしまった自分自身の不甲斐なさを呪う。
そんなほむらの事を意に介することなく真須美 巴は自身の影より”結界”を発生させる。
それはブラックホールのように周囲のあらゆるものを吸い込み、ミチルとほむらの二人を取り込んでしまったのだった・・・
「「お楽しみは後にとっておくのよね♪」」
大好物は最後に取っておくのが彼女の”流儀”であった・・・・・・
「「貴女達には、色々させられたけど倍返しで復讐を果たさせてもらうわよ」」
異形の姿となった真須美 巴の視線は御崎海香 牧カオルらに向けられていた。
影の結界に取り込まれたほむらとミチルは、暗い闇の中に居た・・・
異様にまで寒く、自分たち以外に何も感じられない”死”を思わせる静寂だけが存在している。
「ここまでね・・・さすがのバラゴもここまではこれないか・・・・・・」
ほむらは自嘲するように胸に抱えたミチルの頭を撫でる。気持ちは穏やかなのかは定かではない・・・
ソウルジェムが濁っていることから、今の自分は絶望しているかもしれない・・・
危機を救ってくれる”白馬の王子様”に憧れる訳ではないのだが・・・
今のバラゴも余裕はないだろう。相手はあの”魔雷ホラー バグギ”に手一杯かもしれない・・・
命が惜しくば”危険”に飛び込んではいけない・・・かつて”鹿目まどか”に語った話がそのまま自分に返って来るとは・・・これ以上の皮肉と最期はないだろう・・・
最期を迎えるにはあまりにも悔しかった・・・・・・
魔法少女としての”願い”を否定され、目を背けていた”事実”から逃げていた自分を指摘された。
こんな自分の為に駆け付けてくれた”ミチル”を犠牲にしてしまった・・・・・・
なんと情けなく不甲斐ないのだろうか?自分は・・・・・・
「・・・ほむらさん・・・まだ終わってないよ・・・だって、まだほむらさんは生きているから・・・」
「・・・何をいっているのよ・・・魔法少女は死人に近い・・・というよりもゾンビみたいなもの」
本体であるソウルジェムには”魂”が納められており、それのない身体は死んでるも同然なのに・・・
「ううん・・・だってほむらさんの鼓動が聞こえてくるから・・・ゾンビならこんな心地よい鼓動はしないよ」
ミチルの言葉にほむらは”生意気”と言いたくなったが、彼女が傍に居ようとしてくれることがありがたかった。
道連れにしてしまうが、最期を二人で迎えられるのなら・・・
「私の命は、13人目の”彼女”に宿る・・・だけど、この気持ちは私だけの”想い”だから・・・」
突然のミチルの言葉に何を言っているのかと問いかけるが・・・
ミチルは自身のソウルジェムをほむらのソウルジェムに近づける。
「ミチルっ!?何をするつもりなの!!貴女は生きるんでしょ!!貴女は自分の生きる意味を探すんじゃなかったの?」
「うぅん・・・もう見つけたんだ・・・私は”ほむら”さんに会うために・・・生まれてきたんだって」
グリーフシードでもある自身のソウルジェムを使い、ほむらのソウルジェムの濁りを浄化する。
「馬鹿言ってんじゃないわ!!!私なんかの・・・そもそも私は・・・」
「分かっているよ・・・ほむらさんが助けてくれた事には変わりないし、私自身があなたを助けたいと思う程、私の中で大きくなったんだ」
優しい笑みを浮かべてミチルは、ほむらに寄り添う。涙を浮かべている彼女の頬に手をやり、それを拭う。
「だから・・・泣かないで・・・たとえもう触れられなくなっても・・・声を掛けることができなくなっても、私の”想い”はずっとずっとほむらさんい寄り添っていくよ」
濁っていたソウルジェムが浄化されるとともにミチルの身体に皹が入っていく・・・
「やめなさい!!!ミチル!!!私なんかの為にそんな事をするんじゃない!!!」
何もできない弱く情けない自分の為に”命”を捨てるなとほむらは叫ぶ。だがミチルは・・・・・・
「ほむらさんだからだよ・・・最初のミチルが気に掛けていた”プレイアデス聖団”の事は気になっていたけど、私が助けたいのは貴女だけ・・・・・・これは私だけの”モノ”なんだよ」
ほむらは、このように自分の為に全てを投げ出そうとするミチルに感情を震わせた・・・
故に憎かった・・・彼女を犠牲にしてしまう自分自身の弱さが・・・・・・
保護した彼女を護り切ることができない自分自身が許せなかった・・・・・・
「ダメだよ・・・そうやってほむらさんは、自分を傷つけるんだから・・・自分を傷つけないように私からお願いしても良いかな・・・」
ミチルは、ほむらの細い体を抱きしめる。
「13人目は多分、私と違って”ミチル”としての記憶も何もない子なんだ・・・このままあの魔法少女喰いとホラー バグギが居たら、あの子が生まれる場所は”地獄”・・・だから、ほむらさんには護ってもらいたいんだ」
「・・・・・何を護ってもらいたいのよ」
全てを切り捨て、他の世界から逃げるように背を向けてきた自分に何を護れと願うのか?
「私のような子に手を差し伸べてくれたのは、ほむらさんだけ・・・だから、この先の未来を生きて・・・もう繰り返されないように、ほむらさんは先に進んで・・・その先に居る”私”のような子に手を差し伸べて・・・」
身体が半分崩壊しており、もはや人の形を辛うじて保っているミチルにほむらは・・・・・・
「・・・・・・私はもう”繰り返さない”って約束するわ。アイツらは絶対に私が・・・私達が終わらせるから・・・貴女の”妹”が訪れるこの世界を・・・」
左手の”楯”に視線を向ける。”やりなおせる”と何処かで甘えていた自分の”弱さ”を此処で終わりにする・・・
そして、その先へ進もうと・・・・・・ほむらは決意する・・・・・・
”一か月間”の繰り返しを表す”砂時計”に変化が起きる・・・それは中に閉じ込められていた”何か”が抜け出そうとしていた・・・いや、破ろうとしていたのだった・・・
「えへへへへ・・・ほむらさん、約束だよ・・・」
最後に彼女を安心させたいのか、無理をするように笑う。
「なに笑っているのよ・・・ミチル」
ミチルはほむらの頬を摘み、いつかほむらにされたことをそのまま・・・・・・
「悲しい気持ちで別れたくないなって・・・ほむらさんが笑ってくれないから・・・こうするの」
無理やりほむらに笑顔を作ろうとするミチルの行為にほむらは、自分の為に消えようとしている”彼女”の為に笑顔で送り出したかった・・・・・・
「ふふふふふ・・・貴女は本当に世話が焼けるったらありゃしないわよ」
思いっきり泣きだしたい気持ちを無理やり抑え込んでほむらはミチルに笑いかけた・・・
「うん・・・・・・お世話ばかりかけたね・・・だからこういうね・・・お世話になりました」
その瞬間、ミチルの身体はガラスが砕けるように光の粒子となって消える・・・・・・
ソウルジェムの穢れが浄化された。消えたミチルにほむらは・・・・・・
「・・・・・・本当に世話が焼けるのはミチルじゃなくて私なのにね・・・・・・」
消えたミチルの感触を思い返すように自身の手を取る。かつて陰気な表情をしていた彼女を姉のように無理やり笑わせた彼女の頬はどんな感じだっただろうか・・・・・・
「ミチル・・・貴女は紛れもなく私の”友達”よ・・面と向かって言えなかったことが悔しいわね・・・」
ガラスが割れるように砕けて消えたミチルに対し・・・
「ミチルは光になって消えた・・・これが”神様”の慈悲なのかしら・・・あの子のことをまるで居ないもののように消して・・・そんなのは貴方の勝手なお節介に過ぎないわ」
”許されざる命”として断罪するのならば、自分はその”許されざる命”を護って見せよう・・・
例え二度と陽の当たる場所を歩けなくとも”闇”を歩くことで護れるのならば・・・・・・
もう止まらない、振り返らない、弱い自分が奮闘したところで取りこぼす”命”は多いだろう。
傷つき、絶望に苛まれるだろうが、そんなことは関係はなかった・・・・・・
それでも立ち止まってはならない・・・その先にいる”彼女”らを護る為に・・・・・・
「だったら、私は叛逆するわ!!!今までの自分に!!!弱かった自分に!!!繰り返す過去じゃなくて、その先に行くために!!!!」
彼女の意思に呼応するかのように楯の砂時計に皹が入る・・・そこから膨大な”因果”の糸が漏れ出していた。
”因果”の糸は・・・これまで彼女が巡ってきた多くの”時間軸”のモノであった・・・
それらは、ほむらの元に集まり一つの形を作り出す。
それは、様々な”想い”を飲み込み、特定の色を持たない”黒”に近い・・・混沌の色を持つ”翼”へと・・・
翼を広げると共に彼女自身にも変化が現れる・・・ソウルジェムが輝くと共に・・・・・・
その輝きは彼女の周囲は愚か、真須美 巴が作り出した”影の結界”を侵食し、破壊した・・・・・・
「「っ!?!ど、どういうこと・・・私の結界から何かが出てきた!!!!」」
今まさにプレイアデス聖団の二人 御崎海香と牧カオルを喰らおうとしていた真須美 巴は二人を閉じ込めた”影の結界”が破壊されたことに驚きの声を上げた。
この結界は使い捨てではあるが、自分が喰わない限りは絶対に破られることがなかったからだ・・・
まるで”卵から孵化”するように黒い翼のようなモノが大きく広げられる。
”翼”のようなモノと表現したのは、それ以外に表す言葉が存在しないからだ・・・
その”翼”を広げていたのは・・・・・・
「何かとは失礼ね・・・魔法少女喰い 真須美 巴・・・」
”翼”を広げている存在は、彼女としてはあり得ない存在だった。影の結界は自身と同じく全てを飲み込み、喰らうものである・・・
結界に飲み込まれて、例え生きていても生きながらえることなどできるはずもない・・・
紫の輝く矢が一斉に自分に向かってくる。自身の魔力を使い防ぐのだが・・・
「私はこっちよ・・・突然の事で焦ってるのかしら?貴女らしくもない」
すぐ傍から聞こえてきたのは、自身が戦闘不能に追い込んだ”暁美ほむら”の声に酷似したモノだった・・・
14歳の彼女と比べると、年齢を重ねたかのように落ち着いた声色である・・・
直ぐに声の主、目掛けてブレードを振ったと同時に金属音が響くと同時にブレードは往なされ、強烈な打撃が真須美巴の頬に撃ち込まれか、彼女は声を出すことなくそのまま吹き飛ばされてしまった。
突然の出来事に御崎海香 牧カオルの二人はついていけなかったが、真須美 巴を攻撃した”人物”を見た瞬間、驚愕すると共に目を見開かせた。
「「っ!?!!痛いわね・・・私の顔に傷をつけてくれるなんてっ!?!」」
顎が若干砕かれてしまった痛みと自身を吹き飛ばしてくれた”相手”を見て彼女もまた驚愕した・・・・・・
十字の刃を持った”杖”を槍のように振り下ろす、黒い髪を靡かせている一人の長身の”女性”に・・・・・・
首元にダイヤを象った紫色の”ソウルジェム”があり、魔戒法師の”法衣”を思わせる黒を基調としたローブを纏っている”暁美 ほむら”に酷似した人物に・・・・・・
「「そ、そんな変化・・・どういうことっ!?」」
魔法少女は絶望し、ソウルジェムはグリーフシードへ変化し魔女として”孵化”する以外に変化はないはずだった
もしくは自分のような”イレギュラー”な変身を行うこと以外に・・・
「そう・・・そんなに変わったかしら?貴女の方が魔法少女からしたら異常よ、真須美 巴・・・」
背中に翼を思わせる”混沌の色”を背負っていた・・・
暁美 ほむらの変化に真須美 巴だけではなく”プレイアデス聖団”の二人もまた・・・・・・
「二段階の変身?真須美 巴みたいに?」
「いえ、アレは変身じゃないわ・・・おそらく彼女は変わったのよ・・・」
目の前のほむらの変化が信じられない牧カオルに対し、御崎海香は彼女の変化に・・・・・・
「・・・・・・もしかしたら、今の彼女こそ”魔法少女システム”への叛逆の答えかもしれない」
魔法少女は決して大人になれない・・・
暁美ほむらは、魔法少女の”運命”に叛旗を翻していた・・・・・
続 呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 拾肆
あとがき
自己嫌悪の原因は12人目のミチルを如何にして”殺そう”かと考えていた件でした。
話数が増えたのも彼女の退場を先延ばしにしようとしていた部分もあったのではと今更ながら思っています。
逆に”プレイアデス聖団”を痛めつけたりする描写にはなんの罪悪感も湧かなかったのが不思議なぐらいでした(笑)
そして、ほむらは叛逆しました(笑)アスナロ市にほむらとバラゴらを行かせたのは、これをやりたかったからです。
見滝原ではできなかったのか?と言われるとある意味、見滝原はほむらの成長を妨げているように感じたので、別の場所に行きそこで経験を積ませたかったからです。
この辺の総括は、最後の一話が終わってから書きたいと思います。
彼女は成長しました・・・魔女にならずに”少女のその先”へ・・・・・・
見た目は20代初めぐらいになり、身長は女性にしては高めの175㎝ほど・・・
プレイアデス聖団が掲げていた”魔法少女システムの否定”の一つの答えです・・・
ある意味”円環の理”を”否定”しています。
最後に真須美 巴・・・彼女はここで”変身”しました
自身をそのままに”魔女”の”力”を扱える”形態”でミチルを圧倒しましたが・・・
”バグギ”に認められる”悪”として良く動いてくれたと思います。
当の本人はバグギを疎んでおり、いつかは排除してやろうと考えています。
プレイアデスもよく捕まえたモノだと思わなくもないです・・・
こちらはこちらで絶対に、まどかとは分かり合えない存在なので、”円環の理”を知ったらしったでそんなところに行くぐらいなら自分の存在を自身の手で抹消してやると言いかねません。
いよいよ次回で、バグギらとの戦いは”最後”になります。
ほむらの変化に”バラゴ”はどう思うのか?犯罪臭は減ると思いますが、どうなることやら・・・・・・
ほむら達魔法少女がメインでしたので、次回はバラゴがメインになります。