呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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今回でバグギとの戦いは終わります・・・

前回の最後が 続 呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 了としていましたが、思いのほかバグギとの戦いが熱くなってしまいましたので修正しました。







呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 拾肆

大人の女性の姿となったほむらは、今の自身の身体を確認するように視線を落とす。

 

目線は以前よりも遥かに高くなり、精神的にもかなり落ち着いるのを自覚できる。

 

手に持っているのは”ミチル”が武器として使っていた”十字の刃”を持つ槍に似た”杖”であった・・・

 

見た目は完全に槍そのものであるので、”杖”か”槍”のどちらでも構わなかった。

 

魔法少女の衣装と魔戒導師の法衣を合わせた装いとソウルジェムが首元に存在していることに彼女は純粋な驚きを感じていた・・・・・・

 

(これが・・・今の私・・・・・・もう今までのような”魔法少女”では居られないのね・・・)

 

時間停止を行う為の”楯”は形を変えて左腕に存在していた。防具の籠手の上に存在しており、着物の袖のような法衣から覗いている

 

もはや”少女”としてやり直すことは叶わない。

 

そんな”望み”など、彼女にとってはもう”過去”のことであり、この先必要のないことだ。

 

もう決めたことなのだから・・・

 

「「暁美ほむら・・・貴女・・・一体っ!?何をしたっ!?!」」

 

声の主である真須美 巴に視線を向ける。魔法少女としての姿ではなく異形の”蜘蛛の怪物”としての姿だった。

 

真須美 巴という魔法少女喰いと呼ぶには、あまりにも”怪物”そのものの姿なので、敢えて名付けるのならば

 

(名づけるとしたら、”レディ・スパイダー”とでも呼ぶべきかしら?)

 

もしくは”女郎蜘蛛”の候補が上がるが、名前などどうでも良いだろう。

 

何故なら、この”怪物”がどうのような”名”で呼ばれることに意味はなくなるのだから・・・

 

そう・・・今夜、真須美 巴は・・・

 

「これからするのよ・・・真須美 巴。貴女を此処で討滅させてもらうわ」

 

長い柄の杖の先にある”十字の刃”の切っ先を向ける。その様子に真須美 巴は、複眼のようになった”眼”を怒りに歪ませた。

 

「「たかだか、姿を変えたぐらいで私を倒すなんて、思いあがるのもそこまでにしなさい!!!」」

 

蜘蛛の異形の姿は巨体の割には俊敏に動くことが出来るらしく、大きく飛翔し、背中の脚に存在する”器官”を使い、いくつものレーザーに似た閃光を発射する。

 

さらには影魔法少女、人間体の自身の影分身全てを総動員させる。

 

真須美 巴にとっても、暁美ほむらの変わりようはイレギュラーらしく即時殲滅で終わらせるつもりだった・・・

 

ほむらは、背中の翼を大きく変化させる。羽がある典型的な翼ではなく、奇妙な歪みを持った”翼”の形をした限りなく黒に近い”混沌”は大きくなっていく。

 

真須美 巴は一目でその”混沌”の危険性を理解し、それを回避すべく先手必勝の手を打ったのだ・・・

 

「「キャハハハハハハ!!!!!この数を貴女はどうする!!?時間を止めたって無駄な事よ!!!!」」

 

既にほむらの影も補足している為、”時間停止”も封じている。当然のことながら、負けることなどない・・・

 

無いはずだったが・・・・・・

 

黒い”混沌”は炎が燃え上がるように一気に広がり、真須美 巴が差し向けていた”様々な”攻撃を一瞬にして侵食し、消し飛ばしてしまった。

 

それは”炎”のような熱を持って真須美 巴に強烈な痛みを与える。

 

「「ああああああああっ!!!?あついっ!!!な、なんなの、これはっ!!?!」」

 

気が付けば自身の背中の脚の幾つかが欠けており、さらには”干渉していた影”さえも吹き飛んでいた・・・

 

「私にもわからないわ・・・少なくとも貴女のような”存在”には耐えがたい痛みを与えることはできるみたいね」

 

視線を向けるとほむらがこちらに向かって歩いてきているではないか・・・

 

一歩一歩ゆっくりと進んでくる様子は死刑執行の時間を表しているようだった・・・

 

故に真須美 巴は目の前の存在を恐ろしく思う。僅かに巨体を後退させてしまう。

 

「「わ、わたしが・・・このわたしが・・・”奪う側”に居るわたしが・・・・・・」」

 

「何をもって”奪う側”に居ようとしているのか、知りたくもない・・・貴女はここで終わる」

 

「「終わるって、この程度で調子に乗るのも程ほどにしなさい!!!」」

 

冷静に淡々と語るほむらと対照的に真須美 巴は完全に冷静さをなくしていた。

 

自身がこれまでに遭遇したことにない”イレギュラー”に脅かされるという未だかつてない事態に・・・

 

下半身の大口を開け、迫るがほむらはそれを強化された脚力を持って垂直に飛翔し回避する。

 

上空にて態勢を整えたと同時に自身の得物の一つである”弓”を手に持ち、紫に輝く”矢”に新たに得た”混沌の色”を持つ”炎”を纏わせる。

 

「調子になんか乗っていないわ・・・貴女相手に油断なんてできるはずもないもの」

 

放たれた矢は真須美 巴の額に突き刺さる。そこから、皹が入り連鎖するようにして身体が崩壊していく。

 

「「あ、アケミ・・・ほ、ほむらぁあああああああっ!!!!!!」」

 

崩壊していく身体が燃え上がり、異形の”ソウルジェム”もまた熱により粉々に砕け散った・・・・・・

 

・・・・・・私は常に奪う側に・・・・・・周って・・・・・・

 

黒い異形の蜘蛛の影が熱と共に消え去った・・・・・・

 

 

 

 

 

真須美 巴が倒れ、御崎海香 牧カオルの二人は彼女の”影の干渉”より開放されるのだが、既に暁美ほむらの姿はなく、この場から去っていった・・・・・・

 

二人は、彼女と話がしたいと願うがそれは叶うことはないだろうと察した・・・

 

彼女は自分達”プレイアデス聖団”に興味がなく、この施設に居るであろう”雷獣”の討伐に向かったのだろう。

 

”魔法少女システム”の否定・・・暁美ほむらの協力が得られればと願うが・・・

 

その答えの一つ。大人になった”魔法少女”である彼女は、自分達と交わる意思を持たない・・・・・・

 

この場に居ても、ただ何もできない・・・二人は僅かに濁ったソウルジェムと共にこの場を後にした・・・

 

牧カオルは手足を欠損しており、御崎海香は彼女を背負いながら無言のままこの場を離れた・・・・・・

 

彼女の胸中には”虚しさ”の感情だけが存在していた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 第三ドーム 第一区画

 

第三ドームのガラス戸を割り、ジン・シンロンは中に侵入していた。

 

「イベントが近いってのに・・・人の気配が全くねえ・・・」

 

ジンは普段ならば巡回しているであろう警備員の姿もそうだが、肌に”嫌な寒気”を感じていた・・・

 

友人の京極 カラスキの言葉を借りるならば、”曰く付きの場所”特有の嫌な空気である・・・

 

”伝説の雷獣”の邪気による影響で全体的に嫌な雰囲気なのだ・・・

 

彼は上着の内側に隠している”雷清角”をその感覚だけで確認しながら前に進んだ。

 

カラスキの言うようにこの先は”死に最も近い場所”なのだ・・・

 

人が踏み入ればまず助からないであろう。だが、彼にはそんなことは関係なかった・・・・・・

 

妹とその友達を連れて、そしてこの雷清角を届けるという役目があるのだ。それを果たさなければならなかった。

 

死を覚悟ではない。絶対に生き抜く覚悟を持って・・・直ぐ近くで手に入れた警備用の棒を手に彼は進む。

 

「うん?誰か・・・いや、何かいるのか?」

 

奥より誰かがこちらに歩いてくる足音が聞こえた・・・・・・

 

ここには真面な存在は居ない。ほむら、ミチル、龍崎駈音以外はあのバグギの関係者であるからだ。

 

隠れてやり過ごせそうな相手ではないかもしれない。腹をくくり、ジンは正面の闇を睨みつけた。

 

「ジンお兄ちゃん。私よ・・・ほむらよ。安心して・・・」

 

少し違和感があるが妹であるほむらの声だった。途端に足音が早くなった。

 

そして彼は、変わり果てた自身の妹の姿を見た・・・・・・

 

「ほ、ほんとにほむらなのか?一体、どうしたんだ?その姿は・・・」

 

目の前に居るのは自分と同じ年齢にまで成長した妹の姿があった・・・

 

ほむらは、驚く兄を安心させるように笑いかけた。

 

「そうだよ・・・私の止まっていた・・・止めていた時間がようやく動き出したんだと思う」

 

”止めていた時間”の意味とは、彼女がこれまでに繰り返していた”時間遡行”の事であるとジンは察する。

 

「そうか・・・随分と長い間回ってたんだな」

 

「うん・・・数えるのも億劫になるくらいにね」

 

「そうだっ!?ミチルちゃんもこっちに来てたんだが・・・ま、まさか・・・」

 

”ミチル”という言葉にほむらの表情が悲し気な色を浮かべた。

 

ジンは彼女は既に居なくなってしまったのだと理解してしまった。

 

「ミチルは、私に先に進む”力”を託してくれたよ・・・だから私は前に、先へ行かなくちゃいけない」

 

妹の言葉にジンは、彼女は既に”兄”に甘えるあの小さな少女ではなくなったことを理解した・・・

 

自分が居ない間にこんなにも大きくなっていたことに喜びもあるがそれに伴う寂しさすら感じる。

 

そして妹は、メイ・リオンより聞いた”時間遡行”を行うことはないということを・・・・・・

 

「それで、ジンお兄ちゃんはどうしてここに?私は大丈夫だから、早くこの場から離れて」

 

ほむらはジンが何故、この場に来ているのかと問いかける。

 

彼女の考えでは、兄のことだから自分やミチルを連れ戻そうとしたのだと察していた。

 

「そのことだが、お前とミチルちゃんを連れ戻そうとしたんだが・・・後はな・・・」

 

ジンは周りを警戒するように見渡していた。怪訝に思うほむらだが・・・

 

視線で背後の天井を指す。ほむらはそこにあるであろう”監視カメラ”の存在を察した・・・

 

”バグギ”は”雷の力”を・・・それに近いモノならば”意”のままに操ることが出来る・・・

 

先ほどの”真須美 巴”は、能力こそは違うモノの様々な場所から見ていた・・・

 

故に”バグギ”もまた同じなのだろうと・・・・・・

 

「ジンお兄ちゃん。私の手を取って・・・」

 

「お、おう・・・」

 

暗がりではあるが、成長した”妹”は思わず見とれてしまう程の”美人”である。

 

そんな彼女が間近に迫れば、どんな男も胸をときめかせてしまう。

 

可憐さと凛々しさを備えた整った顔立ちと新雪のように白い肌の美女を間近でみれば猶更であった。

 

此処は”賭け”ではあるが、バグギに真須美 巴が”時間停止”の能力を伝えているか?

 

彼女の言動からして”バグギ”にそれを伝えていない可能性がある・・・それを見越してほむらは

 

「・・・楯を回して・・・」

 

袖の内にある楯を言われるがままにジンは回す。その瞬間、時が止まる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

バグギと暗黒騎士 呀の戦いは熾烈を極めていた。

 

雷剛が賭けると同時に周囲全体に強大な力を持つ”雷撃”が降り注ぎ、圧倒的な破壊を周囲に齎す。

 

『ハハハハハハハ!!!暗黒騎士!!!その刃を我に届かせてみよ!!!!』

 

魔導火を使い、炎を伴った斬撃を振るうが結界のように降り注ぐ雷により消滅する。

 

内心、呀はバグギの多彩な攻撃手段に舌打ちをするが、それで手詰まりになるようなことはなかった。

 

非常に手間を要する相手であるが、彼は狩ると決めたからには必ずバグギをこの手で喰らうと・・・・・・

 

魔導馬の機動力を持って雷を回避する。

 

通常でも早く動けるのだが、やはり”雷”による攻撃は早く、避けることは困難であり、避けずに受け止めるのは荷が重すぎる攻撃であった。

 

デスメタル製の鎧であっても”金属”には変わりなく、バグギの雷撃を通してしまうのだ。

 

太く逞しい両腕の筋肉が盛り上がると同時に強力な”雷”が轟音と共に集まり、渦を巻く。

 

『シャアアアアアアッ!!!!!』

 

自身もまた雷のようなエネルギー体に姿を変えて、呀へと向かって、突撃を行う。

 

呀は、雷剛の蹄音の力を響かせると同時に黒炎剣を閻魔斬光剣に変え、暴力的なエネルギーの渦と化したバグギを切り払うように大きく振るう。

 

呀の技の威力とバグギの力が互いに衝突することにより周囲一帯が巨大な爆発を発生しドームの区画が崩壊する。

 

巨大な爆発による炎上により第三ドームは一気に燃え上がった。

 

バグギの力はすさまじく、呀はその衝撃により魔導馬を一時的に消失してしまった。

 

鎧こそは消失しなかったが、降り注ぐ瓦礫に巻き込まれるようにして彼の視界が遮られてしまう・・・・・・

 

『やるではないか。我とここまで戦えるとは思ってもいなかったぞ』

 

バグギの声は、呀を讃えているようだが、久々に手応えのある”餌”を相手にできることに喜びを感じていた。

 

視界を邪魔する瓦礫を黒炎剣を振るうことで粉砕する。目の前には腕を組み、いやらしい笑みを浮かべているバグギの姿があった・・・・・・

 

『最近になって編み出した攻撃方法だが、お前には効くのかな?』

 

バグギは近くの鉄骨をまるで粘土を千切るかのようにして手に取り、それを手頃なサイズに丸めてしまう。

 

雷エネルギー・・・電磁エネルギーを作り出し磁力の反発を利用して、鉄の塊となったそれを超加速を持って呀に撃ち込む。

 

所謂、”レールガン(電磁砲)”である。

 

それを黒炎剣で防ぐが、威力は恐ろしく強力であり、剣を持つ手が痺れてしまうほどだった・・・たったの一発である・・・

 

笑みを浮かべながら”バグギ”はレールガンを容赦なく呀へと撃ち込む。

 

一発一発が重く、防戦では降ると悟り、呀は勢いよく大地を蹴り、目にも止まらぬ速さを持ってレールガンを回避し、バグギ目掛けて黒炎剣を突き立てるが・・・・・

 

「っ!?!」

 

『ククククク、ハハハハハハ!!!無駄だ!!!我にその剣は届かぬ!!!』

 

バグギの身体は一瞬にしてエネルギー体となり、呀の黒炎剣をすり抜けてしまったのだ。

 

雷そのものであるが為に実態が存在しないのだ。

 

そして、バグギは大きくその口を開き、呀の鎧に対し、噛みついたと同時に強大なエネルギーの奔流が呀を・・・バラゴの肉体に容赦なく流れていく。

 

「うぉおおおおおおおおおおッ!!!!!!」

 

ここ数年上げたことのない叫びを上げつつも、呀はその身体に”紫の魔導火”を纏わせる。

 

魔戒騎士でいう”烈火炎装”を使い、自身の防御力と攻撃力を底上げする技術である。

 

炎によりエネルギー体であるバグギは弾き飛ばされた。

 

バグギを弾き飛ばしたモノの肉体へのダメージは無視できるものではなかった。

 

息が荒くなるのを感じつつもバグギに対し、油断することなく見据える。

 

バグギは上空に飛び上がっており、自身の攻撃を防いだ暗黒騎士 呀に視線を向けていた。

 

『ククククク、フハハハハハ。良いぞ、良いではないか・・・だが、そろそろ飽きてきたな』

 

この戦いの間で見慣れているはずのバグギの嫌らしい笑みにこれ以上のない不快感を感じる。

 

『我としては、このままでもお前を喰らうこと等容易い。だが、余興を伴ってお前の最期としよう』

 

バグギは周囲に自身が作り上げた”機械人形”達をいつの間にか呼び寄せていたのだった・・・

 

呀もこの数には警戒色を強めていた。

 

本来ならば物の数ではない”下らない絡繰り”であったが、今の状況で加勢されたら非常に厄介であった。

 

一時撤退も考えるのだが、この暗黒騎士 呀が二度も相手を仕留め損なうなどあってはならないのだ。

 

そして、彼は未だに”彼女”を取り戻していなかった・・・暁美ほむらを・・・・・・

 

故に彼は撤退など選ぶつもりはなかった・・・・・・

 

『余興は派手に行うのが、我の趣向なのだよ。暗黒騎士』

 

バグギの身体が変化していく。雷エネルギーを纏うと同時に変化していく。

 

強烈な光を放つ球体へと変化したと同時に”機械人形”達を取り込み始めたのだ・・・

 

機械人形だけではなかった。第三ドーム全体が大きく揺れたと同時に敷地が・・・

 

第三ドーム施設周辺が重力に逆らい浮き始めたのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市では、突然の第三ドーム周辺の土地が浮かび始めた現象に戸惑いの声を上げていた。

 

「な、なんなんだ!?!アレは一体、なんなんだ!!!」

 

「こ、こんなことがっ!?!」

 

人々の前で浮かび上がった第三ドームの土地の上で何かが”産声”を上げるように咆哮を上げる。

 

それは伝説に伝わる”金色の雷獣”の巨大な姿だった・・・・・・

 

巨大な体躯はもはや高層ビルに匹敵しうる体躯を持ち、様々な金属を取り込み、それらを纏めるように電気が走った配線が纏わりついていた。

 

『ハハハハハハハハ!!!!我が名は”バグギ”!!!!伝説に伝わる雷獣とは我の事よ!!!!!』

 

悪意に塗れた”巨大な陰我”がアスナロ市の空に響いた・・・

 

 

 

 

 

 

 

ジンは第三ドームから遠く離れた場所に来ていた。

 

ほむらの話だと、第三ドーム全体が”バグギ”の領域そのものである為、戦いの余波は周囲全体に及ぶらしい。

 

根拠は”魔戒札”による”占い”である。

 

友人の京極 カラスキの話でも”バグギ”はアスナロ市全体の繁栄をそのまま利用している為、非常に厄介な存在と化していることも・・・・・・

 

ほむらの話の通り、まさか第三ドーム全体を浮かび上がらせた挙句の果てに巨大な姿まで見せていた。

 

「・・・あんなのこの世界に居ちゃいけない奴だろ・・・」

 

友人の言う”怪異”の領分を完全に逸れており、はっきり言って”災害”そのものだろうとジンは思った。

 

普通ならば絶望し、この場に居合わせた自身の境遇を嘆くところであるが・・・

 

あの場に向かっていった”妹”が上手くやってくれるとジンは確信していた。

 

その根拠は単純明快で暁美ほむらは、彼の妹だからだ。

 

「ったく・・・随分長い事、旅して・・・あんなことを言うようになるなんてな・・・」

 

姉 アスカと自分に甘えていたあの小さなほむらが自分にこんな事を真正面から言えるようになるとは・・・

 

”ジンお兄ちゃん。私は、これをバラゴの所に持っていく・・・私にしかできないことだから”

 

暗黒騎士 呀ですら苦戦する”強大な雷獣”の元へ行く妹を心配し、思わず声を荒げてしまったが・・・

 

”大丈夫。私はどんなことがあっても必ず生き抜くから・・・だから、カラスキさん達、エルダの所で待ってて”

 

まさか自分の”守る”定義である、自分の命を守り他者を助けることを彼女が理解していたことに・・・

 

妹が”必ず生き抜き、そして帰ってくる”と言ったのだ。

 

ならば兄である自分はそれを信じて待とう・・・

 

それが”兄”というものだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは一体?」

 

”魔戒札”による占いでも見ることが叶わないほど深い”闇”に覆われている”未来”ではあるが、多少ならば少し先を見ることが出来た・・・

 

だが、正確な像を持っておらず、不明確な砂嵐で覆われた十数年以上前の旧型TVの画像のようなものだった。

 

突如として発生した地響きと奇妙な感覚と現在の第三ドームの状況を把握するために、”混沌”の色を持った”翼”を展開させて飛翔する。

 

新たに得た”能力”侵食する”混沌の翼”は敵を攻撃するだけではなく、このようにな飛行することも可能だった。

 

そこでほむらは、見たのだった。

 

第三ドームを含む周辺の施設がすべて地上より浮き上がり、さらにはこの浮遊する大地に立とうとしている”魔雷 ホラー バグギ”の姿を・・・

 

そしてアスナロ市 全体に響く”バグギ”の宣言を聞いた・・・・・・

 

絶望を感じさせるには十分な邪気と力ではあるが、それに臆するという感情をほむらは持ち合わせていなかった。

 

”ミチル”が託してくれ、彼女と約束した”先の未来”に現れるであろう”13人目の彼女”が生きる世界を守ること。

 

その為には、あの”バグギ”の存在を許してはならない。

 

京極 カラスキは”バグギ”という脅威から”アスナロ市”を守る為に、彼は禁忌ともいえる手段に出た。

 

”暗黒騎士 呀”に助力を願うという手段に出だのだった。

 

彼はアスナロ市を見張る役目を負っているのだが、その実は自身の友人達を護りたかったのであって、役目については、ほぼ建前にしか過ぎなかった・・・・・・

 

ほむらは、先ほど再会した”兄”より託された”バグギ”の動きを封じる”雷清角”を持ち、今、バグギと戦っているであろうバラゴの元へと急いだ。

 

巨大な雷獣が吼えると周囲一帯が光に染まり、轟音ととも爆発音が響く。

 

衝撃によりほむらは、さらに上空へと吹き飛ばされてしまった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呀は黒炎剣を再び閻魔斬光剣に変え、それを大地に突き立てることで壁、楯としてバグギの広範囲による攻撃を凌ぐ。

 

元々強大な力を持つホラーであったが時代の変化による要因がさらに恐ろしい存在へと押し上げていたのだ。

 

これまでに戦った”ホラー”の中では群を抜いて強大な存在であるが、ここで彼はバグギを諦めるつもりはなかった

 

閻魔斬光剣を黒炎剣に戻し、呀は巨大な鋼鉄の怪物と化した”バグギ”を見上げる。

 

自身の”雷獣”としての姿を模しつつ、悪趣味なアレンジが加えられている様は見る者を恐怖と嫌悪感を抱かせる。

 

バラゴが抱いた印象は後者であった。

 

「ここまでとは・・・流石は古より伝わる”使徒ホラー”の一体」

 

正直に言えば、厄介極まりないバグギではあったが、バラゴは素直にその”力”を認めていた・・・

 

あの”力”を喰らうことが出来れば自分は、更なる高みへと至るであろう。

 

そのような考えは一瞬だけ過るが、何よりの関心は”暁美 ほむら”にあった・・・・・・

 

”束縛の刻印”との繋がりは、バグギの邪気により妨害されており感じることが出来なかった。

 

『これも防いだか・・・フフフフフフ。良いぞ、それでこそ喰らいがいがあるというモノよ』

 

大口を開けているバグギだが、様々な資材で作り上げた”巨体”はの周りには紫電が走り、その膨大な”力”を持て余していた。だが、バグギはその力をこのまま遊ばせておくつもりはなかった・・・

 

『そろそろ頃合いか・・・』

 

”頃合い”という言葉にバラゴは、バグギが何か企んでいるのではと察していた。

 

ここまでの”力”を見せつけながら、これ以上何を行うというのだろうか?

 

『人間達が目指している”力”を再現しよう思うのだよ・・・魔戒騎士はこれを想像すらできまい・・・』

 

何を言っているとバラゴは疑問符を浮かべるが、”バグギ”が行おうとしていることは恐ろしく”破壊”を伴った何かであることだけは間違いなかった。

 

バグギの身体となっている巨大は電気を帯びており、所謂、物体が電気を帯びている”荷電”の状態にあった。

 

荷電した粒子をバグギは、その力を持って収束させる。

 

巨体そのものが粒子加速器でありその中で電圧を掛け、亜高速までまで加速させて、”力”を”荷電粒子ビーム”を解き放ったのだった。

 

凄まじい熱を放ちながら照射し、周囲の物体を原子崩壊により消滅させた、

 

破壊の余波を間近で受けた呀は、足元の大地が崩れると共にまるで木の葉のように吹き飛ばされてしまった。

 

バグギの放った”荷電粒子ビーム”の威力は広範囲に及び、自身が浮かび上がらせた大地を超えて真下のアスナロ市の都市群を横切るその威力により街の至るところが炎上し、倒壊していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市よりバグギの行動を外部より見ていた青年 明良 二樹はあまりの力に苦笑いを浮かべていた。

 

嵐を過ぎるのを待っていた聖 カンナもまた”雷獣”の力に自らの体が震えるのを感じていたのだった。

 

「アレって確か荷電粒子ビームだよね・・・あんなモノを再現するなんてどんな怪物なんだ」

 

現在の人類が”夢想”する”破壊の力”は、発展した科学をもっても実現までかなりの時間を有すると言われている。

 

何となく存在を知っていたが、アレを再現してしまう”バグギ”は想像を超えた、まさに次元の違う”怪物”である

 

待機している魔号機人 凱は恐れるという”感情”がないのか、命令とあらば討滅に向かうと事前に話していた。

 

だが、魔号機人達を全機投入しても”バグギ”には敵わないであろう。

 

「今は逃げるのが正解だけど・・・事の結果だけは見届けていた方が良いね」

 

明良 二樹は既に退場してしまった”遊び友達”も一緒に居ればと思わなくもなかったが、このまま逃げたらあの”雷獣”に屈したことになる為、せめてもの反抗として、この結末だけは見届けたいと思うのだった。

 

アスナロ市の至る所では、”雷獣”の影響により混乱しており”邪気”が蔓延し、様々な”怪異”もまた活発になっていた。

 

当然のことながら”魔女”や”使い魔”らも動いており、それらを対処するように戦う魔法少女達の姿もあった。

 

プレイアデス聖団を離れ、自らの道を進むことを選択した 若葉 みらい

 

犠牲となった友達を弔うために一時的に離れていた宇佐木 里美

 

二人は魔法少女として魔女と使い魔らと交戦していた。互いに違う場所に居るのだが、目的は同じであった。

 

二人とはさらに別の場所では、

 

「アタシに楯突くなんて!!10年早いんだよっ!!!」

 

二丁のハンドガンを連射させ、向かってくる無数の使い魔を相手取るのはワインレッドのボディスーツを着た魔法少女・・・プレイアデス聖団に復讐を誓っていたユウリであった・・・

 

それぞれの場所で戦いが繰り広げられており、アスナロ市全体はまさに混乱の極みにあった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『ハハハハハハ!!これは愉快愉快!!!この破壊力!!我に相応しい力よ!!!!』

 

自身の”力”である”雷”を超えた巨大な力を得た”バグギ”は”荷電粒子ビーム”に満足していた。

 

”荷電粒子ビーム”を知ったのは、この地に現れ、人の”知恵”の祭典である”科学博”の中にあった”医療用機器”の中にあった癌細胞のみを焼失させるモノを知った時だった・・・

 

古の時代より人の知恵は想像を超えた領域までに発展し、その中にある”武器・兵器”関連の知識は”バグギ”にいつかは人が手に・・・人が手にしてはいけない”荷電粒子ビーム”というモノを齎してしまったのだ。

 

アスナロ市第三ドーム全体、この大地全体が崩れ出した。

 

バグギの放った荷電粒子ビームのあまりの威力により大地全体が崩壊してしまったのだ。

 

崩れた岩、瓦礫、半壊した建造物が真下のアスナロ市へと落下していく・・・・・・

 

呀は、崩れた足場から飛び比較的安定している大地へと移る。バグギの巨体は・・・

 

「その割にはボロボロではないか・・・」

 

荷電粒子ビームの”力”は凄まじく放った”バグギ”自身にも影響しており、精製した”巨体”が崩れていたのだ。

 

呀は鎧の内側で嘲笑する。嘲笑したところで事態が好転する訳ではなかった。

 

バグギは、呀の嘲笑などどこ吹く風と言わんばかりに・・・

 

『ハハハハハハ!!!!この身体は所詮は使い捨てよ!!!あと一発ならば耐えられよう!!!』

 

内心、まだ一発放つことが出来るのかと冷や汗かくが、崩壊した巨体の装甲が一部露出し、眩い輝きを持つ”バグギ”本体の姿を確認できたのは幸いであった・・・

 

装甲が健在であれば”勝機”は薄かったのだが、あのコアとなった”バグギ”を討つことが出来れば、こちらの勝ちである。

 

バグギは呀に僅かな勝機を与える気などなく、荷電粒子ビームの発射態勢に入っていた。

 

この一発で確実に呀を消し飛ばす気であった。暗黒騎士を喰らうという宣言は既に撤回されており、新たに得たこの”力”を存分に振るいたいという欲求だけが”バグギ”に存在していたのだった・・・・・

 

周囲の電気エネルギーが嵐のように吹き荒れ、近づくことすらままならない。

 

『ハハハハハハ!!!暗黒騎士!!!このまま望みを果たせずに消し飛べ!!!!!』

 

チャージされた”荷電粒子ビーム”が発射されたと同時にバグギが作り上げた巨体が溶解し、崩れていく。

 

先ほどの一発は、試射であり、この二発目こそが本番であった。

 

亜高速で放たれた一撃を回避することは、屈強な魔戒騎士であっても困難であった・・・

 

暗黒騎士であっても・・・だが・・・・・・

 

迫りくる光と圧倒的な熱量を感じつつ、呀は屈することなく剣を構えるが・・・・・・

 

「間一髪ね・・・バラゴ」

 

黒炎剣を握る手をか細い手が触れた瞬間、この場の時間が停止したのだった・・・・・・

 

モノクロになった世界にバラゴはこれこそが、ほむらの使う”時間停止”の魔法であると認識した・・・

 

半歩前に歩み出た”ほむら”の姿に彼は驚愕した。

 

(か、母さんっ!?!)

 

少女であるほむらが、大人の姿に成長しており、その姿はかつての母の姿そのものだった・・・

 

黒い長い髪と新雪のような白い肌の美しい女性は、記憶の中にしか存在していないのだ・・・・・・

 

思わず口に出したかったが、戦いの最中は言葉を発することがほとんどない為、幸いにもほむらに己の内を曝け出さずにできた・・・・・・

 

「ジンお兄ちゃんも同じ反応をしていたわ・・・これでアイツを倒せる?」

 

ほむらは、左手にバグギの動きを封じる法具”雷清角”を呀に見せる。

 

「あぁ、それだ・・・うっかりしていたよ。私もまだまだだということか・・・・・・」

 

ほむらが攫われていたことで頭に血が上り、そのまま飛び出してしまったことで”雷清角”を持たずに”バグギ”に挑んでしまった。”雷清角”で動きを封じてしまえば・・・奴はこの黒炎剣からは逃れられないだろう。

 

自らの甘さに自嘲してしまうが、その自嘲もほむらの手に現れた影響で止まってしまう。

 

「くっ!?!手が熱い・・・・・・」

 

呀の鎧はかつてのソウルメタルからデスメタルへと変質しているのだが、その性質は剣や鎧に加工されたモノを女が触れると”身体が砕けてしまう”ところは変わっていないのだ。

 

ほむら自身はバラゴが目を張るほどの成長をしているのだが、デスメタル製の鎧に触れて無事でいられるはずがない。

 

直ぐに彼女の身を案じ、その手を振りほどこうとするのだが・・・

 

「ダメよ!!バラゴ!!!まだ、アイツを倒していない!!!」

 

「それでは、君が・・・」

 

彼らしくもない身を案じる言葉にほむらは、改めてこの暗黒騎士は自分を大切にしている事を察する。

 

だが今は、自分の身よりも果たさなければならないことがある。それは・・・

 

「貴方が直ぐに決着を付ければいいのよ。私がそこまで貴方を導くから・・・」

 

ほむらの手はデスメタルの影響でも砕けることはなかったが、火傷を思わせる傷が広がっていた。

 

彼女の美しい体に傷を付けてしまったこと・・・

 

彼女にここまでさせた”バグギ”、自身の不甲斐なさに怒りを感じたのだった・・・

 

「分かった、ほむら君。バグギの直ぐ近くまで来たら、そのまま離れてくれ」

 

「分かっているわ。自分の無茶はあまり長い時間を掛けられそうにないもの」

 

バラゴの心を落ち着かせるようにほむらは、不安な顔を見せぬように笑いかける。

 

気丈に振舞おうとする姿は、今までの彼女からは考えられなかった。

 

良くも悪くも14歳の少女でしかなかったはずなのに・・・・・・

 

ほむらの導かれるままにバグギの近くに接近し、”雷清角”を突き立てて動きを封じる。

 

まさに”必勝”の手であろう。だが、それで良いのだろうか?

 

これでは、彼女を傷モノにした”自身の弱さ”を認めることになるのではないかと・・・

 

そんな時に浮かんだのが、場違いではあるが迫りくる”荷電粒子ビーム”はあの時に見た”波”によく似ていた。

 

(そうだ。あれは僕がまだ大河の元で修行をしていた頃の事だった・・・)

 

あの日、大河より魔戒騎士の剣で波を斬れという課題を出されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

”ひとつ、お前の腕を見たい。打ち寄せる波を斬ってみろ”

 

”波を斬る?そんな真似をして何になるんです?”

 

”つべこべ言わず、やってみろ。それとも、お前、水が怖いのか?”

 

”怖いものか!ただ僕には分からないのです。魔戒騎士の剣はホラーを葬り去る為のモノ。このソウルメタルはどんなに堅い金属をも貫く。手応えのない液体を斬って何になるのですか?”

 

”水を侮ってはいかん。一滴の水が山の頂より湧き出て河となりやがては広大な海へと注ぐ。その海が無ければ我々は存在しない。すべての生き物は水のおかげで生を受けた。このソウルメタルも塩水で酸化すれば切味は鈍るであろうそれだけではない。打ち寄せる波は長い歳月をかけて岩を侵食し、様々な形状を作り出す。激しい水流を浴びせれば金属だって切断できるのだその水を斬るということが如何に奥深い事なのか、お前にはわからないのか?”

 

 

 

 

 

 

 

 

呀・・・バラゴが思い出したのは、かつての師である黄金騎士 牙狼 冴島 大河との修行の光景だった。

 

 

 

 

 

”とにかくやってみるんだ。お前ほどの魔戒騎士ならば打ち寄せる波など押し戻すぐらい造作もないだろう”

 

 

 

 

 

 

 

(そうだ・・・このバグギの攻撃は”波”だ・・・打ち寄せてくる波そのものではないか)

 

師である大河の言葉の意味をあの頃は理解が及ばずに、渋々課題をこなすべく挑戦したのだった・・・

 

(あの時、大河に指摘された・・・あの頃、できる限り封印して、忘れたかった忌まわしい記憶を)

 

彼は波を押し戻した。だが、自分の振るった太刀筋に視えたのは自身が心の奥底に封印していた忌まわしい”過去”だった・・・

 

見えたのは、今も憎い”あの男”とその手に掛けられた”愛おしい母”の変わり果てた姿だったのだ・・・

 

過去に目を背けていた自身の弱さに涙したあの頃の自分を大河は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”その過去がお前の太刀を誤らせている。それを乗り越えるんだ。俺はお前を見捨てたりはしない”

 

 

 

 

 

 

 

 

大河のその気遣いすらも自分を苛立たせた。最強の魔戒騎士にすら気遣わせる”自身の弱さ”に・・・・・・

 

それすらも振り切り、メシアの・・・闇からの誘いを受けるに至った・・・・・・

 

ならばこの膨大な熱を含んだ巨大な波をこの一太刀で斬る・・・・・・

 

それこそが、自身の”弱さ”を断ち斬る手段であり、暗黒騎士 呀の勝利であるのだから・・・・・・

 

「・・・・・・ほむら君。手を放してくれ・・・・」

 

「バラゴ・・・何をするつもりなの?雷清角で動きを封じるのが先・・・」

 

呀の鎧はバグギの攻撃により一部が欠損しており、白い眼の部分から装着者であるバラゴ自身の目が自分を見ていたのだ。

 

「奴を斬る・・・雷清角は確実に仕留められる場面で使うべきだろう」

 

切り札は直ぐに使うのではなく、やれることをやってから使うべきだと・・・・・・

 

かつて大河は自分にこう話していた。牙狼剣は時間さえも切り裂くと・・・・

 

牙狼にできることがこの暗黒騎士 呀にできないことはない。

 

呀 黒炎剣を構え、膨大な熱と破壊力を持つ”荷電粒子ビーム”を見据える。

 

ほむらはバラゴの意図を察する。彼が一度きりの勝負に出たことを・・・・・・

 

手を放したと同時に止まっていた時間が動き出し、荷電粒子ビームが暗黒騎士 呀を貫かんと迫る。

 

呀は亜高速で迫る”荷電粒子ビーム”よりも早く黒炎剣を振るう。

 

その太刀筋は正確にバグギを捉えており、”荷電粒子ビーム”を貫き一直線にバグギに必殺の太刀が届いたのだ。

 

『なっ!?!なにがあった?!!我が・・・何より速く、強大な我が・・・たったの一振りで・・・』

 

そのたった一振りの太刀がバグギに致命傷を与えていたのだった・・・・・・

 

消えていく自身の身体に呆然としながら、バグギは自身が一瞬にして暗黒騎士 呀に敗北した事実が信じられなかった・・・・・・

 

呀の一太刀は、膨大な荷電粒子ビームのエネルギーを切り裂き、そのままバグギ本体へと押し戻していた。

 

崩壊する自身とさらには自身が築き上げた巨体、居心地の良かった”寝床”であったアスナロ市 第三ドームもまた運命を共にするように膨大な光と共に消え去る。

 

『認めるか・・・このバグギが・・・こんな結末を・・・・・・』

 

人々に災いを振りまいてきた雷獣の呆気ない最期であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 続  呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 了

 

 

 





あとがき

アスナロ市編 は次回で完結です。

バラゴが意地になって雷清角を使わないで倒してしまいました。

それに至る流れを作ってくれたほむらは、彼の勝利の女神なのですかね?この場合。

ほむらが傷ついたことで自分の弱さを改めて知って、それを認めてなるものかと言わんばかりのバラゴの意地でした・・・・・・

正直バグギを描いていて、こいつって設定資料を眺めてみると色々できるので正直にこんな奴倒せるのかと思わなくもなかったです(笑)

アスナロ市編では、色々やりすぎてしまった感がありますが、呀 を圧倒できる戦闘能力を持つホラー、強敵としてみれば、これで良かったと思います。

本当に鋼牙は本編でどうやってバグギを倒したのでしょうか?

バグギは多分、この作品では最強格だったのではと今更ながら思います(汗)

荷電粒子ビームなら、不思議金属ソウルメタルも破壊可能かもしれません。

破壊するならするで膨大なエネルギーが必要だと思います。

真須美 巴も今回で退場。二度と魔法少女喰いの脅威が訪れることはないでしょう・・・

思えば、彼女が一番”アスナロ市編”で動いてくれていたと思います。

唯一生き残ったのは、フタツキさん。今後の彼の活躍は如何に?




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