呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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今回はエピローグ的な話です。

バグギを倒した後の始末記のような話・・・

アスナロ市での人々、魔法少女らのその後です。


呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 了

 

アスナロ市の何処かに存在するプレイアデス聖団の拠点に白い影が横切った。

 

白い影は、様々なカプセルが並んでいる部屋を通過し、そのまま一直線にある部屋に保管されているファイルを見つけた。

 

「まさか・・・真須美 巴が作り上げたイレギュラーのお陰で目的のファイルが回収できるとは・・・・・・」

 

白い影は魔法少女では馴染みのあるキュウベえであった。

 

彼がアスナロ市で暁美ほむらに回収を依頼していたことだったが、彼女は彼女でアスナロ市での出来事に手一杯だったためにすっかり記憶の中から消去されていた。

 

故にキュウベえ自身が動かなければならなかったが、誰も居なくなったプレイアデス聖団の拠点に侵入し、”蓬莱暁美”のファイルを自身の手で回収を行ったのだ。

 

目的を果たしたのなら、早めに退散するように彼は姿を眩ませた。

 

その部屋には、カプセルに浮かぶ”ミチル”に酷似した幼い少女が浮かんでいたが、彼は興味がなかったのか一瞥すらしなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 京極神社

 

人知を超えた戦いというモノがあるのならば、まさに今夜行われている戦いこそがそれであろう・・・・・・

 

京極 カラスキは神社の敷地より浮遊していた”アスナロ市 第三ドーム”が崩壊していく光景を眺めていた。

 

「やってくれたね・・・バラゴさん・・・これでおいらも安心できるよ」

 

バグギが放っていた異様な邪気が消滅したのを感じる。暗黒騎士 呀は”魔雷ホラー バクギを討滅したのだ。

 

「こ・・・こんな戦いが・・・まさか・・・・・・」

 

浅海サキは、街で起こっていた恐ろしい戦いを遠くではあるが見ていた。あの恐るべき雷獣を伝説を打ち破った存在に畏怖の念すら感じていた。

 

「お前達が相手をしている魔女と魔戒騎士達が狩っているホラーでは、闇の深さが違う・・・特に使徒ホラーとなれば猶更だ」

 

呆然としていた浅海サキにエルダは、彼女なりにではあるがフォローを入れる。

 

使徒ホラーを倒した主であるバラゴの強さもそうだが、彼女が気に掛けていたのは・・・

 

「・・・・・・ほむら、よくぞバラゴ様を奮い立たせてくれた・・・・・・」

 

バグギを倒した主の勝利の傍らに居たのは、成長した”我が弟子”であることを思うとエルダは、誇らしさを感じていた。

 

おそらくは、彼女は自分が思うよりも大きく変わっているであろう。

 

今しがた自身に”魔戒札”が知らせてくれたのだ。主であるバラゴの心を慰撫するだけではなく、その道を進むうえで彼女は・・・きっと・・・・・・

 

無表情のエルダがこの場の誰にも知られずに笑みを浮かべたのは一瞬の事だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

崩壊する第三ドームの瓦礫はアスナロ市に降り注ぐが、幸いにも周辺の住宅密集地には落ちることはなく、被害は最小限に抑えられた。

 

バグギの放った荷電粒子ビームの影響は至る所にあり、様々な場所で火災が起きていた。

 

それでも人々は立ち上がる。この状況下でそれぞれのできることを行っていた避難活動、誘導、消火活動、救助活動等、多岐に渡って・・・・・・

 

それらの光景をほむらとバラゴは直ぐ近くの塔にの上から見下ろしていた・・・・・・

 

バラゴは顔を見られたくないのかフードを目深に被っている。

 

「・・・・・・魔戒の者は一般社会の問題に首を突っ込んではいけないか・・・・・・」

 

ほむらは眼下で逞しく活動をしている人達を助けたいという思いに駆られるが、自身の役目は”バラゴ”と共に脅威であった”雷獣”の討滅であり、それが終わったのならこの場から去らねばならないとエルダから教えられていた。

 

「そうだ。もう僕達にできることは何もないさ。目的を果たせたのなら、彼らの事は彼らで行うだろう」

 

「そうかもね。私達のできることはもうないのね」

 

振り返るほむらにバラゴは改めて驚いていた。14歳の少女から大人の女性に成長した姿に・・・・・・

 

「バラゴ・・・少しだけ話を聞いてくれるかしら?」

 

「・・・・・・何を話したいんだい?ほむら君・・・・・・」

 

「えぇ、私は人間というモノはどうしようもなくて救いようのないものだと、ずっとずっと思っていた・・・だけど、今回の事で”人間”は愚かだけど救いようがないわけじゃないって・・・・・・」

 

この時間軸で知った”陰我”。人間の邪心が生み出した”闇”・・・・・・

 

そこから魔界より現れる魔獣ホラーの存在に更に彼女は、人の救いようのなさを思い知るのだが・・・・・・

 

「気が付かなかっただけで、すぐ近くに気にかけてくれる人が居て・・・命を懸けて、こんなどうしようもなかった私に伝えてくれたあの娘が短い間だけど・・・教えてくれたことを・・・・・・」

 

その娘とは、あの人の業の果てに生み出された”彼女”のことであるとバラゴは察した。

 

”彼女”の命を懸けた行いが”ほむら”を変えたというのだろうか?目の前のほむらの姿は未だに信じられなかった。

 

「それに、こんな状況でもこの街の人達は今、あの人たちのやれることをしているわ・・・」

 

思えばこの街の”呪い”、”陰我”を見守っていた京極神社の神主 京極 カラスキもまた現れた”バグギ”に対して、暗黒騎士 呀に助力を願うという禁忌を犯してでも、彼自身の大切な友人達の住まう”世界”を守ろうとしていた。

 

”兄”もまた決め手となるべき”雷清角”を届ける為に自分達の所へ来てくれた。

 

だが、その”雷清角”が在っても最後の最後まで勝機を掴もうと動いてくれていたのは・・・・・・

 

「まさか”雷清角”を使わないで、あの雷獣を一太刀で斬った貴方は本当に強かったのね、バラゴ」

 

暗黒騎士 呀。魔戒騎士の逸れモノである忌まわしい存在であるが、そんな存在でも結果的に”アスナロ市”をバグギの脅威から護ったのだ・・・・・・

 

笑いかけてきたほむらにバラゴは、今まで誰も聞かせてくれなかった言葉を貰っていたのだ・・・・・・

 

”強い”・・・”弱さ”を憎み、ひたすらに”力”を求めてきた彼が求めてやまなかった・・・・・・

 

その言葉を噛みしめるようにフードを目深に被ったバラゴの頬に一筋の涙が流れた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

昨夜の騒動より一夜明けるが、人々は休まずに街の復興を行っていた。

 

手の空いているモノはできることから、瓦礫の撤去から怪我人の看病、さらには炊き出し等・・・・・・

 

そんな中に彼女らは居た。

 

「こっちです!!皆さん、こちらに並んでください!!!」

 

炊き出しを手伝っているのは、若葉 みらいであった。彼女はここで昨夜の”騒動”で自宅に帰れなくなり、もしくは避難してきた人達の支援活動に参加していたのだ。

 

「みらいちゃん。おにぎりできたよ!!」

 

珍しく声を張っていたのは、宇佐木里美だった。

 

彼女もまた魔法少女ではなく、一人の少女として活動していたのだ。

 

「おやっさん!!!次行ってくる!!!」

 

「おいおい、おやっさんはやめろ・・・俺はそんな年齢じゃないんだが・・・・・・」

 

「立花って名字と、喫茶店のマスターって言ったら、そう呼びたくなりますよ」

 

立花 宗一郎がぼやいている傍でジン・シンロンが笑いながら話しかける。

 

「しっかし元気な子ですね・・・あの子、何処かで見たことがあるんだよなぁ~」

 

ジンは炊き出しのおにぎりを皿一杯に載せて駆け出した少女 ユウリの後姿をみて呟く。

 

「そういえば、昨日は何処に行ってた?色々と大変だったんだぞ」

 

昨夜の出来事は未だに信じられない出来事だったが、一晩明けてみれば何事もなかったように事が終わっていたのだから・・・・・・

 

「それよりもお前は良いのか?妹さんのことは?」

 

「それがですね・・・ほむらの奴、オレが思う以上にしっかりしてたんですよ。妹って奴は、兄が少しでも目を離すとあっという間に成長するんもんだなって」

 

立花 宗一郎は、普段持ち歩いている”探し人のチラシ”をジンが持っていないことに改めて気づき、さらには既に妹に出会っていることを察した。

 

「だから・・・ここでオレはオレのやれることをやっておかないといけないんですよ。ほむらがやれることをやったようにね」

 

そう呟きながら休憩に区切りをつけて、ジン・シンロンは瓦礫の撤去作業に入っていった・・・・・・

 

撤去作業場に行くと浅海サキが作業着を着て瓦礫に交じっていたガラス片を金ばさみで回収していた。

 

「サキちゃん。少しは休憩したらどうだ?魔法少女ていっても生身には変わりないんだろ?」

 

「いえ、まだやれます。そもそも私が原因ですから・・・・・・」

 

浅海サキは黙々と作業をしていた理由は言うまでもなく”伝説の雷獣”という”脅威”をアスナロ市に呼び込んでしまったのが自分であったことを彼女は強い自責の念に駆られていたのだ。

 

「あの雷獣はもう居なくなったんだ・・・サキちゃんの行動が呼び込んでしまった事を今も後悔する必要はないだろ」

 

「ですが、私達が・・・あんな事をしていたから、こんな事に・・・・・・」

 

本来ならば自分達が責任を取ってあの”雷獣”を倒さなければならなかったのに・・・それを・・・

 

他の者達に押し付けてしまったことが悔しく、それでいて後悔していたのだった・・・

 

「自分の事しか見えてなくて、みっともないところを見せちまった気持ちは分かるぜ。こんな事を言っても、お前は何を言っているんだと思われかねないけどな」

 

ジンは過去に自身もまた”愛した少女”の死を嘆き、自分の事しか見えずに、支えなければならなかった”妹”を支えることが出来なかったことは、今でも後悔している。

 

その結果、ほむらは魔法少女の契約を結んでしまったのだから・・・・・・

 

もしもあの時、ほむらの事を支えていたら彼女は魔法少女になることはなかったのだろうか?

 

そんな”あり得たかもしれない未来”を考えでも仕方がない。その未来が訪れることはないのだから・・・

 

「今を何とかしてこその”その先”なんだろうよ。ほむらは、オレよりもずっと”先”を見るようになったから、オレはそんなほむらに胸を張れるように”兄”として居たいんだよな、これからはな」

 

普段なら、反発する浅海サキだが、自然とジンの言葉が素直に入ってきた。

 

後悔一つしたことがない”人生”は存在するのだろうか?

 

人は多かれ少なかれ”後悔”を内に秘めながら生きていく。その”後悔”とは、一生向き合わなければならない。

 

無かったモノとして”目を背ける”か”忘れ”ようとするかもしれない。

 

だが、それではふとした切っ掛けでその”後悔”が大きなモノとして自身を覆いつくし、潰されてしまうこともあり得る。

 

「これからですか・・・」

 

浅海サキは、自分達に”希望”を見せようとした”和沙ミチル”にとって、残された”プレイアデス聖団”は胸を張れることをしていただろうかと思い返した。否である。

 

だからこそ、自分達の過ちを知ったからこそ、この先をどのようにして生きていく事こそが残された”プレイアデス聖団”のやるべきことなのだろう。

 

「まぁ、そこはサキちゃんの気持ち次第だと思うぜ。オレは説教とかそういうことをいう柄じゃないしな」

 

「でも、貴方はあのほむらさんにとっては、良いお兄さんだと思いますよ」

 

自身を格好悪い兄だったと語っていたジンに浅海サキは、傍でしか見ていなかったが二人は血こそは繋がっていなかったが良い兄妹であると素直に感じていた。

 

「サンキューな。そう言ってもらえるとオレも嬉しいわ」

 

笑いながら二人はそれぞれの作業に戻っていった・・・

 

「ふぃ~~、久々の肉体労働は結構、肩にくるんだよねぇ~~」

 

赤い髪を揺らしながら、メイ・リオンは重い瓦礫を退かし、一息ついていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 京極神社

 

ほむらは、昨夜バラゴと共に帰還してから、疲れてしまったのかそのまま意識を失い、眠りについてしまった。

 

バラゴもまたバグギとの戦いによる傷と疲労により、彼自身もまたほむらとは別の部屋で治療に努めていた。

 

彼女の傍らではエルダが成長したほむらの姿を見ていた。

 

いつものように無表情であるが、どことなく表情が和らいでいた。

 

魔法少女というよりも彼女の変身は一種の”魔戒の装備”に近く、侵食する”黒い混沌”の翼に至っては、”陰我”に由来するモノを炎のように焼き尽くす”性質”を持っていた。

 

魔戒騎士に近い攻撃力を得ていたのだ。

 

ほむらは、魔法少女というよりも魔戒導師・・・とも呼べず、女でありながら魔戒騎士に限りなく近い存在に変わってしまった。

 

現在はまだ魔法少女のようにソウルジェムに”魂”があり、変身を行うのだが、いずれは”ソウルジェム”の器さえも砕き、自身の”魂”を取り戻すかもしれない・・・・・・

 

故に彼女の”希少性”は、魔戒騎士、法師、番犬所、はては元老院も目を付けるであろう。

 

状況によっては彼女をホラーを倒す為だけの道具に仕立てる可能性も考えられる。

 

または”突然変異”でもある彼女の”血”を使うか、浅ましい感情を抱く”魔戒騎士”も現れるかもしれない。

 

そのことを考えると、何故か怒りに似た不快感を感じる。自身もまたバラゴの下僕であり道具でしかないのに。

 

矛盾したそれでいて身勝手な想いなのだが、エルダは久々に感じる自身の感情が心地よかった。

 

ほむらの役割は主であるバラゴの心を慰撫する”役目”であったのだが、彼女は今やそれすらも超えようとしている

 

そんな彼女を”師”として鍛え上げられたことに”エルダ”はかつて闇に堕ちた時に、捨て去った想いが息を吹き返していたことに気づく・・・・・・

 

(・・・・・・最後の魔戒導師として生きてきたが、まさか闇に堕ちて魔戒導師を継ぐことが出来るお前に出会えるとは、奇妙な縁もあったものだな・・・・・・)

 

エルダはほむらの頬を壊れ物を扱うように触れる。

 

かつて”魔戒導師”として、後継者を育てようと思わなかった訳ではなかったが、魔戒導師の素質を持つ者はほとんどいなかった為、自分が最後の”魔戒導師”になると考えていたのだが・・・

 

そして、暁美ほむらは、魔戒導師として”大成”するであろう・・・

 

故に彼女は、主である バラゴと共に歩むべき存在なのだと・・・・・・

 

彼女は衣装の内側より黒い革製の手袋を取り出し、ほむらの枕元に置く。

 

彼女の手は、呀の鎧を素手で触れてしまったことにより酷い火傷に似た傷で覆われていたのだ。

 

如何なる治癒も癒すことが叶わないほどの”邪気”の傷跡なのだった・・・・・・

 

それだけ”主”である暗黒騎士 呀の”陰我”が強いのだと思い知らされる。

 

その傷跡を隠すためにエルダは、特別に編んだ黒い手袋を彼女に用意したのだ。

 

(・・・今はゆっくり休むがいい。私が倒れたとしてもお前ならば、上手くやれるだろう・・・)

 

明日には見滝原へ戻ることになっている。だが、見滝原で起こる”先の未来”には・・・・・・

 

”バグギ”と同様・・・・・・もしかしたら、それ以上の”何か”が息を潜めているのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

京極 カラスキは境内であるものを作っていた。それは大きな石碑であった。

 

以前より考えていたのだが、実際に作ろうと思うと躊躇してしまい、今の今までお預けになっていたのだが・・・

 

「おいらも何をやっているんだがと思わなくもないんだが・・・ほむらちゃんのお願いだから仕方ないか」

 

カラスキの手元には昨夜戻ってきたほむらから渡された”ソウルジェム”の欠片があった。

 

”供養”してほしいと願われた時に、以前から考えていたことを実行に移すことにしたのだ。

 

「”少女達の祈りの石碑”ってところか・・・」

 

その石碑に特殊な法具を使い、一人の少女の名を刻む。”和沙 ミチル”と・・・・・・

 

さらには、”ミチル”の名をその下に・・・

 

「今のところ分かっている魔法少女の名はこれぐらいか・・・」

 

その石碑は居なくなった”魔法少女”達の名前が刻まれていた・・・・・・

 

望むのならばここには、新たに魔法少女の名を刻むことが出来る。

 

それは、残された者たちが”彼女”達を忘れないという意思と供養を願うための・・・・・・

 

「おっとっ!?忘れてた、お前さんの名前も刻んどくよ。死んだら皆、仏だからね」

 

一瞬、躊躇するのだが、彼女の名前も刻んでおく。”真須美 巴”・・・・・・

 

「しかるべき供養をしないと・・・怪異は何処かで息を吹き返すからな」

 

もはや魔法少女というよりも”ホラー”ではないかと思う彼女であったが、一応は供養しておかないと祟られるかもしれないので念入りに行うのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市 第三ドーム跡

 

数日後に開催されるはずだった”科学博”の会場は、その痕跡すらないほど崩壊していた・・・・・

 

様々な施設の残骸が無造作にオブジェのように佇んでいる。その跡地をある青年が見下ろしていた。

 

「バグギは倒されたか・・・良くやったものだよねぇ~~」

 

明良 二樹は、考えうる限りで最も恐ろしい力を持ったバグギが倒された事、それを倒した暗黒騎士に彼なりの賞賛の言葉を贈るのだった。

 

「あぁ~~、ここに居たぁっ!!!もう~~、此処に居るなら居るって言ってよねぇ~」

 

背後から騒がしい声が響いてきた。振り返ると彼よりも少しだけ年齢の若い女性が駆け寄ってきていた。

 

「ごめんね。復興作業でここまで来てたからね、それよりも何故、ここに来たんだい?」

 

この女性と会うのは、今夜遅くの予定だったのだが・・・・・・

 

「それなんだけどね、巴ちゃんが亡くなったってメールが来て、それであの子が残した”魔導具”を大量に納めた倉庫が見つかってね!!それをフタツキに知らせたかったんだ!!!」

 

「そういえば、自分が死んだらこのメールを見ろって言ってたけど、まだ見ていなかったや」

 

”遊び友達”が居なくなったことに彼なりに悲しみを感じていたようであった。

 

「そういう君はあまりショックじゃないんだね・・・そういうもんなのかい?魔戒法師っていうのは・・・」

 

「仲間が死ぬなんて日常茶飯事だよ。私達の場合は・・・ホラーにやられるのも、味方に裏切られるのもね」

 

真須美 巴から聞いた”魔戒法師”像からかなりかけ離れていると明良 二樹は思う。

 

服装も一般人のそれであり、法衣等は身に着けていない・・・

 

このアスナロ市で見た魔戒の術を使う”暁美ほむら”を見ると、彼女はかなり欲望に忠実のようだった・・・

 

「それが君だからかな・・・良いよ・・・早速、巴ちゃんの遺産を見に行こうか」

 

「この香蘭ちゃんが案内するね♪フタツキ♪」

 

二人は、アスナロ市 第三ドーム跡に背を向けるのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

早朝のアスナロ市の駅を見滝原へ向かって列車が走り出した・・・・・・

 

走り去る列車をジン・シンロン、メイ・リオン、京極 カラスキらが見送る。

 

軽く抱擁を交わした後、言葉こそはなかったが穏やかな雰囲気であった・・・

 

列車が見えなくなった後、三人はアスナロ市の復興作業へと戻っていくのだった・・・

 

彼女は窓よりここ数日の事を思い返していた・・・・・・

 

(最初は・・・どうしてこんな所にと思わなくもなかったけど・・・今は此処に来てよかった・・・)

 

ほむらは、列車の車窓より離れていくアスナロ市を眺めていた。

 

今この場に居るのは、エルダと自分の二人だけだった。

 

バラゴは、アスナロ市から一旦”東の管轄”へ向かってから、見滝原へ戻ることになっている。

 

彼が何をしているのかは分からないが、少なくとも真っ当な事ではないと彼女も察している。

 

それがどうしたと思う。バラゴが”悪”ならば、自分もまたそうであろう・・・

 

”闇”を歩くことで”誰か”を守れるのならば、自分はそれで構わない・・・・・・

 

例え、世界から、神様から見放されるような子が居ても・・・私が守る・・・・・・

 

同じように生まれつき”呪い”に塗れていた”京極 カラスキ”がそうであったように・・・・・・

 

そんな彼が魔法少女達の”魂”を慰めるべく、また残された人達の心の支えとして作ってくれた”石碑”には感謝の念を感じる、

 

幼少の頃から、兄として自分に接してくれた”ジン・シンロン”とも再会できた。

 

兄は自分を情けない兄と言っていたが、本当に情けないのは妹の自分であった。

 

兄は何も悪くはないのだ・・・悪いのは、拗ねていた自分だったのだから・・・・・・

 

こんな自分を”妹”として迎えてくれることに感謝していた・・・・・・

 

今の自分にはやらなければいけないことがあることは伝えている・・・

 

自分を心配している”家族”については、何とかすると言ってくれるのだから、兄は妹にとって頼りになる存在であることを実感する。

 

これからの事に気づかせてくれたメイ・リオン。

 

”頑張ったね”とこんな自分を褒めてくれ抱きしめてくれた女性・・・

 

明るくそれでいて表裏のない彼女とは、またいつか会いたいモノだった・・・

 

魔法少女の事を知りながら、魔法ではなく自身の”可能性”を信じた人・・・・・

 

そして”ミチル”・・・自身の”魔戒札”による導きで出会った”少女”。

 

短い間ではあったが、まさか求めるだけであった自分が彼女に与えられる存在になっていたことに・・・

 

姉 アスカが自分にしたように彼女と接した時間は、短く儚いモノだった・・・・・・

 

そして守ることが出来ずに・・・命を散らせてしまった・・・

 

彼女が命を懸けてくれたからこそ、今の自分が存在する・・・

 

何時かは現れる”13番目の彼女”に出会う日が来るのだろうか?

 

その彼女には”ミチルの命”が宿る・・・その彼女が何時か生まれる世界を守ってほしい、

 

”約束”を果たすために自分は、繰り返すことを辞め、先に進むことを選んだ・・・・・・

 

これから戻る”見滝原”に居る”鹿目まどか”・・・・・・

 

彼女との出会いがすべての始まりだった・・・

 

”彼女の死”をきっかけに魔法少女と契約をしたことでその未来は変えることが出来ないものになってしまった。

 

自分に手を差し伸べてくれた彼女を守れるようになりたいと願った・・・・・・

 

何度も何度も繰り返した結果に目を背けてきた・・・・・・

 

だが、その先に進むのならば”鹿目まどか”と向き合わなければならなかった・・・・・・

 

繰り返してきた”旅”に結論を出さなければならない・・・その時が今なのだろう・・・

 

「・・・まどか・・・貴女がどんな道を選んでもそれが、貴女の意思ならば私はどんなことでも受け入れるわ」

 

お節介かもしれないが、今まで通りに”見滝原”で動くが、どうなるかはわからない・・・

 

”見滝原”で起こるこれからの”出来事”を”魔戒札”が知らせていた・・・・・・

 

その札の絵柄は”女教皇”・・・・・・

 

「その意味を教えてもらえるかしら?」

 

「暫くは会わないと思っていたけど・・・貴女から居て私はどう映るのかしら?」

 

気が付くと14歳の自分ではない自分が足を組んで座っていた。

 

「そうね・・・私が秩序を乱す”悪魔”とすれば、貴女は・・・目的の為ならば、闇を歩くことも厭わずに、神にさえ弓を引く・・・・・・”堕天使”とでも言っておいた方がいいかしらね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                呀 暗黒騎士異聞 アスナロ市編 

 

 

 

 

                        終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使徒ホラー バグギと暗黒騎士 呀との戦いより数か月後のアスナロ市より始まる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市のとある場所で・・・・・・

 

かつてプレイアデス聖団の拠点であった、その場所で”彼女”は・・・

 

13番目の彼女は目覚めた・・・・・・

 

カプセルの中から彼女は、この世界へ一歩を踏み出す・・・・・・

 

「わたしは・・・・・だれ?どうして・・・ここにいるの?」

 

続くように小さなカプセルより小動物が這い出てきた・・・・・・

 

何処となくインキュベーターを思わせる奇妙な姿をしていた・・・

 

「アレ?おいらは確か・・・まぁ、良いか。今は此処から出ようかな」

 

用済みとして封印されていた自分が何故、目覚めたのかは分からないが目覚めたのなら、自身の役目を果たさなければならない・・・

 

「魔法少女は・・・どこに居るのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市に一人の青年が訪れる・・・・・・

 

「この街に来ていたのか?」

 

「そうだよ、番犬所も元老院も使徒ホラーの脅威を退けたのが”暗黒騎士”だって事は認めたくないからって、この事実をなかったことにしていたらしいよ」

 

青年の耳にあるイヤリング 目玉を模した魔道輪 ギルバが応えていた。

 

「そうか、この街で一番、怪異にホラーに詳しい場所は?」

 

「アスナロ市の東北にある 京極神社だよ。アキラ」

 

五道 アキラはアスナロ市へと足を踏み入れるのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 続 「夜射刃”YAIBA” 灼熱騎士鎧伝~真夜中の鎖悪戒子(サーカス)~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

ちょっとした特別編のような本編のサイドストーリーのような話を描きたいと思って書きました”アスナロ市編”

大人の女性に成長したほむらは、悪魔ほむらからみて”闇の力”に限りなく近い”それ”を宿しながらも、守る為ならば”神”にさえ弓を引くであろう彼女を”堕天使”としてみています。

次回より、見滝原へ戻ります。同時期に活躍していた”風雲騎士一家”が活躍している一方で暫く鳴りを潜めていましたマミさんを中心に暗黒騎士一行も合流の予定です。

また・・・見滝原のホラー化したそっくりさんも(笑)

最後のアレですが、不定期更新でできたらなと以前から温めていたものです。

灼熱騎士が主役のSSってないんだよねと思いつつ、ないのなら自分で書いてしまえと思いかずみマギカとのクロスオーバーのものになります。

明良 二樹はさらに、戦力が充実の予定(笑)







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