呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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久しぶりの見滝原です・・・

まどマギ本編では、さやかが魔女になった辺りですが、早くに決着がつきました。

この時間軸では、ほとんどの子が生き残っています。

イレギュラーであの娘が逆襲を始めます(汗)




呀 暗黒騎士異聞 第二部
第弐拾漆話「 回 転 (序)」


数か月前 見滝原

 

彼女 鹿目まどかは、普段通りに学校を終えて、一人帰宅の途に就いていた。

 

突如として訳の分からないまま彼女は、大きな衝撃を受けて鈍い音と共に視界が大きく揺れ、アスファルトの上に鈍い音と共に打ち付けられた。

 

頭を強く打ったためか痛みを感じることなく視界が赤く染まり、見覚えのある制服を着た男子が怯えた表情を浮かべ勢いよく背を向けて駆け出して行った・・・

 

自分がどんなことになっているかなんて考える事すらできずにただぼんやりと意識が深い場所に沈んでいく。

 

それから自分がどうなってしまったのか分からない・・・・・・

 

ただ自分という存在が暗い場所に沈んでいく・・・ただそれだけだった・・・・・・・

 

暗く、冷たい、何もない場所・・・・・

 

もしもこの世の果てというモノが存在するのなら、まさしく此処なんだろうと・・・

 

だって、ここには”命”を”温もり”を感じられない・・・・・・

 

そんな場所からある”世界”が見えた・・・・・・

 

 

 

 

そこが過去なのか未来なのか分からない・・・・・・

 

だけどそれは・・・知らない”誰か”によって”改変”させられた世界・・・・・・

 

希望を見た彼女達の願いを無にしない為に・・・呪いが生まれる前に消し去る・・・

 

儚い存在である”魔法少女”を救うために・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

救うために繰り返す・・・繰り返す・・・・・・

 

一つの願いが生まれ、呪いに変わる前に消し去る為に・・・繰り返す・・・

 

繰り返す・・・繰り返す・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・いつまで私は救いを繰り返せばいいの・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

回る・・・回る・・・・・・同じこと繰り返す・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

くるくると・・・クルクルと・・・狂々狂々と・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

事故から一か月後に鹿目まどかは目覚める・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・病院の天井・・・・・・ほむらちゃんと同じだぁ~」

 

目覚めた時、彼女は自身の発した言葉を覚えていなかった・・・・・・

 

一か月程で、彼女の髪は長く伸び・・・それは”何処かの改変された世界の知らない誰か”の姿によく似ていた

 

光の反射なのかは定かではないが、その瞳は”金色”の輝きを放っていた・・・・・・

 

 

 

 

 

見滝原 中学校 職員室

 

見滝原中学校の職員室は、今までにない重い雰囲気の中にあった・・・

 

このような重い雰囲気を肌で感じたことのあるのは、数年のベテラン教員だけだった・・・

 

「以上が・・・今回の件ですが・・・・・・早乙女先生。何か、今回の事で彼に変わったことは?」

 

五十代前半の教職員が早乙女 和子に問いかける。

 

「いいえ・・・何も聞かされていません。ただ、治るはずのない彼の手が治ったにも関わらず・・・・・・」

 

あまりにも悲痛な事件だった。せっかくの奇跡が理不尽にも踏みにじられたことを・・・

 

「警察から今回の犯人は、柾尾 優太という男とのことですが、彼はこの学校の卒業生だとか・・・」

 

別の教員から今回の議題である”上条 恭介”について話し合われていた。

 

何故なら、彼は昨晩、突如として”亡くなった”と彼の親族から連絡が来たのだから・・・・・・

 

天才的なヴァイオリニストである彼が在校生であることを全面的に宣伝を行っていたのだが、今回の件でどのように学校側から説明を行うかを話しあっていたのだった。

 

早乙女 和子は学校側の対応に内心辟易していた・・・

 

言うまでもなく一度、再起不能な怪我を負った時はアッサリと見捨てた挙句、再起したらしたで手の平を返す等にすり寄る姿勢には、生徒をまるで学校のブランドのように扱っているように見えた・・・

 

同時期に親友の娘であり、生徒である”鹿目まどか”が意識不明の重体に遭った時は、まるで気にすることさえなかったのに・・・

 

今度も一人の女生徒が火事に遭い、現在警察に保護されていることを知っていたが、そのことが会議に上がることはなかった・・・・・・

 

 

 

 

 

その頃、巴マミは刑事 並河に見送られて自身の自宅に戻っていた・・・・・・

 

幸いにも自宅は玄関の扉が多少焦げていただけで、部屋そのものは無事であった・・・

 

だが向かい側の焼けた扉の跡には”KEEP OUT”の黄色いテープが巻かれており、気味の悪い暗い空間が覗いていたのだった・・・

 

聞けばあの青年は、沢山の女性を自身の”餓え”を満たす為だけに殺していたという・・・・・・

 

人形に”餓え”だけが存在し、生きている人間の命を奪うという悍ましい所業を行っていた。

 

「気味が悪いわ・・・今の今まで・・・向かい側にあんなのが居ることに気が付かなかったなんて・・・」

 

マミは急いで荷物を纏めだした。必要な生活用品とさらには自身と両親が残してくれた遺産を持ちだした・・・

 

彼女はこの場に居たくなかった・・・あのような悍ましい”青年”が居た場所の近くに居たくなかったのだ。

 

リビングを横切ると彼女は視界にかつて”友達”用に用意していたペット用の寝床を見た。

 

自分が魔法少女になる切っ掛けであった”キュウベえ”用のモノであったが・・・

 

今になって分かったが、キュウベえは”友達”という感情はなかった・・・

 

感情などなく、利用価値があるから自分の傍に居ただけだ。そのことを思うとそれに気が付かずに、友達としてみていた自分の浅はかさが嫌になる・・・・・・

 

そんな感情に囚われているだけではないけないと彼女は、何とかして気を紛らわしたかった。

 

ふと冷蔵庫に彼女が作った”アップルパイ”が少しだけ残っていることを思い出したのだ・・・

 

ここ二日の事で食もあまり通らなかったが、幸いにも電気は生きており冷蔵庫も向かい側の火災があったにも関わらず心地よい冷気が頬を刺激する。

 

少しだけ遅いが、朝食に”アップルパイ”を取ってからこの家をマミは出ていく事にしたのだった・・・

 

そして二度と戻らないことを思いながら・・・・・・

 

「・・・そういえば今日暁美さんは、アスナロ市から戻ってくるのよね」

 

もしも彼女が戻ったのならば、一緒に居させて貰おうとマミは考えていた・・・・・・

 

久しぶりに彼女に会えると思うと気持ちが明るくなってきていたが、突如としてその気持ちは打ち切られた。

 

チャイムが鳴り、誰かが扉の向こうで騒いでいる。この騒ぎ方にマミは覚えがあった・・・・・・

 

「・・・・・・また来たのね・・・変なところで鼻は良いのよね・・・・・」

 

両親が残してくれた”遺産”を預けろと度々言ってくる親戚の人達だ・・・

 

警察にお世話になっていたこの二日間も度々訪ねてきていたらしい。

 

刑事の並河さんが気を利かせてくれていたおかげで合わずにすんだのだが

 

会いたくもないのでマミは、魔法少女に変身し、バルコニーより部屋を後にするのだった・・・

 

その間も怒声に近い声だけが彼女の部屋に響いていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

志筑仁美は、悲しみの中に居た・・・

 

「うぅ・・・どうして・・・どうして・・・こんな理不尽なことが・・・・・・」

 

自宅の屋敷の一室で彼女は、赤く目をはらして泣いていた。

 

昨夜から何度も涙を流し、その都度に悲しい思いが泡のように浮かびあがってくるのだ・・・・・・

 

そして暗い感情もまた・・・

 

「美樹さやか・・・貴女さえ願わなければ・・・こんな事には・・・そもそもどうして私には・・・・・・」

 

奇跡を叶えることが出来ないことに自分自身が憎かった・・・

 

何処にでもいるその辺の少女ですら願いを叶えられるのに自分自身は何もできないことが・・・・・・

 

「可愛そうにねぇ~。君は誰よりも”彼”に想いを寄せていたのに・・・彼は応えてくれなかったんだね」

 

突然、自分以外に誰も居ないはずの部屋に誰かが立っていたのだった・・・

 

立っていたのは白い少年だった。

 

赤い目が特徴的な整った顔立ちをしたおり、浮世離れした雰囲気を持っていた・・・

 

「貴方は・・・一体誰ですの?」

 

普通ならば”不審者”として、声を上げるべきなのだろうが・・・

 

彼は”普通”の人間とは違う何かを感じさせる雰囲気を持っていた・・・

 

「そうだね・・・魔法少女達の望みを叶える存在”キュウベえ”とも呼ばれているね」

 

”キュウベえ”。この意味を知る志筑仁美は知っていた。奇跡を叶える”存在”の名を・・・

 

彼に縋りつ行くように彼女は思いの丈を叫んだ。

 

「貴方は、わたくしにも見えるのですね!!!そうなんですね!!!」

 

”素質”の無いモノは”見る”ことが叶わない存在がはっきりとした形で目の前にいる。

 

この”事実”に志筑仁美は、心が歓喜するのを感じていたのだ。

 

奇跡を叶える事のできる”存在”が目の前に居るのならば、自分にもできることに・・・

 

「わたくしは、叶えたい願いがあるのです!!!あの方にもう一度”人生”をやり直させたいのです!!!!」

 

彼女の望む事は、非業の最期を遂げた”少年”の復活であった・・・・・・

 

「わたくしには、その覚悟はあります!!!さぁ、叶えてください!!!」

 

白い少年こと”カヲル”は、彼女も今まで接してきた”少女”達のように”魔法”を都合の良いモノとしてみていると内心、呆れていたが、それを表情に出すことなく彼はアルカイックスマイルを浮かべる。

 

「そうだね・・・君のその願いを叶えてあげたいけど、難しいかな・・・君の素質だと・・・」

 

「どうしてですのっ!?!美樹さやかも鹿目まどかにはあって、わたくしにはないって!!!こんな理不尽なことがあってよいのですか!!!!」

 

「少しは落ち着きなよ・・・可愛い顔を晴らしたら駄目じゃないか」

 

何を言っているんだと仁美は睨みつけるが、カヲルは言葉を続ける。

 

「彼女達に見えている”キュウベえ”は、白いぬいぐるみみたいな小動物の姿なんだ。これはある程度の素質を持つ子にだけ見えるようにしているんだ」

 

「言うまでもなく”資格”を持つ子を選別する為にね・・・僕らの目的は、敢えて言うのならば大きな目的のために”魔法少女”の祈りのエネルギーが必要なんだ。エネルギーは大きければ大きいほど効率がいいからね」

 

”見えるようにしておきながら、こちらから声を掛けているんだけどね”と付け加える。

 

冷静に聞けば”魔法少女”は、何かの目的のための”道具”が本来の姿のようであるが、仁美にとってはそんな目的などどうでもよかった。

 

自分の”願い”を叶える事の方が彼女にとっては重要だったからだ・・・

 

「教えてください。そもそも魔法少女の”素質”とは一体、何なのですか?」

 

ここまで自分の”願い”を叶えようとする彼女の姿勢に感服しつつ、彼女が蔑む鹿目まどかですら、インキュベーターの真の目的を追求するのに彼女はそれすらしようとしていないことに内心、笑いが込み上げてきた。

 

「簡単に言えば、どれだけ多くの人達に影響を与える”運命”を持っているかかな」

 

仁美は、カヲルの意外な答えに目を丸くして驚く。あまりにも拍子抜けな答えだったからだ・・・・・・

 

「僕らは感情を持つ種族は、その感情が他の者達に影響を与えることを知り、それをエネルギーとして抽出する方法を見つけたんだ。いずれ多くの人達に影響を与えうる”運命”を持つ少女達こそ”魔法少女”なんだ」

 

「例を挙げるのならば、有名どころだと、クレオパトラ、卑弥呼、ジャンヌ・ダルク辺りかな・・・彼女達はあまりにも多くの人達を動かした。ここまで言えば分かるよね」

 

「おっと、どうして少女だけなのかを忘れていたね。少年の”素質”も悪くはない・・・だけど、次世代の命を生み出すであろう少女の方がエネルギーとしては高純度なんだ」

 

カヲルの話を聞き、自分はやはり素質はないのかと・・・再び表情を曇らせるが・・・・・・

 

「ごめんね・・・君を傷つけたくてこんな話をしたんじゃないのにね。だけど、方法がないわけじゃない」

 

”方法がないわけではない”。カヲルの言葉に、仁美は・・・・・・

 

「ま、まさか・・・方法があるのですかっ!?!」

 

「実を言えば、奇跡を起こすためにあることを人間は大昔にしていたんだ・・・」

 

「そ、それは一体!?」

 

カヲルは、改まった態度で禁じられた”忌まわしき行い”の名を告げる・・・

 

「・・・・・・生贄だよ・・・・・・奇跡を起こす為に多くの人達の命を捧げるんだ」

 

あまりの言葉に仁美は震えた・・・

 

奇跡を叶えたければ、自身の手で他人の命を奪えというものだったからだ。

 

「昔の人の迷信だとも呼ばれるけど、人間の感情・・・大きな影響を与えうる運命を持つ人の命を捧げることができたのならば、奇跡は起こせるんだよ」

 

死んだ”想い人”を蘇らせるのならば、”生贄”はより多く必要であろう・・・

 

カヲルは、何も入っていない”空のソウルジェム”を仁美の前に差し出した・・・・・・

 

「君はその願いの為なら、如何なる犠牲も払う覚悟があると言ったよね・・・その選択をすべきだよ」

 

「因果はどれだけ周りに影響を与えうる人物の素質なんだ」

 

「その因果の素質を僕達”インキュベーター”は見てきた・・・」

 

「世の中の英雄と呼ばれる人間はみな、因果を取り込みさらに強大となっていった・・・」

 

「だから君も因果を蓄えた上で”願い”を叶えることだってできる。理不尽な運命を変えるんだ!!!」

 

カヲルの言葉は志筑仁美の心に黒い影と共に沁み込んでいく・・・・・・

 

「もしもこのソウルジェムが因果に満ち、輝くことが出来れば君は、魔法少女になれる」

 

彼女の心に一つの火が灯ったのだ・・・それは、人の世を恨む”鬼火”であった・・・・・・

 

「・・・やってやりますわ。あの方をこの手に取り戻します!!!誰の手も、借りません!!わたくしの手で」

 

光悦した表情で志筑仁美はカオルから渡された”空のソウルジェム”を手に取り、さっそく自身の”因果”を高めるべく、それを実行に移したのだった・・・・・・

 

心に灯った”鬼火”に導かれるままに彼女は・・・・・・

 

「ひ、仁美っ!?!な、なにを!?!!」

 

彼女は光悦とした表情で書斎に居た自身の実父をその手に掛けたのだった・・・・・・

 

「お父様・・・あの方を上条君に期待しながら・・・見捨てた当然の罰ですわ」

 

”空のソウルジェム”を見ると僅かに何かが・・・”因果”が注ぎ込まれたのだった・・・・・・

 

「まだですわ・・・まだ足りませんわ・・・私の手で・・・願いを・・・・・・」

 

いずれ満たされる”空のソウルジェム”を輝かせるために彼女は、歩み出した・・・・・・

 

自身の願いで”奇跡”を起こす為に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「良いよ・・・志筑仁美さん・・・君はきっと良い魔法少女になれると思うよ・・・・・」

 

カヲルは、志筑仁美の行動に穏やかな笑みを浮かべていた・・・・・・

 

「あははははは、ケイル、ベル、ローズ・・・いや、ガルム。君もこのイベントを楽しんでくれるかな」

 

 

 

 

 

 




あとがき

上条恭介くんが亡くなった後の見滝原の様子・・・

過去に交通事故に遭い、昏睡状態だったまどか・・・

彼女の身に何が起こったのか・・・

いよいよ、仁美ちゃんが逆襲を始めました・・・

普通にホラーに取り憑かれるよりもヤバいことを始めました・・・・・・

人型インキュベーター カヲルも何やら企んでいる模様・・・・・・

魔法少女の”素質”について個人的な解釈を入れてみました。

どれだけ人に影響を与えうる”運命”を持っている。それが魔法少女の”素質”である。

少女なのは”命”を生み出すことのできる存在故に感情エネルギーも高純度なモノが抽出回収ができる為。少年のそれは、そこまで純度が高くないので採集するだけコストの無駄なのでスルー(笑)

この解釈に至ったのは、まどマギキャラで最強候補がマミさんなので、彼女の場合、アイドルになるので、アイドルと言えば様々な方面に感情に訴えるものを持っていますので、多くに人間の感情に影響を与えうる素質ということでこの解釈をしています。

マミさんがアイドルになるのは、まどかマギカポータブルですけど(笑)

ネタとしてみれば、割と面白くプレイできます(笑)

そのマミさんは、暫くソロ活動です・・・・・・



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