呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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マミさんがメインにしいようと言っておきながら・・・冒頭では久々にあの人(笑)

マミさんの関連なのかなあの人も・・・・・・




第弐拾漆話「 回 転 (肆)」

時刻は少しだけ遡る・・・・

 

「マミちゃん!!!居るんでしょ!!!」

 

人目を憚らずに巴マミの自宅マンションのドアの前で三人ほどの男女が騒いでいた。

 

この三人は彼女の遠い親戚にあたる人物たちであるが、マミとはそれほど親しくしていたわけではなかった。

 

一人暮らしの彼女を心配しているというわけでもなく・・・彼らが心配しているのは・・・

 

「こんなマンションで一人暮らしなんて・・・生意気なことをするからこういうことになるのよ」

 

「それもこれも兄さんの遺産をどうして他人が管理して・・・俺たちが使えないんだ」

 

「警察も警察だ。私達は親戚なのに・・・・・・」

 

口にしているのは”巴マミ”の心配などではなく、彼女の両親が残した遺産の管理についてであり、それを何とかして自分達のモノにしたいという”欲望”だけであった。

 

マミも両親が親戚とは仲が悪いということは良く知っており、元々資産家である彼女の母と父が一緒になったことで浅ましい父方の親戚たちが集って来たのだが、父自身は家族とは仲が悪く高校を卒業し大学入学を機に実家とは縁を切っていたそうだった。

 

両親が事故で亡くなったことを幸いに娘であるマミから遺産の管理と称して奪おうと躍起になっていたのだが、父の友人である税理士が誠実な態度で管理している為、手が出せなかった。

 

今回のマミが事件に巻き込まれたのを好機とし、管理している税理士を糾弾して遺産の管理を自分達の手にしようと躍起になっていたのだ。

 

三人の身勝手な欲望に対して、この場で異論を唱えようとする者は誰一人としていなかった・・・

 

だが・・・向かい側の焼け跡から”白い人の形”をした肉塊が顔をのぞかせていた。

 

『ナニヲサワイデイルンダヨ・・・・・・ウルサクテネラレナイ』

 

焼け跡の奥から現れたのは白い人間と言うよりも・・・人の形をした肉塊としか言いようのないグロテスクな生き物であった。

 

ケロイド状の白い体と顔には凹凸がなく口は唇などなく歯茎が剥き出しであった。

 

「な、なんなんだっ!?!こ、こいつはっ!!!」

 

「ば、化け物っ!?!」

 

「か、顔がないっ!?!」

 

『ウルサイ!!!ウルサイ!!!ウルサイ!!!!』

 

三人に飛び掛かるように白い顔のない怪人は、その恐ろしく強い腕力で瞬く間に三人を引き裂いてしまった。

 

引き裂かれた三人の身体は霧のように顔のない白い怪人”フェイスレス”に溶け込んでいった。

 

『コ、コレハ、ナンナンダ・・・ボクハヤカレタノニ・・・ドウシテイキテイル・・・』

 

本当ならば、自分はこの世界から旅立ち”蓬莱暁美”の元へと行けるはずだったのにと・・・・・・

 

自分をこのような目に遭わせた役立たずの観察対象が非科学的な事をして自分をこのような目に遭わせたのだと苛立ち、白い怪人 フェイスレスこと柾尾 優太は、人間だった頃と変わらぬ生活をかつてのマンション跡で過ごしていた。

 

その柾尾 優太を不思議そうにキュウベえは戸惑うように見ていた・・・・・・

 

「アレは・・・ホラーなのか?まるで人間にもみえなくもない・・・」

 

前例のない奇怪な存在にキュウベえは訳が分からないと言わんばかりに踵を返し、その疑問を聞きに自身の知り合いである”東の番犬所の神官”である”ガルム”・・・今は、ケイル、ベル、ローズと名乗っている存在を訪ねるのだった。

 

 

 

 

 

 

東の番犬所

 

「久しぶりに来たと思ったら、そんなことを聞きに来たのですか?」

 

「あの男の”陰我”は自身のそれではなく、関わってきた者達の”怨念”によるものです」

 

「そもそもあの男に”魂”など存在しないので”陰我”など発生しようもないのですから・・・」

 

三神官は、キュウベえが理解できないことが面白いのか今まで以上に燥いでいた。

 

若干、苛立ちを感じるのはあの”カヲル”という個体の影響を受けてしまったからなのだろうか?

 

「分かりやすく言えば、あの男は”多く陰我”の繋ぎになっているのです」

 

「繋ぎ?つまりは、あの白いホラーは”群体”のような存在とでもいうのかい?」

 

ある意味自分達”インキュベーター”を指す言葉であるが、あの気味の悪い怪物と自分達が同じにみられたくないのかキュウベえは珍しく否定の意思を示していた。

 

「分かりやすく言えば”突然変異”という言葉ですね。イレギュラーミュータント、予期せぬ変異体とも言えます」

 

「私達が観測する”陰我ホラー”と違い、アレはホラーと人間が混ざった変異体です」

 

「よって、魔戒騎士の持つ魔導輪もその気配を追うことは難しいでしょう。何故ならあれは、ホラーでもあり人間でもある中途半端な存在なのですから・・・」

 

三神官の言葉にキュウベえは・・・・・・

 

「・・・・・・ホラー人間、人間ホラーとでも言えばいいのかい?」

 

確信の持てない事態にキュウベえは、今までにないほど感情的になっていた。というよりも改めて自分達の扱っている”感情エネルギー”の危険性を認識していたのだ。自分達の認識の甘さに対して、恐怖すら覚えていたのだ。

 

人間の感情・・・負の思念がホラーと人間のそれすら歪めてイレギュラーを生み出してしまったことに・・・

 

もしもこれが、鹿目まどかのような途方もない”因果”を持つ少女が途方もない”願い”を叶えようものならば自分達はどうなるのか?

 

おそらくこの時間軸そのものが”改変”され、その後、とんでもない事になるだろうと・・・

 

事実他の平行世界では、それが起こり、認識の甘い自分達が破滅したのだから・・・・・・

 

自分達が破滅するだけなら、まだしも・・・世界、宇宙そのものが完全に崩壊した”事例”も起こっていた・・・

 

その時間軸は確か・・・・・・改変された時間軸がさらに分岐して・・・・・・

 

分岐した時間軸の最期の光景は・・・あの鹿目まどかの可能性の一つが・・・・・・

 

「どうしました?インキュベーター」

 

「顔色が悪いですよ・・・何か恐ろしいモノでも見たような」

 

「貴方、感情がないのにどうして、そんな不安そうな顔をしているのですか?」

 

けらけらと笑う三神官に対し、執事服の男 コダマはいつものように無表情であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

志筑仁美は、アレからどうやって自宅に戻ったのか覚えていないが自身のベッドの上で左目を押さえていた。

 

言うまでもなく奇怪な女道化師 魔針ホラー 二ドルによる撃ち込まれた針が左目を射抜き、そのまま破裂させたのだ・・・

 

強烈な痛みに悲鳴を上げたが、近くに巴マミが居ることを警戒して自力で自宅まで執念で戻ってきたのだ。

 

生暖かい血の感触は未だに手に残っている。

 

左目は痛み、彼女はあの”化け物”は何を考えて自分を特別扱いしたんだと怒りを覚える。

 

『いたぁみは、ほんの少しだぁよ・・・』

 

「何を他人事のようにっ・・・いつの間にわたくしの家に入り込んだのですかっ!?!」

 

『君がぁ、ワタスを連れてきたんだぁよ。ワタスがぁ、そろそろ見えてくるよぉ』

 

妙に間延びした口調であるが声そのものは無機質で感情がなく、機械が言葉遊びをしているようだった。

 

玉乗りをする女道化師の姿は、部屋にはなかった。

 

声は直ぐ近くというよりも耳元で囁かれるようにハッキリと聞こえる。

 

ずっと感じていた痛みがいつの間にか引いていたのだ・・・・・・

 

乾いた血の跡の感触を感じつつ左目を押さえていた手を放す。

 

変わらぬ左側の視界が健在であった・・・

 

潰されたはずの目が見えるのだ・・・・・・

 

「あの時・・・目は確かに潰されたはずなのでは・・・・・・」

 

確かめるべく仁美は姿見鏡まで移動し、恐る恐る自身の左目を確認すべく鏡を覗き込んだ・・・

 

「っ!?!」

 

そこには信じられない光景があった。自身の左目の中に女道化師が窓から外を眺めるように佇んでいたのだ。

 

『やあッ』

 

手を振り挨拶をする女道化師 魔針ホラー 二ドルに対して仁美は、今更ながら恐ろしさを感じていた。

 

「あ、貴女は・・・わたくしに何をするつもりなのですか?!!こ、こんな・・・」

 

自身の左目を抉ろうとするのだが・・・・・・

 

『だぁめだよぉ・・・せっかくの贈り物なんだからぁ、好意は受けるモノだぁよぉ』

 

抉ろうと伸ばした手が自身の意に反するように止まってしまう。

 

この光景に自身に近づいてきたのは、想像を絶する”怪物”・・・ですら生ぬるい何かではないかと・・・

 

仁美は気が付かなかったが、自身の手の甲に極小の針が刺さっていたことに・・・・・・

 

その小さな針こそが魔針ホラー所以の能力であることも・・・・・・

 

『他のホラーとはぁ違って憑依はしないかぁら、安心して、仁美ちゃんは仁美ちゃんのままで居られるよぉ』

 

憑依とはなんだ?と疑問が浮かんだが、この薄気味の悪い道化師から逃れられないことに仁美の絶望ともつかない絶叫が屋敷全体に響き、空のソウルジェムの因果が僅かに揺らぐのだった・・・・・・

 

仁美の左目の中では女道化師の姿をした魔針ホラー 二ドルが玉乗りの曲芸を行っていた・・・・・・

 

『仁美ちゃんのお手伝いがしたぁいなぁ・・・ワタスも見てみたいなぁ、願いが奇跡を起こすところを見てみたいなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

マミはゆまと共に警察で事情聴取を受けていた。

 

対応してくれたのはここ数日の間で顔なじみとなった並河と言う刑事だった。

 

言うまでもなく通り魔的殺人事件に巻き込まれた千歳ゆまへの事情聴取なのだが、幼い彼女の表情は祖父母が亡くなったことが未だに信じられないのか表情は呆然としていた。

 

偶々通りかかったマミによって保護され、警察へと通報がなされたのだが・・・・・・

 

「並河さん・・・ゆまちゃんが落ち着くまで待っていただけないでしょうか?」

 

「そうだな・・・・・・前にも両親が亡くなった時もそんな感じだったしね」

 

「並河さんは、ゆまちゃんの事を・・・・・・」

 

「前の事情聴取の時に少しね・・・今晩は遅いし、犯人はもしかしたら、未成年の可能性が高いからね」

 

マミより不審な帽子を目深に被った同年代の少女を見たという目撃情報より聞き込みが現在行われていた。

 

「マミちゃん、こんなことを自分が頼むのは違うかもしれないけど・・・ゆまちゃんの傍にいてあげられないかな?」

 

亡くなった祖母を呆然とした表情で見る幼子の様子はあまりにも痛々しく辛いモノだった。

 

「・・・・・・・・・」

 

無言の千歳ゆまに対し、マミはどうして自分は彼女の近くに居なかったのかと今更ながら後悔していた。

 

魔法少女が守るべき存在である”人間”の悪意によって、ゆまの大切な家族が奪われたのだから・・・・・・

 

これでは何を信じればよいのか分からなくなるが、それでも”希望”を見させてくれた温かい小さな手を持つ彼女をこのままにしてはおけなかった。

 

あの時、自分の手を握ってくれたように自分も・・・

 

「大丈夫だよ。マミお姉ちゃん・・・ゆまはまた一人ぼっちになったけど、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんたちはずっとゆまの中で生きていくんだって・・・だからゆまは、泣いてなんか居られないんだ」

 

目を潤ませ、健気に自分がしっかりしなければと・・・しっかりと前を向こうとしていた。

 

亡くなった家族が安心していられるようにと・・・

 

(なんて強い子なんだろう・・・私はパパやママが亡くなった時、ゆまちゃんのように振舞えていたかしら?)

 

マミはゆまの手を握り、

 

「ゆまちゃんは私に言ってくれたわよね。辛いことは永遠に続かないって・・・あの時辛い思いをしていた私を救ってくれたのは・・・ゆまちゃん。貴女なのよ」

 

「うん・・・ゆまはまた辛いことがあってもこれが続くことはないって分かるから・・・」

 

自分がしっかりしなけばならない・・・だが、彼女はまだ11歳の幼い少女なのだ・・・

 

理性が理解しても感情の高鳴りは抑えることはできない・・・

 

「そう・・・なら、今は思いっきり泣きなさい。一人じゃないんだから、今はね・・・」

 

辛い思いを我慢するのではなく、今はそれを発散するのもよいだろうと・・・

 

「マミお姉ちゃん・・・うぅ・・・うわぁあああああああああんっ!!!!」

 

込み上げてくる悲しみを解放するようにゆまはマミに抱き着き、そのまま泣き続けた・・・・・・

 

マミはゆまの悲しみを少しでも和らげようと彼女の頭を撫でていた・・・・・・

 

(ゆまちゃんが望むのなら、私はずっと傍にいるわ。ゆまちゃんが私を必要としなくなるその日まで・・・)

 

”魔法少女”である自分は、普通の子であるゆまと一緒に歩むことは、難しいだろう・・・

 

時が来ればいつかは別れなければならない・・・それでも今この瞬間だけは・・・・・・

 

彼女はこの小さな”希望”に許される限り、見守り、傍に居続けられればと願う・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

????

 

「マミさん・・・魔法少女の願いはね・・・凄く儚いんだよ」

 

見滝原の女子中学生の制服を着た小柄な少女は、見滝原警察署の前で笑っていた。

 

目元は隠れているがその笑みは、何処か人ならざるモノを感じさせるほど凄みのあるものだった・・・

 

「・・・希望を絶望で終わらせないようにって願っても、願うのが人間だと結局は何も変わらないんだよ・・・」

 

”魔女”が消えたとしても”呪い”や”負の感情”が消えることはなく形を変えて存在し続ける・・・・・・

 

人そのものを”改変”、もしくは”存在”を終わらせない限りは・・・

 

隠れていた目元より金色の瞳が虚無感をそのままにして視線を動かす。

 

視線の先には強張った表情をしたさやかがソラと二人で見滝原警察署に入っていく光景だった。

 

「・・・さやかちゃんも災難だね。上条君は自分の意思で”呪い”を受け入れたから、何も悪くないんだよ」

 

「仁美ちゃんは、魔法少女になりたいみたいだけど・・・どうして”奇跡”なんか欲しいのかな?」

 

警察署の中で会うであろう二人のその後を想像して、少女は踵を返して幻のように消えていった・・・・・・

 

「魔法少女になったら行きつく先は”一つ”だけだよ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原 鹿目家

 

「・・・あ、あれ・・・また寝ちゃったのかな?」

 

自室でいつの間にか眠っていたことにまどかは、ここ最近色々とあって疲れていたのかと思いつつ喉の渇きを潤す為に部屋を出るのだった・・・・・・

 

「・・・・・・仁美ちゃん。どうしたんだろ?さやかちゃんも上条君もここ最近学校に来ていなかったし・・・」

 

彼女の”記憶”にこんなことは今までなかったのに・・・・・・

 

翌日、まどかは知ることとなる・・・・・・

 

”上条恭介の死”というこれまでにない事態を・・・・・・

 

そして・・・彼の家族もまた”亡くなった”ことを・・・・・・

 

記憶の中で自分を救おうと時を遡った”暁美ほむら”との出会いもまた近い・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

柾尾 優太さん・・・単なるホラーにならずホラーでもなく人間でもない中途半端な存在と化す。

故に他のホラーのように人間の姿になれず、白い顔のない人型の怪物のまま・・・

ですが、ホラーとしての能力は有しています。



仁美と魔針ホラーとの関係は、彼女にとっては下僕扱いされるよりもおぞましいことになりそうな予感・・・・・・

一体目のバグギとその協力者は内心はともかく表面上はそこそこ良い関係でした。

ゆまちゃんが結構メンタル強い子になってます。

織莉子の本編でもかなり前向きなことですが、マミもそんな彼女に影響されていきます。

原作主人公のまどかも、この時間軸での出来事には戸惑いつつも何やら奇妙な出来事が彼女自身にも起こっているようです・・・・・・

まどかとほむらがおそらく近いうちに出会います。




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