呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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冒頭で意外な人がとんでもないことに・・・




第弐拾漆話「 回 転 (漆)」

見滝原市内 深夜二時前後・・・

 

既にほとんどの人達が眠りについている時間ではあるが、一人の女性が虚ろな視線で今日の会議で纏められた書類に目を通してた。

 

明日、生徒達に”彼の事”を話すことが気が重い。

 

会議の後、放課後に校長と教頭からの責めにも似た言葉が今も脳裏に響く・・・・・・

 

”早乙女先生・・・困りますよ”

 

”本当に何もなかったのかね?彼の突然死は自殺ではないかともいわれている”

 

”幸いにもイジメの事実がなかったことがせめてもの救いだ”

 

”いじめはなくとも、上条君を見捨てたのは私達ではないでしょうか”

 

上司である二人に抗議した。上条恭介が突然死したのは不幸な事件に会ったこともそうだが、彼のことを学校のブランドを高める為の付属品のように扱った自分達にも原因があったのではと・・・

 

だが・・・・・・

 

”それはあんな事になったら仕方がないよ”

 

”そうだ。将来性のなくなった彼をそのままにしていたら、この学校のイメージも悪くなる”

 

結局は、上条恭介自身の死を悼むのではなく、この学校のブランドと名声だけが大事である二人に早乙女和子は終始不快な思いを感じていた。

 

そして、生徒達には”上条恭介の死”については、なるだけ穏便に話すように指示を受けたことが彼女を更に苛立たせた・・・

 

自棄になり、酒を煽るもののそれでも気が晴れず、友人を呼ぼうかとも思ったが彼女は”家庭”を持っている為独り身の自分の都合に付き合わせるわけにはいかなかった。

 

さらには、転校してくるはずだった”暁美ほむら”の失踪もまた彼女の負担となっていたが、彼女の両親はむしろ自分を気遣ってくれていた為、この件に関しては一刻も早く”暁美ほむら”が見つかってほしいと願っていた・・・

 

久方ぶりに指に通した”想い人”の婚約指輪を眺めつつ、彼を殺したであろう”犯人”の目撃者かもしれない”暁美ほむら”に会いたかった・・・

 

想い人のことを思うと、上条恭介を想っていた二人の少女はきっと今も悲しみに暮れているだろう。

 

ここ数日、学校に姿を見せていないことを察すると・・・・・・

 

この暗い気持ちを何とかしたいと思いつつ指輪を再び眺めた時だった・・・

 

『オマエノその気持ち・・・怒りを発散させてはどうだ?』

 

指輪から黒い瘴気と共に、早乙女和子の影と悪魔を思わせる奇妙な影が一瞬にして重なった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

見滝原中学校

 

いつもと変わらぬ登校する生徒達に交じって佐倉杏子は若干眠気を感じつつ通学路に視線を向けていた。

 

「変わり映えしない日々ってこういうのを言うのかな・・・」

 

ここ数日、伯父と共に鍛錬とホラー狩りの日々を過ごしつつ、こうやって学校に通う日々をこなしながら杏子はいつものように放課後までの退屈な”日常”を過ごそうかと考えていた。

 

『Everydayはいつもそういうものだよ、杏子』

 

「ったく・・・ナダサ。お前のその変な口調、何とかしろよ』

 

英語と日本語がごっちゃになっている変な言葉遣いに伯父は何故、こんな魔道輪と契約したんだと思う。

 

『HAHAHAHA、MeはこれがUsuallyさ・・・』

 

「なんか微妙に意味がちげえぞ・・・」

 

なにかあった時の為に持たせてくれてる”魔道輪 ナダサ”であるが、杏子はこの変な”魔道輪”には未だになれていなかったのだった・・・・・・

 

変な魔道輪ではあるが、一応は数々の修羅場を潜り抜けてきた”猛者”だと・・・思いたい杏子であった。

 

そんな中、見知った背中が視界に入った。

 

級友であり、最近になって事情を知った”訳あり”の鹿目まどかであった・・・

 

「ナダサ・・・まどかの前では、あまり喋るなよ」

 

『I See』

 

「Understandでも良かったんじゃないか?」

 

そんなどうでも良い会話を心地よく感じながら、杏子はまどかに声を掛けるのだった。

 

「お~い。まどか、今日もよろしくな」

 

「あ、おはよう。杏子ちゃん」

 

いつものように笑みを浮かべて挨拶を返すまどかに杏子もまた笑みを浮かべで返すのだった。

 

「杏子ちゃん・・・ほむらちゃんと最近あった?」

 

「あ、あぁ・・・昨日の夜あったんだけどな・・・用事があるって、そのまま別れたんだよな・・・」

 

まどかが気にする”暁美ほむら”と昨夜、久しぶりにあった杏子であったが、彼女のあまりの変わりようにどうこたえて良いモノか分からなかった・・・・・・

 

「悪いな・・・腕を掴んででも連れてくるって約束したのにな・・・あはははは・・・」

 

(ほむらの奴、アスナロ市で何があった!?!変わりすぎだろ!?!)

 

乾いた声で笑う杏子を不審そうに見るまどかであったが、その様子を久しぶりに登校してきたさやかが不思議そうに見ていた・・・

 

「姐さん・・・何かあったのかな?」

 

本来ならば仁美を探さなくてはならないのだが、見滝原市内には居ない可能性があり、彼女を探すためにソラが動いている。

 

動いてくれる妹分には感謝しつつあることをさやかは彼女に告げていた。

 

”絶対に怪しい奴から声を掛けられても絶対に応えちゃだめだよ、ソラ”

 

主にキュウベえと言っている辺り、さやかのキュウベえに対する感情はすこぶる悪い・・・・・・

 

久しぶりにさやかが登校したのは、学生をする為ではなく、姐さんこと杏子とその伯父の力を借りる為であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨夜 見滝原市内

 

見滝原の高い鉄塔の先端に黒い髪を靡かせる女性が見滝原市内を見下ろしていた。

 

『・・・見滝原か・・・思っていたよりも中々の街ではないか・・・』

 

「そう・・・ギュテク・・・貴方も貴方で器用な真似ができるのね」

 

鉄塔の先端に立つ女性 暁美ほむらは自身の腕につけられているギュテクに話しかける。

 

魔導輪 ギュテク・・・使徒ホラーの一体である バグギを魔道輪に封じ込めた存在である。

 

現在は、暗黒騎士 呀 バラゴと契約を結んでいるのだが、このギュテクは元のホラーがホラーだけにその力は他の魔道輪以上の能力を持っている。

 

それは、現在ほむらの腕輪はバラゴが付けているギュテク本人ではなく”複製”なのだ・・・

 

ギュテクの能力の一つに自身と全く同じ能力と思考を持った”複製”を作り上げることが出来る。

 

”複製”を行う瞬間は、見るに耐えない光景だったが・・・・・・

 

インキュベーターのように意思を共有化していない。だが、互いに”感覚”だけは共有はしていた。

 

ほむらに”ギュテク”の複製が与えられたのは・・・・・・

 

『当然だろう・・・だが、ほむらよ。今宵はお前は、一人でホラーを狩るようにエルダに言われていたな』

 

自分の事はどうでもよいだろうと言わんばかりにギュテクは今夜、ほむらに課せられた試練を話す。

 

「ええ・・・いつまでもバラゴとエルダの影に隠れているわけにはいかないものね」

 

今夜ほむらは、見滝原に現れたあるホラーを一人で”討滅”する為にこの場に来ていたのだった。

 

エルダから、今夜現れるホラーをその”力”で討滅せよと・・・

 

眼下の都市に視線を向け、高層ビルの間に吹き荒れる風の感触を肌で感じつつ現れた”ホラー”の気配を探す。

 

吹き荒れる風に影響を受けずに”魔戒札”が展開し、その中の”一枚”に視線を向けた後、塔を蹴り眼下の広がる夜の見滝原へと降りる。

 

肌に感じる夜の空気と眼下に広がる夜景を横目に真っ直ぐに”ホラー”の居る場所へと降り立つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

見滝原市内を一組の男女 黒いコートを着た男性と赤髪の少女が人目に付かないように動いていた。

 

「ナダサ・・・こっちで間違いないのか?」

 

『AH、すぐ近くにSTAYしてるよ』

 

「ってかナダサ・・・その言葉遣い何とかならないのかよ」

 

自分の腕にある”魔道輪 ナダサ”の口調に中々慣れない杏子は、少しだけうんざりしていた。

 

「まあまあ、杏子ちゃん。ナダサはナダサで頼りになるぞ」

 

伯父の言葉に杏子は少し納得のいかない表情を浮かべていた。

 

「でもさぁ~~、マミんとこに出たホラーじゃないんだよな。今回の奴も・・・」

 

杏子は、ホラー”フェイスレス”こと柾尾 優太が何処にいるか分からない事に不満を漏らす。

 

あれから彼が住んでいた部屋にも行ってみたが、不思議なことに誰かが生活をしていた跡があった。

 

焼けて廃墟と化した部屋で・・・

 

「それに関しては俺にも思うことがあるな・・・」

 

ふと横に視線を向けると古い劇場で”レイトショー”を行っており、そこにはラバーマスクを被った大柄の怪人が描かれた古い映画のポスターが飾られていた。

 

「人間も度が過ぎるとホラーに憑依されなくても”怪物”になることもあるのだろうな。ホラーに憑依されなくとも”陰我”は形を変えて現れるのかもしれない」

 

伯父の言葉にそれは、”魔女”なのだろうかとも考えたが、”ホラー”や”魔女”以外にもそういう”怪異”は無数に存在強いているとのことだ・・・・・・

 

『そうだね、ホラー映画の怪人、ジェイソン、フレディ、マイケル・マイヤーズ、レザーフェイスは、”陰我”の違うホラー達だね』

 

あの作品の怪人たちは、最初こそは人間であったがシリーズを重ねるごとに”人間離れ”した荒唐無稽な怪人と化しており、ある意味”コメディ映画”だろうとも思ったが、見方を変えると”陰我”によりホラーに憑依されることなく怪物と化した存在なのかもしれない・・・

 

「陰我にも色々あるかって・・・ナダサ!!!お前、普通に喋れるじゃねえか!!!

 

『Pardon?Repeatしてくれる?杏子』

 

「この野郎・・・ふざけやがって・・・」

 

杏子は、この魔道輪に青筋を立てるが、

 

「杏子ちゃん。ナダサはそういう奴だ・・・俺も若い時分は、声を荒げていたな」

 

杏子とナダサの様子は、風雲騎士バドの称号を得たばかりの頃の懐かしい光景そのものだった。

 

長い付き合いで”魔道輪 ナダサ”との付き合いは慣れたが、時折気が抜けれしまうことがあるのか、いい加減そろそろ改善しなくてはと考えていた。

 

『WHAT?誰かが既に戦っているね』

 

魔導輪 ナダサは、今夜討滅の命が下っていた”クリムゾンネイル”に誰かが交戦を始めているのを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

見滝原市内の人気のない路地を一人の女性が男から逃げていた。

 

途中途中で助けを求めようと建物の扉を叩くもののほとんどが閉店しており、応えてくれるものは存在しなかった。

 

次第に追い詰められ、行き止まりの壁に当たり彼女は覚えて表情で男に叫んだ。

 

「い、いや・・、こ、こないでっ!?!」

 

その男は、二十代後半の柄のあまり良くない格好をしており下卑た笑みを女性に向けていた。

 

「いいね・・その表情・・・」

 

下卑た笑みを浮かべて自身の腕力をもって目の前の女性を自分の思うままにできると確信し、一歩足を踏み出すのだが・・・・・・

 

「・・・・・・気持ちの良い光景ではないわね」

 

背後を振り返ると黒髪の長身の女性が立っていたのだ。

 

「おおっ!!」

 

男は現れた女性に興奮したかのように声を上げた。

 

今自分が蹂躙しようとしている女性よりも遥かに美しい女性が現れたのだ。

 

幸いにも自分達以外に誰も居ない。下卑た感情を黒い服の女性に向ける。

 

「それよりも早くこの場から逃げなさい・・・死にたくなかったら」

 

男の不快な視線を感じつつも女性は黒い皮手袋をした手に”鈴”を持ち、それを鳴らす。

 

綺麗な音色が辺りに響いたと同時に背後の怯えていた女性の目に”魔戒文字”が浮かび上がったのだった。

 

「なに?お姉ちゃん、それ?教えてくんない?」

 

どういう状況なのか分からないのかと言わんばかりの冷たい視線を向けるが、男はこの視線を”怯え”に変えたいという願望が芽生えるのだが・・・

 

”ぐちゅ・・グチュ・・・グチュチュ・・”

 

背後より肉が潰れるというよりも何かが捻じれているような気味の悪い音が響く。

 

「あぁっ!?」

 

振り返るとそこには奇妙な角度で曲がった腕、首、異常身までに膨れ上がった腹と頭・・・・

 

「な、なんだ!?!これはっ!?!」

 

人間の面影のない醜悪な肉塊があり、弾け飛ぶように赤い異形の”悪魔”が現れた。

 

「あ、ああああ・・・ば、化け物っ!?!」

 

「だから言ったでしょ。死にたくなかったら、この場から逃げなさいって」

 

「ひ、ひいいいいいいっ!?!!」

 

涙声で男は、先ほどまでの”強気”な態度を捨て、そのまま勢いよくこの場から逃げ出したのだった。

 

『貴様・・・魔戒法師か?』

 

ホラー クリムゾンネイルは、ほむらの纏っている衣装は魔戒法師が着る”法衣”である為、彼女が魔戒法師であることと認識する。

 

だが、魔戒法師程度ならばホラーである自身の敵ではないと判断するが・・・

 

『ほむら、このクリムゾンネイルは近接戦闘を得意としている。今のお前にはちょうど良い相手であろう』

 

魔導輪 ギュテクは黒い服の女性 暁美ほむらにホラーの情報を伝える。

 

「そうね・・・今までは弓や銃器による遠距離の攻撃手段を用いてきたけど、これからはこちらを使わなければならないわね」

 

ほむらは、自身の魔力により”十字の刃”を持った杖を召喚する。

 

『クククク・・・クリムゾンネイルよ。この暁美ほむらは、魔戒騎士でも法師でもない”存在”故に、お前は、他のホラーが知らぬ”脅威”を目の当たりにするが良い』

 

無言のほむらに変わるように魔道輪 ギュテクがホラー クリムゾンネイルを挑発する。

 

『魔戒法師ごときが・・・大きな口を叩くのはそこまでだ』

 

エフェクトのかかった声を発しているのは、口元が中世欧州の鎧を思わせるマスクをしているからだろう。

 

俊敏な動きで縦横無尽に建物の壁から壁へと移動し、両腕の赤い鎌をほむらに向かって振るう。

 

これをほむらは、十字の刃で防ぐと同時に長い柄でホラー クリムゾンネイルの攻撃をすべて裁いた上でカウンターとして強烈な打撃を首元に打ち込んだ。

 

打ち込んだ上でその首を刎ねるべく十字の刃を振るうのだが、クリムゾンネイルもまた尾をまるで蠍が尾を掲げて毒針を刺すようにほむらに向けるのだが・・・

 

攻撃が右耳を掠めた瞬間にイヤリングを鳴らしたと同時に十数枚の”魔戒札”がほむらを守護するように展開し、その勢いに任せてクリムゾンネイルの巨体を吹き飛ばしてしまった。

 

『その攻撃は・・・まさか法師ではなく・・・魔戒導師とでもいうのか』

 

ここ最近、数そのものが少なくなり最後の一人も既に亡くなったとホラーの間では通っていたのだが・・・

 

「そうね。魔戒導師の占いは、星があってこそだけど、見滝原もアスナロ市も街そのものが明るくて、星を見るのも苦労するわ」

 

『良く言うモノだな。別に何処に居ようとも星は見上げればそこにあるだろう』

 

「でも、場所と時間で星の位置は変化するわと。ギュテク」

 

ほむらは、そのまま自身のソウルジェムを輝かせると同時に自身の”力”を纏う。

 

法衣がさらに変化し、背中には限りなく闇に近い”混沌”の翼が現れる。

 

『き、貴様・・・一体、何なんだっ!!?!』

 

魔戒導師であることにも驚いたが、それは些細な事であった。

 

だが、目の前の魔戒導師が背中に背負う”翼”からは、”魔戒騎士”にも劣らぬ力を感じられたのだった。

 

こんな魔戒導師の存在など聞いたことがないと言わんばかりに口元のマスクを外し、吼える。

 

「口を大きくして吼えるのね、こいつは・・・」

 

『お前も言うようになったな。ほむらよ・・・』

 

「貴方の影響もあるかもしれないわね」

 

黒い翼の力を十字の刃に纏わせると同時に”炎”のように燃え上がり、刃と共にホラー クリムゾンネイルに振るう。

 

『っ!!?!』

 

その攻撃は、ホラーに強烈な熱さを感じさせ、切り付けられた右腕が上がらなくなってしまった。

 

『うわああああああああああっ!!!!!』

 

自身を奮い立てるように吼え、クリムゾンネイルは背中の翼で飛翔し、落下の勢いを伴ってほむらへと向かていく。

 

冷静に向かってくるクリムゾンネイルに対して、”黒い翼”の”混沌”が更に濃くなり、炎のように燃え上がる。

 

ほむらはその黒い翼の力と血を蹴って、向かってくるホラークリムゾンネイルを十字の刃に纏わせたを振るわれる赤い鎌と交差させる。

 

交差させた同時にホラークリムゾンネイルへ侵食し、その身体を跡形もなく消し去る・・・

 

黒い翼で羽ばたかせて、地上へと降り立つと同時に十字の刃の付いた杖を振るった。

 

『クククク。ほむらよお前の力は既に一介の魔戒騎士以上だろう。故にお前の味方は少ないと思え』

 

魔戒騎士のように戦える”異能の力”は、番犬所、元老院、はたまた邪な感情を持つ堕ちた魔戒の者達からすれば興味深いモノであろう・・・・・

 

「・・・そんなこと言われるまでもないわよ・・・でも、この街に居る間は事を荒立てたくはないわ」

 

視線を向けると呆然とした様子で自分を見る佐倉杏子とその伯父である 風雲騎士 バドが居た。

 

「久しぶりですね。佐倉さん」

 

微笑むほむらに対し、杏子は

 

「え~と、何処かで会ったことあるの?アタシ達」

 

「・・・・・・君はほむらちゃんのお姉さんかな?まさかと思うが、それとも・・・」

 

伯父の発言に杏子は、ほむらも魔戒導師の術を使う為、そういう姉の存在が居るのではと考える。

 

しかしながら、伯父の言葉は少しだけ自信がないというよりも戸惑いを感じていた。

 

「ええ、数日前にアスナロ市に行って来るって言ったばかりよ。佐倉杏子さんとその伯父さん」

 

二人の反応が少しばかり愉快なのかほむらは、笑い声すら漏らしていた。

 

「君は・・・ほむらちゃん本人だね・・・随分と変わったね」

 

長い事”魔戒騎士”をやっていて、このように変わった存在を見るのは初めてだった。

 

「お前っ!?!ほむらぁああっ!?!一体何があったんだ!!!」

 

思わず杏子は絶叫してしまった・・・・・・

 

「人は3日会わなければ刮目せよというべきかしら?」

 

「だとしても、お前は変わりすぎだ!!!」

 

自分を見上げる佐倉杏子が微笑ましいの暁美ほむらは、思わず頭を撫でたくなったがそこはぐっとこらえるのだった。

 

杏子の伯父こと、バドは・・・・・・

 

(・・・随分と様変わりしたな・・・これは杏子ちゃんが言っていた彼女の”時間遡行”の願いに変化があったのだろうか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在、杏子は昨夜再会した暁美ほむらの事をどう言ったものかと悩んでしまった。

 

たった数日で少女から大人になりましたと正直にいうべきだろうか・・・・・・

 

「それで、ほむらちゃんは、今何処に!?!」

 

問いただしてくるまどかの押しに戸惑いつつ、杏子は

 

「今は修行中って言ってたから・・・そのうち、ひょっこり顔を出すんじゃないのか」

 

近いうちに会えると言っておいた方が無難であろうと思う杏子であった。

 

あの暁美ほむらは”魔戒導師見習い”から立派な”魔戒導師”に成長しており、単独でホラーを”魔戒騎士”のように討滅するほどに”力”を見につけていた。

 

伯父から、ほむらの事は、あまり言いふらさない方がよいと釘を刺されている。

 

魔戒騎士並みの戦闘能力を持つほむらの存在はかなり”希少”であり、場合によっては”番犬所”から捕獲命令が下ることもあり得るのだ。

 

その”力”の秘密を解明しようとされるか場合によっては”人型魔導具”に仕立てられることもあり得る。

 

伯父もほむらの事は報告するつもりもないらしく、通りすがりの魔戒法師に殲滅されたと言うつもりだった

 

一応は、頼もしくなってアスナロ市から帰ってきてくれたことを喜ぶべきなのかと悩む杏子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻が正午を回った頃、志筑仁美はカヲルを伴って見滝原の湖の船乗り場に来ていた。

 

仁美を迎えるように志筑家の人達、関連企業の人間たちが彼女らを迎える。

 

だが、その表情に生気はなく虚ろな表情と首の後ろに突き刺さった”針”からは奇妙な”瘴気”が漂っていた・・・

 

「フタツキさん達を迎える準備をしなくてはいけませんね。早速ですが、歓迎会の準備を・・・」

 

使用人たちが仁美の指示に従い、今夜この船に乗船する”明良 二樹”達を迎える為に準備を始めるのだった。

 

「僕も同席しても良いかな?」

 

カヲルも歓迎会に参加の意思を示し、仁美は笑顔でそれに応えるのだった・・・・・・

 

そんな二人をキュウベえは、感情のない赤い瞳で見ていた。

 

それに気づいたのかカヲルは手を振ってこたえる、キュウベえの表情が変わることはなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

前回よりアスナロ市から見滝原に帰ってきた仁美ちゃんとカヲル君。


次回で”回転”が終わります。1話程の番外編を経て、見滝原中学校での決戦に移りたいと思います・・・


番外編で決まっているのは”アスナロ市”からくる”フタツキ一行”を中心とした話の予定です。

上条君の周囲は、彼自身を”陰我”に追い詰める要因が多数存在していたようです。

そして・・・その”陰我”は、さらなる”陰我”を呼びます・・・・・・

久々の風雲騎士一家登場。魔道輪 ナダサに振り回される杏子(笑)

ほむらも数日ぶりに杏子と再会しますが、姿が変わりすぎてしまいました(笑)

魔導輪 ギュテクはザルバのように自身の一部を吐き出すのではなく、そのまま自身の”複製”を生み出すことが可能・・・

元使徒ホラーなのでこれぐらいはできるかと思います。

ほむらはほむらで単独でホラーを狩れるほどになりましたが、逆に番犬所や魔戒騎士を警戒しなくてはならなくなり、ある意味バラゴと一緒に居たほうが安全な状況になりました。



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