呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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第六話「遭遇」

 

 

鈍い足音を立ててそれは、ゆっくりと歩いてきた。光を通さない暗く深い森の奥から・・・・・・

”KISYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA………”

片手に下半身を無残に引きちぎられた悪魔の頭部を鷲掴みにし・・・・・・それを握りつぶすかのようにして、”力”を喰らう。

断末魔が森の奥に木霊する。暗い闇に浮かぶ狼の輪郭が崩れ、一人の男 バラゴが現れた。

それを近くでほむらは見ていた、いつもながら凄まじい光景だった・・・・・・

(本当に凄い力だわ。あの男 バラゴ自身も凄いのにそれがさらに力を増すなんて・・・・・・)

そう思いつつも自身の服装にも目を通した。病院服をいつまでも来ているわけにも行かず、バラゴは、ほむらにある服を手渡していた。

それは、魔戒法師が着る法衣。この服を着たとき、彼の目が少しだけ優しい光を灯した。

「気分はどうだね?ほむら君」

ほむらに歩み寄りながら、バラゴは笑みを浮かべる。

「………大丈夫よ。もう慣れたから、気遣いは必要ないわ」

歩み寄る彼の目をなるだけ見ないようにほむらは応えた。その様子にバラゴは僅かに目を細めた。

「そうかい?少々君が無理をしているのではないかと気になっていたのだが……まあいい、ところで”魔女”の方はどうなんだい?」

「………この近くに魔女は居ないわ。ただ、”使い魔”は居るわ」

「なるほど、取るに足らないようだね、時間の無駄だ。このまま”ホラー”を狩る続けよう。付いてきたまえ」

二人は森から街へと移動していった。

(…………アイツは、どうして”究極の力”に拘るの?あのままでも、アイツに勝てる奴なんて居るはずないのに……)

ここ数日、バラゴ達と居を共にしていて彼の凄まじさをほむらは理解していた。圧倒的な戦闘能力と力に対する狂おしいまでの執念を……

今まで、様々な者達と関わってきたが、彼と比類する存在は居ない。彼ならば、最強最悪の魔女”ワルプルギスの夜”ですらも倒すことは可能であろう……

彼と接触できたことは喜ぶべきイレギュラーである。暁美ほむらの目的を達成するためには……だが………

「ほむら君。”ワルプルギスの夜”とは、どのような魔女なのだい?」

接触を持った時から積極的に魔女狩りに興味を示し、行動を共にしている。

「結界を必要としない超弩級の魔女よ。性質は”無力”……」

「………無力。力のない魔女という意味なのか?」

「分からない。なぜ、そんな性質の魔女がアレほど巨大な力を持つのかなんて、分かっているのはアイツの姿は元の姿と大きく違っている」

「姿が違う?」

「ええ、アイツは複数の魔女の集合体なの。一体の魔女が様々な魔女を取り込み今の姿になったらしいわ」

「……………」

何かを思うように目を細め、二人はそのまま会話もなく新たなホラー狩りへと向かうのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

”全てのホラーを狩る”

 

 

 

 

 

 

”全ての魔女を倒す”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転校生というのは珍しいのか、杏子はクラスメイトに囲まれていた。その杏子は少し困惑していた。

「ねえ、佐倉さんは前は何処の学校にいたの?」

「クラブは何処?」

「ああ、前はミッション系の学校に行ってて、色々遭っておじさんの世話になってる」

「色々って?」

「アタシ、親が居なくて……」

「ごめんなさい」

「良いんだよ。もう過ぎたことだ、今はおじさんが居るし」

暗くなりそうな雰囲気に対して、杏子は気にしてないと伝える。

「でも……」

「でももじゃねえ~よ。アタシが気にしないっていうから気にしない。この話は終わりだ」

”パン”と手を叩きその場を締める杏子であった。勝気な笑みを浮かべていた。

「転校生 佐倉杏子さん、あなたを姐さんと呼ばせてください!!!!」

「えっ?なんだ、それ?」

さっそくであるが、この時、クラスメイトから”姐さん”と呼ばれ、慕われるようになった。

「私は、美樹さやかと申します姐さん、アンタの心意気に惚れやした!!!」

「えぇ~~、こういうのってさ、普通、男同士での暑苦しい場面じゃねえの?」

最近見た昔のドラマの再放送にあった妙に暑苦しい”刑事ドラマ”を浮かべる。

”ジョーっ!!!”

”アニキっ!!!!”

こんな事を言っていたと

「えっ!?!女同士でだなんてっ!?!い、いけませんわ!!!!」

急に顔を赤めらせて身悶えし始め、そのまま教室の外に走り去っていった。ガラス張りの教室なのでその姿はよく見えた……

「よく見えるな~~~って、この教室って丸分かりじゃねえかっ!!?!」

「おおっ!!乗り突っ込み!!!姐さん!!!流石ですよ!!!!」

「うるせえっ!!姐さん言うなっ!!!」

このやり取りで杏子は初日で上手くクラスに溶け込むことが出来た。その後も色々とあったが、授業は問題なく終えることが出来た…

 

 

 

 

 

 

杏子

……おじさんに勉強教えてもらわなかったら、絶対に恥をかいてた……

”杏子ちゃん、勉強は今、出来るうちにやっておこうね”

学校に行くのが決まってから、やれることはやてとこうと言わんばかりにおじさんに勉強を教えられた。

とにかく厳しかった。アタシの為を思って厳しくしてくれるおじさんには、感謝しておいたほうがいいかな?

”杏子ちゃん、そこ・・・・・・”

怒鳴らなかった分、細かいところを突いてくるのは勘弁してもらいたかった・・・・・・

聞くと魔戒騎士の教育は大体が厳しいらしい。話だと最高位の黄金騎士は財閥のトップというから驚きだよ・・・

昼間は財閥のトップで夜はホラーを狩っている。どこの蝙蝠男だよって言いたくなった………

蝙蝠男ってのは、この間おじさんと一緒に行った映画で見た奴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすが姐さん!!!!動けば男子を圧倒し、頭も良いし、天は二物も三物も与えたって事ですか!!!」

「おいおい、アタシをそんな風に褒めたって何にも出てこないぞ」

満更でもないのか、少し照れる杏子であった。このように褒められる事が中々、なかったためである。

(運動に関しちゃ、自信があったし、アタシはこれでも”魔戒騎士”の血筋だしな)

ここ数日で分かったことだが、杏子は自身の中に”魔戒騎士”の血が流れていることを誇るようになっていた。

父はこの血筋を嫌っていたが、父が思っていた程、恐ろしい血筋ではないと杏子は考えていた。

父が血筋を嫌っていたのは、杏子の祖母に当たる人物が病魔に犯され、そこにホラーが付けこみ憑依され、ホラー毎祖父が斬ったのだ。

自分の一族にそんな事情があったことにも驚いた。あの優しかった父には耐えられない事実だったのだ。だからこそ、力ではなく、心による救済を求めた……

”弟のやろうとしたことは、間違いではない”

話してくれたおじは、

”だからこそ、俺は弟の血を引いている君を護りたい。これ以上、関わりのある人を失いたくないからな”

護りたいって言われたのは悪い気がしなかった。むしろ杏子は嬉しかった。

「ねえ、鹿目さんが上級生に呼ばれているみたいだけど、美樹さん。あの先輩知ってる?」

クラスメイトの一人が入り口の所に居るまどかと上級生に視線を向ける。

「あたし、知らないわよ、あの先輩。まどか、少し困ってるわ」

さやかの知るまどかは、人見知りなのだ。傍から見ても尋ねてきた上級生の対応に困っている。

「よ~~し、ここは、さやかちゃんが人肌脱ぎますか」

困っている幼馴染をフォローするためにまどかの下へ向かおうとするが、

「さやか、アタシが行くよ。マミとは知らない仲じゃないからさ」

「えっ!?!姐さんの知り合いですか!?」

「姐さん言うな!!!話してくるから席を外すぞ」

入り口に居る二人へ杏子は赴くのだった。

<久しぶりだな。マミ>

久しく使っていなかったテレパシーを使いながら………

「あなたっ!!!佐倉杏子っ!!!どうしてここに居るの!!!?!」

<せっかくテレパシー使ってんだから、こっちで答えてくれよ>

 

 

 

 

 

 

 

 

マミ

きゅうべえに教えられた鹿目 まどかさんにコンタクトを取りに、二年の教室にやっていた時、もう二度と顔を合わすことがないと思っていたあの子が居た・・・・・・

佐倉 杏子が・・・・・・

「あなたっ!!!佐倉杏子っ!!!!どうしてここに居るの!!!!」

<せっかくテレパシー使ってんだから、こっちで応えてくれよ>

直接、話しかけてきた佐倉杏子に対して、私は思わず……

「ここ”見滝原”に何をしにきたというの?」

あの時と同じように冷たい言葉を返してしまった。目の前に居る鹿目 まどかさんが居るにもかかわらず……

「ったく、相変わらずだなって…これはアタシのせいか」

何かを考えるように佐倉杏子は目をつぶり、

<そこの小さいのの勧誘は、辞めて置けよ、マミ。アタシは魔法少女を増やすのは、反対だかんな>

ずるい事に口に出せないことを言って来た。

<そう…あなたの取り分が減るからなの?でも、きゅうべえに認められたのなら、関係がないとは言えないわ>

<そういう話じゃねえよ。そいつは、誰が見ても一般人だ。アタシ達のような厄介ごとを背負うことはねえ>

魔法少女を”厄介ごと”と言うなんて……今は、引いた方がいいかもしれない。ここで騒ぎを起して目立つのは……

まだ三週間はある……ワルプルギスの夜が来るまで………

鹿目 まどかさんに打ち明けるのはもう少し後でも構わない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まどか

私のところにマミさんが尋ねてきました……私じゃない私はインキュベーターと出会って、マミさんと出会った……

そして、ほむらちゃんとは、考え方の違いで何度も敵対して、話を聞かないで……いつも……

本当は寂しがりやの先輩。似合わない戦いをずっと一人で……最期も……

私のために頑張ってくれたほむらちゃんの為にも、マミさんは他の魔法少女と協力して欲しい……

そうすれば、きっと”ワルプルギスの夜”も………

教室を出て行ったマミさんを追いかけてしまった……

今も頑張っているほむらちゃんの為に私が出来ることをしなければと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子

あの小さいの、何でマミを追いかけてんだ?

もしかして、きゅうべえの奴に何か言われたのか……だったら、言っておかないといけない。

安易に”奇跡”になんて手をだすんじゃねえって……安易な”奇跡”は、あいつら、”ホラー”に取り付かれるのと大差ねえ事を……

マミ。寂しいからって、誰かを巻き込んで”人生”を無駄にさせんなよ!!!!

「姐さん。まどかがあの先輩を追いかけていってしまいましたけど…」

ったく、同い年なんだから、敬語で姐さんって呼ぶな!!!!!仕方ねえ、こいつでも居ないよりはマシだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なあ、さやか。友達が誰かの為に自分の人生を投げ出そうとしていたら、お前は止めるか?それとも喜ぶのどっちだ?

 

 

 

 


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