呀 暗黒騎士異聞(魔法少女まどか☆マギカ×呀 暗黒騎士鎧伝)   作:navaho

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募集して戴いたキャラを描いてみるというお目標を立てて自分なりに立てていましたが、それなりに満足のいく感じに描かせていただきました。

今回で明良 二樹らの番外編は完結です。

ただし本編に出てきますので、彼らの出番は続きます。


番外編「明良 二樹と言う男」(後編 終)

数日前・・・

 

廃ビルに現れたホラーと対峙しているのは、香蘭である。

 

「う~ん。ホラーとしては下級で大したことのない雑魚かぁ~~、」

 

『なんだと?貴様ぁ・・・人間ごときが我を侮辱するか』

 

素体ホラーの面影を残した緑色の”鬼”を思わせるホラーは、香蘭に対し爪を剥き出し襲い掛かるとするが

 

「勢いだけで大したことないね。やっぱり・・・違うか、香蘭ちゃんが凄いからかな」

 

魔導筆を振り、結界の円を描くと共にホラーを拘束するのだった。

 

強固な捕縛術により自由を奪われてもなお吼えるが、香蘭は気にすることなく歩み寄り特殊な術で加工した瓶を取り出した。

 

その中には”小さくされたホラー”が存在していた。

 

『何故だ!?一体、どういう術なのだ!?!』

 

「香蘭ちゃんのオリジナルの術式♪この術に掛ったら、対象を小さくすることが出来るんだよ♪」

 

小さくされたホラーは何とか抜け出そうと足掻いているが何もすることが出来ない。

 

その様子を香蘭は生理的嫌悪感を刺激する笑みを浮かべ一歩、また一歩ホラーに近づく。

 

『ぐぅううっ!!!?』

 

目の前の女の得体の知れなさにホラーにあるまじき恐怖を覚えていた。

 

「ホラーって適合する”陰我”に憑依して実体化するって言われてるけど、既に実体化したホラーとホラーの陰我を合わせたら・・・どんな結果になるのかなぁ~」

 

自身の知的好奇心を満たす為にある実験をこのホラーに対して行うことにした・・・

 

廃ビルからこの世のモノとは思えない悍ましい叫びが響いたのは、数十秒後の事だった・・・

 

 

 

 

 

 

数日後の廃ビルに足を踏み入れた不知火 リュウジは自身の勘がこの先に居る”何か”に対し、警鐘を鳴らしているのを感じていた。

 

(・・・なんだ?ここは陰我のオブジェがあったのは間違いない。普通なら・・・俺でも何とかなるホラーが居るんだろうけど・・・今までにない気味の悪さを感じる)

 

得物である穂先が三又に分かれた魔戒槍を構えながら進む。廃墟はかつて工場だったのか、面影こそは残すが赤い錆と苔に覆われた製造用機械にさらには割れたガラスなどが至る所に散乱していた。

 

当時の名残なのか色褪せ、文字が消えかかった計画表が壁に貼られている。

 

奥へ進むごとにその異様な”気配”は強くなっていく・・・

 

「何が居る?香蘭が・・・困っている存在・・・」

 

彼女に近づく為に提案に乗ったのだが、もしかしたら軽率な判断だったかもしれないと今更ながら考えてしまった。

 

香蘭は魔戒騎士や法師の間での評判は”最恐”であり、ある意味”ホラー”よりも苛烈であったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

曰く、殺傷能力の高い魔導具の性能を試す為にわざとホラーを人に憑依させて斬った・・・

 

曰く、咎めに現れた闇斬師を返り討ちにした・・・

 

曰く、強い肉体を持つ戦士を創造するために魔戒騎士を拘束し、人体実験を行った・・・

 

人をホラーのように怪物に変える”寄生型魔導具”を町全体にばら撒いた・・・

 

元老院に召集される程の才を持ちながら、人が本来持つべき”心”を持たない”怪物”であると・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんな人物の逮捕を命じられた時は、不謹慎ではあったが自身に”大仕事”が回ってきたと気持ちが高揚したのを今でも覚えている。その時に尊敬する先輩騎士からは・・・

 

”厳しく、辛い任務になるがしっかりとやれよ”

 

出立の際に激励され、この任務を必ず完遂してみせると心に誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

多くの魔戒騎士、法師、元老院からも警戒される人物であるから何をしでかすか分からない。

 

不知火リュウジは廃墟の奥に存在する”それ”を目の当たりにし、香蘭が”最恐”であるが所以を知ることになる・・・

 

 

 

 

 

 

 

『『ああああああっ・・・・おぉおおおおおおッ』』

 

そこに居たのは今までに見たことも聞いたこともない”ホラー”・・・のような何かだった・・・

 

「な、なんだ?こ、こいつは・・・二つの陰我が・・・混ざり合っている?」

 

魔戒騎士は、ホラーの陰我を個人差こそはあれ、ある程度は感じることが出来る。

 

不知火リュウジは特にその感受性が鋭く、陰我の強さを正確に見抜くことができるのだが、目の前に居る存在は複数に”陰我”が混ざり合っており、互いの陰我がお互いに食い合っているという有様だった。

 

『『ああ、あのオンナぁあ・・・我らにこのような仕打ち・・・必ずや・・・』』

 

二つの異なる声が怨嗟の念を上げており、奇妙な肉塊が蠢きそれはゆっくりと不知火 リュウジに向かって振り向いた。

 

それは二つの顔が融合した奇形であり、異形の怪物ホラーを更に悍ましい姿をしていた。

 

魔獣ホラーというよりも陰我に塗れた醜悪な肉塊でしかない・・・

 

『『貴様ぁ・・・魔戒騎士かぁ・・・あのオンナは何処に行ったぁ!!!』』

 

吼えながら飛び掛かろうとしたが、寸前に捕縛の結界が発動しその動きを封じる。

 

不知火 リュウジは身構えたが、相手が動けないことに安堵の息を漏らした。

 

この結界はこの悍ましい怪物を監禁する為に掛けられたもののようだ。

 

悍ましい異形が自由に動けるのならば、こんな場所には居らず、元凶である香蘭を探している。

 

「・・・悪趣味なモノを・・・」

 

嫌悪感を感じつつもホラー同士を強制的に融合させる術とこのように完全に捕縛する術を操る香蘭の恐ろしさと逮捕と言う任務の過酷さを改めて思い知るのだが・・・

 

「んっ!?」

 

完全に異形のホラーを捉えていた結界が突如として解かれた。

 

『『・・・?・・・どういうことだ?』』

 

ホラーも自身の力を持ってしても破ることのできなかった結界が解かれたことに戸惑っている。

 

その様子に不知火 リョウジは内心”やられた”と胸の内で叫んだ。

 

香蘭は此処に来るように自分を支持した。

 

そして、ここには彼女がホラー同士を合成させるという実験をしており、その実験体を監禁していた・・・

 

それを解放したということは・・・香蘭が意図的に結界を解いたということである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「カクテルって・・・そういう意味かよ。ホラー同士を混ぜるなんざ・・・あの女ならやりかねないか」

 

廃墟の屋上から見下ろすように斬刃は嫌なモノを見たと言わんかりの視線を向けていた。

 

「陰我と陰我を合わせたらどうなるかか・・・カクテルっいうのも納得だよね」

 

香蘭より撮影を頼まれているのか、明良 二樹は斬刃に応えながらカメラを回していた。

 

「ったく・・・酒の何処が良いんだ。俺ぁ、強い奴と戦う方がずっといいね」

 

「斬刃は、お酒飲めないんだったよね。飲むと倒れるんだっけ?」

 

「そこまでは弱くねえよ・・・意識してりゃあなんとかできらぁ」

 

斬刃は、酒を嗜むことが出来ない・・・彼は所謂、下戸であった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

『『ぐぅうううう・・・結界が消えた?そんな事はどうでもいい・・・まずは、貴様を喰らい、力をつけ、あの女を八つ裂きにしてくれるわっ!!』』

 

合成されたホラーの意思と陰我はこのような目に遭わした魔戒法師 香蘭への復讐で一致しており、二つの陰我を持った異形のホラーがその牙を魔戒騎士 不知火 リュウジに向けるのだった。

 

魔戒槍を構え、振り下ろされた爪を刃で弾く。

 

一般的な下級ホラーのような爪による接近戦ならば不知火 リュウジも殲滅が可能であった。

 

しかしながら目の前に居る異形は奇怪な魔法陣を正面に出現させると同時にその魔法陣に腕を勢いよく突っ込んだと同時に不知火リュウジの背後よりホラーの腕が爪を伴って現れたのだった。

 

「なにっ!?!こいつ、こんな能力を持っているのか!?!」

 

限定的に空間を捻じ曲げる能力を持ったホラーも存在している。

 

空間を捻じ曲げるのならば、結界から逃れることもできたのではと考えたが、単純に考えれば、香蘭の掛けた術がホラーの能力を上回っていただけである。

 

かなり厄介な為、短期決戦で殲滅すると判断し、不知火 リュウジは魔戒槍を掲げると同時に円を描き、自身の鎧を召喚する。

 

魔界のゲートより眩い光と共にソウルメタル独特の金属音と共に不知火リュウジの身体を包み込んだ。

 

それは、鋼色の鎧であった・・・

 

鋼の鎧を纏い、不知火リュウジは、合成ホラー目掛けて、勢いよく飛び出し切っ先を勢いよくホラーの額に付きつけそのまま振り下ろすことによって頭部を切断する。

 

「近づいてしまえば・・・大したことは・・・」

 

ホラーの急所を間違いなく斬ったはずだった。

 

だが、切断された頭部と頭部を失った身体は消えることなく気味の悪い音を立てながら二体のホラーとして立ち上がった・・・

 

「な・・・分裂能力?こいつ・・・まさか攻撃すればするほど・・・」

 

不知火リュウジの不安を表すようにさらに噴出した黒い血からも這い出るように素体ホラーが出現し始めたのだった。

 

「くっ!?!なんなんだ!?!こいつは!!?!」

 

明らかに普通のホラーではなかった。

 

ソウルメタルによる一撃を受けたのならばホラーの身体は爆発四散するはずなのに、このホラーはソウルメタルの攻撃を受けても爆発四散せず、流した血と斬られた肉塊からさらに増えていく・・・

 

ホラー同士を掛け合わせたとしてもこのような能力は持てない。

 

おそらくはホラーを混ぜる際に香蘭が何かをしたことは明白であった・・・

 

迫り来るホラーの群れに不知火リュウジは追い詰められ、強い衝撃を受けたと同時に魔戒槍を手放してしまい、鋼の鎧が解除されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鋼の鎧か・・・ちょっと色は違うけど魔戒騎士の鎧はあんな感じなのかな」

 

明良 二樹は鋼の鎧を見慣れたように呟いた。

 

斬刃の召喚する鎧もまた”鋼の鎧”である。大多数の魔戒騎士が鋼の鎧を纏う・・・

 

一部の腕の立つ魔戒騎士は、称号を名乗ることが許されているが、それらは少数派である。

 

「称号持ちは少数派だからな。継承されていない鎧と称号もあるらしい」

 

斬刃は、感情を感じさせない口調で応えた。彼自身も称号持ちに憧れを・・・

 

黄金騎士 牙狼の称号に羨望をかつては抱いていたが、自身の父はと家系は称号持ちになり得なかったその他大勢の魔戒騎士でしかなく、伝手もなかった。

 

「俺には・・・関係もない話か・・・あの馬鹿、少しはマシな面になったみたいだが、やっぱり剣の腕は平均より少し下ってところだな」

 

自分に憧れたと言った割には、剣の腕は残念だと判断し斬刃は背を向けた。

 

「どうしたんだい?斬刃?最後まで見ないの?」

 

「分かりきった勝負なんざ見ても面白くねえだろ」

 

「まぁ、そういわないでよ。最初はつまらなくても見ていると盛り上がってくるかもしれないよ」

 

「あぁん、どういう・・・」

 

彼ら二人を横切るように一人の男が不知火リュウジの元へと飛び降りたのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

異常な細胞分裂と斬った肉片、流した血が個別のホラーに変貌していく様に不知火 リュウジは追い詰められていた。

 

思わず槍を手放してしまい複数のホラーによる攻撃を受けてしまい、四肢につけられた傷から血が流れる。

 

冷たいフロアを埃を上げながら転がりながら、彼はこの状況に諦めていなかった。

 

だが決定的な手段がなく、この合成ホラーは攻撃すればするほど、また肉片を散らしてしまえばそこからまた分裂する”プラナリア”の如く増えてしまうところが厄介であった。

 

数体のホラー達が吼えながら迫ってくる姿に自身の最期を感じながらも手放してしまった魔戒槍に向かう。

 

「うおおおおおおおおっ!!!!」

 

自身を鼓舞し突き進むが鎧は既に解除されてしまっている。

 

せめて一太刀、報いるべく自身を振るいだたせる。

 

突如として巨大な”魔戒斧”が不知火 リュウジの前に振り下ろされるように飛び込み、数体のホラーを切り裂くと同時に消し飛ばした。

 

まるで不知火リュウジをホラーから護るように・・・・・・

 

それは、赤い装飾をされた黒い刃の”魔戒斧”であり、その大きさが桁違いである。

 

魔戒剣が変化した斬馬剣を思わせる程巨大なモノだった・・・

 

「な、なんだ・・・この巨大な斧は・・・」

 

戸惑いの声を上げる不知火 リュウジの前にその男は降り立った。

 

「心を乱すな・・・今この場で冷静でなければ、この化け物に命を奪われるぞ」

 

筋骨隆々の逞しい体躯の特徴的なドレッドヘアーの男が一振りの斧を構えながら、細胞分裂により巨大化していくホラーに視線を向けていた。

 

「この化け物・・・香蘭が何かしたとして間違いないか。不本意だが、預かっているモノの力を借りなければならないか」

 

『ようやく”鎧”を使ってくれるか、紅蜥蜴よ。さぁ、主が授かった”力”を召喚するのだ』

 

年季の入った老人の声が紅蜥蜴の腕より響く。口調は何処となく喜色の念を載せている。

 

「・・・授けた?お前達が俺にすり寄って来ただけだろう。まぁいい、こいつを手際よく片付けるには、預かっているこれを借りるぞ」

 

紅蜥蜴は自身の意思により魔戒斧を手元に手繰り寄せる。巨岩を思わせる斧が意志を持つかのように紅蜥蜴の元に向かっていく光景に不知火リュウジは・・・

 

(だ、だれだ?この騎士は?こんな騎士が居るなんて知らないぞ。紅蜥蜴と言う名は、何処かで・・・)

 

彼の戸惑いを払うように紅蜥蜴は二振りの斧を掲げると同時に魔界のゲートを開き、鎧を召喚する。

 

眩い光と共にソウルメタル独特の金属音を響かせたと同時に不知火リュウジの鋼の色ではない、本来は”赤”であるはずの色が所々黒く塗りつぶされた口元の牙を隠した鋭利な突起を両肘に供えた魔戒騎士が立っていた。

 

両肩には斧が楯のように具えられており。腕を交差すると同時にそれらを獲物として両手に取り、構えた。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~~、久しぶりに見たよ、紅蜥蜴の鎧を着た姿」

 

上機嫌に感嘆の声を上げる明良 二樹に対し、斬刃は初めて見た紅蜥蜴の”鎧姿”に目を奪われていた。

 

「な、あいつ!?!称号を持っていたのかよ!?!」

 

「いや、紅蜥蜴は称号持ちを名乗ってはいないよ。アレは単に預かっているだけで必要があれば借りているだけだってさ」

 

「な、なんだとっ!?」

 

斬刃は、紅蜥蜴と共闘することもあったが彼が鎧を召喚するところをこれまで見たことがなかった。

 

ハンプティですら鎧召喚無しで殲滅してしまう程の強さを持つが故に鎧を必要とする場面に巡り合わなかったのだ。

 

明良 二樹の言葉を証明するかのように本来は赤く輝くはずの鎧が所々黒く塗りつぶされているのは、彼がその称号を受け入れず、名乗っていない為であるからである。

 

「最初はつまらなくても最後まで展開を見てみるものだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬られるたびに分裂、流した血からも数を増す合成ホラーに対し、紅蜥蜴は魔戒斧を巨大化させ横一線に斬るというよりも圧倒的な力で肉片、血すらも残さずに消し飛ばす。

 

再生能力と分裂能力をも上回る威力に不知火リュウジはもちろんのことながら、影で見ていた斬刃もまた驚いていた。

 

そして、紅蜥蜴との戦いは自身が思う以上に”最高のモノである”の再び認識するのだった。

 

『『な、なんなんだ?我らの身体を消し飛ばすとは・・・法術ではない』』

 

純粋な武器を振るう器量が圧倒的であるが為にできる芸当である。

 

限定的に空間を演じ曲げる能力を使い、奇襲を掛けようとするが・・・

 

「そこか・・・」

 

真上から現れた合成ホラーを二振りの斧を交差させて切り裂くと同時に消し飛ばした。

 

鎧を解除したと同時に紅蜥蜴は不知火 リュウジに視線を向けた。

 

不知火 リュウジは目の前の魔戒騎士の強さにただ圧倒されていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を明良 二樹に渡していた魔導具を通じてみていた香蘭は残念そうに溜息を付いていた。

 

「あっちゃ~~。紅蜥蜴君が来ちゃったか・・・まぁいいか、とりあえず痛い目に遭わせたからこのぐらいにしてあげようかな」

 

本来はあの実験体に喰わせる予定だったが、それも大いに狂ってしまった。

 

そのことに怒りを抱く程の執着もなかったので、目の前にあるモニターの映像を切り香蘭は部屋を後にするのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから紅蜥蜴が明良 二樹がまとめ役であり香蘭も斬刃もその仲間である事を知る。

 

そして多くの”陰我”を・・・それに近いモノを抱えた存在が集まっていることを・・・・・・

 

魔戒とは無関係でありながら、それらを知り、悪事を働く明良 二樹と最恐と名高い魔戒法師 香蘭、血なまぐさい戦闘狂 逸れ魔戒騎士 斬刃とは表面上は仲間として接していたが、その心の内はこのような外道達が大手を振るっているのが納得が出来なかった。

 

さらには、逸れ魔戒騎士 紅蜥蜴の件もだった・・・

 

彼は他のメンバーと違い、真面すぎるのだった。彼は彼で”陰我”と対峙し、それらから人々を”悪”を持って斬ると話してくれた・・・

 

だからこそ納得が出来なかった・・・彼の様な強く、それでいて真面目な騎士がどうしてこのような一団に身を置いているのかと・・・

 

事実彼は、明良 二樹に依頼されてホラーを斬ることはあるが、被害を最小限に食い止めるべく動いている。

 

表面では自分は、軽薄で軟派な頭の悪い男で通しているが、紅蜥蜴は自分を隠密の魔戒騎士であることを見抜いていた。

 

紅蜥蜴はそのことを特に明良 二樹に告げることもなく、香蘭の気を引こうとする軽薄な青年を今も演じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ホラー ガマール討伐の為に呼び掛けに応じたメンバーが bar ”Heart-to- Heart ”に集まっていた。営業時間は既に過ぎており、彼ら以外誰も居ない。

 

「やぁ、みんなよく集まってくれたね。」

 

明良 二樹は集まったメンバーに笑いかける。

 

「大量にホラーが出たんだろ。雑魚には違いないが、俺は強くならなくちゃいけないしな」

 

斬刃は壁にもたれかかる紅蜥蜴に視線を向ける。あの日、紅蜥蜴の力を目の当たりにし、あの力と全力で戦いたいと強く思うようになっていた。

 

今のままでは、紅蜥蜴と互角に戦うことはできない為、強くなるため様々な実戦を積んで剣の腕を上げる魂胆であった。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

片目を隠した長髪の青年 植原 牙樹丸は距離おいて俯きがちでカウンター席に座っている。

 

傍では香蘭に不知火 リュウジが話しかけていて、それを香蘭が相手にしないといういつもの光景があった。

 

火車はその様子に不知火リュウジが抱えている事情を察して苦笑する。

 

聖 カンナはなんでまた香蘭なんかに惚れるのだろうと疑問符を浮かべるが、鼎 などかより

 

「嫌な目を忘れさせるぐらい好きってことじゃないかな。えへへへへ」

 

こんな時間にBARに何故いるのかと思うところがあるが、今夜の依頼の件もあり一晩だけ、寝床を火車が提供していたのだった。

 

各々が思い思いに過ごしている雰囲気を変えるように明良 二樹が声を上げた。

 

「さぁ~~てと、人を食い物にしているブラック企業を潰しに行きますか」

 

彼の言葉を一部の者は”お前がそれを言うか”と反論するが・・・

 

「陰我に塗れているのは僕自身も認めているさ・・・だからかな、お前達が人の命を使ってせっせと積み上げたモノを壊したくなるのさ・・・ホラーだから殺されても文句は言えないだろう」

 

自分の”性分”は”悪”以外の何物でもない。故にその”悪”に従って生きている。

 

これ以上に幸福な事はないと明良 二樹は考えている。

 

人生を最も幸福に生きることに”自己肯定”がある。

 

人が最も否定しないものは自分自身であり、自己肯定は非常に難しい事なのだ・・・

 

自分の周りにはそういう”悪”が多く集まっている。

 

「人間って言うのは自分に正直で居る方が心と体の健康に良いんだよ、じゃあ、行きますか」

 

獲物であるホラーを狩るべく 動き出した一団を火車と聖カンナ 鼎 などかが見送る。

 

「貴女・・・依頼主の記憶を操作するんじゃなかったの?」

 

「えへへへへ。そのことなんだけど、忘れていいって言われちゃった」

 

一緒に行くはずの鼎などかが行かない事に聖 カンナは声を上げるが・・・

 

「あの人・・・今回の奴は調子に乗りすぎて、余計なモノを引き寄せちゃったらしいんすよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市のとある場所

 

自身が務めていたオフィスビルを見上げながら、男はこれまでにない高揚感を感じていた。

 

いよいよあの化け物となった常務を排除し、自身がその権力に近い場所に立つことが出来ることに・・・

 

笑いが込み上げてくる。権力の座に就いたら・・・自分は・・・と暗い欲望の影が差したと時・・・

 

彼の影より西洋の悪魔を思わせる”何か”が浮き上がろとしていた。

 

気分が高揚している彼は、そのことに気が付かない・・・

 

影より現れたホラーは彼に語り掛けようとするが・・・何者かがそのまま両断したのだった・・・

 

彼もろともに・・・・・・

 

「・・・やはりこういうことになったか。お前を野放しにして置いたら、ホラー ガマールの件以上の被害になる。故に斬らせてもらったぞ」

 

血だまりに沈む彼を一瞥した後に、下手人 紅蜥蜴は離れていた明良 二樹らと合流するのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜 アスナロ市のあるオフィスビルで怪現象ともいえる不可解な事件が起こった・・・

 

最上階に居た常務が行方不明になり、さらには集まっていた親族もであった・・・

 

獣が暴れたような痕跡と刀によって傷つけられた跡等が残っていたという奇妙なモノ・・・・・・

 

最も奇妙なのは、内部告発に動いていた”社員”が何者かに殺害されたという”事件”もまた発生しており、繋がりがあるのか、ないのか良く分からない事件だった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

bar ”Heart-to- Heart ”

 

カウンターで女性客はスマホの画面にその事件の記事を表示しながら明良 二樹と話し込んでいた。

 

「私の友達がそこに勤めていてさぁ~。常務もだけどあの社員も何かと野心が強すぎて、ついていけなかったんだよね。もしかしたらって、考えているんだって」

 

女性の話を聞きながら、明良 二樹は微笑みながら

 

「まぁ、世の中の真実って、荒唐無稽な事が現実的だったりするかもしれないね。ただ関わるとただじゃすまなくなるし、これまで通りに生活することは難しくなっちゃうかもね」

 

「そんな噂のBARがある方が怖いよ。絶対に関わっちゃいけない何かが居たりするよ」

 

「じゃあ、関わらないように夜道には気を付けてお帰りなさい。いつどこで巻き込まれるか分かったもんじゃないからね」

 

レジ会計を済ませ、女性客を見送った後、明良 二樹は奥の部屋へと歩みを進めた。

 

「火車・・・後の仕事を頼めるかな?」

 

奥で調理をしている火車に声を掛けてから、明良 二樹は奥の部屋のソファーに座る人に笑いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市のとある場所に行くとこう尋ねられる・・・

 

 

 

 

 

 

”♡貴方の陰我を発散させます♡”

 

 

 

 

 

 

それは繁華街にあるとある”bar”にいる年若い店主が”陰我”を晴らしてくれるという・・・

 

 

 

 

 

 

 

”陰我は人の邪心。それを抱え込んだら、身体に悪いし、今後の人生にも悪影響を及ぼすんだよ”

 

 

 

 

 

 

 

”だから、望みを言ってごらん。君の抱えている陰我を・・・”

 

 

 

 

 

 

 

”誰を・・・堕としたいのか教えてほしいな”

 

 

 

 

 

 

 

”ぶっちゃけなよ。誰が憎いんだい?誰の死を望んでいるんだい?”

 

 

 

 

 

 

 

彼は魔戒の力を利用し闇社会で暗躍する”一団”の長である・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

アスナロ市にあるbar ”Heart-to- Heart ”

 

 

 

 

 

 

 

今宵も”陰我”を抱えたお客様をお待ちしておりますよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしながら、お客様・・・だからと言って調子に乗ってはいけませんよ・・・・・・

 

 

”陰我”を増長させたら、お客様自身が誰かの手でこの世から消えてしまうかもしれませんよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

  番外編「明良 二樹と言う男」 終幕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき

三話程で終わらせようかと想定していましたが、予想よりも長くなってしまいました。

本編で、見滝原に彼らは襲来の予定です。

頂いた最後の魔法少女が出ておりませんが、彼女は本編で出てくる予定ですよ。

意外な人物との絡む予定です。

不知火 リュウジの苦難は今も続いております。香蘭の悪辣さもですが、紅蜥蜴が強すぎるのではないかと思わなくもないのですが、牙狼を模して造られた魔号機人 凱と共にグループ内では最高戦力として数えられているので、これぐらいでも良いかなと思うようにしています。

紅蜥蜴の鎧は本来は赤いんですが、”闇を照らす者”の流牙の牙狼のように一部の輝きが黒く塗りつぶされています。

このグループらは志筑仁美と合流し、見滝原の魔法少女、魔戒騎士、暗黒騎士一行とぶつかる予定です。

次回は、本編に行きたいと思います。

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