やはりダンジョンに出会いを求める俺の青春ラブコメはまちがっているだろうか【まちガイル】 作:燻煙
亀更新です。よろしくお願いします。
プロローグ
迷宮都市オラリオ。『ダンジョン』と通称される壮大な地下迷宮が存在する巨大都市。圧倒的なイレギュラー性を持つこの『ダンジョン』で何が起こるかは神でさえも知らない。誇張ではない。実際、本当にわかっていないのだ。高次元存在である神にすら何が起こるかわからないその地上に空いた暗闇は、化物の口腔を彷彿とさせる。
しかし、それでも。その牙の中に夢を求めて飛び込んでいく者、すなわち『冒険者』は後を絶たない。そのイレギュラー性に怯えずに、敵を狩り、切り裂き、生活の糧とするために。そして一攫千金を掴むために。
だが残念なことに現実はそうそう甘くない。金を稼ぐには地下迷宮の奥深くへと進むことが前提となってくる。すると今度は力を手に入れなければならないが、『神の恩恵』を受け、敵を蹂躙し続け、そうして途方もない苦労を重ねた上に器の昇華、すなわちランクアップは起こる。現在のスコアホルダーは『剣姫』の1年だったか。しかしこれもまたイレギュラーだ。普通はこの倍以上かかる。それで上がるランクはたったの1。それはそれで圧倒的な差が生まれるのだが、そうして苦労を重ねた上に待つのはまた力の差という壁だ。最下層に到達するには10や20の年月では到底足りないだろう。
そんな途方もない過程を生き急ぎ、命を落とす輩の何と多いことか。強さを求める余りその命を落とすのだ。『神の恩恵』を得ることで常人を遥かに超える力を持つ冒険者でさえも太刀打ちできない恐怖がそこには存在することを死亡者が出る度に実感させられる。だかそれでも欲望のために冒険者という職業は奥へ、奥へと進んでいかねばならない。死の危険性と欲望の狭間はまさに表裏一体。一歩間違えれば忽ちその命を落とす。地上に突如として現れた『ダンジョン』というイレギュラー性の中に身を置くことは圧倒的に分の悪い賭けであり、まさしくハイリスク・ローリターンと言わざるを得ない。………ろーりたーんって平仮名で書くといかがわしさが半端ない。平仮名で書く必要性全くねぇな。
ともかく、『冒険者は冒険してはいけない』という誰が考えたのかは知らないが的を射たこの金言の通り、いつ何時何が起こるか全くわからないダンジョンの奥へと進み、自らの命を危険に晒すことは阿呆のすることであり、冒険者なんて職業に憧れる輩が存在することそのものが異常であるとしか思えない。冒険者なんて、碌な物じゃないのだ。
結論。
冒険者なんて辞めちまえ。