やはりダンジョンに出会いを求める俺の青春ラブコメはまちがっているだろうか【まちガイル】 作:燻煙
「話は終わったか?君も隅に置けないな。では、付いてきたまえ。」
「いやそういうんじゃないんで。一介の平と上司の関係なんで。」
ホント、マジで。あとついでに帰ってもいいすか?
休憩室を出て平塚先生の後についていく。カツカツとヒールを鳴らしながら廊下を歩く平塚せんはやはりギルド職員全員の羨望の的であるようだ。道行く職員が皆振り返る。これで何で結婚できないんですかねぇ………。
「最近、ダンジョン、ひいてはオラリオでイレギュラーがちらほら発生している。」
顔をこちらに向けることなく平塚先生はその瞳にある種の色を浮かべながら言う。
「特にダンジョン内でのイレギュラーが比較的多いようでな。」
確かに、この情報は俺も知っている。エイナさんの下で事務仕事をしている時から気になっていた。イレギュラーの数そのものは大したことはないものの、まとめると結構な量になるのだ。
「あるレポートによると、ここ近年の冒険者の死亡者数は急激に増えてきているようでな。このままでは冒険者の数は減っていくことになるだろう。」
「あるレポートねぇ………。」
そのレポートは恐らく以前俺がおまけで作成したものだろう。平塚先生もわかっているのか、こちらを向いてニヤリと笑う。俺のこと大好きかよこの人。
「そこで今回ギルドはこの問題を解消すべく手を打つことにした。」
………ん?なんだか雲行きが怪しくなってきた気がする。心持ち平塚先生が楽しそうだ。悪い予感しかしない。
エレベーターに乗り40階へ。末端構成員の俺程度がこんな上階へ行っていいものだろうか。
50階建のバベルは20までが公共施設となっており、俺ちは勿論特別な権限などないので20までしか行ったことがない。30階では神様たちが【神会】を行い、最上階には美を司るフレイヤ神が住んでいる。つまりバベルの40階ともなると、そこはもはや神域と呼んでも過言ではない。てか平塚先生も相当だな。この人マジに権力者か。
「幸い死亡者数の上昇傾向は冒険者側にはまだあまり知られていないため、気づかれる前に早期に動くことが必要とされたのだよ。」
未知の領域への進出と話の雲行きに対する俺の胸中など御構い無しに平塚先生が続ける。
「そこで、ギルドはこのイレギュラーに対して調査を行うことがこの間の会議で決まってな。」
は?調査?ギルドが?なんで?
エレベーターを降りて左へ曲がり、最奥にある黒塗りのシックな大扉を開けながら言う。
「それが今回新設されるギルド直属極秘暗部部隊、通称【奉仕部】の仕事だ。」
バァーン!!という効果音が聞こえてきそうなテンションで平塚先生が言い放つ。この人好きそうだもんな、極秘だとか暗部だとか。なにNARUTO?サスケェ!バベルに復讐しなければ。
「ま、端的に言うとだな、比企谷。」
必死に脳内で現実逃避をする。ついでにこの場からも逃避したい。俺の脳内選択肢が、逃亡することを全力で推進してくる。ショコラちゃん………。
「上司命令だ。ダンジョンに潜れ。」
平穏の崩れさる音がした。
次回はゆきのんの登場回になる予定です。今のところダンまちキャラがエイナさんしか登場しておりませんが、いずれベルくんやヘスティア神などの面々も登場する予定となっております。ただ、中心は八幡たち奉仕部ですので、まだ先になる予定です。はい、予定ばかりですみません。ゆっくりゆっくりやっていきます。