やはりダンジョンに出会いを求める俺の青春ラブコメはまちがっているだろうか【まちガイル】 作:燻煙
俺の《魔法》が破られた。
それも完全に初対面の、ゆるふわビッチ系リア充に。
前回のラブライブ!と言わんばかりに頭の中にモノローグが流れる。もしくはオーズ。またライブチケット取れなかったんだよなぁ………。売り切れちょっと早すぎるって、八幡思うな!
雪ノ下相手にあれだけカッコつけて言い放ったくせに、このザマである。恥ずかしいことこの上ない。
俺の《魔法》が破られたという事実から目を背けようと必死に回転させていた頭を止め、現実と向き合う。
この女は一体誰だ?まずはそこからだ。
「………あー、すまん。その、ヒッキーってもしかして、俺のことか?」
とりあえずモンスター名のようなあだ名について尋ねる。頼む、俺じゃない誰かであってくれ。
「うん!いいでしょ?」
いや良くはねぇよ?
俺の祈り虚しく目の前の彼女が肯定する。神は死んだ!てか下界に溢れてましたね。
目が腐っているのがモンスターっぽいからかしら?昔どころか今もこのネタでいじめられちゃうの?泣いていい?
まぁ人からどう呼ばれようがどうだっていい。問題は、何故こいつが俺に話しかけてきているか、だ。
………どうでもいいが、ヒッキーってちょっとないんじゃないの?引きこもりみたいに聞こえるじゃねえか。大体合ってるから余計傷つく。別に、どうでもいいが。
「あ!そっか、まだ名前言ってなかったよね。あたしは由比ヶ浜結衣って言います。見えないかもだけど、【ヘファイストス・ファミリア】の鍛冶師やってるんだ!」
無言になった俺にそわそわしていた彼女、由比ヶ浜結衣が名前を告げる。うん、やっぱり初対面だな。直接会ったことは一回もない。
それにしても【ヘファイストス・ファミリア】ときたか。
【ヘファイストス・ファミリア】は鍛冶を司る主神・ヘファイトスの運営する鍛冶ファミリアだ。その構成員のほとんどが高ランクの鍛冶師であり、ヘファイストス・ファミリアによって作られた武器や防具は優秀であることで有名で、冒険者にとってはまさに喉から手が出るほど欲しい代物だ。
また、ファミリアの構成員の大半がただの鍛冶師ではなく、《戦う鍛冶師》であり、戦闘力も兼ね備えている。
潤沢な資金と戦力を兼ね備えた【ヘファイストス・ファミリア】はオラリオでも特に有名なファミリアの一つである。
かの【ヘファイストス・ファミリア】ということで少し驚く俺をちらちら見やり、あうあうしている由比ヶ浜。オットセイか何かかこいつ。
「あの、えと、実はエイナさんからヒッキーが部署移動になったって聞いて、それでその、ちょっとショックだったていうか、かなりショックだったっていうか………。
でもでもここでヒッキーみたいな人見かけて、追いかけみたらホントにヒッキーで!それにその、あたしの作った《デコポン》見てるし、もしかしたらもしかするかもって思って!
あ、いや、もしかするってゆーかなんとゆーか………。あたし何言ってんだろ〜!?」
顔を赤くして早口に捲し立てる由比ヶ浜。めっちゃ挙動不審だなこいつ。大概俺も挙動不審なので人のこと言えませんでした。
あたふたとオットセイしている由比ヶ浜の言葉の中で幾つか気になる単語が出てきたが、それはさて置き。
(エイナさん、あなたの仕業ですか。)
陰で俺の悪口で盛り上がってたりしたのだろうか。エイナさんはそんなことする人ではないとわかってはいるが、ついマイナス方面に考えてしまう。
でも、それだけでは俺の《魔法》が破られる理由にはならないはずだ。ほぼ裏方の俺を視認する機会なんて殆どないはずなのだ。何故だ?
何故由比ヶ浜は俺の《魔法》が効かなかった?
未だにオットセイしている由比ヶ浜を無言のまま見続けるのも何だか可哀想に思えてきたので、とりあえず先ほど引っかかった単語について聞いてみる。
「あーっと、とりあえず落ち着いてくれ。その、何だ?えーっと、これはお前が作ったのか?」
《デコポン》といったか?置くタイミングを逃したため、未だに手に持っていたデッコデコのピンクの刀を目で示し問いかける。
「え!?う、うん、そうだよ。《デコポン》っていうんだけど………。どう、かな?」
どうやらこのにひひっと笑うお嬢様系アイドルを思い出しそうな刀は《デコポン》というらしい。デコちゃんに踏まれたい。デコデコのポン刀という意味だろうか。多分違うな。
「どう、って言われてもな。正直、扱いやすそうないい刀だとは思う。軽くて長さもちょうど良さげだし。見た目は最悪だが。」
とりあえず素直な感想を述べておく。ヨイショではない。
この装飾の所為で売れないんだろうが。勿体無い。
「見た目最悪って………、なんかショックかも。でも、う〜、ヒッキーに褒められちゃった、どうしよう〜!?!?」
俺の感想を聞き、その顔を更に赤らめる由比ヶ浜。え、何?もしかして怒ってたりするの?俺は一体どうされちゃうの?
由比ヶ浜の反応に対して碌なリアクションができないでいると、由比ヶ浜が意を決したように顔を上げる。
「………よし!ヒッキー、それあたしが買ってきてあげる!引き取るって言ったら無料になるし!」
え?なして?
俺が返答に窮している隙に俺の手から《デコポン》を奪い去ってレジに持っていく由比ヶ浜。
何がよしなのかサッパリわからん。寧ろ「よし」より「あし」だと思うんですけど、俺が。
「はい!ヒッキーこれ!」
いつの間にか由比ヶ浜が戻ってきており、俺にその刀を渡してくる。お嬢さん脚早いっすね。
急いで来たのかちょっぴり荒くなった息が妙に艶かしい。呼吸と同時に上下する豊かな2つのメロンと相まって艶かしさが倍増している。
俺も鼻息とかが荒くなっちゃいそうなので、極力直視しないようにしたためだろうか。その差し出された刀を反射的に受け取ってしまう。
って受け取ってから気づいたが、俺ってもしかしてこの装飾華美な刀でダンジョンに潜るの?黒歴史ものでしょこれ。まぁそれもなんとかならんわけでもないが、やはり断るべきだろう。施しは受けたくないし、後で何か要求されても困る。
期せずして武器が手に入ったことは喜ばしいことかもしれんが、肝心の理由がちっともわからんしな。
由比ヶ浜の息が落ち着くのを待ってから切り出すことにする。まだ顔が赤いが、大丈夫だろう。
「あー、その。悪いんだがこれは受け取れねえわ。」
そう言って反射的に受け取ってしまった光る《デコポン》を差し出す。ヒカリモノなら喜んで受け取るんだがな。
「ええ!?」
突き返されると予想していなかったのか、由比ヶ浜が目を見開いて驚きの声をあげる。
「いや、受け取る理由がわからんし。」
こんなデコデコした刀は御免だし。
「理由………。理由はその、なんというか、お礼っていうか!」
ん?お礼?
「お礼って、俺とお前は「あなたたちは一体何をしているのかしら?」
初対面だろ、と言おうとしたところに例の冷たい声が聞こえる。誰だか確認するまでもない。声だけで誰かわかっちゃうなんて、これもう広義においては家族レベルなんじゃないの?
痺れを切らしたのか、はたまた俺が他人と接触しているのを見て近づいて来たのか。幸い俺たち以外の客が既にいなくなっていた為に雪ノ下が近づいてきていたようだ。気づけばもうかれこれ1時間以上経っている。
「買い物ついでに女性に不埒な行為をするだなんて、本当に身の危険を感じるわね。この卑猥ヶ谷くん。」
全然ちがった。単に俺を不審者だと思ったからでした。ちょっとノーガードすぎませんか雪ノ下さん。内面がゴーリキーすぎる。
突然の第三者の登場にびっくりする由比ヶ浜はさて置き、とりあえずは弁明だな。
「待て雪ノ下。俺は何もしていない。寧ろ話しかけられた側だ。」
「犯人はいつだってそう言うものよ。大人しく真実を話して捕まりなさい。」
どうやら雪ノ下の中では俺が真実を話して捕まることは確定事項のようだ。何それひどい。理不尽すぎません?
雪ノ下と言い合っていると、由比ヶ浜がフリーズから回復し、雪ノ下と俺を交互に見ている。
首を動かすにつれ、だんだんと明るかった表情が沈んだ物に変わっていく。
「大丈夫かしら?この男に何もされなかった?」
雪ノ下も由比ヶ浜の行動を不信がったのか、由比ヶ浜の方を向いて尋ねる。
いやだから何もしてねえって。美人局の可能性ならあるが。
「すっごい綺麗な人………。ヒッキーと仲良さげだし、これって、そういうこと、だよね、やっぱり………。」
雪ノ下の声が届いていないのか、由比ヶ浜は1人自分の世界に入ってしまっているようだ。だが
「いやおい落ち着け由比ヶ浜。俺と雪ノ下は仲良くなんてないぞ。」
「今のを見て仲良く見えるなんて………。1度検査した方がいいと思うわ。」
耳にした不穏な言葉を否定する。雪ノ下にも聞こえていたのだろう、こめかみに手を当てて嘆いている。てか凄い物言いですね雪ノ下さん。
「えっ!そうなの?その、2人は、つ、つつ、つき………あってる、とかそんな関係じゃないってこと?」
2人は、何だって?プリキュア?
「なんかよくわからんが、とりあえず由比ヶ浜が思っているような関係じゃないことだけは確かだと思うぞ。」
よくわからんがとりあえず否定しておく。これで大体の事がなんとかなる。ソースは俺。
「ともかく、場所を変えましょう。聞きたいこともあるし、私に豪語した割にアッサリと正体がバレている誰かさんもいることだし、ね。」
そう言って雪ノ下が店から出てすぐの喫茶店《ラ・フィーユ》の、これまた1番目立ちにくい場所を選んで腰掛ける。
ウェイトレスの制服が可愛いこと、ウェイトレスが猫人族限定なことで、雑誌とかによく取り上げられている有名な喫茶店だ。制服が可愛いだけでなく、飲み物や軽食もレベルが高いのだとか。ただその分ちょっとお値段が割高な喫茶店である。って前に小町が言ってた。
正直言って面倒くさいし今すぐ逃げ出したいが、それをすると余計に不自然だ。それを考えての提案だろう。聡い女である。
「仕方ない。由比ヶ浜、ちょっと付き合ってくれ。」
そう言って歩き出す。これで由比ヶ浜が付いてこなかったら俺すげぇ痛い奴だな。
ちょっと不安になって後ろを横目で見ると、何故か顔を耳まで赤らめた由比ヶ浜がちゃんと付いてきてくれていて安堵する。何?怒ってんの?今の怒る要素あったかしら?俺に名前を呼ばれて怒っている可能性が否定できないのが何とも悲しいところだ。
丸テーブルの一つに腰掛けコーヒーを注文する。喫茶店ってコーヒー一杯でもすげぇ高いんだよなぁ………。なんて貧乏根性を発揮させていると、由比ヶ浜が雪ノ下と俺の間に座り、円卓を囲んで三角形が完成する。
由比ヶ浜がオレンジジュースを注文し終えるのを待ってから雪ノ下が斬り出す。違う、切り出す。
「さて、嘘ヶ谷くん。あれだけ豪語しておいてこのザマなことはもういいわ。不問にしておいてあげましょう。とりあえず、状況を説明してくれるかしら。」
おっと雪ノ下さんたら根に持つタイプ?小皺が将来増えますよ?ただ今回は完全にこっちに非があるため何も言い返せない。何も言えねぇ。
(状況説明と言われてもなぁ)
バレる筈がなかったのに何故か初対面のビッチに話しかけられて刀を押し付けられました。
あ!結局俺この刀持ったままじゃねぇか。忘れてた。
「お待たせしましたにゃん♪」
どう説明したものかと考えあぐねていると、にゃるるる〜ん♪としたトーンで猫人族のウェイトレスが注文した品を運んでくる。
え、こんなテンションの店なのここ?すげぇビッチ臭がするんだけど。
雪ノ下さんなんでこんな店選んだの?さっきから猫耳ガン見してらっしゃいますが、まさかそれが理由とかじゃないですよね?
「黒髪のキレイなお嬢様には特性みるく☆てぃを、茶髪のカワイイお嬢様におれんぢじゅーすを。
ウェイトレスの
「…え?ヒッキーは
「にゃ? それでは、ごゆっくりにゃん♪」
そう言って去っていく猫耳ビッチウェイトレス。やってくれたなあのビッチ。見事に爆弾を投下していってくれたものだ。もう二度と来ねぇ。
「比企谷くん、どういうことか、説明してもらえるわよね?」
完全に命令口調ですね雪ノ下さん。
「何のことかわからないんだがな。」
「そういうのはいいから。早く白状しなさい。」
ダメ元の抵抗も虚しくバッサリと斬り捨てられる。雪ノ下が剣豪すぎる件について。
まぁこの先奉仕部として活動する上で互いの能力はある程度知っておいた方がいいだろう。流石にこの状況で誤魔化すのも無理があるし。仕方ない、説明するか。
「………俺の《魔法》の効果、だ。」
絶対に大丈夫なはずだったんだがな。
「え?ヒッキー魔法使えるんだ!凄い!」
「魔法、ね。概ね予想通りだわ。それがあれだけ私に豪語した理由なのね?」
「まぁ、そうだな。だが何故か、この由比ヶ浜にはバレてしまってな。あの状況はそういうわけだ。」
本当に、どういうわけだかな。油断と偶然の結果としか言いようがない。
「………それで、一体どういった能力なのかしら?」
「まぁ、なんだ。変装・変身の類だよ。よくあるタイプの。俺とある程度会話した奴には普通に見えるが、周りからは真の姿が見えなくなる、みたいな感じだ。」
俺の《魔法》、《フラグ・プリース》は周囲からの認識を変えることができる変装・変身・隠蔽魔法だ。これが結構なレア魔法らしく、なんと自分の姿を消すことも、変えることもできる上に、サイズも変えられるのだ。ただし大きくなることはできず、縮小限定だが。
現在俺の見た目は金髪爽やかボーイになっているはずだ。一応、俺の理想とかは一切反映されていないと言っておこう。ただ油断すると目の濁りが浮き出てくることがあるので要注意である。
由比ヶ浜の作ったピンクの刀でも大丈夫だというのはこの為だ。
「………なるほど、ね。まだ疑問点はあるけど、とりあえずは納得しておきましょう。由比ヶ浜さん、だったかしら?」
かなりぼやかして説明したところ、どうやら雪ノ下は
急に話を振られて由比ヶ浜がほへっ!?と間抜けな声をあげる。
「あなたはどうしてこの男に話しかけたのかしら?」
「え、だって、ヒッキーがギルド辞めたって聞いたのに、武器見てるから、冒険者になるのかなーって思って。」
雪ノ下達の会話を尻目にサトウとミルクをどぱどぱ入れる。せめてもの腹いせに、この店のサトウとミルクを全部使う勢いで使ってやる。………ちっちぇな、俺。
「ってヒッキー!何やってるの!?」
どこぞのハオ様みたいなことを言っていると隣から驚きに満ちた声があがる。
「いや何って、サトウとミルクを入れてるだけだが?」
オーバーソウッ!ホワイトコーヒーの完成だ。(ブラックコーヒーの対義語)
「比企谷くん、その量は『だけ』とは言わないわ………。」
またもや雪ノ下さんがこめかみに手を当てておられる。
「別にいいじゃねぇか。甘いのが好きなんだよ。」
まったくエイナさんといい君たちといい………。この良さがわからんのかね!
言っても無駄だと諦められたのか呆れられたのか、雪ノ下が一つ溜息をつく。幸せが逃げちゃいますよー?幸せじゃねぇから溜息出るんだけどな。不幸せスパイラル理論の完成だ。
「話を戻しましょうか。由比ヶ浜さんの言う通り、この男は粗相を働いて冒険者となったのよ。私はその監視役、といったところかしら。これから奉仕活動を行うことになっているの。」
「いや待て待て、俺がいつ粗相を働いた。粗相すら働かない自信があるぞ。」
働いたら負け。俺も週休8日を希望する!
「ほうしかつどう??」
あれスルーですか?ちょっと凹む。
てかこの反応、奉仕活動の意味分かってないんじゃ………。アホの子だな。(確定)
「ええそうよ。ボランティア、と言ったほうがわかりやすいかしら。世の為人の為に無償で依頼を受けるのよ。」
おお、ナイスフォローだな雪ノ下。てかやっぱり無償なんすね。
雪ノ下のフォローのおかげか由比ヶ浜がふむふむと頷く。
「えっと、じゃあもしかして、お願いしたらあたしの依頼も聞いてくれるってこと、なのかな?」
そこに気づくとは………。やはり天才か。
だがこの展開ってちょっとマズイんでないの?平塚先生は今日のところはいいって言ってたし。
「ええ、そうよ。でも勘違いしないでちょうだい。あくまで私たちが行うのは奉仕活動。お腹を空かせた人に魚を恵むのではなく、魚を捕る方法を教えるのよ。」
これまた大層なことを………。
また由比ヶ浜がちょっと目を白黒させている。
「えーっと、よくわかんないけど、なんか凄いね!」
アホの子丸出しだった。悪い人にころっと騙されちゃいそうな子だな。
「さっきの口ぶりからすると、由比ヶ浜さんは何か依頼があるのかしら?」
おいおい雪ノ下、真面目すぎんぞ。君子危うきに近寄らず。ここは回避一択だろう?やらなくていい仕事はやりたくないしむしろやらないでおくべきだ。
「うん!実は今、素材集めに苦労しててね。中層に行かなきゃいけないんだけど、1人じゃちょっと無理だからさ。あたしはLv.2だし。」
え?こいつLv.2だったの?すげぇ意外。人は見かけによらないって本当だったんだな。俺は大体見かけで判断されるから都市伝説かと思ってたわ。
「でね?レベルの高い友達と一緒に行こうと思ってたんだけど、今ロキ・ファミリアが遠征中でしょ?だからそっちに行っちゃってて………。一緒に行ってくれる人を探してたの。」
ロキ・ファミリアか。そういえば今は遠征中だったか。毎度ご苦労なこった。
美神フレイヤの営む【フレイヤ・ファミリア】と双璧を成すオラリオ屈指の大派閥、それが【ロキ・ファミリア】だ。ダンジョン探索に割と消極的な輩の多いフレイヤ・ファミリアとは違い、ロキ・ファミリアはダンジョン探索に熱心であり、ギルドから直接遠征に向かうように指令が下っているらしい戦闘系ファミリアだ。【勇者】や【剣姫】、【凶狼】など数多くの高レベル冒険者を保有している。
「でもそろそろロキ・ファミリアは帰ってくるころじゃなかったか?それまで待てば良いだけじゃねぇの?」
ギルドにあった予定表ではもうすぐだったはず、と記憶を頼りに言う。
「それがね、実はあんまり時間がないんだ。今オラリオじゃ《月の石》ブームでしょ?その……れ、恋愛に効くっていう御守りを作りたくって!でもその御守り、月末の流星群に翳さないと効果が出ないらしくって………。」
《月の石》は中層で採れる鉱石の一種だ。大層な名前とは裏腹に、わりと良く採れる。名前から綺麗な石を想像する人が多いが、黒く濁った色をしている石である。ただ、月の光に反応して淡く輝くのだとか。
それが幻想的だとかなんとかで、確かひと昔前に若い女性の間で恋愛の御守りとして流行ったはずだ。
ソースは平塚先生。『ひと昔前』の『若い女性』だからな。ここ、重要なポイントだぞ。
「ちょっといいかしら、由比ヶ浜さん。その………《月の石》ブームというのは何のことかしら?」
どうやら雪ノ下は知らないらしい。確かにこいつ、そういうことには疎そうだしな。
「え!?《月の石》知らないの!?!?」
由比ヶ浜が驚きの声をあげる。こいつ驚いてばっかだな。モモノキファイブの一員かしらん?
「まぁ、なんだ。《月の石》を加工してペンダントかなんかにするのが昔流行ってな。それがまたぶり返したってところだろう。」
とりあえず、雪ノ下にフォローを入れておく。
「だが由比ヶ浜、なんで流星群なんだ?あれは月の光じゃないと効果が出ないんじゃないのか?」
「んーとね、なんかよくわかんないけど、最新の医学?か何かで流星群だと違った効果があるらしいって言ってたんだ」
「なるほどな。とりあえず医学では絶対にないと思うが。」
雪ノ下も納得したのか首肯している。
「わかったわ、由比ヶ浜さん。それは、依頼でいいのかしら?」
雪ノ下が由比ヶ浜に尋ねる。いきなり中層かよ………。
「え!?いいの?でもあたし、そんなお金とか持ってないし………。」
「お金は結構よ。払う必要はないわ。」
アッサリとした雪ノ下の態度に由比ヶ浜が狼狽し、こっちをちらちら見てくる。何?俺の顔に何かついてる?もしくは何かが憑いてるのか。それある!
「………ヒッキーも、手伝ってくれるの?」
「……まぁ、決定権は雪ノ下にあるからな。雪ノ下に任せる。」
躊躇いがちに由比ヶ浜が聞いてくるのでそう答える。雪ノ下は俺の上司らしいし。ブラックすぎる職場として雑誌に取り上げられそうだ。
ホワイトコーヒーを一飲みしてカップを置く。職場が真っ黒だからな。コーヒーくらいは、白くていい。
「では、由比ヶ浜さん。その依頼、奉仕部が責任を持って受けさせて貰うわ。」
残っていたミルクティーを飲み干し、雪ノ下が由比ヶ浜に宣言する。
「ほんとう!?ありがとう、ゆきのん!」
「ゆ、ゆきのん?」
「うん!雪ノ下だから、ゆきのん!」
そう言って由比ヶ浜が雪ノ下に抱きつく。ちょっと?昼過ぎの喫茶店ですよ?
雪ノ下が弱々しく抵抗するが由比ヶ浜は聞いちゃいない。なるほど、雪ノ下は押しに弱いらしい。全く必要ない情報だった。
「そういえば、肝心なことを聞いていなかったわね。」
由比ヶ浜を引っぺがすことに成功し、何事もなかったかのように話を切り出す雪ノ下。帽子の下でちょっと顔が赤くなっているのがバレバレですよ?
「比企谷くん、あなた確か前に【
「ん、ああ。一応、な。」
「中層に潜ることになるのだけれど、レベルは大丈夫なのかしら?私はLv.4だから問題ないのだけれど。」
そういえば言ってなかったか。あれ?てことはこいつ、俺のレベル知らないまま依頼引き受けちゃったの?それとも俺なんていらないという遠回しな拒絶だろうか。まぁLv.4なら雪ノ下だけでも由比ヶ浜を守って戦えるか。
「ああ、問題ないと思うぞ。防具もそれなりのを買ったし、武器は………見た目が最悪だが、悪くないはずだ。」
それに。
「たしか俺もLv.4だしな。」
またもやダンジョンに潜れませんでした。すいません。次回はきっと、潜れると思います。
八幡の魔法はリリの【シンダー・エラ】の強化版、くらいに捉えてほしいです。かなり使い勝手のいい魔法となっておりますが。
いきなりの中層ですがちゃんとダンジョンの描写が書けるのかどうか……。違和感・矛盾点のないよう尽力しますが、もし違和感等々があれば御指摘下さいませ。では。
*八幡の魔法
魔法:《フラグ・プリース》
呪文:《泉に落ちた黄金の鞠》
効果:《変装・変身・隠蔽》
*縮小限定でサイズ変更ができる。(〜100セルチまで)ある程度自分を知っている者や会話したことがある者、自分を長時間認識していた者などには何も起こっていないように見える。サイズ変更した場合は、八幡のフォルムのまま縮んだように見える。武器や防具、その他の物体にかけることも可能。激しく動揺したりすると解けることがある。また、圧倒的なパワー差やレベル差のある相手には見破られることがある。