―――世界を壊す歌が"あった"


突如として現れた謎の勢力

彼らが使役するのは過去の時代の英雄たち

圧倒的と言える彼らに少女たちは成す術を潰されていく。


しかし、だからこそ


運命は「キセキ」を起こさせる。



これは一人の少女と一人の「セイギノミカタ」の物語―――










やりたいと思ってやりましたが案の定大変な事に…
やる気とかによってはコレと似たようなのを投稿予定です。


1 / 1
新年から変な短編を投稿するBlazです。

さて、以前から話していたFateとシンフォギアのクロス物。ですがストーリーが既に脳内でえげつないことになっていますので今回はその一片…的な。

また後書きでは僭越ながら登場するサーヴァントのステータスと軽い説明を。
後ろでも書いてると思いますがご質問、ご意見等はメールないし感想欄でお願いします。


それでは…まだまだ短編は難しい…



エミヤ「私が言うのか、まったく………"ついて来れるか"」


Fate / Symphonic Night

 

 

 

 

 

「ねえ。「聖杯戦争」って知ってる?

 

 

 

 

 

 

 

七人のマスターが七騎の英雄の霊を召喚し戦い合うっていうのなんだ。

七騎の英霊はそれぞれ如何なる時代、世界の英雄でも構わず、召喚に必要となる触媒があればどんな英霊だって呼び出すことができる。

 

例えば神話の時代に存在したという王。

 

名を聞けば誰もが知る聖剣を持つ騎士。

 

将又、大きな偉業を成し遂げたが、時代によって悪とされた罪人。

 

そんな英霊たちが聖杯戦争の時、参加する魔術師たちによって召喚されるんだ。

そして、その聖杯戦争に勝利すれば万能の願望器である聖杯が手に入る。

 

聖杯はなんでも願いを叶えられる。

 

巨万の富も

 

絶対的な力も

 

全てを支配できる権力も

 

そして万人を救うことだって可能だ。

 

 

 

 

 

 

そう。聖杯はどんな願いでも叶えられる…ただし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――住む世界がどうなろうとも気にも留めず、にな。

 

 

 

 

 

当然のことだ。何かを成すためには何かを棄てねばならん。

万人を救うためにはそれだけの犠牲を払わねばならない。

十を救うために一を。百を救うために十を。

巨万の富を得たいのなら搾取する奴らから奪うまで。

圧倒的な力を欲するのなら理性も捨ててまで得る。

 

そう。貴様らの言葉にこんなのがあったな。

「等価交換」正にこれだ。

全て得て何も失わずだと?

笑わせる。何かを得るために捨てる。当然の事を何故拒絶する?

 

もっとも。捨てるだけ捨ててその後、得ようなどという強欲な奴も甚だしいがな。

 

だが人間、お前たちはそれを捨てきれん。

何かを得て、何かを捨てない。そんな事が出来ないともがき、苦しむ。

苦節し迷い、怒り、恨み、憎しみ、そして狂気する。

 

 

 

 

 

さぁ見せてくれ。

 

(オレ)にその姿を。

何を得て何を失うのか。その結末に苦しむ姿を、結末に如何なるものとなるのかを…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では。聖杯戦争を始めようではないか、雑種ども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。それは誰もが知る事もない。

もしかしたら知る事も無かっただろう戦い。知る事も無かっただろう世界とシステム。

 

そして。その戦いに、触れてしまった少女たちの物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々思ってしまう。

自分の行いに、これで正しかったのかと後悔し。そして自身を責める事を。

 

勢いであったと言えばそうであり、考えあったと言えばそうとも答える。

だが実際はそのどちらでもない。

無意識に近い意志が頭の中で働き、そう決断させたのだ。

 

まるでもう一人の自分が、自分に対し告げているかのように。

 

 

 

 

―――その覚悟があるのなら進め。ただし、失う事を恐れるな

 

 

 

 

 

今更、何を後悔しているのだろう。

自分で決めたこと。そうすると誓った事なのに自分は恐れている。言うのも難だが、と笑ってしまう自分と、それでもと反論する自分が自身の中に居る。

なんとも自分勝手な考えだ。

 

そう。自分勝手な考えを私たちは「自分の意志」として肯定する。

謎も疑問も、不満も矛盾もあるというのに「それで良し」として納得してしまう。

矛盾を知りたくないから、疑問を思い出したくもないから、戻りたくないから。

 

だから。それでもと言って立ち上がるのはある意味気高いと言える。

問題を先送りにしようとしてもいつかは立ち向かうという意志。

もしそれが一生の事であれば別だが、その問題も矛盾も全て解決した者。

 

 

私はそんな彼に、憧れているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。今日も行くのか?昨日あれだけ手痛い目にあったのだぞ」

 

 

ビルの屋上の上で私は男と話す。

敵対関係ではない、ある意味主従を結んだ間だ。それでも彼は基本的に敬語をあまり使わず上辺だけのような丁寧語を使ってくる。

 

 

「ああ。どの道、アイツらが何故こんな事をするのかという理由も知りたいし…本懐が事実であれば止めるのは当たり前だ」

 

「…それには同意するが、どうする。相手は八人。対してこちらは二人だ。戦力に差がありすぎるが」

 

「そこは向こうの行動を予測して動くしかあるまい。今の私ではどんな顔で戻っていいのか分からんからな」

 

 

それが本音か、と笑う男に可笑しいのは同意だったので軽く微笑む。

確かに大見え切って出て来たは良いが、戦力の差というのには直ぐに埋められることではない。しかも、戦力の補充というのが絶対に出来ないこの状態では。

私と相棒のサーヴァントの二人。しかし相手はマスター四人とサーヴァント四騎。しかもマスターも戦闘可能とあれば戦力は八人。一人で四人相手にしろというのは、流石の私たちでも願い下げだ。

 

だからこそ、私は彼女たち(・・・・)の力を『利用』する必要がある。

戦力が整いつつある彼女たちと、現在中立的立場である私たち二人。利用というのは相手八人と戦わせるという無理難題だが、人数を減らせれば戦えない事も無い。

 

 

「それに…残念ながら私が持っていた力ではサーヴァントに太刀打ちできない。だから、時間はかかるがこうして確実な方で応戦し、経験を積む必要がある」

 

「それについては別に構わんが………フッ」

 

何が可笑しい、と私は唇を尖らせる。

何となしに考えていることは予想していたが、それでも無意識にその言葉が出てしまい思い出したかのように笑う顔に妙に苛立った。

 

「いやなに…確かに君の意見は正論だ。事実、君は成す術なくやられていたからな」

 

「………否定はせんが、お前そこまで笑うか?そっちも苦戦していたじゃないか」

 

「あれは私の魔力が残り少なかったことと、手数が不足していたことからの苦戦だ。今なら十分、あのランサーを屈することができる」

 

事実か否かはさて置くが、ランサーを屈するのは優先するべきことだ。

私たちが敵対している陣営には二人ランサーが居るが、その内一人は先兵としては十分なスキルとステータスを兼ね備えている。

騎乗、軍略、心眼。他にあるとすれば陣地作成、勇猛と言ったところ。

推察しただけでざっとこれだけのスキルを保有する。そしてそこにサーヴァントたちが各クラスごとにプラスされるクラススキル。ランサーのクラスは対魔力が付与されるので無きに等しかった対魔力は考えただけでDないしD-になる。

アミュレット程度だが魔力に対し耐性を持つとなれば後は物理的な方法でしか対処は難しい。

 

「どの道あのランサーとはケリを付けなければ向こうの陣形を崩すことはできない。といっても、恐らくランサーを倒してもバーサーカーか、もう一人のランサーが前線に出て戦線を立て直す。ならば後方で諜報活動に徹しているアサシンを、と行きたいが…」

 

「アサシンは「気配遮断」のスキルで完全に姿を消している。探すだけ無駄だ」

 

「ああ。だから私たちは先陣切って互いにぶつかり合うしかない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだろ。ランサーのサーヴァント」

 

 

彼に鍛えられたからだろうか。多少だが魔力の気配というのを察知できるようになり、タイムラグはあるが探知できるようになった。

そのお陰で自分の半径数キロという探知圏内に入ったサーヴァントを捉えられ、私はそれを声に出して呼びかけた。

 

するとどうだろうか。小さく笑い飛ばしたような声が聞こえ、私と彼はその方向である後ろへと振り返る。

ビルから外を眺めていたので自分たちは完全に窮地に立たされたように思えるが、相手は律儀なのかそこから突き落とそうというのは絶対に考えない奴だった。

 

 

 

「―――随分と慣れて来たな。え?『アーチャー』のマスターさんよ」

 

「…まぁな。ウチのサーヴァントも魔術について多少心得があったのが幸いした。お陰でお前たちを近距離だが察知できるようになったからな」

 

 

古い日本の武具を纏い、利き手の方には動かす時に余計なのか素肌を晒しだしている。

首から兜を下げているが、邪魔なのかつけようともしない。

あまりに軽装。しかしそれをフルに活かせる武器だからこそだ。

彼の得物はクラスの名の通り槍。しかも一般的には「鎌槍」と呼ばれるものだが半分欠けてしまい、それでも生前「片鎌槍」として使い続けていた。

 

 

「堂々先陣を切るは結構だが、マスターはどうした?」

 

「例によって置いてきた。残念だが、あそこじゃ俺の願いは絶対に叶わんからな」

 

基本マスターと二人一組で行動するサーヴァントだが、単独行動や斥候、偵察などには単身で行かせることもあると言う。今回は大方そんな適当な言い訳をして来たのだろうが、向こうも向こうで嘘を見抜いているはず。だが、それでもランサーだけを行かせたのは、恐らく私たちの足止めか何かだろう。

 

「…向こうは遠くから見ている」

 

「だろうな。頃合いを見て場所を変える。恐らく今夜も向こうは動いているはずだ」

 

サーヴァントであるアーチャーの話を耳打ちで聞いた私は数歩端ぎりぎりまで下がると彼との間を作る。

ランサーは見た目から武人である事が確かでマスターを途中で狙うということは絶対に行わない。一騎打ちを望むのだ。

だから私は後ろに下がり、アーチャーは前に立つ。

ある意味あのランサーとの間に自然とできた礼儀作法のようなものだが、破ってしまえば何か自分たちの中で自分を馬鹿にしたように思えてしまい、私自身はとてもではないが納得できなかったのだ。

 

そんな自然とできたルールに従い、アーチャーはランサーと対峙する。

 

 

「…今夜こそ、とは言わねえ。だが。勝たせてもらうぜ。無銘の弓兵」

 

「それはどうかな。こう見えて私たちは多忙の身でね。頃合い見計らっていつものようにトンズラこくかもしれんぞ?」

 

「ぬかせ。毎度そうはいくかっての」

 

もう何度ランサーと対峙し、そしてその度に撤退してきただろう。

思い出すだけで苦悩に思うが、正直そろそろ慣れが出てき始めている。だが、私もそろそろランサーとは決着を付けたいと思っている。そうしなければ聖杯戦争はおろか、彼らの頭にさえ近づくこともできない。

 

 

だから。

 

 

 

 

「アーチャー…」

 

「………。」

 

 

静かに臨戦態勢に入る。アーチャーの両手には魔力が集束させられていき、白と黒の双剣の形と成って姿を現す。

中国に伝わる夫婦剣で「干将莫耶」と呼ばれる。本物であれば怪異に対し絶大な力を誇ると言われているが、残念ながら彼の剣にはその力は備わっていない。

魔力として姿を現した通り、アーチャーの干将莫耶は偽物。投影魔術によって作り上げられた贋作なのだ。

 

それでも魔力消費はそこまで高くないのか、彼はこの夫婦剣をメインとして戦う。

弓兵であるのに白兵戦を得意とする。これが彼、アーチャーのもつ彼だけの最大の特徴。そして一種のアドバンテージ。

弓兵であるからこそと言う概念にとらわれた者たちへの奇襲だ。

 

 

 

「………。」

 

「相変わらずのその剣か。だが…」

 

 

だからこそ、壊しがいはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那。二騎の戦士は姿を消した。

一瞬の事に戸惑いはしたが、直ぐに神経が周囲の気配と音を探り二人の場所へと目を向ける。

自分の直ぐ近く。首を少しだけ動かした場所で二人はつばぜり合いを行っていた。

 

 

「ッ…!」

 

先手を取ったのはランサー。互いに同時に見えるが、微かに見えた表情から彼の方に先手を取れたという余裕の色があった。

 

 

「ふッ…!」

 

双剣で振り払うアーチャーに、ランサーは受け流し一回転しつつ後ろへと下がる。

ランサーの槍は一定の間合いで高い優位性を持つが、近距離でとなると双剣であるアーチャーに軍配が上がる。

なので互いに自分の長短を知ってることから自分の優位な立ち位置を見て相手の苦手な位置から攻めるというある種のイタチごっことなっていた。

 

「くっ…!」

 

「はっ!」

 

再び距離を詰めようとするアーチャーに蹴りで牽制。しかしそれを彼が回避し本来の狙いとは違うが近距離の側面に立つ。

側面を取ったアーチャーは蹴りには蹴りで返し、ランサーの姿勢を崩すがこれは直感で読まれていたのか直ぐに体勢を立て直され、距離を再び取られる。しかも今度は先ほどよりも遠くだ。

 

「…相変わらず、嫌な距離だけは覚える」

 

「互いさまだ弓兵。互いに手の内を知るのなら、当たり前のように隙を突くだけだ」

 

 

再びランサーが動く、しかも今度は短距離のロケット式の走りではなく地面を蹴りステップを踏んで近づいていた。お陰で見ている自分でもいつ来るかタイミングを計りづらい。

読みが当たったのかランサーは顔をにやつかせ槍を素早く突き出す。

 

「ッ………!」

 

脇を開いて間一髪回避するが、アーチャーの背には片鎌の刃が背に向けられていた。

 

「ッ!!――アーチャーッ!!」

 

思わず声を上げるがそんな事は彼も分かっている。

自分の背に伝わる死への危機。そんな事、自分自身が誰よりも分かっていることだ。

だから。

 

 

「貴様も後方注意だぞ、ランサー」

 

「何っ―――」

 

背に伝わる危機感にランサーも気付く。

自分がそんな状態であると気づけなかった槍を引き離し迫る夫婦剣から回避する。そして持ち主であるアーチャーの元へと戻ると素早く柄の部分を握り反撃に転じる。

 

(ちっ…相変わらずあの剣には慣れねぇな…!)

 

夫婦剣の特徴として二つを投げればブーメランのように返ってくる。アーチャーはこれを利用し奇襲攻撃も行うなど多種多様に活用している。

 

「ッ…!」

 

近づいていくアーチャーだが距離的優位さはランサーにある。いなしてかわし、隙を突いて反撃。再び防戦に転じていく。

 

 

「ッ…アーチャー…」

 

 

その決闘を静観することしかできない私は、歯がゆく思い自分の拳を強く握りしめていた。

私に彼らほどの戦闘能力はないし、あれだけの戦いを行える力もない。自分でも納得したくないが、それが今の私の現状だった。

私は今、力を失い、そして培っているのだから―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、間抜けだぞ」

 

 

「ッ―――――!!!」

 

 

 

 

一瞬の事に頭の中が真っ白になる。

無垢な子どもような声には殺意はなく、ただそれが当たり前であるかのように告げられる。

反射で振り向いた後ろからは一つの大きな巨体が私の背に迫り、得物である槍を振り下ろさんとしていた。

赤い古代中華の鎧に身を包んだ武人。

回避しようとする前に、私は不意にそのサーヴァントのクラスをつぶやいた。

 

 

 

 

「―――バーサーカー」

 

 

 

 

 

刹那、私の居た場所に一振りの槍が振り下ろされる。その威力は絶大で辺りは抉り返されヒビが起こり、衝撃波が吹き抜けた。

一瞬聞こえた声に振り向いたアーチャーだが、目を向けた時にはその有様が広がる。

彼は思わず私の名を叫ぶが、煙の奥から姿は現れない。それどころか、視界内に私の姿を確認できないので彼の中で焦りが強くなる。

 

あの奇襲で彼女はやられたのか。

奇襲に成功したバーサーカーのマスターはにやつかせるが、残念ながら予測は大きく外れた。

 

 

「生きてるよ…!」

 

「んお…?」

 

私の声に気付き首を動かすと頭を打っただけという姿に呆れたのかため息を吐く。

 

「全く…悪運だけはいいようだな」

 

「お前に言われたくない…」

 

奇襲攻撃の中をぎりぎり避けた私は、バーサーカーの攻撃の風圧に飛ばされて屋上の階段付近まで飛ばされた。怪我は本当に軽く頭を打っただけだが、もし運が悪かったらと思うと背筋が凍る。

その場合、自分の体が上からバッサリと両断される事となるのだから。

 

 

「外したゾ…」

 

「………。」

 

攻撃が外れた事に残念がるバーサーカーのマスターの声が聞こえる。

どうやらまた(・・)奴の肩に乗って移動してきたらしい。

残念がる声で顔を出すが、それはつまり私に死んでほしかったという事。別にそれ自体は不思議なことではない。聖杯戦争はそういう戦いなのだから。

割り切っていた私は巨体に似合わず軽々と屋上に足を付けて着地するバーサーカーの上から降りた『人形』のマスターと顔を合わせる。

 

 

「…オートスコアラー」

 

「それも、バーサーカーの方か」

 

赤いピエロのような顔をした人形。AIのように自我を持ち、自分で考えて行動するという自動人形(エクスマキナ)

あれが私とアーチャーが現在敵対している勢力の一人。

その中で七クラス中最悪と言えるクラスを扱うマスター

他の人形と共通するのなら冷酷であることか。

 

 

「…殺し損ねたゾ。ま、仕方ないまた殺せばいいゾ」

 

「チッ…」

 

 

しかしあの赤いオートスコアラーはその中では別の意味で酷いと言える。

 

聖杯戦争はルールとして一般人に見られてはいけないという決まりが存在するとアーチャーが言った。元々は魔術師たちが執り行った儀式なので、その秘匿のために過去何度も行われた聖杯戦争は厳重な隠ぺい工作を行って隠してきた。その所為で現代の科学技術一筋である世界にトラブルを起こしたり、魔術師の存在など様々な問題が出るからだと言う。

 

だが。彼はそれを説明したうえでこう言った。

 

 

 

 

 

 

―――この世界の聖杯戦争は、そもそも『聖杯戦争として成立していない。』

 

 

辛うじて聖杯戦争と呼べるような状態で、それを除いてしまえば完全なただの殺し合いになってしまうという。

即ち、守るべきルールもそれを処する人物も居ない。

全くと言って無法。ただ暗黙の了解というべきものしかないのがこの戦いの実態だ。

 

 

「…おーおーバーサーカーのマスター。堂々奇襲とは、相変わらず元気なこって」

 

「お前のようにダラダラ正面から戦う奴に言われたくないゾ。それよりも、お前のマスターが怒ってたゾ。「また作戦を無視した」って」

 

「ハッ…別にいいさ。俺はコイツとケリつけたいだけだ。それに、こいつの足止めと討ち取りは元々俺が任された仕事だ。別にそれをやってるんだから命令無視でもねーだろ」

 

「だったらさっさとマスターを殺せ。そうすれば、アーチャーは二日で死ぬんだゾ」

 

 

オートスコアラーの言葉に苛立ったのか、ランサーは舌打ちをすると堂々と言い返す。

嫌だね。と

そして槍を肩にもたれさせるとアーチャーに背を向けた。

どうやら気が失せてしまったらしい。

武人である彼に一騎打ちの最中にマスターを狙うのは気に障ることらしく、不機嫌な顔で一言吐き捨てた。

 

「なら帰らせてもらう。それに、そろそろ戦いのを知って他のマスターも来るだろうからな」

 

「帰るのは良いけどちゃんとマスターに会っておくんだゾ~」

 

 

気が向いたらなと手を振りながら適当に返したランサーは霊体となって姿を消していった。

後で彼がどうするのかは地味に気になるところだが、それは私の関知ところではない。

今は目の前のバーサーカーとそのマスターであるオートスコアラーをどうにかするのが優先だ。

 

「平気か」

 

「言っただろ。頭をぶつけただけだ」

 

「なら、直ぐに応戦するぞ。相手は戦闘特化だが強化して戦えば差ほど問題でもあるまい」

 

無理を言う。私も今の状態で戦えない事も無いが、それにも限度がある。

加えて相手が戦闘特化型でならより難題になり、人によっては「死んで来い」と言っているのと同義だ。

しかし逃げるわけにもいかないし、だからと言って戦えないわけでもない。

 

「―――ああ」

 

本当は戦えるかどうかに不満が残るが、四の五の言っている暇もない。

私は覚悟を決めて脇に刺していた刀を抜くが、それだけでは直ぐに相手の攻撃で破壊されてしまう。

なので、私はアーチャーから教わった得意とする魔術(・・)を使う。

 

 

 

「…構成材質、補強」

 

幸か不幸か、これが彼から教わった中で唯一実戦で使える魔術。

構造を理解し、それを補強するという至極簡単なものだが、物によっては使い勝手も良く汎用性も広められる。何より、物を瞬時に武器に変えられ、武器である物に使えばより強力になる。

不満があるとすれば、時折これを見てパートナーが顔を曇らせることぐらいか。

 

 

「相変わらずだゾ。ギアなしの状態で、たったそれだけで勝てると思っているのか?」

 

「…どうかな。番狂わせもあるかもしれんぞ」

 

精一杯の皮肉を口に、私はバーサーカーたちと対峙する。

勝算は無きに等しいが勝てない理由もない。

やり様によっては…

 

「行くぞ、マスター」

 

「ああ…!」

 

 

私はアーチャーと二人、バーサーカーへと向かう。

避けられない戦いだ。絶対に勝つぞ、という当たり前の事を胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ。君が裁定者、ルーラーのサーヴァントか」

 

 

 

「…貴方は?」

 

「僕?僕は…うーん…想像に任せるよ。まあ君が思っている人物。それでいいと思うよ?」

 

はぐらかすような言い方で切り返す少年にルーラーのサーヴァントは唇を強く締める。

目の前に立つのは無垢な子どもだが、その風格と雰囲気はそれとは不釣り合いと言えるほど「何か」をまとっていた。

 

「貴方は…まさか…」

 

「安心して。僕は君たち(・・・)の敵じゃない。けど、味方でもないんだけどね」

 

「なら、どうして私のところに?」

 

「うん。それは簡単。単にルーラーのサーヴァントが誰なのか知りたかっただけさ。

何を思い、何を信じ生きた人間なのか。それが知りたかったから。マスターについては…まぁ、ついでかな」

 

「ッ…なら、貴方はただ私たちの様子を見に来ただけ…なんですね」

 

それは約束するよ、と笑顔で答える。

一応は本心のようでルーラーもそれには小さく安堵する。だが、その直後その表情が一変する。

 

 

 

「ついでに…あの赤いアーチャーのサーヴァントとマスターの様子もね」

 

 

「ッ…!彼女を知っているのですか」

 

「そりゃ面と向かって会ったからね。サーヴァントからは危うく殺されそうなほど殺気だされたけど。

面白い子だったよ。自分の理想が無駄であると知り、力を自ら捨て、それでも尚それと似た理想にすがり追い求める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――はてさて。彼女、風鳴翼の結末はどうなるのかな?

 

ねぇ?ルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルク」

 

 

 

―――この歪んだ聖杯戦争の結末。実に楽しみだよ

 

そういって笑う少年の顔は、ジャンヌから見て恐怖の他に成り得なかった。

まるで、世界が滅んでも良しと。腹の底から笑ってしまうかのように。

 

 

 




オマケ。
オリジナルサーヴァント、簡易ステータス


クラス : ランサー
マスター : ???
真名 : カ・ウ ・ヨ・・(所々が破壊され修復不可)
属性 : 秩序・中庸


ステータス

筋力 : C
耐久 : C
敏捷 : B
魔力 : D-
幸運 : B
宝具 : D


クラススキル

対魔力D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔除けのアミュレット程度の対魔力。

固有スキル

騎乗 : D
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。

心眼(偽) : C
第六感による危険回避。

陣地作成 : C
小規模な”工房”が形成可能。
ランサーの逸話から来ていると思われる。

宗和の心得 : C
同じ相手に同じ技を使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。
攻撃が見切られなくなる。


使用武器
片鎌槍 : ランクC
片手打ちの刀(二尺前後の刀) : ランクD


バックストーリー
作品の中で始まった聖杯戦争で最初に姿を見せたサーヴァント。厳密には「何度目か」に召喚されたが具体的に何度目かは不明。
好戦的な性格だが、武人としての心得を持つのでそれに反する事を嫌う。
召喚直後に「マスターの命令に絶対に従う」という令呪を掛けられているので(効果は薄いと思われるが)命令に従う。
その中で翼へと襲撃した所アーチャーと邂逅。以後、彼女のサーヴァントとなってから好敵手として見ており、彼を見つけては単独で戦闘する事もある。ただしあくまで一騎打ちを望み、横やりないしマスターへの攻撃があった場合には撤退するか味方(自身の)マスターであった場合そちらのフォローに徹する。
本人曰く「多分人によってはすぐバレる」と言っており真名についてはバレたらはぐらかしたりしようとは思っていない。
ちなみに本人の逸話などから他にもライダーとセイバーのクラスも適正を持つがどちらも弱く、殆どの確率でランサーとして召喚される。
触媒は本人が生前使用していた兜。
聖杯への願いは「主を守り抜くこと」(そもそも聖杯があるかどうか怪しい戦いだが…)








本編のバックストーリー

時系列はGXの開始直後。大まかなストーリーと目的等は変わりないが違いもある。
物語の黒幕であるキャロルの目的は変化はないが、その間にもう一つの計画を動かしていた。ただしこれは計画というよりも試みと言った方が正しく、計画のサブないし保険として進めている。
その目的の一つとして現存する聖遺物(触媒)を集め召喚を繰り返すが、殆ど失敗。
しかし四体は召喚に成功した為、手駒として扱う。
そしてその中でランサーの襲撃にあった翼とその彼女のもとへと突如現れた所から物語は始まる。

サーヴァント同士の戦いが「聖杯戦争」であると知り、更に現状一人だった彼女はある理由を胸に飛び出す。
「聖杯戦争は最後の一組になるまで戦う」
なら、誰も犠牲になる必要はない。私だけで十分だ。
戦いの中で傷つく彼女が得る答えとは―――




この世界での聖杯戦争について。
上述などで話しましたがこの世界での聖杯戦争はほぼ無法でそれを監督するものたちも居ません。
ですがそのために「ルーラー」のサーヴァントが召喚。一応は聖杯戦争として形を保っています。
サーヴァントが召喚されるので大聖杯はあるのですが場所は不明。
あくまで作中の聖杯戦争はついでのような感じです。
ちなみに小さい聖杯もこの世界にはありません。
というかそもそも大聖杯自体存在しなかったのですが何等かの理由で存在しています。
また魔術師については本作の時代ではもう数える程度。しかも組織も存在しません。
その為魔術師は素性を隠して現代の生活に溶け込んでいるのです。


翼について。
本作の話の時点で翼さんはギアを持ってません。ある理由から置いてきました。その代わりアーチャーから教わった魔術の「強化」とある場所でもらった刀を使って戦いますがそれでもギアありの時よりも弱体化してます(その代わり身体能力は高くなっていますが)


サーヴァントの数。
上記で四騎が敵サイド。そしてアーチャー。更にジャンヌが出てきて計六人。ルーラーである彼女を除けばあと三人ですがこの聖杯戦争は辛うじて形を保っているだけなので色々と欠けてしまっています。
その一つに基本召喚されるサーヴァントが七騎である、というのが無くなり。基本無制限となっています。ですがそんなにポンポン召喚されるわけにはいきませんしマスターの魔力にも限界があるので最大でも十数人です。




このほか質問、ご意見等がありましたら感想欄・メールなどでどうぞ。
お答え出来ることだったりは活動報告で書くと思います。


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