今年もどうぞ、宜しくお願いいたしますm(_ _)m
血だまりの中を歩いていた。死体であふれた道を彼は歩いていた。運命という糸で吊られた悪の橋を延々と渡り続ける彼の道のりは、絶える事などなかった。操られて進む人生は、もう既に「無」という感情に飲み込まれていた。
人に憎まれ、恨まれ、そして崇拝され、尊敬され、恐れられて…彼は心の奥底では辛かった。もうこんな事終わりにしたかったのだーー
*
始まりは、彼の入学した「ホグワーツ魔法魔術学校」行きの汽車の、コンパーメントにあった。そこから、魔法界の運命も、勿論彼自身の運命も大きく揺らぐ事になったのだ。
真っ黒な髪のその少年は、トム・リドルという名を持っていた。一人が好きな少年は、コンパーメントで静かに外の様子を眺めていた。子供が親に見送られて、笑顔で手を振る光景が見えた。こんなモノ、自分とは縁がないとトムは鼻で笑う。
すると、コンパーメントの中に、ノックもなしに誰かが入ってきた。茶髪青目の少年だった。一見して同い年のようにも見える。トムはすぐさま出て行けと怒鳴った。
「何を言ってるんだ? もう他にコンパーメントがなかったんだ。良いじゃないか」
「断りぐらいは入れろ」
少年に対するトムの第一印象は最悪だった。礼儀のない、人の事を考えない奴ーーしかし、それは自分も同じだった。何だか似たモノを感じて、トムは少年を許容した。汽車が走り出すと、今まで黙っていたままだった関係は崩れた。少年から口を開いたのだ。
「俺の名前はリール・マスターマインド。よろしく」
「…僕はトム・リドル」
「トム? 随分と平凡で、逆に会ったのは初めてだよ」
リールの言葉を聞いて、トムは舌打ちをした。この名前は嫌いだった。あまりにも平凡でありふれた名前。自分が特別ではないような感じがするのだ。彼はトムのその様子で心情を悟ったのか、トムをあざ笑うかのように言った。
「あれ、その名前は好きじゃないか? 参ったな…ハハッ」
「…お前、イラつくな」
しかし、二人の仲は良かった。ホグワーツ入学後も、意見や力量が合うからか、いつも競い合っていた。それと同時に、二人はお互いを嫌悪していた。
周りから見れば、仲の良い親友同士のようにも見えた。でもリールは、トムにある事を隠していたのだ。
リールの魔力は、トムを大きく上回るモノだった。しかし、上にも下にも見られないよう、成績も同じように揃えていた。トムはホグワーツ入学後にたくさんの生徒の崇拝の的となった。それでもトムとリールの仲はなくなる事はなかった。相変わらず関係だ。リールはそんなトムを、毎日楽しく眺めていた。
対してトムは、リールが何よりも嫌いだった。自分より上でも下でもない、でも見下されているような気がした。彼はそんなリールに抵抗するように信者を集め続けた。
そして、ホグワーツ7年生の頃だった。テスト間近な時、リールはトムを空き教室へと呼び出した。
「トム…俺等、入学してからずっと一緒だったよな?」
「そうだな」
「だから、そろそろだと思ったんだ。ず〜っと計画していた事が、今実行できる」
「そう、で、何だ?」
リールはニヤリと笑い、トムに杖を向けた。すると、トムが抵抗するまでもなくリールは呪文を唱えた。
「『インペリオ! 服従せよ!』」
この日をきっかけに、トムの目は赤く染まった。トムの心は黒く染まった。トムの頭は光った。
魔法界でさえも闇に陥れた「最強の魔法使い」が、今此処で誕生したのだ。そして、魔法界は運命の吊り糸で踊り続けるのだ。一人の男の手で中で。