魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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第十三話

 なのはが、フェイトと勝負の約束を取り決めていた頃、リビングにて。

「お母様、よろしいでしょうか?」

 なのはの担任教師、富山咲が、桃子に硬い声をかけた。

「はい……なんでしょう」

 咲は、張り詰めた表情で言う。

「あなたは、本当に申し訳ないと思っているのですか?」

 そこには、押し殺されてはいるが……確かな、怒りがあった。

「たか……なのはさん、は、とても優しい子です。今、母親であるあなたに、涙ながらに謝られれば、今までのネグレクトを許すでしょう」

 育児放棄、という言葉に、びくっと肩を震わせる。だが、それは事実だ。

 たった九歳の子供を、最も親が恋しい年頃の子供を、しっかりした子だからと放ったらかし、孤独に過ごさせたその罪は、重い。

「そして、許されたあなたは、あなた方は……また、繰り返すのではないですか?」

『その場凌ぎで許してもらって、また繰り返すのか! あの暗い家に、なのはを一人ぼっちで取り残すのか!』

 奇しくもそれは、あの日の晩、秀人が言い捨てていった言葉と同じだった。

「そんなっ……私は、これからは、ちゃんとなのはの傍にいてあげます! もう、放ったらかしになんかしません!」

 身を乗り出し、全身で否定する桃子。

「そうしないという保障は、どこにもありません」

 だが咲は、それを切り捨てた。

そして、滔々と語り出す。

「知っていますか? なのはさんは、教室でも一人ぼっちだったんですよ」

 この三ヶ月間、なのはの担任になってから、彼女を見ていた。

「自分から壁を作って、誰とも関わりを持とうとせず……ずっと、ずっと一人だったんですよ」

 いつも一人で、本を読んでいた。

「私でも読まないような、活字の本を読んで……それを盾にして、誰からも話しかけられないようにして」

受け持つ生徒の、1、2年次のことについては、以前の担任教師から聞いていた。そして、その誰もが……ある生徒について、言及していた。

『成績優秀だが、何故か早退が多い』

『家に電話をしたが、誰も取り次がない』

『誰かと一緒にいる場面を見たことが無い』

 そして、始業式の日。咲の前に現れた彼女……高町なのはは、咲が危惧した通りの少女だった。

「でも、なのはさんは変わりました」

 あの授業参観の日、なのはが、葉山健太と八代望という二人と雑談に興じている姿を見て……そして、着慣れていなさそうなスーツ姿の少年に見せた、心からの笑顔を見て、ようやく安心した。

「吾妻さんのおかげです」

 一目で、信用に足る少年だと分かった。

「吾妻さんが、血のつながりも無いなのはさんのために、何をしてあげたのか、ご存知ですか?」

 それは、なのはとようやく心を通わせたあの日、話してくれたことだ。

 話をして、暖かい食事を振舞ってやり、一緒に眠った……ただ、それだけのことだ。その程度のことを、なのはは、本当に嬉しそうに話してくれた。だが、それをするべきだった桃子達は、その程度のことすらしてやらなかった。

「知らないんですか?」

 びくっ、と桃子が身を縮こまらせる。

「知らないでしょうね」

 咲は、務めて無感情に、言葉のナイフを突き刺す。

「知ろうとしなかったんですから」

 咲も、なのはと同じだった故に。『放っておかれた』子供だったが故に……許すことなど、出来るはずも無かった。

「う、うぅ……!」

 桃子の目から、大粒の涙が零れる。

「……泣けば、許されるとでもっ」

 

「はい、そこまで」

 

「むぐっ!?」

 さりげなく距離を詰めていたリンディが、咲の口を塞いだ。

「もう……言い過ぎですよ、先生」

 そして、やんわりとそソファに押さえつけた。

 

 少しして、桃子が事情を説明し出した。

「あの店は、私達家族の、夢だったんです」

「! もがっ!」

 咲の顔が、また怒りに染まり……またしてもリンディに押さえ込まれた。

だが、その後に続いた言葉は、咲にとって、全くの予想外だった。

「夫が入院する前は、幼稚園帰りのなのはを、よく店に連れてきていました」

「……え?」

 咲が、呆けた声を出す。

最初から、なのはを放ったらかしにしていたわけではなかった……?

「客の入りがまばらで、誰か一人は、必ず一緒にいてあげることができていたんです」

 可愛い末っ子が店にやってくるだけで、疲れが取れる思いだった。

「小さかったなのはが、『ケーキ売れたね!』と、『よかったね!』と、喜んでくれるのが嬉しくて……私達は、がむしゃらに頑張りました」

 今は人気の翠屋とて、最初から人気店だったわけではない。オープンしてすぐの頃は、赤字が当たり前だった。それが、口コミで客が増えていき、徐々に、徐々に軌道に乗り始めた頃……あの、事故が起こった。

「夫が入院し、店が忙しくなり……とても、小さいなのはを店に置いておける状況では無かったんです」

 その結果がどうであれ……きっかけは、なのはの喜ぶ顔が見たい、ただそれだけだった。

「…………こんなはずじゃ、なかったんです」

 咲は、毒気を抜かれたかのように黙り込む。

「私はただ、なのはに喜んで貰えれば、それで良かったのに……」

 いつの間にか、目的と手段が入れ替わってしまった。

「なのはが、自分で料理を作れるようになって……理由も考えずに、『ああ、器用な子だなぁ』なんて暢気に感じて……馬鹿ですよね、私」

 きっとなのはは、家族の団欒を取り戻したかったのだろう。

母親が忙しくて料理を作れないのなら、自分が作ればいい。そう考え、実行した。だがそれは、家族をより食卓から遠ざける結果になってしまった。

 もっと美味しければ。もっと品数を増やせば。もっと早く作れれば。もっと…………

 そうして、不必要なまでになのはが料理の腕を上げ、桃子たちがその真意に気がつかなかった結果が、今の状況だった。

「家族皆でご飯が食べたいって、ちゃんとSOSを出していたのに……」

 自分たちはなのはに甘え、食事を一緒に摂らないどころか、顔を合わせないことすら、『普通』になっていった。

「……今からでも、間に合うんじゃありませんか?」

 自責に沈んでいく桃子を、リンディが引っ張りあげた。

「え……?」

 顔を上げる桃子に、リンディが微笑みかける。

「そろそろ、お昼ですし……なのはさんに、ご飯を作ってあげませんか?」

 その言葉に、ハッとする。

「きっと……いえ、絶対、喜んでくれますよ」

「は、はい……!」

 そして、どこか嬉しそうに台所へ走っていった。

「…………」

 ぶすっとした顔で、ソファに座る咲。どうにも、納得できていないようだ。俯き、手をもぞもぞと動かしている。

「先生」

 と、いきなりリンディの顔がどアップで視界を埋めた。 

「ひゃっ!」

 飛び上がり驚く咲に、マイペースに話しかける。

「先生、名前は何と仰るの?」

「富山、咲ですけど……」

「それじゃあ、咲ちゃん。桃子さんをお手伝いしましょう」

 ぽむぽむ、と咲の頭を撫でるリンディ。咲はその手を、真っ赤になって払いのける。

「こ、子ども扱いしないで下さい!」

「あら、ごめんなさいね」

 子持ちのリンディからしてみれば、大学を出たばかりの咲など、子供も同然だ。それに、咲はどうしても放っておけない雰囲気が……具体的には、無理して背伸びをしているような、肩肘を張っているような印象を受ける。

 

 借り物のエプロンを着け、台所に並ぶリンディと咲。

「咲ちゃん、お料理のレパートリーは?」

「家庭料理なら、一通り」

 一見、手先が不器用そうだが、料理を始めとした家事は得意だった。

「すごいわね。誰に教わったの?」

 全て、自分ひとりで生活するしかなかったから。

「……別に、誰だっていいじゃないですか」

 ぷいっとそっぽを向いてしまう。その態度で、リンディは勘付いた。

 先ほど、桃子に対して過剰なまでに怒りを露にしたのも、生徒として以上になのはを気にかけているのも、恐らく……

「それじゃあ、一緒に作りましょう」

「何で私が……」

「なのはさん、喜ぶわよ」

「…………わかりました」

 なのはに弱い咲だった。

 

 とんとん、とまな板を包丁が叩く音。しゅるしゅる、とじゃがいもの皮が剥かれる音。ことこと、と鍋の煮える音。

この家では、随分と久しく聞こえなかった音をBGMに、三人が料理を続ける。なにせ、人数が人数だ。作りすぎるということは無い。マカロニサラダ、スパゲッティミートソース、シチュー、肉じゃが、南蛮揚げ、フライドポテト、ちらし寿司が、続々と出来上がっていく。

 

 慣れた手つきで大根を桂剥きにする咲に、同じくキャベツを千切りにするリンディが話しかける。

「私、息子はいるけど娘はいないの」

 とはいえ、それもいつまでかは分からない。近い将来、クロノの相棒であるエイミィが、きっと……

「夢だったのよ。女の子と一緒に、お台所に立つの」

 ぴくっ、と肩を震わせる咲。

「ありがとうね、咲ちゃん。夢が叶ったわ」

 しばらく動きを止めた咲は、唐突にタマネギをみじん切りにし始める。ざくざくと。皮ごと。そして、目元を拭う。

「…………タマネギが目に沁みました」

「そう? 大変ねぇ」

 ざっしゅざっしゅと、親の敵のようにタマネギを刻む。一体何に使うのかサッパリ不明なみじん切りの山が出来上がっていく。

「ええ、タマネギのせいなんですからね……! 勘違いしないでくださいよ!」

 咲は、どこまでも強情だった。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 食事が終わって。

「……」「……」「……」

 何故か、私と、母さんと、姉さんの三人は、客間にいた。

 秀人さんのところに行こうかと思っていたところを、無言で連れてこられた。何だろうか……? まさか、今になって攻撃魔法をぶっ放したことを怒るのだろうか。

「なのは」

「……何?」

 姉さんが、後ろ手に持っていた何かを、取り出した。

「……リボン?」

 それは、白いリボンだった。ただ白いのではなく、白地に、同色の糸で刺繍が施されていて、かなり凝った造りになっている。

「私たちが作ったの」

 そして、母さんが私を手招きする。

「……」

 おっかなびっくり、膝で歩いていくと、くるりと体の向きを反転させられた。

 髪の毛を持ち上げられる感触。

「できたよ」

 手鏡を差し出され、受け取る。ポニーテイルになっていた。いつも面倒で、ストレート以外の髪型にするなんて久しぶりだ。

「……そういえば、昔はよく髪の毛、やってもらってたっけ」

 ぼそりと、何の気なしに呟いた。私がまだ幼稚園に通っていた頃、毎朝のように姉さんとおそろいの三つ編みや、ツインテールに結んでもらっていた。

 あ、やばっ!

 母さんと姉さんの顔が、もそもそと暗くなっていく。

 

――ぎゅうっ

 

 母さんと姉さんが、私に抱きついてきた。

「ごめんね、なのは……ごめんね……!」

「なのは。本当に、本当に……ごめんなさい」

 

「別に、責めてるわけじゃないよ」

 まだ許せないのは確かだけど。

今でも、思い出すと腹が立つ。

でも……私の無意識では、もう心の整理がつき始めているのだろう。腹が立つとは言っても、激怒ではなく、ちょっとむかつく、くらいのレベル。

 そのくらいなら……よくある仲違いくらいなら、いつかきっと、許せる日が来るだろう。

 どんなに否定しようと、私たちは……家族、なんだろうから。

「それでも、謝りたくて……!」

はぁ……もう、姉さんってば、鼻水垂れてるよ。

「うっぷ……」

 ティッシュを取り、姉さんの顔に押し付ける。

 ほんと、どっちが年上だか……

 

「別に、無理して私に構おうとしなくてもいいよ」

いろいろと、思い出したことがある。

 まだ、父さんが健在だった頃。私は、よく翠屋に連れて行ってもらっていた。今思い出せば、まだまだ繁盛していたとは言えなかった頃の話だ。

忙しそうに働く家族たちを眺めながら、いつの間にか眠りこけ、父に背負われて帰ったこともあった。

試作品のケーキを、母さんにこっそり食べさせてもらったこともあった。

姉さんに、レジ打ちの真似事をさせてもらったこともあった。

兄さんと一緒に皿洗いをしたこともあった。

 ただ、そのバランスが崩れてしまっただけ。

きっと母さんたちは、守りたかったのだろう。いつか目を覚ます父さんが、安心して戻ってこられるように。

「納得は、まだできないけど……理解はしたから」

 不満はある。だけど、母さんたちにだって事情があるんだ。それに……私には、秀人さんとユーノくん、それにレイジングハートがいる。

 寂しさを感じる必要なんて、これっぽっちも無いんだから。

 

それでも、母さんと姉さんは負い目を感じているらしい。

「何か、してほしいことは無い?」

 と、そんなことを聞いてきた。

ここで、『店を閉めてずっと一緒にいて』とかわがままを言うこともできるけど……今は、そんなことより大事なことがある。

「お願いは、二つ」

 順々に二人の顔を見ながら、言う。

「私は今、秀人さんと一緒に暮らしてるの」

 もう、今となってはあのアパートの一室が私の居場所だ。

「だから、こっちに帰ってくることは、殆ど無い」

 秀人さん達と一緒に居たいし。

「まず、それを許して」

 家出ではなく、ちゃんと許可をもらっておかなければ。これは、私なりのケジメのようなものだ。

「二つ目。

しばらく、フェイトをこの家に置いてやって」

 拠点に戻らせるのは危険すぎる。いつまた、フェイトの母親がちょっかいを出してくるかも分からない。それに、そこにはクロノたちが立ち入り調査を始めるだろうから、とても前と同じように暮らせるとは思えない。

 その点、ここなら安心だ。いつでもすぐに駆けつけて来られる場所にあって、部屋も余っている。

 何より、アルフが行方不明らしい。どっからどう見ても生活能力皆無のあの子には、世話係が必要だ。だからといってアースラで預かると、フェイトが緊張してストレスを感じてしまうから、多少なりとも落ち着ける環境で……って、まるで猫じゃないか。

 母さんと姉さんは、少し悩み……

「わかった、わ」

 母さんは名残惜しそうに。

「フェイトのことは任せて!」

姉さんはやる気満々に。

 

しっかりと、頷いた。

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 その夜。俺達は、高町の家に泊まっていくよう奨められた。まぁ、メインはなのはで、他の連中はおまけなんだろうけど。

 縁側に腰を下ろし、二人で横に並ぶ。

「食べ過ぎちゃった」

 少し膨れたお腹を擦りながら、なのはが照れくさそうに笑った。確かに、割と少食のなのはにしてみれば、かなり食べた。久しぶりに口にする、母親の料理だ。そりゃあ、無理してでも味わいたいに決まっている。リスのように頬張るフェイトに負けじと、ハムスターのように口に詰め込み、『行儀が悪い』と二人そろって先生に怒られていた。

 

今は、桃子さん、美由紀、先生の三人が、大量の洗い物と格闘している筈だ。一体、何皿平らげたやら……

「ちょっと、お腹が重いかも」

 頭を撫でてやると、じゃれるように頭を振った。

「似合うよ、それ」

 少しだけ伸び、ギリギリ背中までかかっていたストレートの髪の毛は、白いリボンでポニーテイルに結ばれていた。

「ありがと」

 このリボンは、美由紀と桃子が用意し、結んであげたものらしい。ただのプレゼント以上の嬉しさがあるに違いなかった。

 

 フェイトは、元なのはの自室にて、事情聴取を受けている。ユーノに監視を頼んでおいたものの、完全に遮断されているせいで念話も通じない。誘導尋問のようなことが行われていなければいいが……

「吾妻」

 と、引き戸が開き、恭也が出てきた。

「何だ?」

「少し、いいか」

 そして、ちょいちょい、と離れの道場を指差す。

「悪い、ちょっと借りていく」

そして、すれ違いざま……ぽん、となのはの頭を撫でていった。

「…………ああ、うん。いってらっしゃい」

 なのはは頭を擦り、ほけー……っと俺たちを見送った。

 

 

 恭也が扉をしっかりと閉め、同情の中央に正座した。何となく、その向かいに座る。

「で、何の話だ?」

 多分、他には聞かれたくない話だろう。

「吾妻、」「秀人でいい」

「秀人。俺は……俺たちは、何をしていたんだろうな」

 悔恨を口に出す。

「父さんの店を潰さないように……目を覚ましたとき、家族皆でちゃんと迎えてやれるように、頑張っていたつもりだった。新しいメニューやレシピを夜なべして考えて、どれだけの値段で出すかを吟味して……」

 そこで、ふっと自虐的に笑う。

「確かに、店は繁盛したよ。あの通りで、一番だと胸を張れる」

 いくら一等地に店を構えているとはいっても、店の質が良くなければ、繁盛はしない。だから、きっとこいつらは本当に努力したのだろう。

 

――実の妹を、おざなりにするまでに。

 

「その影で、大事な末の妹を泣かせていたなんて、な」

 確かに、とんだお笑い草だ。目的と手段の逆転。家族皆でいられる場所を守るために、家族そのものを蔑ろにしていた、なんて。

「俺は、どうすればいい。どうすれば、償える」

 そんなもん、自分で考えろ……と言いたいが。

「……週に一回だ」

 なのはのためだ。

 

「定休日でも何でもいい。週に一回、必ずなのはと一緒に食事をしろ」

 

 家族と一緒に食事がしたい。そう言っていたなのはの願いを、叶えてやろう。

「……感謝する」

 そして、恭也は深々と俺に頭を下げた。

 約束、ちゃんと守れよ? 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 秀人さんを見送って、少し経った。

「…………」

 兄さんに頭を撫でられた。あの日の晩は嫌だったのに……今は、そんなに嫌じゃない。

「やっぱり私、甘いのかなぁ……」

『それがあなたの美徳です』

 レイジングハートが、すかさず返事をくれた。

「でも、良かった」

 何だかんだで、高町家の面々と和解ができた。リンディさんがきっかけをくれ、秀人さんが背中を押してくれたから、実現できた。

「あー……リンディさんにも、お礼しないと」

 

 満月を見上げる。まん丸なシルエットに、人影が重なり……とさっ、と軽い音を立てて、私の目の前に着地した。

「普通に降りてきなよ」

「そんなの、ボクの勝手だろ」

 フェイトだった。ユーノくんのお陰で、かなり回復したらしい。

ふてぶてしく腕を組み、呆れる私を見下ろしている。

とんとん、と自分の隣を叩き、フェイトを促す。フェイトはすとん、と素直に座った。

「日取り、決まったよ」

 私たちの、勝負。

 アースラ監修の、結界内の仮想空間。そこで、決着を着けるんだ。今度こそ、誰の邪魔も入らない。

「いつ?」

「三日後、だって。それまでに、体調を整えておけってさ」

 怪我の方は、ユーノくんがそれまでに何とかできるそうだ。だから後は、よく食べて、よく眠って、体力と魔力を回復させるだけだ。

「負けないよ」

私のためにも。そして、フェイトのためにも。

 

「ボクだって」

 

 そして、こつん、と拳と拳を軽くぶつけ合った。

 

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