魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

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StrikerS編 第十九話 『翼、甦る頃に』

 

 

一つ、考える。

 

……吾妻秀人の、『強さ』とは何か。

 

『結合』という、他に類を見ない特異な資質だろうか?

 

そこから来る、膨大な魔力量だろうか?

 

不死身の肉体だろうか?

 

――――否。

 

 

「――――!!」

 フェイトの魔力の大半を圧縮した魔力刃が、粉々に砕け散る。通じていた筈の力。切り裂けたはずの刃。それが……完膚なきまでに、砕かれた。砕かれるだけには足りず、防御魔法を貫通し、バリアジャケットを無視し、痛烈な打撃が……ロクに魔力さえ込めていない、ただの拳が、フェイトの身体を打ち据えた。

「ぐ、うぅ…………!!」

「真芯は外したか……いや、避けられたのか」

 意外そうに呟く秀人は……追い打ちを掛けるでもなく、フェイトが立ち上がる様を眺めていた。

「……!!」

 高速機動魔法を発動。初速を魔力で蹴り出し、爆発的なスタートダッシュを切る。魔力刃を、再度形成し、死角を狙う。しかし。

「まぁ、そう来るよな」

 

――白羽取り。

 

 ……紙か何かでもそうするように、人差し指と、親指で、その刃をあっさりと捕獲する。

「くっ……!!」

 魔力刃を解除し、退避…………

 

――――バキィンッ!!!

 

 瞬時に距離を詰めた秀人が、フェイトが防御のため前に突き出したバルディッシュの外装を、貫手で粉砕する。

「お、避けた。……腕を上げたなぁ」

 秀人は……笑みさえ浮かべ、フェイトを称賛する。

 

「――頑張ったな、フェイト」

 

「……っ!!」

 求めていた筈の言葉。求めていた筈の笑み。それが……こんなにも、遠く感じる。じくじくと、フェイトの心に、負の感情が浸食していく。

 

――――埒外の筋力。優れた瞬発力。並外れた持久力。鋭い反射神経。痛覚耐性。強靭な精神。

 

 

――――『吾妻秀人』という生物は…………『単純に強い』のだ。

 

 

 これは、強化によるものではなく、彼自身の、ごくニュートラルな状態……つまり、解除の効くようなものではない。そして、ここへ更に、前述の魔力や、戦闘技術が加わる。

「フェイト。」

 ……混乱と、恐慌の中にあるフェイトへ……秀人は、語る。

 

 

「――――ちゃんと防げ。死ぬぞ」

 

 

――――ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!!

 

 

 秀人が、余剰分の魔力を消費しただけの、単純な衝撃波。回避したフェイトだが……前後左右上下、全方位から押し迫る面制圧攻撃の前に、膝を折ることになった。

「それ、左だ」

 

――ドガァッ!!

 

 展開したシールドが、一撃で蹴り砕かれる。

「次、ボディいくぞ」

 

――――ドズゥッ……!!

 

 盾にしたバルディッシュの柔軟な柄が、限界まで撓み……

 

――――バキィンッ!!

 

 ……折れる。そして、その一撃は、まともに腹部へ。

「がはっ…………!!」

 肺の中の酸素が全て絞り出され、酸欠に喘ぐ。

「……ぅぅうううううううああああああああああああああああ!!」

 

――ブォオンッ!!

 

 伸長した魔力刃による薙ぎ払い。

「ほら、気が急いて大ぶりになっている」

 

――――ガキィンッ!!

 

 膝と肘。僅か二点による、挟み潰し。

「んじゃ……行くぞ。上手く避けろ」

「……!!」

 

――――どん。

 

 …………認識が追いついたのは、その瞬間まで。

「…………あ」

 どさっ……と、フェイトは、倒れ伏した。

 

 掌底を腹部と胸部へ喰らった……と、気付く余地さえも無かった。有利な間合いの取り方。意識の外から突く歩法。最小限のモーションに込められた威力。

 やはり、体術で秀人に勝てる筈が無い。

「……がぁっ!!」

 

――ならば、魔法だ。

 

『Thunder shoot』

 フェイトは、まだ残る魔力を、即座に集中。砲撃の形として、秀人へと発射する。もてる中で最速の砲撃。

 秀人は………………

 

――――ドォオンッ!!

 

 ……避けない。

 胸部装甲に、敢えて真正面から……直撃させた。見たところ、魔力の流動も無く。単に、素材の強度で受けただけ。

 もうもうと立ち込める粉塵の中から……

 

「――まぁまぁだな」

 

 …………全く無傷の、秀人が現れる。

 胸部装甲は、多少なりとも砕けている。

 しかし……その内部、肉体は、かすり傷ひとつ残っていない。

「…………」

見下ろす秀人は……悲しむでも、笑うでもなく……ただ、困ったような表情を、浮かべていた。

「なぁ、聞き分けてくれよ」

 彼がよくやる、頬を掻く仕草。わがままを言って、彼を困らせた時と、同じ…………

「――――ッ!!!」

 かぁああっ、と、頭に血が上る。再び、高速機動魔法を発動。攪乱は無意味ならば……真正面を、最短距離で進むのみ。魔力刃を、秀人の額へ――、

 

「――もう、十分だろ?」

 

――ズダァンッ!!

 

 フェイトの手首をあっさりと捕獲した秀人は……その勢いのままに、その体を、片手一本で投げ落としたのだ。

 また、頬を掻く。それは……彼にとっての、日常の中での仕草。フェイトの必死の防戦も……秀人にとっては、『戦闘』ですら無いのだ。

「お前は全身全霊で、犯人逮捕に取り組んだ。俺に一太刀を入れて、善戦した。結果こそ、失敗だっただろうが……それを責められる奴なんて、誰もいないさ。フェイト以外じゃあ、俺に一太刀だって、入れられはしなかっただろうからな」

 もっとも、それは、『設定』の中だけの話だった。

『吾妻秀人は、卑劣な犯罪者に操られ、かつての仲間を倒さざるを得なかった』……という、子供だましのような、しかし、誰も信じて疑わなかった、その『設定』の。

 

「――フェイトは、俺には勝てないよ」

 

――からんっ。

 

 ……フェイトの手から、バルディッシュが滑り落ちた。

 秀人を救う。その大前提が、崩れ去ってしまった。犯罪者に操られてなどいない。己の意志を保ち、それでも尚、敵方に付いたのだ。そして、何より…………

 

――彼にとっての『救い』とは、己の死に、他ならないのだから。

 

「悪いなぁ……せっかく来てくれたのに。でもまぁ、適度にダメージは加えるぞ。あんまり軽傷で見つかると、疑われちまうからな」

 

――――グキンッ!!

 

「……! あああああああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

 肩に走る、熱にも似た衝撃。外された。

「これで、片腕」

「ぅううううううううう!!!」

 取り落としたバルディッシュを掴みあげ、がむしゃらに振り回す。

『Thunder Rage !』

 

――バチバチバチバチィイイイイイイインッ!!!

 

 発動した電撃の魔法が、秀人を直撃する。

「悪くない手だ」

 秀人は……身じろぎもせず、それを受け止めた。皮膚が焦げ、明らかに通っているはずの電撃。

「電撃っていうのは、肉体面へのダメージはもとより、相手の神経パルスを乱して、麻痺させて制圧するのには向いている。……俺以外には、な」

 ……通電したまま、全く口調を乱すことなく、丁寧に指摘する。

「不死身、すなわち不変。…………影響が出るよりも先に、復旧する俺を倒すには、不十分だ」

 

――バシュッ……。

 

 ……起死回生の電撃さえも、軽く振り払ってしまった。

「んじゃ、もういいな?」

 秀人は、こきこき、と手を鳴らし…………

 

「安心しろ。優しく倒してやる」

 

――――ドズゥウウウウウンッ!!!!

 

「がはぁ…………!!」

 重力操作。フェイトの身体へ、重力を『結合』し、縫い止めた。その荷重は、徐々に……増してきている。恐らくこのまま、体力を削ぎ落としていく算段なのだろう。

(だ、ダメ、だ…………!! まだ、寝てる場合じゃ、ない……!!)

 勝てない。魔導師……いや、それこそ、生物としてのスペックが違いすぎる。

そんなこと、判り切っていた筈だった。しかし、どこかで…………心のどこかで、甘い願望が残っていたのかもしれない。

『きっと、説得に応じてくれる』……と。

 しかし……秀人の歪みは、それこそ、彼の根幹に根付くほどの深さにあった。

 

 体術では勝てない。魔法は通じない。そして……説得すら、届かない。力も、技も……意志力さえも、フェイトは、秀人に勝てなかった。

 

――――ズズンッ……!!

 

 ひときわ大きく、荷重される。

「……!!」

 バリアジャケットの機能により、辛うじて呼吸こそ繋げてはいる。しかし……秀人は、その力の一片すら、出してはいない。

 がしっ……と、無造作に、フェイトの首を掴みあげる。

「もう眠れ。起きる頃には…………たぶん、終わっている」

その、僅かばかりの寂寥感を含んだ言葉を最後に…………フェイトの意識は、急速に遠ざかっていく。秀人は、その握力でフェイトの血流を遮断しに掛かっていた。

「あ、……あ……」

 ささやかな抵抗のように、その手に爪を立てるが……その程度で止まるものではない。

 

(みんな…………なのは………………)

 必ず、連れて戻る。そう約束したのに。

(ごめん……ボクが、甘かった…………)

 彼の真意を見誤り、彼の実力を無視していた。解呪の刃さえ突き立ててしまえば、それで終わると。秀人は正気に戻り、味方になってくれ、ナンバーズ一味を一網打尽にしてハッピーエンドだと。何も疑わず、そう信じて……いや、盲信していた。

(そうだ……このまま…………)

 このまま、眠ってしまおう。それが、彼の望みなのだ。不死の呪いを解き、人間らしく死ぬこと。その手段は、ジェイル・スカリエッティが既に握っている。この騒乱の果てに、それが実現できる目途が立っているのだ。

(ボク……最後くらいは、……良い子にするから…………)

 今、自分が我儘を言ってはいけない。

 それが秀人の願いであれば、受け入れることこそ、秀人の家族としての、

 

 

――――フェイト。

 

 

「………………?」

 僅かに、意識を持ち直す。その声は……誰のものだったか。

 

――――フェイト、聞こえていて?

 

 …………プレシア。最愛の母の声。

「………………………………おかーさん?」

 ギシギシと、押し潰されかけている肉体。しかし、その声は……明瞭に、届いた。

「? ……念話か?」

 秀人は、怪訝そうに……しかし、加減せず、絞めを続行する。

 

――――あなたは……過ちを犯したわたしを、助けようとしてくれたわ。覚えていて?

 

「……………………」

 半ば、無意識の中。その声へ、答える。

 

――――うん。

 

 あの日……次元の坩堝へ落ちようとしたプレシアと、アリシアの遺体。秀人は、その中へ飛び込み……自身と共に、救おうとした。

 

――――『あなたは、私の娘なんかじゃない』

 

 ……そうとまで突き放された、拒絶されても尚、フェイトが持ち続けた想い。

 

――――『うん、知ってるよ。ボクは、アリシアの代わりだから……』

 あの日、プレシアは……死のうとしていた。理想郷……アルハザードへ至るという望みだけを抱き、虚数空間を開いた。

 

それは、あの時点では間違いなく、プレシアの願いだった筈だ。では、なぜ……自分は、それを拒んだのか。

 

――――『でも……ボクが、おかーさんを好きな気持ちは、ボクだけのものだよ』

 

 …………あの日に、決めた。己の気持ちに、正直に生きること。

 他の誰でも無い。自分自身に、従うこと。

 

――――『だから、助けるんだ。おかーさんが、どう思っていても関係ない。ボクは、おかーさんを助けたい。だから、助けるんだ』

 

(…………そうだ、ボクは)

 

――――ボク、執務官になりたい

 

 フェイトはあの日、己に課した誓いを思い出す。

『執務官になる』と誓ったあの日。

 

――――もう誰も、取りこぼさないために。

 

(そうだ……そうだ。そうだった)

 フェイトは……目の前で失われていく物、全てを救い、全てを掬うのだと誓った。

 それは……空虚に生きてきた己に芽生えた、原初の想い。

いつか……、――

「――――誇れる自分に、なるために……!!」

他ならぬ彼が、教えてくれたではないか。

 

――――その力を、正しく使える時がきっと来る。

 

「――――今が、その時だ!!」

 

『Blaster Mode ! 』

 

 

――――ズバァアアアアアアアアアアッ!!!!

 

 

 消えかけた閃光が、再び輝く。

「…………これは」

 秀人が……ここにきて初めて、表情を引き締めた。

 

――――魔力強化・限界突破……ブラスターシステム。

 

 それは、かつて秀人が、闇の書事件の解決のため用いた切り札。

莫大な、それこそ常識を超えるレベルでの出力増強を可能にし……重篤な後遺症を患う危険を含んだ、諸刃の剣。

「……! マリーのやつ、どういうつもりだ……!!」

 憤る秀人に、答える声があった。

 

『――――あら、心外ね。託したのは私よ』

 

「……、プレシア。やっぱり、あんたか」

 先ほどの通信も、本人だろう。

『――秀人。あなたの過去を、私は知らないわ。綺麗ごとで、それを止められないのも分かっている』

「…………」

『それでも……わたしたちは、あなたに受けた恩を、返し終えてはいないの』

「……、そんなもん、別に、」

『そう言うだろうから……こちらで勝手に、返させてもらうことにするわ』

かつての、鏡写し。目の前に居るのは、死へと歩む、緩慢な自殺者。

 

『覚悟なさい、吾妻秀人』

 

止めるべく立ち塞がるは、我儘勝手な正義の味方。

 

 

『――――私の娘は、強いわよ』

 

 

「――――!!」

 秀人は、爆発的に膨れ上がったエネルギーに対峙する。

「――ボクが、キミを助ける」

 散漫だった力は、再び確固たる意志の元に統一された。それは、己が身を捨ててでも、目的を達成するという不退転の覚悟が、完了したという証。

 

「――――時空管理局執務官……フェイト・テスタロッサ」

 

 すぅっ……と、怜悧な瞳が、秀人を捉える。

 

「実行犯の制圧、及び――――要救助者の救出を開始する!!」

 

 

――――ゴォオオオオオウッ!!!

 

 黒炎が、燃え上がる。

「……下策だ、フェイト」

 強化魔法は、黒炎で強制的に解呪できる。竜魂憑依すら消し飛ばした炎に、ブラスターは無意味どころか、無用なリスクだけを追う結果になるだろう。時間制限まで、保つかどうかも不明。

 

――――ズゴォオオオオオオオッ!!

 

 黒炎が、周囲一面を焼き払う!

「――だぁああああああああっ!!」

「――!?」

 その黒炎を突き破り、雷光が走る!!

 

――――ガギィイイイインッ!!

 

 黒炎を纏った手甲で受ける。しかし……それに触れるフェイトのブラスターが、減衰する気配は見えない。

「くそっ……どうなっている……!」

 

――ギィイインッ!!

 

 とうとう、手甲の一部が切断される!

「…………!! そうか、…………流動魔法か」

 

 流動魔法。……それは、かつて闇の王が用いていた技法。通常、体表を包むように展開する魔法を……『体内で循環させる』という荒業。確かに、黒炎は体内までは浸透しない。

竜魂憑依を消した時も、外部装甲を通じて、竜魂を弾き出したに過ぎない。対策としては、正解であるかもしれない。

しかしそれでも、あのはやてをして、『燃費が悪い』と言わしめたほど、消耗の激しい技だった。

 魔力の消耗だけではない。極めて緻密な構造をした人体は、通常、魔力のような異物を通すようには出来ていない。免疫が拒絶反応を起こし、最悪…………

 

「……止めろ! 体が壊れるぞ!!」

 

 更に、燃費を補うためのブラスターとの重ね掛けである。秀人のような肉体を持たないフェイトにとっては……自滅にも等しい。しかし。

 

「――――なら、止めてみろ!!」

 

 止まる気など、欠片も無い!

「このっ……!!」

 

――ギャリィイイイインッ!!

 

「くそっ……速い……!!」

 ここにきて、フェイトの速度は更に上がった。秀人の反応速度を超える程だ。

 範囲攻撃を発動しようともお構いなしに距離を詰め、秀人へダメージを与えていく。

「無駄だと言っているだろうが!!」

 不死身の肉体に、外部ダメージなど無意味。そう断言する秀人だが……フェイトは、既に看破していた。

「なら、なんで防ぐ!?」

「……、」

「どんなに不死身でも……! 回復するにはスタミナを消費するんだろ!! そして、キミの『体力』は、無限じゃない!!」

 秀人は、事実上、『最強』の生物ではあるが、決して、『無敗』の存在ではないのだ。

「そういう話をしているんじゃないっ!!」

 

――ガキィンッ!!

 

 バルディッシュを蹴り上げ、衝撃波を纏った突進を放つ!

 

――ドガゴォオオンッ!!!

 

 施設が激震し、フェイトを壁へと叩き込む!

「大人しくしていろっ!! すぐ解呪して……ついでに眠らせてやるッ!!」

しかし、ダメージ回復のためリソースを割いているため、十分な量の黒炎が発生しない。この調整が効かないのも、秀人の弱点の一種だ。だが、こうまで完全に動きを封じていれば……という秀人の算段。

 

『Limit 2 !』「リリースッ!!」

 

 それを、フェイトが決死に乗り越える!

 

「うぁああああああああああああああーーーー!!」

 限界を超えた限界……それを、更に超越する!!

 

――――ドガァアアアアンッ!!

 

 圧力ごと、秀人を弾き飛ばす!!

「フェイト、やめろッ!! もう、それ以上はッ!!」

「やめるもんかぁあああああああああああーーーー!!」

 

――――ズドォオオオオオオオオンッ!!

 

 速度をそのまま破壊力に転化した跳び蹴りが、秀人を捉える!!

「ぐぉおおおおおおおっ……!!! …………、」

 秀人は、フェイトの限界を超えた力、そして、その先に待つ破滅を感じ取り……

「――――……もう、手加減は終わりだ!!」

 本気で……フェイトを、叩き潰すことを決意した。

 

「――――フェイト、お前を……!」「――――秀人、キミを……!」

 

 

――――助ける!!

 

 

 奇しくも、同様の答えに至った二人。

「ブラスター1、ブラスター2、手順省略……!!」

 秀人もまた、ブラスターを発動準備する!!

 

――――ゴォオオオオオオオオッ………………!!!

 

「バルディッシュ、こっちもだ!!」

『……Yes , sir. .,,,Limit 3 !』

「限界の、限界の、限界を…………突破だぁあああああああああ!!!」

 

 

――――リリース!!!

 

 

 

 打ち砕く。叩き伏せる。押し潰す。

 

 斬り裂く。突き通す。撃ち貫く。

 

――――………………!

 

 もはや駆け引きも無く、悪鬼羅刹の如き力を振るい、叩きつけあい……それでも尚、互いを助けるための戦いが続く。

 

「もう、いい……!! 俺のことを、助けようとするな!!」

 

 秀人は……余裕を無くし、叫ぶ。

 

「俺は……、俺は、お前が思うような、聖人君子でも、英雄でも無いんだっ!!」

 

 その心中を、溜めこんでいた思いを吐き出す。

 

「俺のせいで……俺のせいで親が死んだ!! その事実を見たくなくて、自己満足の英雄ゴッコで他人を助けて、自分の罪から目を逸らしていただけの…………、ただの、卑怯者なんだよっ!!」

 

 かつて助け……今は、己を救おうとしている者へ、拒絶をぶつける。

 

「誰も、俺を罰してはくれなかった!! 自分で自分を罰することも出来なかった!!

 

――なのに、何で、どいつもこいつも、俺に笑いかけてくるんだ!?

 

 ……違うんだ!! 違うんだよ!! 

 

 お前たちが思うような理由なんかじゃないんだ!!

 

俺は、そんなことをして欲しい訳じゃないのに!! ……俺自身を、何をどうしてでも、罰しなければいけないんだっ!!」

 

 

――――――――ガギィイイイッ…………!!

 

 

 秀人は、切り札……カーバンクルを使用する。崩壊により発生したエネルギーが、鎧装を循環し……砲門へと収束する!!

「だから…………俺の邪魔をするなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーッッ!!!」

 

――――ゴォアアアアアアアアアアアァッ!!!

 

 絶大な威力の黒炎が、フェイトを飲み込む!!

 

――――バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂィッ!!

 

 フェイトの雷光が、その砲撃を迎え撃つ!!

「 「 はぁああああああああああああああああああッッ!!!」 」

 

 

 ぶつかり合い、せめぎ合い…………拮抗したエネルギーが、臨界を迎える!!

 

 

――――………――――――……………!!!!!

 

 

 音も、光も、全てを置き去りに、エネルギーが弾ける!

「はぁー……!!」

 

――――立っていたのは、秀人だ。

 

 フェイトは、秀人に掴み上げられ、全身を弛緩させている。

「俺の、勝ちだ……!! 全てが終わるまで、ここで寝ていろ……!!」

 

――リンカーコア結合。

 

 秀人の能力により、フェイトのリンカーコアと、秀人のリンカーコアがリンクする。このまま直接、フェイトの魔力をゼロにまで低下させ、反攻の芽を摘むつもりだ。

 

――ズ……

 

 魔力の吸収が、始まり………………

 

「――!!」

 フェイトが、カッと目を見開いた!

 

「――――そう来ると、思ってた……!!」

 

――ガシィッ!!

 

 フェイトは、秀人へと、体裁もへったくれも無く抱き着く!!

「なっ……!?」

 

 

「――――届けえぇえええええええええええええええええっ!!」

 

 

――――――――ズバババババババババババババババババババババババババババババババババッ!!!

 

 凄まじい雷光が放出される!

 

「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおーッ!!!」

 秀人が、その衝撃に叫びを上げる。

 

――――フェイトは、この一手だけのために、全てを賭けていたのだ。

 

 リンカーコア結合は、秀人にとっての切り札だ。他者とリンクさせることにより、二次関数的に出力を増すことが出来、そして、それを共有することができる。だが、それはつまり……双方向へ作用する術式であることを意味している。

 秀人がフェイトの魔力を吸収できるように、フェイトもまた、秀人の魔力を扱うことが出来るのだ。

 

 その魔力の全てを、片っ端から『電気』へと変換し、放出してしまえば……!

 

「ぬ、ぐぅううううううううっ!!」

 フェイトを引き剥がしに掛かる。しかし、フェイトもまた、全身全霊で秀人を抱きしめており…………膨大な電気により、身体を思うように扱えない秀人には不可能だった。

 

「ぐ、おぉ………………」

 

 

――――――――……………………どさっ。

 

 

 …………秀人が、膝を突き…………そのまま、倒れ伏した。

 

「………………ボクの、勝ちだ」

 

 最後の最後に勝ったのは…………フェイトだった。

 

 

 

 

 

 

 

『………………ウソだろ、オイ……』

 ようやく復旧した通信の向こうで、ジェイルが絶句していた。秀人の戦闘力には、絶大な信頼を置いていたジェイルには、この結果は到底信じられるものではなかった。

 

「……まだだよ」

 

 フェイトが……ブラスターの反動、極度の疲労を引きずりながら、メス程にしか届かぬ魔力刃を構築する。術式は、解呪ではなく、精神干渉。

「秀人……いま、会いに行くからね」

 フェイトは……秀人の意識へとダイブするつもりのようだ。

『おい、やめておけ。無駄だ。ソイツの意識は、ソイツ自身が、固く閉ざしちまってる。『プリズン』っつー自己監獄結界で……」

無理と言い募るジェイルに、フェイトは……

 

「――――黙って見てろ、このクソ親父(・・・・)!!」

 

 絶句するジェイルを余所に、刃が、秀人の額の紋様へと触れた。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

――――。

 

 一瞬、眩しい光に包まれたフェイトが目を開けると…………

「? ……まち?」

 見覚えも無いのに、どこか懐かしい。そんな街中の……公園と思しき場所に、フェイトは立っていた。そして、気付く。

「!? ち、ちっさ!?」

 フェイトの身体が、時間が逆戻りしたかのような……子供の姿となっていた。

「うぉっ、おっぱいが無いっ……!」

 どうでもいいことに驚愕するフェイト。何はともあれ、秀人を見つけなければならない。

「…………半分は、海鳴市みたいだ」

 歩いているうちに、見知った光景と、それ以外が混在しているということだけは分かった。無人という訳ではなく、ごく普通に、人もいれば車も走っている。しかし……

「ぐぁー……どこにも居ないじゃんか……」

 時間の経過がどのようになっているのかは不明だが、体感で、5時間は探しただろう。

「うーん…………?」

 

――――ぼすんっ。

 

 考え込むフェイトの足元に、小ぶりなサッカーボールが転がってきた。

「?」

 

――――わりー! こっち投げてくれー!

 

 どうやら、公園の近くを歩いていたらしい。やや広い公園の中では、子供たちが、ボール遊びや、ゲーム機に興じていた。

「………………、」

 フェイトはボールをしばし見て…………

 

「い―れーてっ!」

 

 投げ返すのではなく、その輪の中に飛び込んでいった。

 

――お、ガイジンだガイジン!

 

――すげーキンパツ!!

 

――ちょーはぇえ!

 

「あっはっは!!」

 フェイトは……公園の中で、子供たちに交じり、色々な遊びをした。

サッカー、ドッジボール、水風船、ブーメラン、ゲーム……

 

…………そうして、どれほどの時間が過ぎただろう。気付けば、街には夕日が差していて、もの悲しげな放送が流れ出していた。

 

――――『夕焼け小焼け』。

 

 海鳴市では流れない、その音楽と共に……

 

――あ、母ちゃんだ!

 

――帰らなきゃ!

 

 子供たちは、おもちゃをリュックサックに詰め込み、母親に手を引かれ、一人、また一人と、公園を去っていく。

 

――また明日な!

 

「うん、また明日」

 

――じゃあな!

 

「うん、じゃあね」

 

 フェイトの横で、一人の少年が、彼らを見送っている。小柄で華奢な少年だ。

「ばいばーい!」

 フェイトも、思いっきり手を振り、彼らを見送る。

 そして。

 

「………………」

 

 公園には、フェイトと、寂しそうな笑顔を浮かべる、少年だけが残された。

 ……ここは、そういう世界なのだ。

 

 いつまでもいつまでも、穏やかで、温かな時間が流れる世界。

 

 子供たちは、夕方まで思う存分に遊び……夕方になると、親に手を引かれ、家に帰る。

 

 それを、毎日見送る世界。

 

 尊く、美しく、温かく――――――彼の居場所が、無い世界。

 

 

 

「ひでと、みーつけた」

 

 

 

――――景色から色が消え、時間が止まる。

 

 

「……放っておいてくれよ」

 少年は蹲り、膝を抱えてしまう。

「ぼくはここで、お母さんを待ってないといけないんだ。いつまでも、いつまでも……お母さんを、待っていないといけないんだ」

 年相応の、幼い声。華奢な体。いったい、どれほどの時が過ぎたのか。

 

「でも……ここには、来ないんだよね」

 

 いったい、この少年は、秀人は…………どれほど、この孤独の夜を経験したのだろう。

「……うん」

「なら……立って、探しに行かないと」

 フェイトが、秀人の手を握る。

「だめだっ!!」

 しかし、秀人は、その手を振り払ってしまう。

「だめだ……ぼくは、ここから出たら、だめなんだ……」

 この光景は、きっと……事故の日の繰り返しなのだ。母を待ち……駆け寄った瞬間に、全てが変わってしまった。だから……秀人は、ずっと、出られなかったのだ。

「……大丈夫だよ。キミが立ち上がるまで、ずっと、待っててあげるから」

 フェイトは再び、秀人の手を取る。

「キミが笑ってくれるなら、ボクが、ずっと傍にいるから」

「嫌だ……ぼくは……俺は……」

尚も彼は、救いを拒んだ。ここで、永遠の贖罪を続ける気でいる。

「放してくれ……俺は、償わないと…………」

 

「――もう、いいんだよ。」

 

 フェイトが、秀人を抱きしめる。こんなにも小さな、彼の本心。彼は、こんな小さな心で、必死に困難に立ち向かってきたのだ。

 

――――ぱきんっ。

 

 凍てついた時間に、亀裂が入る。

 

「秀人は、もう十分に苦しんだよ。もう、十分に……誰かを、救ってきたよ。知ってるよ。ずっと見てきたんだ。追いかけてきたんだ」

 彼が消えてから。アリシアに希望を託されてから。ずっと、ずっと……彼の痕跡を追い続けた。彼の救ったものを、追いかけてきた。焼け落ちた森に残された、たった一本の世界樹の苗木。乾いた砂漠に流れた恵みの川。汚染された町に吹いた風。古の因果から解き放たれた聖霊。崩れた鉱山から救われた少年。

 

「誰が許さなくても、たとえキミ自身がキミを責めても、この世のすべてが敵になっても……ボクが、キミを赦すよ。キミの罪を、赦すよ。」

 

――――ぱき、ぱき、……

 

 亀裂が放射状に広がり……その向こうから眩い光が差し込み、色あせた世界に蹲る秀人に、その光が降り注ぐ。

「もう、一人で泣かなくてもいいんだ。だから……だから、さ。もう、いい加減……」

 

 

 

 

――――――――――自分を、許してあげなよ。

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 音も無く、世界が再び、光に満たされる。

『今、何が…………、』

 当惑するジェイルの声がするということは、現実世界へ、帰ってきたのだろう。

「………………」

 ボロボロになったフェイトを抱くのは……秀人。

「……答えは、見つかった?」

 穏やかな問いに、秀人は……首を、横に振る。

「……俺は、まだ、自分を許せるかどうか、分からない」

「そっか」

 フェイトはそれを、否定も肯定もせず、受け入れる。

「でも」

 秀人は……新たな決意を宿す瞳で、フェイトを見つめる。

 

「答えが出るまでは――生きてみようと、思う」

 

「――――えい」

 と、場違いに抜けた感じの掛け声と共に。

「――!?」

 

 ……秀人の口に、自分のものではない血の味が伝わった。

 

「お、お、おま、おまえ…………!?」

 慌てふためく秀人。しかし、フェイトは、何も言わず、秀人の言葉を待っている。

「――――。」

 ……その意味を、理解する。

 

「俺は、行くよ――――なのはを、助けに」

 

 ……それが、秀人の答えだった。

「――うん……。……いってらっしゃい」

「――――ああ。」

 

 高く掲げるのは……抜けるような、青空の色をしたクリスタル。背に広がるのは、同色の翼。取り戻した、彼自身の心の色。

 

「――――ありがとう。それと、………………ごめんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジェイルの通信は既に途切れていた。もう、本拠地で待ち構えているのだろう。

 

 飛び去って行った秀人を見送っていたフェイトは、その姿が、完全に視界から消えたのを、キッチリと見届けて…………

「もう、いいよね…………もう、だれも見てないよね…………」

 ぶわ、と、涙を溢れさせた。

「ぅうううぁあああああああああああ~~~~~…………!!!!」

 泣いた。年甲斐も無く、みっともなく、その場に大の字になり、手足を暴れさせ……思いっきり、泣いた。泣いて、泣いて、また泣いて…………全ての想いを流し切るように、涙を流した。

 

 

――――――ばいばい、ボクの初恋。

 

 

 

 

「……出ていくべきだろうか」

 到着した時にはそうなっていた状況を、シグナムがはらはらと陰から見守っていた。

「うきゅう……」

「ちーん……」

 ……意外なほどに善戦したセインとウェンディを、米俵のように両肩に担いで。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

天空を飛翔する秀人。その手にある愛機へ、語りかける。

「……悪かったな、アイ」

 およそ500年ぶりに交わす会話がそれかい、と、若干呆れながら、返す。

『……いいの。おまえがどんなにボンクラの朴念仁でも、おまえはアイのマスターなの』

 相変わらずふてぶてしいアイに、苦笑を漏らす秀人。

『だから……マスターが望む限り、アイは、マスターの翼になるの。マスターが、答えを出すまで……そのあとも、ずっとずっと、一緒なの』

 秀人は、頷く。そして…………

 

「セットアップ……イモータルハート!」

 

 蒼銀色に輝く甲冑を、その身に纏う。

『見えてきたの』

 遠方に、戦火。巨大な二つのシルエット。アースラと……ゆりかご。

 

「――――――アースラ、応答願う!」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

「左舷下方、質量兵器! 並びに右舷上方、魔力砲!!」

「だぁらぁあああああああああああっ!!」

 

――――ゴォウウウウンッ!!

 

 アースラへ迫る弾幕を、ゼルビスの操縦で回避する。回避しきれぬ部分は、クルーたちがシールドを展開し、補助する。

「部隊長からお預かりしたアースラだ! 凹ませても、ブッ壊すんじゃねぇぞ!!」

「オォオオオッス!!」

 

 クルーたちの善戦が、功を奏したのか……ガジェット群は、目に見えて減少していた。ゆりかご内部の状況は不明のままだが、あの高町なのはが行ったのだ。不安こそ在れど、疑心など微塵も抱いてはいない。

 

――――ズドォオオオオオオンッ!!

 

 そして……桜色の砲撃が、ゆりかご内部から、突き抜ける!!

「!! 教官!!」

 喜色が浮かぶクルーたち。通信は、まだ無いが……時間的に、決着の一撃とみていいだろう。

 

――ビーーーーー!!

 

「……! 通信アリ! フォワードチーム、スバル・ティアナ班! エリオ・キャロ班! 共に、任務達成!! 繰り返します! フォワードチーム、任務達成!!」

 

「――!! 部隊長に伝令!」「了解!」

 

 これで、はやてをアースラへ呼び戻せる準備が整った。

 

――行ける!!

 

 天秤は、勝利へと傾いて、…………

 

 

――――――――――!!

 

 

 ………………。何が、起きたのか。

「ぐぉおおっ……!!」

 己自身のうめき声に、ゼルビスは意識を取り戻した。

「……か、艦体下部……、推進機関の、35%を喪失……!! 現在の高度を維持……! ですが、これ以上の上昇は……!!」

 ひっくり返っていたクルーが、状況を伝える。

「だ、大威力の、魔力砲撃です!! アースラのシールドを、貫通した模様!! 発射地点、映像出します!!」

「――!!」

 リンディが、その映像を見て……絶句する。

 

「あ、アインヘリアル……、ですって……!?」

 

 ……それは、この作戦では、稼働するはずの無い超兵器。しかし、その主砲の一門は、放熱しており……今まさに、下手をすればアースラを撃沈されていた。

 

「――ゆりかご、高度そのままに沈黙……! し、しかし、……前方アンノウン、エネルギー反応、増大中!!」

 

「回避行動!」

「了解っ……!!」

 ゼルビスが、操縦桿を握る。しかし……、

「くっ、……さっきのが、まだ……!!」

 アースラは、頼りなく左右に揺れるだけ。推進機関が破壊されただけではなく、操舵機能にもトラブルが生じたようだ。回避するためには、機体をバンクさせるか、下降させるか…………どちらにせよ、高度の維持は不可能だ。

「……! 構いません、下降を……!」

 リンディの指示。しかし、

「駄目だ!!」

 ゼルビスは、それを否定する。

「ここで止めたら、それこそ部隊長の作戦がパァになっちまう!! 高町教官が、ゆりかごから脱出できなくなっちまうだろうがっ!!」

 呆気にとられ……しかし、クルーたちがまだ、だれ一人として諦めていないことを知ったリンディは……改めて、指示を出す。

 

「マリエル技官、操縦系統の点検を!! ゼルビス操舵士、機体のロールで回避を!」

『了解!』

「了解!!」

 

 アインヘリアルの副兵装が、アースラを狙う。それは、副砲とはいえ、超兵器の武装だ。艦体を貫くには、十分すぎるほどの威力を誇っている。

 

――――ギャゴォオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

「こンの……クソッタレェエエエエエエエエエエエ!!」

 アースラが、360°のバレルロール軌道を描く!

 

 切り抜けた。しかし。

 

――――ヒュイイイイイイイイイイイイイイインッ…………!!

 

 主砲のエネルギーは、フルパワーではないものの、いつでも発射可能な状態だ。

「!!」

 慄くクルーたち。リンディは、その身を盾にしてでも、彼らを守ろうと、

 

 

 

 

 

『――――――アースラ、応答願う!!』

 

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

リンディが。エイミィが。アースラ古参クルーたちが。信じられない、といった表情で、硬直する。敵の攪乱では無いか。聞き間違いでは無いか。極限状況からの幻聴ではないか、と。しかし……互いに顔を見合わせ、それが誤りであると知る。

 

『――――こちら、時空管理局・極東方面艦隊・旗艦『アースラ』所属!』

 

 

――――ゴォオアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

 

 主砲が、エネルギーを解き放ち……、その射線上に、逆光のシルエットが現れる!!

 

 

――――――ほぼ至近距離からの、艦載兵器の主砲。

 

 蒸発どころか、消滅不可避。しかし。

 

――――ドシャァアアアアアアアンンッ!!!

 

 

 ………………誰もが、信じられなかった。

 

 あまりに意味不明。あまりに非科学的。あまりに理不尽。あまりにご都合主義。

 

――――――現れたシルエットは……主砲を『受け止め』、それをそのまま……主砲の砲門へと、――――

 

 

――――『押し戻した』のだ。

 

 

 

――――――ガガガガァアアアアアアアアアアアアアアアンンッッ…………!!

 

 

 業炎に包まれるアインヘリアル主砲。

圧倒的な物理的な理不尽。摂理への暴挙を働き、成し遂げるような非常識を、彼らはたった一人しか知らない。

 

「――――嘱託魔導師…………!!」

 

燃え盛る炎から――――空色の不死鳥が、再誕する!!

 

 

 

 

「――――――――吾妻秀人だ!!」

 

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