魔法少女リリカルなのはties   作:ハルハルharuharu

143 / 174
StrikerS編 第二十二話『 光り輝く未来へと到達するための道しるべ。人、それを希望という 』

 

 

――――――――――その手に魔法(みらい)を。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「あー、クソッ……! 長いものには巻かれろってのが、信条だったのになぁ!」

 近代ベルカ式術者の、年若い陸士が、汎用ランスを機械獣の残骸から引き抜き、ぼやく。

「たいちょー、まだ生きてますかー!?」

「生きてる生きてる、一応な!」

「そしたら、たすけてくださいー! ヤバいんですー! 数がヤバいんですー! ついでに、めっちゃ硬いんですー!」

 狙撃で飛行型の機械獣を撃ち落としながら、部下のミッド式術者が悲鳴がてら呼んでいた。

「悪いこっちも割と手一杯だ!! ファイトだ! 根性見せろ男だろ!」

「女ですぅー!! しかもたいちょーのカノジョですぅー!!」

「オレ、この戦いが終わったら……」

「フラグ立てて遊んでないで助けてくださいー!! 

生き残ったら結婚なんて当たり前ですからぁ! 

子供は二人欲しいです幸せにしてくださいー!!」

「言い出しておいてスマンが俺はまだまだ独身でいたい!!」

「この甲斐性なしーーーーー!!」

 

 

 

――――Standby ready

 

 

 

 ……と、部下と、隊長のデバイス…………近代ベルカ式デバイスまでもが、そう告げた。

「へっ? ……俺の、ベルカ式………………?」

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「うわぁああああああああああああん!! もうやだー! かえる! おうちかえるー!! もう降参して言うこと聞こうよお姉ちゃんー!!」

「バカ言ってないで撃ちなさい! 撃てば的の方が勝手に当たってくるんだから!」

「いやだぁああ…………!! こわいよぉお……!!」

 などと言いながら、バカスカ砲撃を撃ちまくる妹の方。

「あっつ!! あっつ!! …………ぎゃあああ! わたしの髪がぁーー!!」

 姉の方は、密かな自慢のストレートヘアが熱でパーマにされていた。

「…………見せる相手もいないくせにぃー(ボソッ)」

「…………ぁああああああああああん!? 今なんつったこのクソ愚妹!!」

「クロノさんにアタック掛けて撃沈したの知ってるもーん!!」

「オマエはッ……!! シグナムさんにあっさりあしらわれて、二番手のキープ君と付き合ってるだけだろうが!」

「う、うるさいよ!! それでも本局勤めの準キャリのエリートだもんねー!!」

「アイツ、空隊の子と付き合ってるよ。ほーら、らぶらぶ2ショットまで!」

「――――……えっ。あ。…………!!」

「やーいやーい二股掛けられてやんのー!! 知らぬはお前だけじゃバーカ!!」

「うわぁああああーーーん!! そんなの嘘だぁああああ!!」

「ざまぁああああああああああああああああああ!!」

「あっあっあっ……お姉ちゃん、前見て前―!!」

「あぎゃぁああああああああああああああっ!!」

 

 

 

――――Standby ready

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「こっちです! 焦らないで……あっ、でも、急いでー!!」

「迷子のお子さんがいまーす!! 地下鉄第七ホーム、臨時避難所までお送りしまーす!! お父さんかお母さん、いたらそちらへ向かってくださーい!!」

「はーい、お婆ちゃんの車椅子が通りまーす! すみませーん! お婆ちゃんが通りまーす!」

「怪我した人―! 医者はいませんが、獣医ならここにいまーす!! 

応急手当くらいならできまーす!!」

 民生品デバイスへ随時送信されてくる避難経路を頼りに、誰に指示されるのでもなく、自発的に避難誘導をする若者たちがいた。

「おいオタク! 早くルート出して案内しろ!」

「む、無茶言うなよぉ……物資背負いながらじゃ、歩くので一杯いっぱい……」

「あーもうこれだからオタクは……おらこっち貸せ!」

 荷物を二つ背負う。

「あ、ありがとう……」

「そん代わり、今度フットサルの練習に混ぜるからな!」

「え、ええぇ~~……?」

 なんというか、チャラチャラしたのから根暗そうなメガネまで。何だかんだでチームワークが取れている。

 

 

――――Standby ready

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

――――Standby ready

 

 

 ありとあらゆる世界で、響き渡る。

「全世界に普及している官給・民間デバイスに搭載されているOSは、ワタシが設計したものだ」

 マリエルが、キーを操作しながら語る。

 デバイスとは、何も戦闘用だけとは限らない。民間へ、地球で言うところの携帯電話や情報端末の用途で製造されている物も含む。それが……ありとあらゆる次元世界へ、広く普及している。

 

「ワタシが覚えている限りの数で…………250億(・・・・)機。

 

――――その全てに、ブラックボックスとして封入した」

 …………この日のために。この時のために。

 利用されるためだけの存在が。

他者の欲望を満たすためだけの命が。

 

 ああ、なんと痛快なことだろう!

 

 

 

「――――ワタシの頭脳が、世界を救うのだ!」

 

 

 

――――――Standby ready(さぁ、準備は出来た)と、高らかに。

 

 

 

――――――世界各地から……光が、集まる。

 

 

 

天蓋を流れる、無数の星々。人々の心の光。願いの星。

 

尾を引き流れる、一つとして同じ色の無い……

 

 

 

 

――――光の(ties)

 

 

 

 

『 『 『 ――――――何だ、これは 』 』 』

『神』が、身じろぐ。

全知全能を自負し、万物を掌握せしめた『神』が…………揺れていた。

『 『 『 ――――――何だというのだ、これは!!! 』 』 』

 人の想いが、『神』の思惑を超え、結実する。

 

 

 

『 『 ―――― < ties System > set up 』 』

 

 

 

『 『 ――我ら、天命を導く者なり 』 』

 

 

――――手と手の温もりが、彼らを強くする。

 

 

『 『 ――誓約の元、意志を束ね、時を重ね、不滅となりしは我らが想い。 』 』

 

 

――――積み重ねた思いが、空を駆け抜けて。

 

 

『 『 ――祈りを星に。願いを虹に。我らの誓いを、この空に。 』 』

 

 

――――思いを、永遠の炎へと変えて。

 

 

『 『 ――そして、 』 』

 

 

――そして。

 

 

 

 

『 『 ――――――――不屈の心は、この胸に!! 』 』

 

 

 

 

――――――――繋いだ心を、力へと変える!!

 

 

 

 

 

――――炎の繭。

 

 

――――秀人の、蒼炎の一色のみであったそこへ…………

 

 

――――桜色が、交じり合う。

 

 

――――なのはの左腕、左眼へ……桜色の炎が集まり、形を成していく。

 

 

「――――……。」

 

 

――――身体の傷が、消えていく。

 

 

――――左眼を、斜めに駆ける一文字だけが、残される。

 

 

「――――秀人さん。」

 なのはの肉声が、秀人を呼ぶ。

「――――伝わるよ。」

 繋ぎ合った手から、互いの情報が、相互に交換される。

「――――辛かったね。苦しかったね」

 それこそ、過去の記憶までも。

「――――でも、もう大丈夫」

 互いの手を、しっかりと握り合う。

 

 

「――――私が、傍にいるから」

 

 

――――心も。

 

――――身体も。

 

――――希望も。

 

――――未来も。

 

――――全てを一つに。

 

 

「――――――ずっと一緒だよ」

 

「――――――ああ。ずっと一緒だ」

 

 

なのはの背に、翼が開く。秀人と同じ……炎の翼。

 

 

――――――なのはは、秀人と同じ…………不死の存在に昇華した。

 

 

 もう、取り返しは付かない。もう、戻れない。だと、いうのに。

「――――はは……あいつ、笑ってやがる」

「……うん、本当だ」

「お母さん、綺麗……」

 なのはは、笑っていた。

 

 この世全ての幸福を得たような……笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

『 『 『 ――――下策だ。 』 』 』

 

『神』が、指摘する。

『 『 『――――驚異的なエネルギー総量だった。それは、認めよう。しかし 』 』 』

 ぎろりと、巨竜の視線が、秀人と、なのはを捉える。

『 『 『 不死生命への昇華のため、使い切ってしまっては意味が無い 』 』 』

 確かに……巨竜が指摘したように、なのはから感じられるエネルギーは、それでも非常識に強大ではあるのだが……『神』に匹敵するほどの規模ではない。

 

『 『 『 ――――――その程度で、我らと同等の『神』となろうなど……!! 』 』 』

 

 

「――――――――――俺は、人間だ。」

 

 

 なのはが、魔力結晶を削り出した『杖』を手にする。レイジングハートが……なのはと共に、昇華した姿。

 

――――――――。

 

 音も無く。魔力スフィア……否、ミッド式の円形魔法陣を、無数に重ねた球体――

 

――――立体魔法陣が、展開する。

 

 空色と、桜色の、二つの光。

 

 

「――――――――次元結合(・・・・)

 

 

――――――ズパァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ………………!!

 

 光は…………次元断層へ即座に到達する。

『 『 『 …………!! 』 』 』

 断層を修復するのか。……いや、違う。

 

――――――世界が、繋がる。

 

 割れて砕けた空の向こうに…………別の空が、結合する!

 

 

 

「――――――――俺は、『人間』だ」

 

 

 

 秀人が……魔力光を衣のように纏う姿で、再び『神』へ告げる。

 

「――――神の力を持っていても……奇跡を起こすことができるのだとしても。

 

俺は――俺たちは、『人間』なんだ」

 

『 『 『 ――――――……………… 』 』 』

「お前たちは、……きっと、何も進歩しない、何も変われない『人間』を、諦めてしまったんだ。だから……高みから、管理しようと試みた」

 数百年……戦乱を、そして、今現在も続く闘争を、見続けてきて……

 彼らは、道を誤ってしまった。

『 『 『――――それが、どうした。もう遅い。既に、計画は最終段階だ。貴様らが、全ての次元世界を、今から駆けずり回ろうとも………… 』 』 』

「ああ、その通りだ」

 秀人と、なのはが、如何に『神』と等しくなろうとも……全ての世界・すべての人々を救うことは、出来ない。

 

――――二人だけでは。

 

「全てをこの手で救うことが、出来ないのだとしても……

 

――――後押ししてやることは、できる」

 

 

『 『 『 ――――なにを 』 』 』

 

 

「――――『福音』在れ。」

 なのはが、杖より魔法を解き放つ。

 

 光の矢。

 

 破壊力も、それほどのエネルギーも感じさせないその魔法は、秀人が繋げた、全ての世界へ……降り注ぐ。

 

 

 

 

 

 

――――――――――使命を果たす者達よ。

 

 

 

 

 

 

 ある世界、人々の脳裏に、『声』が届いた。

 戦う者もいた。抗う者もいた。力尽きた者もいた。

 

 

――――――――――今一度。

 

 

――――――――――その身に、力を。

 

 

――――――――――立ち上がるための、力を。

 

 

 その全てに、光と共に、『声』が呼び掛ける。

 立ち上がる力。

 もう一度、歩き出すための力。

 

 それは。

 

 

 

 

 

――――――――――さぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――その手に魔法(みらい)を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 管理外世界。

 魔法の知識はおろか、大きな戦乱さえ過去の記録にしか無かった世界。

 ……機械獣への対抗策の無かった世界で。

 

――――――ドゴォオオオオオンッ!!!!

 

 機械獣の一体が……突如として、爆散した。

「――――これ以上、市民を傷つけさせんぞ!!」

 手にしているのは……何の変哲も無い、ただの警棒。

「本官は、市民を守る警察官なのだから!!」

 

 

 

 

 

管理世界。農業が主な産業の、喉かな世界。

 

「これ以上、ウチの畑踏み荒らしおったら肥やしに埋めんぞぉ!!」

「百姓なめんなぁ!!」

 農民たちが、クワを手に吠える。

 牛たちの突進で、冗談のように機械獣たちが粉砕されていく。

 

 

 

 

「このっ、このっ!!」

「ウチの子には指一本触れさせないわよ!!」

 地域行事のため集まっていた主婦たちが、フライパンを投擲し、機械獣を打ち落としていく。

「オラ男衆! さっさと前に出んかい!!」

「サボっとったら小遣いカットやぞ!」

「「「は、はいーっ!!」」」

 それでもやはり、旦那は女房の尻に敷かれる運命にあった。

 

 

 

「――――剛ッッ!!」

 

――――バグシャアアアアアッ!!!!

 

「――――ふゥー…………」

 …………身の丈三メートルはあろうかという、非常識な大男。浅黒い肌に、はち切れた道着。並みの格闘家の胴体ほどもある腕を、合体機械獣たちから引っこ抜く。

「……いやぁー、身体ばかり若返ろうと、すっかり鈍っておるわい。

齢は取りたくないものだのう」

 ……しかし、その声は不釣り合いに、好々爺然としていた。

 

「――――秀人や、なのはちゃんが頑張っておるのだ。

年長者として、弱音を吐いてはおれんからのう」

 

「お、お爺ちゃん超かっこいい……!!」

 ……アクセサリーをすべて外した奈々が、キラキラした目で大家を見ていた。

 

「あの指輪、名前も彫ってあるんだ。だから……今度こそ、幸せになってね。秀人」

 

 

 

 

――――――斬ッ!

 

「これで、……いくつだ!?」

「数えてないからわかんないってば!!」

 恭也と美由希が、刀を両手に機械獣たちを切り捨てていく。

 

――――――ドガァンッ!!

 

「……! しまった!!」

 背後から、爆発音。市民たちを匿っていた店内へ、機械獣が突入したのだ。

「……!! 来ないで!!」

 桃子が、両手を広げて立ち塞がる。

 

――グルァアアアアアアアアッ!!!

 

 砲声に、びくっと目を瞑る。

(恭也、美由希…………あなた!!)

 

――――――。

 

 ……しかし、覚悟した痛みは、やってこない。

 恐る恐る目を開けた桃子が、見たものは。

 

「――――――待たせて、済まなかった」

 

 機械獣を、一刀で刺し貫く、その雄姿。

「あ、あ……!!」

「母さ、…………は……? え……?」「…………、と、え、ぇえええええええええ!??」

 

「――――――あ……あなた……?」

 

 数年ぶりに言葉を交わす、一家の家長……高町士郎、その人だった。

「――うむ。恭也も美由希も、腕を上げたな。」

 交わしたい言葉は山ほども。しかし……今は。

 

 

「さて……ガラクタを掃除する、簡単な仕事だ。始めるぞ」

 

 

「はい、父さん!!」

 恭也が、美由希が……士郎と共に、戦う!

 

 

 

 

『 『 『うぉりゃああああああああああああああああああああああーーーーー!!』 』 』

 

――――――ガロロロロロロロロロロロロロロォオオオオオオオーーーン!!

 

 むさくるしい雄叫びと共に、ディーゼルエンジンを唸らせ、巨大な建機が暴れ回る!

「ロードローラーだッ!!」

「タンクローリーだっ!」

「こっちはリースのショベルカーだっ!! ……補償が効くと信じて突撃―!!」

「(株)コマツ建機バンザーイ!」

「(株)日本キャタピラーバンザーイ!!」

「カントクー! 倉庫にあったドロップハンマーも出していいッスかー! 何か知らないけど動くッスけど!?」

「おうヨシ! 好きにやっちまえ!! なんならマイトも出しちまえ!」

 カントクは、ありったけの重機建機たちへ指示を飛ばす。

「……へへ。ヒデのヤロウ、無事でいやがったぜ!!」

「カントク、泣くのはまだ後ッスよー!」

「おうよっ! 行くぜ野郎どもぉーーーー!!」

 

『 『 『 壊すも建てるも俺たち次第!! 』 』 』

 

 ……なんとも物騒な社訓を斉唱する男たちであった。

 

 

 

若者が、老人が、男が、女が、子供が。

 

機械獣へ、立ち向かっていく。

ただの棒っきれや、街角のガラクタのようなものを手に。

 己の未来を、掴み取るために。

 

 ならば……民間人で、これほどならば。

 

『 『 『 ――――ありえんっ!! ――――『人間』の可能性を、極限まで引き出しただとぉおおッッ!? 』 』 』

 

 恐慌し……再び、アインヘリアルの発射体制へ入る!!

「させるかぁあああああああああああっ!!」

 既に満身創痍のはやてが、魔剣を振りかざし……、

 

 

 

 

 

「――――――絶招・『天羽々斬(アメノハバキリ)』!!」

 

 

 

 

 

 

魔力の大剣が、巨竜の動力部へ、深々と突き刺さった!!

 

 

――――――バゴォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

『 『 『 ――――ぬぉおおおおおおおおおおっ!!! 』 』 』

 

 誘爆し、発射がキャンセルされる。

「……!? この、魔力は……!!?」

あまりに、懐かしい魔力。

 

「――美香……?」

 

茫然とするはやて。その前に、逞しく成長した美香が、至天の三騎士を引き連れてやってくる。

 

「――――ちゃんと全部、思い出したよ。……はやてさん」

 

その懐から、黒猫が姿を現す。

「……久しいな、主よ」

「アーフィエル……」

 護衛として、家族として、友人として……あれこれ理由を付けてはいたが、結局のところ……未練だらけで、捨てることが出来なかった。

 

「行こう、はやてさん。皆を護ろう。

 

――――私も、一緒に戦うから!!」

 

 なんと、頼もしく成長したことか。

「…………ああ! 『神』なんぞに、負けてたまるか!!」

そして、アーフィエル、リインフォースと共に、ユニゾン。

『至天の王』の姿となる。

 

 

皆が、全力全開だった。

 

 

クイントが、スバルが、ギンガが、白兵戦で機械獣を撃破し。

 

ティーダとティアナが、続々と撃ち落とす。

 

エリオが、ゼストが、フリードの鎧装と、ガリューの甲冑を纏う。

 

ヴォルテールと白天王が並び立ち、周辺の敵を一掃していく!

 

 

「おらおらおらぁー!! 天下御免の機動六課のお通りじゃー!!」

「道を開けろーい!!」

『 『 『 イエーイ!! 』 』 』

 コリンら機動六課の戦力らも、戦線を支え続ける。

 

 

 

 人と人とが、助け合い、力を合せ……懸命に力を尽くし。

 

 

 

――――――『神』の目論見を、崩していく。

 

 

 

 

『 『 『 何故分からぬ!? 人の世には、絶対的な管理が必要なのだ!! 』 』 』

 

 ……もはや、悲鳴となった叫びを上げる。

 

『 『 『 人は、己の欲望で、どれほどの災厄を招いてきたと思っている!! 』 』 』

 

 数百年の時間。その、途方もない時間の陰で……この『神』となった者達は、いったいどれほどの惨劇を目にしてきたのか。

 

『 『 『 我らは、それを見続けてきたのだ!! その上での結論なのだ!! 』 』 』

 

威力が低下したものの、遠慮なく発射されるアインヘリアル。

 

「――――諦めるなっ!!」

 

 秀人が、それを真っ向から受け止める!!

 

「――――諦めるなよ!! お前らだって、人のために……! 平和のために、管理局を立ち上げたんだろっ!!」

 

 巨竜の顎を、受け止める!

『 『 『 ぐぅうううううっ!! 貴様とて、人間の悪性に裏切られたクチだろうがぁああああああああっ!! 』 』 』

「――――確かに、人間には、汚い部分がある! 

 人間が、この世に凄惨な地獄を現すこともある!!」

『 『 『 知った風な口をぉおおおおおおおおお!! 』 』 』

「知ってんだよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 鋭き牙を、握り潰す!!

 

「――――でも、それを正してきたのも、同じ『人間』だろうっ!!」

 

『 『 『 虚無の中で見続けてきただろうにっ!! 』 』 』

「ああ、見てたよ……!! 何度も、何度も……!」

 あの虚無の中、秀人も、それだけのものを見続けてきたのだ。しかし……至った結論は、『神』とは違うものだった。

 

「――――だけど、俺は!!」

『 『 『 故に、我は!! 』 』 』

 

――――ゴゴゴゴゴッ!!

 

 巨竜の腕が、拳の形を作る!

 

「―――――――――人間を、信じ続ける!!」

 

『―――――――――人間を、決して信じない!!』

 

 

――――――ズガァアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!

 

 

 秀人と、『神』の拳が、激突する!!

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

『 『 『 ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!! 』 』 』

 

 威力は……同等。しかし、単純な質量の差がある。『神』が、押し切ろうと力を込める!

「まだだっ……!!」「ええ、まだまだ!!」

 

――――――そして。

 

「 「 まだやれるっ!! 」 」

 秀人の、『結合』の力と、なのはの、『収束』の力が……臨界を突破する!!

「秀人!!」「なのは!!」「お母さん!」「お姉ちゃん!」「秀人くん!」「なのはさん!!」

 二人を呼ぶ声が……更なる力を呼び起こす!

 

 

――――――ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

 

人々が、『神』に抗うべく、魔力を二人に託す!

『 『 『 お、おおおおおおおおおっ…………!!? 』 』 』

 

 

――――――ズシィインッッッ……!!

 

 

 魔力の大巨人が、顕現する!

 

『 『 『 馬鹿なっ……それだけのエネルギーを、支配するなど……!! 』 』 』

『……これが、お前が諦めた…………人間の力だ!!』

 秀人となのはは、それを集め束ね、結び合わせたに過ぎない。

 

――――ズゴガァアアアアアアアンッ!!!

 

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

『 『 『 やらせるかぁあああああああああっ!! 』 』 』

 巨人と巨竜の、時空をも飛び越えた一騎打ちが始まった!!

 

 

――――ヒドラとヘラクレス。

 

 

――――アジ・ダハーカとファリードゥーン。

 

 

――――八岐大蛇と素戔嗚(スサノオ)

 

 

 

 多頭竜と人との戦いとは、神代からの宿命であった。そして……神の化身・神の遣いたる彼らを乗り越えてきた。人が人たる証を立てるため、いつだって、人間は立ち上がってきたのだ。

 

「どりゃあああああああああああっ!!!」

『 『 『 ぐぉおおおおおおおおおおおおおおお!! 』 』 』

 時空の壁を突き破り、虚数空間をも巻き込みながら、莫大なエネルギーが解放される!

 

『 『 『 ――――何故だ。 』 』 』

『神』が、問うた。

『 『 『 ――――何故、そうまでして人間を信じられる!? 

 

――――心の弱き人間たちを!! 』 』 』

弱く、醜く、汚い人間の本性。

「…………それでも、俺は……!」

 知らぬ身ではない。むしろ、その被害者ですらあったのだ。

 

 

「弱さを抱えて、その弱さを乗り越えようとする人間が、大好きだから!!」

 

 

しかし……人間の善性に救われたのも、また事実。

 

 

「そんな人間の中で……生きていたいと、思ったんだ!!!」

 

 

――――最早、言葉は尽くした。

 

 巨人の拳が、膨大なエネルギーに光り輝く。

 

 巨竜の顎に、眩いばかりの閃光が宿る。

 

 

 

――――――――――!!!!

 

 

 

 ………………『神』の領域の決着は、人間には認識できなかった。

 

 しかし、確かな結果は……

 

 

 

――――――拳が、巨竜を撃ち貫いたということだった。

 

 

 

 

――――ビキッ……

 

 巨竜の体躯に、亀裂が走る。その亀裂は、加速度的に増していき……

「――! いかん、目をつむれ!!」

 

 莫大な閃光と共に、弾けた!!

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   何処でもない何処か ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   何時でも無い何時か ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

……また、ここにいた。

 今なら、ここがどういった場所なのかが……説明は出来ないが、それとなく、分かった。

「……」

 手には、温もりがある。目を開けると決めた途端、目の前が、開ける。

「…………」

 いつか、この場所で漂っていた時とは違う。

 暗黒ではなく……温かな、光で満ちていた。

 

 

 目の前には、三連に連なったモノリス。……最高評議会。

 

「――――なぁ」

 

 声が、出せた。

 

「――――たったの500年じゃないか。 次の500年…………1000年だって、10000年だって、俺たちは、行く末を見守ることが出来るんだ」

 

 目の前のモノリスから、かつての敵意や、絶望は伝わってこない。

 

「――――もう一度……信じてみようぜ」

 

 何度、裏切られても。……何度でも、信じればいい。

 

 ただ、信じて……信じることを、信じればいい。

 

 

『 『 『 ――――人間の、可能性を、か 』 』 』

 

 

 ……そこには、微かに呆れたような、笑うような気配さえあった。

 

 

「――――ああ。……人間、まだまだ捨てたものじゃない」

 

 

『 『 『 ――――ふ……違いない。 』 』 』

 

 

 今度は……確かに、笑った。

 

 

『 『 『  ならば…………我らは、ここから始めよう 』 』 』

 

 

秀人たちに、最後は納得したようだった。

 

 

『 『 『 我らはここに在り続け、人間の世界の行く末を、見守り続けよう 』 』 』

 

 

彼らは、観測者として……裁定者として、この世界に在り続ける。

 

『 『 『 いつか、人間が絶える、その日まで 』 』 』

 

 光が、増していき…………

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   何処でもない何処か  ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   何時でも無い何時か  ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   改め、多元宇宙内・超々高次元領域  ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆   時空検閲官の部屋   ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 目の前に、誰かがいた。

 

 どれほどの距離なのかは分からない。距離と言う概念があるのかどうかも分からない。

 

 しかし、確かに前に居た。

 

 男にも女にも、大人にも子供にも見える。

 

 

――『無個性の個』とも言うべき相手。

 

 何も語らず。しかし、互いを認識できていた。

 

 

「………………『神様』、か」

 

 

きっと、この遥かな高次より、全てを見届けたのだ。

その上で……秀人を、この場に連れてきた。

 何かを、伝えるために。

「――――――なぁ。俺、あんたに、ずっと、言いたかったことがあるんだ」

 そして、秀人もまた、伝えるために。

「――――――。」

 恨み、つらみ……いつか、ぶつけてやろうと思っていた。しかし……

 

「――――――ありがとうな」

 

 しかし……己の奥底より引き出されたのは。

 

「――――――俺、生きてて良かった」

 

嘘偽りの無い、純粋な感謝だった。

 

「――――俺……産まれてきて、良かったよ」

 

 

 そして、『神様』は。

 

 

 

 

――――――――――お前の

 

 

 

 

――――――――――罪を

 

 

 

 

――――――――――赦そう

 

 

 

 

 

『神様』が、微笑んだように感じた。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

――――ミッドチルダ地上。

 

 

町並みはボロボロで、見る影もない。

だが、人々は満ち足りた顔だった。

 

 己の可能性を……己の希望を、見ることが出来たのだ。その上で、困難に立ち向かったことが、きっと、彼らにとって、何よりの勲章なのだ。

 

「――――神様に、会っちゃったよ」

「――――今までの人生、一番ビックリした」

 

なのはも、対面していたようだ。というか。

 

「……なぁ、たぶん」

「……うん。みんな、忘れているだけで」

 

 ……皆、あの『神様』と対面したのだ。人間の認識力を超えた存在であるがゆえに、記憶には残らなかったのだろうが……それでも。

 

「終わったのかな」

「………………。これで……やっと、行けるよ」

「……え?」

「…………父さんと、母さんの……墓参り」

「………………。」

 

 なのはが、秀人の手を握り、何かを言おうとして。

 

 

「――あのっ、すみませんお邪魔するようで申し訳ないんですけど!」

 

 

 群衆の中より、なぜか美香がやってくる。

「ああ、お前、あの時のガキンチョか」

「はやての弟子一号だっけ」

 二人とも、憶えていたようだ。

 

「えぇーっと……何と言ったらいいのか」

 ……何やら、混乱している。目がきょろきょろ、ぐるぐる。

 

――がしっ。

 

「落ち着きなさい、美香」

 なのはとよく似た少女……シュテルが、美香の頭を捕まえる。

いま(・・)お連れします(・・・・・・)

 

 そして。

 

 続いてやってきた、ディアーチェとレヴィは。

 

 

――――一人の女性の手を、引いていた。

 

 

 その女性は、疲労が刻まれた顔に、病的に痩せこけた身体をしていた。どことなく、プレシアを思わせる、その女性は。

 

 

「――――――。そんな、………………だって、………………そんな。」

 

 

 ……秀人が、幻でも見ているような、動揺した顔を見せている。

 秀人と記憶を共有したなのはも、同じ表情だ。

 

――――彼女が、ここに居る筈が無い。

 

 

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――母さん(・・・)……?」

 

 

――――吾妻秀人の実母……吾妻桐子が、ここに居る筈が無い。

 

「――――――秀、人……」

 一歩……彼女が、進み出て…………足を、止める。

「………………あの、これを」

 美香が、銀色の栞を、秀人に差し出す。

「…………」

 言われるがまま、それを握ると…………

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

――――わたしは息子を捨てた。

 

 

――――あれこれと、釈明しても、言い訳にしかならない。

 

――――最後まで、わたしを呼んでいたあの子を、施設へ……悪名高く、しかし、必ず引き取ってくれるあの施設へ、置き去りにしてきた。

 

――――だって、耐えられなかった。あの子の身体に起きた、解明不能の症状。

 

――――あの子の身体は、もう元には戻らない。

 

――――夫は看病のため、仕事に穴をあけることが多くなり……結局、そのまま仕事を追われた。

 

――――やっと終わったと、思っていたのに。

 

――――もう耐えられない。

 

――――もう背負えない。

 

――――だから、捨ててしまった。

 

――――この町を出よう。逃げよう。

 

――――あの子と、偶然にでも、顔を合わせることが無いように。

 

 

――――10年が過ぎた。

 

 

――――夫は無理が祟り、皮肉にも、あの子と同じように、施設で寝たきりの生活となっていた。

 

――――わたしは、施設の費用を工面する仕事の忙しさを言い訳に、あの子のことを、考えまいとしていた。

 

――――夫も、あの子については、一言も口にはしなかった。

 

――――ある日、探偵を名乗る男が、私たちを訪ねてきた。時代錯誤の純白のスーツに、同色の帽子を被った、鳴海荘吉という男だった。

 

――――依頼人の名は口にはしなかったが、察してしまった。

 

――――わたしも夫も、既に両親は亡く、親戚とも疎遠な間柄だ。

 

――――で、あるのならば。

 

――――『――殺してください』

 

――――『――依頼人へ……吾妻秀明と、吾妻桐子は、死んだと、伝えてください』

 

――――わたしたちが、今更、あの子のなんだというのだ。

 

――――身勝手に捨てて。身勝手に忘れて。……今度は、身勝手に戻るのか?

 

――――できない。

 

――――ならば、せめて…………あの子の溜飲が、下がるように。

 

――――天罰が下り、わたしと夫は、救いようも無く、惨たらしく死んだと。

 

――――首を吊ったでもいい。糞尿を垂れ流しながら悶死したでもいい。

 

――――とびきり惨めったらしく、くたばったのだと伝えてください。

 

――――倍額の報酬を出すからと、頼み込んだ。

 

――――探偵は、その条件を呑んで……二度と、姿を現さなかった。

 

――――また、嘘をついてしまった。

 

――――あの子の溜飲が下がるように、なんて、真っ赤なウソ。

 

――――本当は、会うのが怖かった。

 

――――捨てた恨みを、言葉にされるのが怖かった。

 

 

 

――――10年が過ぎた。

 

 

 

――――夫は寝たきりから、在宅介護へと快方へ向かっていた。

 

――――後遺症が残り、言葉と半身は不自由があるものの、あの日々がウソのような、穏やかで安定した生活だった。

 

――――あの子は今、何をしているのだろう。

 

――――………………。

 

――――わかっている。

 

――――わたしが、どれだけ都合のいい自分勝手をしているのか、など。

 

――――余裕が出来て、初めて思い出すなんて……やはり、自分には親を名乗る資格など、ありはしない。

 

――――……………………。

 

――――…………あの町へ、行くだけなら。

 

――――わたしは、記憶を頼りに、あの町へ向かった。

 

――――かつてのわたしたちの家は、既に取り壊され、駐車場になっていた。

 

――――……帰ろう。

 

――――もう、あの子と会うことは無い。

 

――――もう、何もかもが遅すぎた。

 

――――あの子は、いま、25歳にもなるだろうか。

 

――――もう、子供ではないのだ。

 

――――でも、だから、どうか。

 

――――身勝手な願いを、捧げさせてください。

 

 

――――幸せになってください。

 

 

――――こんな身勝手な、最低な、人間の屑のわたしたちより、ずっとずっと、幸せになってください。

 

――――それだけを、祈らせてください。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「………………」

 銀の栞が、光を失い……崩れ落ちた。

 

――これが……真相。

 

「……その時に、私を狙ってきた連中の結界に、巻き込まれて……私たちが、保護したんです」

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

 

 あまりの事態に、思考が空回る。

 

 けれども、一つ、確かなことは。

 

――――――両親は、生きていた。

 

 …………擦れ違いと、勘違いと……結局のところ、互いを想いあっていたが故の、不幸な行き違い。秀人は、片時も両親を忘れたことなど無く、両親も、秀人を捨てたことを悔いていた。

 

「――――――――――――」

 

 桐子は、俯き……足を止めてしまった。

「だめ……来ては、いけない…………。わたしは……あなたの母親の、資格なんて………………あなたを、抱きしめる権利なんて…………わたしは……あなたを、すてて…………」

 秀人が、ふらふらと…………皆が見守る中、歩み寄り…………恐る恐る、確かめるように。

 

「――――――――――お母さん」

 

 その身を、そっと抱きしめた。

「――――――――――秀人。」

 桐子もまた、秀人を抱きしめ返す。

 

「――――――――!!」

 その認識が、実感に変わった瞬間。

 

「――――!!!! お母さんッ!! お母さん、お母さん、お母さん……!!

 

――――お母さんッ……!! お母さんだ……お母さんだ……!! 

 

俺の、お母さんだ……!!!」

 

『神』にさえ届いた男が。涙と鼻水で、顔をグチャグチャにして、泣き叫ぶ。

「――――。」

 なのはを始めとして……彼を知るすべての人が、涙した。

 

 

 

――――――神様が、取っておいてくれたんだ。

 

 

 

秀人にとって、それは奇跡だった。

幾度も、奇跡を起こしてきた。

誰かのために、誰かのために……

常に、誰かの幸せのために、戦ってきた。

 

 彼は、数えきれないほどの多くを、救ってきた。

 

ならば、最後くらい……彼のための奇跡があっても、いいだろう。

 

 彼が救われることに、誰も文句などありはしないだろう。

 

 

 

――――(主人公)がハッピーエンドを迎えるための、最高のご都合主義があっても、いいだろう。

 

 

 

 

 

 

秀人は、ようやく…………自分の家に、帰れたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。